『いつものまいにち。』

シリューナ・リュクテイア（3785）＆ファルス・ティレイラ（3733）

　かわらぬまいにち、きょうもあしたも。

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　別世界より異空間転移してこの東京に訪れた紫色の翼を持つ竜族である、シリューナ・リュクテイア（3785）とファルス・ティレイラ（3733）の二人。
　人姿を取り人に紛れて人と共に過ごす彼女らの周りでは、日々のちょっとした拍子に、色々な事が起こっていたりする。

　……主に趣味人たるお姉さまことシリューナの“崇高な趣味”と、ティレことティレイラの“好奇心旺盛かつ粗忽な性質”が合わさってのそんな毎日。
　それらの“事柄”はややこしい事になったりちょっと危険な事になったり困ったりする事もままあるけれど。

　喉元過ぎれば大体楽しい。
　そんな感じで、過ぎる毎日。

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　舞台は大体、シリューナの魔法薬屋。それは頼まれたお仕事先でとか買い物でだとか、他の場所に出向いて“そうなる”事もあるけれど。
　彼女達の日常と言えばまず“ここ”になる。
　シリューナは同好の士な知り合いさん達から頼まれて何か仕事をしていたり、同じく趣味人ネットワークで色々興味深かったり綺麗だったりする所蔵品の融通をし合っていたり、それ以外のお店のお仕事をしていたり、といつも色々やる事がある。
　ティレがするのは、そんなお店のお手伝い。
　店番から配達、お掃除と言った辺りがまず日課。途中で気が向けばお姉さまとお茶会になったり、お姉さまの趣味にお付き合いって事になったりもする。
　何か失敗でもしたなら、お仕置きが待っていたりもする。

　……例えば、バックヤードでのお掃除中に。
　見慣れない興味深い物や綺麗な物があったりすれば、ティレイラは大体気になってしまう。初めの内は気にしちゃ駄目駄目と抑制が効いてはいても、その内どうしても気になって来る。そう。ちょっと位なら、って。ついつい、手が伸びて――気が付けば弄ってしまって。当の魔法道具の効果がうっかり発動してしまったり。もしくは――気持ちの方では抑制し切れていたとしても。何かの拍子にお約束とばかりに当の“それ”を何ー故ーかピンポイントで滅茶苦茶に壊してしまったり。
　大体そんな感じになってしまうのが、これもまたいつもの事。何故か何度やっても懲りない。
　そして勿論、そんなこんなを自力で元に戻せたり、隠し遂せる訳も無く。

「うわあああんお姉さまぁごめんなさいい」
「全く。仕方無いわね」

　って感じな事になる。

　シリューナもシリューナで、わざとティレイラが手を出してしまいそうな所に“その手の物”を置いてしまったりする事もある。……ちょっとした悪戯心で、可愛いティレが手を出すのを期待してしまう事もある。
　勿論、そうじゃない場合もあるけれど。

　どちらにしても、結果は大体同じ事になったりする。

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　お仕置き、の内訳。

　それは――大体の場合で封印魔法での“封印”になる。
　で、そこからはお姉さまが“趣味”に走ったりする訳である。封印魔法でティレイラをまるごと美術品と化させて、ティレならではの可愛い造形と、封印魔法ならではの無機質な感触の合わせ技をじっくり鑑賞。めくるめく耽溺。そして普段のクールさが何処かに行ってしまう程の情熱に身を焦がす訳である。
　……そもそもが、失敗の時点で封印魔法が発動してしまっている場合もままあったりする。
　そんな場合は、順番が“逆”になるだけだったりもする。
　ティレイラの方はひたすら嘆いてたり戻して欲しかったり困ってたりするけれど、そこはお仕置きと言う事で大体ほったらかし。
　で、どちらにしてもじっくりゆっくり時間を掛けてお姉さまが堪能してから、漸く解放される事になるのが……やっぱりいつもの事。

　触れた冷たく硬い感触と、滑らかな肌とか髪の造形に、びっくりしたままだったり嘆いてる表情とかで固まってるティレイラの姿に指を伸ばしては、そっと撫でたり、頬を寄せたり。
　艶めかしく感嘆の溜息を吐きつつ、元に戻すのが名残惜しいと思うのも、大体いつも。

　……でもそれでも、お姉さまはちゃんとティレの事を元に戻してくれるのです。
　ティレはくるくる動いているのもとてもとても可愛いので、と言う事で。

　大事な妹の様なものでもある同族で、魔法の弟子でもあるのだし。

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　シリューナもシリューナで、何だかんだで封印魔法の餌食になってしまう事があったりする。

