イラストコンバート第二弾 ハイブリッドヘブン スタート!

▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『それでも世界は回るのだから』
ネムリアス=レスティングスla1966

 倒れたという自覚もないネムリアス=レスティングス(la1966)は、激痛の中千切れる意識を無理矢理繋ぎ止めようと苦戦していた。
 思考にノイズが走り、何も考えられない。

 頭に火箸でも突っ込まれているような焼けつく痛みは、燃えているからだ、と感じた。
 体の中が熱い。
 記憶が燃えていく。己の自我が徐々に崩れていく。
 何のために自分が生まれたのか。
 なぜ戦っていたのか。誰に影響を受けたのか。
 何を思い、悲しみ、憎しみを抱いて生きて来たのか。
 こちらの世界へ転移してから束の間、ヒーローになろうと、誰かを救うために戦おうとしていたこと。
 これまで犠牲にしてきた色々なもの。
 何度も死闘を繰り広げた敵や数々の戦い、この世界での出来事が。

 今の自分を形作った要素の一つ一つが燃えて、灰になって崩れていく。

 これは代償だ。
 奴を倒すために払った、力の代償。
 覚悟はしていた。
 承知の上で、最後の力を使うことを選んだ。
 だから此処で止まる訳にはいかない。
 まだ、力が必要なのだから。

 頭の中を燃やしつつ、よろよろとネムリアスは立ち上がった。
 とっくに限界など超えていて、体は傷付いていない所などなく、黒いコートもあちこち裂けてほぼボロ布となってしまった。装備の装甲もヒビが入り欠けたりしており、本来なら要修理の有様。
 それでも、今のネムリアスを突き動かしているものはただ一つ。

 己の役目を果たすまでは、倒れられないという意志。

 一歩、また一歩と足を不穏な音を上げ続ける衛星軌道砲へ踏み出す。
 既に痛覚はなくなっていた。
 感覚もない。
 今まで視界等の感覚を補っていた仮面の機能も壊れてしまったのか、もう目も見えず、音も聞こえない。
「それでも……!!」
 力を振り絞りネムリアスは歩を進め。
 軌道砲があるはずの方向へ、残った腕の拳を振りかざす。
 その時、一瞬脳裏をよぎったもの――走馬灯だろうか――が、ネムリアスの動きを止めた。

 見覚えのある誰かの顔。
 その人物は、ネムリアスが一人で戦い続けているのを悲しんでいたような気がした。
 でも――。
 誰かが悲しむと知っていてなお、ネムリアスは己の生き方を変えなかった。
 誰かを苦しめたかった訳じゃない。だけど、これまで犠牲にしてきたもののことを考えれば、自分の心が訴え続けることを無視できず、こんな結末しか選べなかった。
「俺は愚か者だ……」
 愚かだったとは思うが、後悔はしていない。
「だからこそ、最後までやり遂げるべきなんだ」
 ともすれば萎えてしまいそうな心をもう一度奮い立たせて、ネムリアスは拳に力を込める。
 悲しんでいたはずの誰かを守るために。

 ――その『誰か』とは、どんな顔だった――?

 ネムリアスはもう、誰の顔も思い出せなくなっていた。
 それどころか、自分の名前も、自分が何者だったのかさえも分からない。
 脳裏をよぎったものが走馬灯だったのだとしても、今のネムリアスにはもはや思い返せるような思い出の一欠片も残っておらず。

「それでも、俺は――!!」

 ネムリアスは叫んだ。
 自分が何者だったのか、どんな過去があったのか分からなくなろうとも。
 きっと、もうそれらは必要ない。
 目の前のモノを破壊できればそれでいい。ソレを破壊する術が分かっていればそれでいい。
 ボッとネムリアスの体から蒼焔が噴き上がる。まるで消えかけたロウソクが最後に激しく燃えるように。
 壊れかけの義手のブースターを作動させ、ネムリアスは片翼で飛翔した!

 音も聞こえず目が見えなくても、軌道砲が発する強力なエネルギーは分かった。
 空中でどうにかバランスを取りながら、拳に全てを注ぎ込む。
 記憶も自我もない今の自分に残ったものは、もうこの尽きかけの命しかない。
 それを使ってしまえば己がどうなるか、それくらいはボロボロのネムリアスでも十分すぎるほど解っていた。
 その結果が訪れても。
「大丈夫だ。それでも世界は回るのだから」
 つぶやくネムリアスの仮面の下の素顔は、むしろ清々しいほど穏やかで。

 己の命の灯を最後の力に変える。
「これが、俺の全てを込めた一撃だ!」

 ネムリアスはブースターを全開にして軌道砲へと突っ込んで行く!
 その体を蒼い焔の塊と化し、宇宙駆ける一筋の流星のごとく、一直線に天を駆け抜けた。
 今の彼を見た者がいたら、まさに隕石が落ちたかと思っただろう。

 それはネムリアスの命そのもの。

 蒼き流星は、猛烈な勢いで軌道砲に最後の一撃を叩き込んだ!
 その瞬間、地球のどこかで発生した眩い光が、地平の彼方まで走り抜けた。


 後日――。
 とある海域で大規模な爆発のあったことが確認された。
 跡地には破損した巨大な何かの機械の残骸も発見されたが、世間では『大きな爆発だったにもかかわらず、特に深刻な人的被害はなかった』と報道されただけだった。
 誰が何のために爆破したのか謎は残るものの、以後に爆発と繋がるような何かがなかったため、事件はそれ以上誰かの興味を引くこともなく、すぐに世界から忘れ去られた……。
 こうして、全てが終わった。

 本当はそこで何があったのか、SALFの人間ですら真実を知る由もなく。
 ひっそりとネムリアスはSALFから、そしてこの世界から消えた。

 ネムリアスの行方を知る者は、誰もいない――。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご注文ありがとうございます!

今回は壮絶なネムリアスさんの戦いの人生にも終止符が……という内容ですが、私もネムリアスさんのように今までのことをありったけ込めて書かせていただきました。
ご満足いただけ、また気に入っていただけたなら本当に嬉しく思います。

どこか「ここは削って欲しい」とか「この描写は違う」等、ご不満な部分がありましたら、些細なことでも構いませんので、お手数ですがリテイクをお申し付けください。

またご縁がありましたら幸いです。
シングルノベル この商品を注文する
久遠由純 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年12月02日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.