イラストコンバート第二弾 ハイブリッドヘブン スタート!

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『GLARE〜あるいは豪雨下の邂逅〜』
霜月 愁la0034

 私と組まないか。
 霜月 愁(la0034)を呼び出した敵方の男は、そんな信じがたい提案を口にした。
 ただ1人このコウル(lz0125)というエルゴマンサーに対峙しながら、愁は即座に「断る」と返事を返した。
「今まで散々ライセンサーと戦ってきた奴の発言とは思えないな。僕が頷くとでも思っているのか?」
 愁は静かにハンドキャノンの銃身を上げた。
 彼方に何らかの攻撃の兆しがあれば、すぐにでも引き金を引ける用意があり、傍らには浮遊ビットが控えている。
 コウルはサングラスの下から愁をじっと見つめ、ふむ、と僅かに首を傾けた。
「食うだけの生き物と思われるのが癪だからだろうな、端的に言って」
 白く生気のない両手で漆黒のトンファーブレードを弄びながら、コウルはどんよりとした空を仰ぐ。
 革製の黒いロングコートを羽織ったコウルは、崩れかけた鉄筋コンクリート造の建物の屋上に立っている。
 その姿はさながら、廃屋の頂に止まった一羽のカラスのように見えた。
「三大欲求に絡まぬ目的の創造やあらゆる好奇心の昇華……それらを織りなし今がある知的な生き物。君達を食料としかみなさぬ輩とは私は距離を置いてきたつもりだ。これでも、この星に存在する人間という生き物に尊敬の念を抱いているのだよ」
「お前の言っているのは、ただの詭弁だ」
 愁はコウルを鋭く睨んだ。
「今まで何人の人の命を弄んだ? お前の目的のために、どれだけ容易く人の人生を、幸せを壊した? コウル、お前は他のナイトメアと何も変わらない」
 僕の両親を殺したあのナイトメアとも。
 そんな思いが愁の言葉に含まれていた。
「残念だな。まぁ、分かってはいた事だが」
 コウルの低い笑い声が周囲に響く。
 愁の態度から、自分の提案が受け入れられる可能性がないと理解したようだった。
 コウルは半身後ろに引き、トンファーブレードを構えた。
 大粒の雨音が周囲に響き始めた。
 切れかけの街灯の明かりに、コウルが僅かに口角を上げるのが見えた。
「君、すなわち『霜月愁そのもの』をこちら側に引き入れる事はあきらめざるを得ないようだ……ならば」
 黒い刀身がギラリと光った。
 鋭い殺気を感じ、愁はとっさにコウルに向けて引き金を引いた。
 だが愁が銃弾を発射した感触を体に感じた瞬間、雨の中にギインという何かをはじき返す音と、激しい光が広がった。
「今夜は激しい雷雨になりそうだ」
「……!」
 コウルのトンファーブレードはバチバチと電流を帯びていた。
 一瞬にして懐に飛び込まれた愁は、切りつけられた瞬間、痛みと共に強い痺れを感じた。
 激しい落雷音とグレアが周囲へと広がる。
 もし一般人や経験の乏しいライセンサーであれば、あるいは一撃で体を真っ二つにされていたかもしれない。
 だが愁のシールドはその焼き切るような攻撃からわが身を守った。
 さらに浮遊ビットが即座にエネルギーの刃を吐き出す。
 刃はコウルの顔面に向けて弾き出され、彼のサングラスを跳ね飛ばした。
「ははっ……! これはこれは!」
 真っ白な額に一筋の血が伝う。
 コウルは一瞬よろめくも、すぐに体勢を立て直し、背後に大きく飛んで愁との距離を取った。
 激しくなる雨の中、黒いコートが並び立つ建物から建物へと移っていくのが見えた。
 愁は呼吸を整えると、エナジースピア「フォルモーント」を手にコウルの後を追う。
(傷は大したことはない……だけど多分、それは向こうも同じ)
 コウルが欲しているのは愁の肉体だ。
 特別な力を持つライセンサーを造り替え、自らの手下に取り込む術をコウルは持っているのかもしれない。
(ここで戦わなければ、狩られる)
 闇を隠れ蓑に、コウルは再び自分に向かってくるだろう。
 もし自分が逃亡の意思を見せれば、コウルは即座に背後を狙ってくるに違いない。
 愁はそんな予感を覚えつつ、生命の風で自分の周囲を包んだ。
(生きてここから戻る。あいつの思惑通りにはならない)
 そんな愁の決意が形を成し、春を思わせる柔らかい光と風となって愁の結界を強くする。
