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『模擬戦の二人』
桃李la3954


 桃李(la3954)とグスターヴァス(lz0124)は訓練室にいた。桃李の方から持ちかけた、模擬戦の為だ。
「共闘はしたことあるけど、俺たち殴り合ったことないよねぇ?」
「普通そうでしょ……」
 何しろ、ライセンサーというのは対ナイトメアの為にEXISを扱う資格を得た者なのだから、ライセンサー同士(片方がレヴェルに転向したとかでなければ)で殴り合う資格ではない。
 グスターヴァスは困った様な顔をしている。訓練としての模擬戦は嫌ではないのだが、この細身の青年をメイスでぶん殴るというところで、どうしても抵抗のある彼である。
「桃李さん大丈夫です? 折れません?」
「イマジナリーシールドがあるから大丈夫、でしょ?」
 にこりと笑う。確かに、自分たちライセンサーには、イマジナリーシールドと呼ばれる想像力の壁がある。多少メイスで殴られたからと言って、そのダメージが桃李の肋骨に直結することはない。
「あ、そうだ。それじゃあ、勝った方が負けた方に一つおねだりできる、って言うのは、どう?」
「何か私にしてほしいことがあったら言って良いんですよ」
「ふふ、でも、折角だから勝ち取ってみたいじゃない?」
「わかりました。じゃあ、やりましょうか」
「手加減なしの真剣勝負だから、ね」


 ルールは簡単。日頃の戦闘と同じように、スキル、武器使用可。何でもありだ。
 グスターヴァスは、ひとまずセットスキルをヒール、狂化、リフレクトウォールにしている。狂化で下がった防御をリフレクトウォールで補う作戦である。
 そう言うことなのでとりあえず狂化を使ったグスターヴァスだが、桃李は目を細めて笑うと解き途絶える嘘を行使した。
「あー! ひ、ひどい。狂化ってそれでなくても防御下がるのにー!」
 グスターヴァスは慌てた。桃李は知覚攻撃力の高いネメシスフォースである。いくら自分がセイントで知覚防御が高いとは言え、狂化で元々下がった防御をさらに下げられては元も子もない。慌てて捨身を解除し、リフレクトウォールを掛ける。桃李は容赦なく死霊沼を発動した。継続ダメージ。
「しまった。ネメシス相手ならホーリーライト持ってくるんでした」
 グスターヴァスは渋い顔をした。目減りし続ける生命はヒールで回復するしかない。ここまでで、彼はまったく桃李に攻撃出来ずにいた。狂化で攻撃力を底上げする作戦も、防御が下がりすぎるという状況では使えない。一つくらい、その場限りの攻撃スキルがあれば良かったと後悔する彼である。今回の最適解は、恐らくヒール、インパクトシェル、ホーリーライトだっただろう。あるいは、ロールを聖域にしてバッドステータスは無効にしてしまう。継続ダメージは防げないが、防御低下がないだけマシだっただろう。
 悔やんでも仕方ないので、行動するしかない。グスターヴァスは踏み込んでメイスを振るうが、桃李は神速幻舞で軽やかに殴打を回避した。
「んもー! 当たんなきゃ意味ないですよ!」
「いやいや、俺は当たると不利だからね。こう見えても冷や冷やしながら戦ってるんだよ?」
「ほんとですかぁ?」
 疑いの眼差しで桃李を見るグスターヴァス。相手は、とてもそうとは思えないような余裕の笑みを浮かべている。冷や冷やしているのは自分の方だとセイントは思った。
「本当だって」
 鉄扇が翻る。慌ててメイスでガードしたが、高い威力の知覚攻撃はグスターヴァスのシールドを削った。鉄扇は鱗粉を漂わせながら、もう一閃。旋空連牙か。ネメシスフォースはスキルセット数が多く、他のクラスより手数が増えている。解き途絶える嘘、死霊沼、神速幻舞、旋空連牙と四つのスキルをセットすることができる。
 神速幻舞を使われているとなると、やはり捨身で仕掛けた方が良い。桃李も言っていた。「当たると不利」と。当てられればこっちのものの筈だ。
 改めて捨身を付与する。そうすると、やはり桃李の攻撃で受けるダメージは大きく、シールドはどんどん目減りしていった。ヒール。攻撃。リフレクトウォールが切れたのでもう一度。そうしている間にも、桃李はどんどん攻撃を仕掛けてくる。解き途絶える嘘がまた掛けられ、グスターヴァスは後ずさった。射撃攻撃を持ってくれば良かった。
「どうしたの?」
 桃李が構え直すと、それと同時に鉄扇が空を切る音がグスターヴァスの耳に届いた。グスターヴァスも慌てて構える。狂化で上昇した命中を活かして、踏み込んだ。回避上昇が効いている桃李の動きは素早い。そうすると、グスターヴァスのメイスは彼の着物の裾すら捉えることができなくなる。
「ぐぬぬ」
 彼とて、別に桃李を滅多打ちにしたいとかそう言うわけではないが、桃李から「手加減なしの真剣勝負」と言われていて、桃李もスキルの出し惜しみをせずに使ってくるとなると、自分が桃李の真剣に応えていないと思われるのも不本意だった。とは言え、完全にスキルの選択ミスだ。内心で舌打ちをしながらも、とにかく一撃くらいは当てないと意味がないような気がして打ちかかる。
「ふふ」
 桃李は誘いかけるようにして笑う。グスターヴァスは回復を忘れていた。


 結局、グスターヴァスの完敗だった。自分で手番を消費する変調に頼りすぎた。もののついででグッドステータスを得られるスキルを考えた方が良かった。一度はメイスを当てることに成功したものの、次の瞬間懐に飛び込んできた桃李の一撃でシールドは全損した。気絶して、桃李に起こされる。ぱちりと目を開けると、顔を覆って、
「ぐわー……抜かったなァ……」
「作戦としては悪くなかったと思うよ? 俺が攻撃低下の方だったら、結局捨身で元の数値以上にはなるわけだから、ね?」
 大の字になるグスターヴァスの傍らに座った桃李が笑った。あれだけ動き回ったのに、グスターヴァスより息が上がっていない。こっちはゼーハーしていると言うのに。
「それで……私に何をおねだりしたいんですか?」
 最初に出た条件を思い出す。勝った方が負けた方におねだりできる。桃李は思い出した様に「ああ」と呟くと、
「ちょっと考えようかなぁ」
 悪戯っぽい笑みを浮かべたのであった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
桃李さんがいつも使ってるスキルとグスターヴァスが好き(設定)でよくセットさせているスキルって割と相性が悪いな……と書いてて思いました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年10月20日

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