　例えば同好の士の仕掛けた悪戯で。例えば類は友を呼ぶじゃないけれど、同じ趣味の魔族とかが何かして。例えばティレイラの失敗に巻き込まれて。たまに、たまーに、本当にシリューナの不注意や読みの浅さで、そうなってしまう事もあるけれど（でも、そんな時は解決策もすぐに頭に浮かびはするけれど）
　どの場合になったとしても、普段とはちょっと違う成り行きになる。但し、そういう場合は――シリューナはせめて美しく固まろうとポーズを取る余裕位は絶対に作る。何が何でも。そこだけは絶対に譲らない。……趣味人たる矜持である。多分。

　逆に、シリューナが封印されていて、ティレイラの方が封印されてない場合も、これまた極々稀にあったりする。
　そういう場合は――どきどきしながら、ティレイラの方でもシリューナが素材な美術品を恐る恐る鑑賞してしまったりする事がある。慣れないながらも、それでも愉しめるだけの素養はこっそりあったりして。

　結局、シリューナの薫陶を受けているのである。
　つまり、ティレイラもティレイラで、何だかんだで同じ趣味に目覚めていたり。

　となれば。

　結構お互い様なのである。

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　シリューナとティレイラ、二人仲良く封印されてしまったりする事もある。

　ティレイラが何か失敗した時とかの、作用する魔力が大き過ぎたとか、強い魔力持ってると捕らわれ易いとか、趣味人たる彼女達が調達して来たり興味を持ったりする特殊な魔法道具とか、魔法的スポットは、ティレイラよりシリューナにより強く反応したりする場合がある。
　そうすると、流石のシリューナであっても咄嗟には逃れ切れなかったりする訳で――そういう場合は、封印されるのは二人揃ってと言う次第になる訳だ。

　そんな時は、観る者が誰も居ない場合もある。……勿体無いと思われそうな気もするが、それはそれで仕方が無い。そういう場合はシリューナが物凄く悔しがっていたりする場合もある。傍らの可愛いティレの様子を見たりして。そっちを愛でられないのが悔しい、みたいな感じで。
　ちゃっかり魔族とか、素知らぬ貌で同好の士さんとかが、二人が素材の美術品を愉しんでたりする場合もある。
　効果時間の関係で、シリューナとティレイラのどっちかが先に解放される事もある。
　シリューナが先に解放されたなら、お仕置きの時と同じ感じになる。
　ティレイラが先に解放されたなら、やっぱりどきどきと鑑賞に――ついでにちゃっかり魔族とか素知らぬ貌の同好の士さんとかから“もっとやれー”みたいに囃されたりする事もある。

　この辺も結局、いつもと同じである。
　もしその原因が本気で危なそうな魔法道具とか魔法的スポットだったりしたら、何とか安全に使える方法を気合いを入れて思案するのがシリューナにとってはいつもの事である。

　……そして大体、何とかもなってしまうのだ。
　お姉さまは多くの系統の魔法に関する知識に造詣が深く、とても頼れる魔法使いなのである。

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　何事も無く、楽しくお茶会をしていられる場合もある。
　お茶会自体が、何かのごほうびでとかの場合もある。
　……何かお姉さまの気が向いて、ティレに悪戯を仕掛ける為だったりする場合もある。

　お菓子とか、お茶とかにそんな魔法を仕掛けておいて。
　はれ？　とかきょとんとして、何をされてるか気付かなかったり、可愛い姿で少しずつ封印されて、見る見る内に固まっていくその姿。
　そうなる過程を見るのもまた、シリューナの趣味には含まれていたりもする。
　固まりつつある中、本人が気付いてあたふたする時もある。
　お姉さまあ、と助けを呼ぶ姿がまた堪らなくって……なんて。
　鑑賞しながら、お茶会を続ける。

　直接触れて愛でるだけじゃなくて、お茶会に相応しいオブジェを見たいとか、そんな理由でほんわかと愉しまれてしまったりする場合もある。

　……美術品となれば鑑賞方法は色々である。

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　魔法の修行中に、色々と起きる事もある。

　魔法の弟子であるティレイラが得意なのは火の魔法で、それ以外は要修行。全般として、制御が上手く行かない感じになり易い。出力の問題もある。そして何より、本人の性質、属性も関係する。それら諸々含めて、ティレイラは火の魔法ならまぁ自信を持って扱える、って感じなのである。
　例えば本性の――紫の翼を持つ竜姿でも、攻撃する時とか、火を吐いたりするし。