 古びた電光看板の光にその姿が見えた瞬間、コウルは再び愁との距離を詰めてきた。
(来る……!)
 踏みしめた愁の足元に、激しく雨水が跳ね上がった。
 暗がりにコウルの姿が見えた瞬間、愁はコウルの周囲に強力な紫の雷を落とした。
 疾り貫く紫は広範囲に影響を及ぼすその雷撃を以ってコウルを捕らえたかに見えた。
 だが被雷した瞬間、コウルはコートを脱ぎ棄て、空蝉を残して空中へと回避した。
「さてそろそろ……本気を出すとしようか!」
 愁は真上の空が激しく青い光を帯びるのを見た。
 そして同時に、頭上から叩きつけるような衝撃によって浮遊ビットが砕け散った。
(攻撃が、空から……?!)
 幸い生命の風による愁の守りは解けておらず、被雷の衝撃は最低限に抑えられたようだ。
 コウルは向かいの建物の上に降り立ち、トンファーを構えなおす。
 上空の空には何らかの方法で滞留させたコウルの力が渦巻いて光っていた。
(単身でエルゴマンサーに勝てるなんて……最初から思ってない。だけど)
 愁は再び近づいてくるコウルの姿に覚悟を決めた。
 真っ黒な刃が翻り、愁に切りつける。
 いや、切られたのではなく、それは突き立てられた感覚だった。
 強烈な一撃に、愁は大きくバランスを崩す。
 だがその間に愁は冷静に思考を切り替えていた。
 真上にはコウルの力がエネルギーの光球となって渦巻いている。
 愁が判断を誤れば即座に雷が落ちてくるに違いない。
 だが――。
(さっきのはもう、食らわない!)
 コウルが愁に再び天からの攻撃を加えんとした瞬間、愁が先に動いた。
 炎の纏った槍が唸りを上げ、コウルの体を貫く。
「くっ……! ぬかったか……!」
 短いうめき声を発し、炎月の炎に巻かれたコウルが背後へと飛び退いた。
 ダメージを与えられたことにより、集中が削がれたのかもしれない。
 上空の空が再び暗くなり、冷たい風が吹き下ろした。
(コウルの攻撃は止めた……だけど)
 愁は自分の体に、コウルの手放したトンファーブレードが刺さったままなのに気づいた。
 極度の緊張状態のためか、不思議と痛みは感じず、ただひどく熱い感覚があった。
 だが意識がぼんやりとする感覚と足元のふらつきが、自分が多量に出血しているのを伝えていた。
「生き物というのは獲物を捕らえる瞬間に、一番無防備になるらしいね。ついカッとなって、悪い手を打ってしまった」
 コウルが大きくため息をつくのが聞こえた。
 彼は片方だけになったトンファーブレードを手に、肩をすくめて見せた。
「私も今、本調子ではない。今日のところは退散させてもらうよ。それにその刃を無理に引き抜いては、君を死なせてしまうだろう。それでは私にとっても都合が悪い」
「あ……」
「あいにく人望がなくて、医学知識を持った仲間がいないんだ。人間の医師に、次会う時まで君を生かしておいてもらうとしよう」
 コウルはそう口にすると、暗闇の向こうに姿を消した。
 
 何時間もの手術を経て、愁は一命を取り留めた。
 愁の傷から摘出された黒い刃はナイトメアの生体組織の一部でできており、翌日には溶けて消えてしまった。
(あいつは僕を、生かして捕らえると言った)
 コウルの意図は分からないが、いずれ再び戦う日が来るのは確実だろう。
 その予感を胸に、愁は病院着からSALFの制服に着替えたのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございました、九里原十三里です。
コウル(lz0125)との戦い、という事で、過去のシナリオにもあった雨の中での戦いにさせていただきました。

ライセンサーとは決着がつかないまま殺されてしまい、シナリオではこんなに本格的に戦わなかったエルゴマンサーなのですが、実際に一対一で戦うとこんな感じだったかと思います。
改めまして、この度はご依頼いただきましてありがとうございました。
どうぞ最後までグロリアスドライヴをお楽しみくださいませ!

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グロリアスドライヴ
2020年11月13日

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