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『アルト・ハーニーの不思議な夢』
アルト・ハーニーla3899

「……」
 街中で歩く人を眺めている埴輪、それこそがアルト・ハーニー(la3899)だ。埴輪愛を広めるため、まだ埴輪を知らない人、埴輪に詳しくない人などに伝え歩いている。
 しかし、まだアルトが求めるほどの普及率には至っていない。
(なにが悪いんだ?)
 街中で歩く人を見つめながら考えるけれど、アルトはこれまで自分の普及の仕方のなにが悪かったのか思い当たることはなかった。
(生きた埴輪に会いたいと思っているが、まだいまだに会えていないな)
 ある意味ではアルトこそが生きた埴輪のような気がしなくもないが、彼はこっそりため息をつく。
(ん?)
 家に戻ろうとした時、自分の足が動かないことに気づいた。
(声も、出ない?)
 敵の攻撃か、と思ったが付近を見てもそれらしき者はいない。不思議に思いながらも視線だけを足元に向けてみると、自分の足が地面にくっついてることに気づいた。
(ん? あれ? これって、俺が埴輪そのものになってしまった?)
 アルトは慌てて埴輪の着ぐるみを脱ごうとしたが、身体自体が動かないためどうすることもできない。
(ちょっと待て、本当に待て、これ本気で俺が埴輪になっているのか!?)
 生きた埴輪を見たいという夢はあったが「埴輪になりたい」わけではない。
 さすがにこのままだと日常生活にも差しさわりが出てくるので、なんとかして動こうとするが身体は動かない。いつの間にか雨も降って来ていて、身体にたたきつける雨の冷たさだけを感じていた。
(どういうことだ? 敵の攻撃を受けた感覚はない、いつの間にか身体が埴輪になっていた……?)
 埴輪になっているせいで表情の変化は分からないが、アルトは内心かなり焦っていた。
「あれ、こんなところに埴輪があるぜ?」
「本当だ。なんだ、これ。こんなもの今まであったか?」
 あまりガラがよろしくない男性たちが現れ、アルトはどうしたものかと考える。考えたところで身体が動かないのだからどうすることもできない。
 いや、アルトが不安視していることは身体が動かないことではなかった。
(今は埴輪になっているんだから、攻撃されると割れる……?)
 埴輪である自分が割れてしまったら、果たしてどうなるのかという不安を抱えていた。
(心臓があるわけじゃないから、割れたところで死ぬことはない? それとも割れると死ぬ?)
 埴輪のことを愛してはいたが、自分が埴輪になったことはなかった。
 だからこそ、余計にさまざまなことが脳裏をよぎってしまうのだろう。
「ちょうどむしゃくしゃしていたし、これでも叩き割ってすっきりしてやろうぜ!」
 ガシャンッ!
 アルトは蹴りを入れられてしまい、足部分にヒビが入ってしまう。
「それいいな。ちょうどなにかぶっ飛ばしてぇって思っていたし!」
(待て待て待て! そんな簡単に埴輪を壊そうとするな! この愛らしい姿に心を奪われんのか!)
 アルトは心の中で叫ぶけれど、その言葉がゴロツキたちに届くことはなかった。
(割れる―――――ッ!?)

 ガシャンッ!


「わああっ!?」
 目が覚めると、いつもの見慣れた天井だった。
(夢? あんな、リアルなものが夢……?)
 アルトは夢であったことに安堵しながら自分の足を見て驚いた。
「これは、ヒビ?」
 見覚えのないヒビ。
 埴輪を愛するアルトが自分自身に傷を入れるなどあるはずもない。
(これは、夢の中と同じ場所にある)
 偶然なのか、夢の中でゴロツキに蹴られたところと同じ場所にヒビがあった。
「……夢、だよな?」
 アルトが小さく呟くが、その言葉に応えるものはいない。
 ひゅう。
 まるでアルトが感じた不気味さを増長するように冷たい隙間風が吹いた。
(気にしないようにしよう、気にしてはダメな気がする)
 心の中でそう考えながら、アルトはいつも通りの日常に戻っていく。
 どこかで楽しそうに見つめる視線に気づかないまま――。


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
初めまして。
今回書かせて頂いた水貴透子です。
体調不良により遅延してしまい申し訳ございませんでした。

今回の内容はいかがだったでしょうか?
おまかせということで、いろいろなパターンを考えていたのですが今回のものを納品させて頂きました。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

水貴透子
おまかせノベル -
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グロリアスドライヴ
2020年11月30日

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