　これで何かが起きる場合は、修行場所が魔力的に不安定なその手のスポットだったりって事が多いかもしれない。
　もしくは――制御の修行用に何か魔法道具を使ってみたりして。「魔力が上手く制御出来てないと封印されちゃうよ？」って作用になる道具なら、シリューナの手元になら元々自然と集まってたりもする。

　それで、制御失敗＝封印、オブジェ化、の流れ。

　……趣味と実益を兼ねられる魔法道具は、趣味人たるシリューナにとってはかなりおいしい。

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　竜姿。それでオブジェに封印されてしまう事もままある。
　お仕置きででも、お姉さまの趣味にお付き合いででも、何かの失敗の結果ででも。
　他人から見るなら全然違って見えるのかもしれない。でも、シリューナにしてみれば、人姿でも竜姿でもどちらでもティレイラは等しく可愛らしい。力強い巨体や、尖った鼻先や、爪や、牙や、目や。翼に。尻尾。全部。
　それは造形自体は全く異なるけれど、内面から滲み出る仕草やら動き方やらは本人でしかなく、どうしたって可愛いティレでしかないのだ。
　ティレイラは人姿に角と尻尾と翼一対だけを生やした半人半竜の姿で活動する事も少なくない。勿論その姿も可愛らしく、これまた同じ様な流れで封印、って事もままあったりする。

　一粒で三度おいしい。と言っては語弊があるか。

　いやそもそも。

　一粒で三度どころじゃない。様々な魔法道具や魔法的スポットに状況次第で、封印される度にティレイラは違った姿を見せる。その時々で全部がおいしい。

　シリューナにしてみれば、そうなのだ。

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　よくよく考えてみれば、お仕置きや失敗の結果がオブジェなどと言った美術品化になるとも限らない。

　魔法のガムみたいな物でべたべたに閉じ込められてしまったり、シャボン玉の中に閉じ込められてしまってボールの様に遊ばれてしまったりと、それこそ罰ゲームみたいな色々な目にあってしまう事もティレイラはそれなりにあったりする。

　そういう場合は、造形を鑑賞すると言うより、反応を愛でると言った方が正しいかもしれない。
　固められている訳でも無い以上、遣り方次第で自力でも抜けられる可能性はあると判断出来るので。
　寧ろ師匠として修行を見守る心持ちにもなったりする。

「えええええー、助けて下さいお姉さまあああ！！」
「ティレ。少し落ち着きなさいな」

　落ち着いて、魔力の制御。
　……それだけで何とかなる。って場合の方が、実は結構多い。けれどティレイラは、まぁまるで御約束の様に、その事に気付かない。あーでもないこーでもないと色々試して、でも結局如何とも仕様が無くて――そのままで。
　溜息吐いたお姉さまに玩ばれてしまう訳である。
　……ボールだったらそれこそドリブルでもするかの様に毬つきの要領で弾ませてみたり、ガムでべったりの時はただじーっと生温かい目で意味ありげに見守ってみたり。

　まぁそれもそれで、目に映る姿も聞こえる声も、ちゃんと可愛いかったりはするのである。

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　ひんやりと硬かったり、ざらついていたり、金属質だったり、ガラス質だったり、そういうオブジェ系美術品の素材として使いそうな“物”は何だかんだで数多潜り抜けて来た。魔法での封印の結果でもあるから、それら真っ当？な感触を超越した異次元の感触とか、そういう“売り”な時もあった。

　それらの造形がティレイラであるだけで、シリューナは大変満足なのである。

　機会があれば。事ある毎に。
　そんな大満足出来る可愛い姿を愛でては、名残惜しいながらもまた日常に戻り、元気なティレを見る。

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　そんなこんなで、いつものまいにち。
　たぶんきっと、これからも。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

　紫の翼を持つ竜族の御二人には、最後まで発注有難う御座いました。
　そして結局最後までお待たせしております。

　内容ですが……お任せ頂いた結果、何となく最終回的に日常ダイジェストとなりました。
　もっと具体的な方が良かったとしたら申し訳無く！

　如何だったでしょうか。
　少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

　改めまして、御二人にはこれまで沢山御世話になりました。有難う御座いました。
　実はこれで東京怪談自体の納品も最後となるので名残惜しい所だったりもしますが、もしまた何処か別の場所でまたの機会が頂ける時がありましたら、その時はと書いておく事にしてここは失礼致します。では、また。

　深海残月　拝

東京怪談ノベル(パーティ)

深海残月

東京怪談

2020年10月28日