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『幽霊屋敷』
桃李la3954


「ええっ!? 屋内テーマパークにナイトメアが出現、お化け屋敷に逃げ込んじゃってさあ大変ですってー!?」
 説明的な悲鳴を上げるグスターヴァス(lz0124)の声を聞いて、桃李(la3954)はくくっと喉を鳴らした。
「そんなに説明してくれなくても、聞こえてるよ」
「良いのよ、桃李。こいつツッコミ待ちなんだから、下手に構うと図に乗るわよ」
 手厳しく言ったのは、オペレーターのパメラ・ハーロウである。彼女はグスターヴァスを一睨みすると、話を続けた。
「まあ、そう言うことよ。既に避難は済んでて、封鎖もされている。同じ建物を使っている企業の職員も全て退避済み。保険には入ってるみたいだから、安心して暴れて良いわよ」
「狂化……威圧……フフッ」
 独り言を呟きながら、含み笑いをするグスターヴァスをスルーするパメラ。
「わかったよパメラちゃん。そのナイトメアを討伐してくれば良いんだね?」
「うん。お願いよ。ついでにグスターヴァスの監視もお願い」
「監視だなんてそんな。自分の面倒くらい自分で見られますって」
 胸を張るグスターヴァス。パメラは視線だけで桃李に「ね?」と言って見せる。桃李は微笑みだけでそれに応えた。


 屋内テーマパークは、電気が煌々と点いていて、BGMも流れていた。土産物ショップでは、避難する際に落とされたらしいぬいぐるみが転がっている。棚のそれらは素知らぬふりだ。置いて行かれたような寂寥感がある。
 そんなものを横目で見ながら、二人は入場無料で入り込み、件のお化け屋敷の前に立った。
「刺激に弱い方はご遠慮下さい、って書いてありますけど」
「グスターヴァスくん、刺激に弱いのかい?」
「全然弱くありません。桃李さんは?」
「俺も弱くはないかな」
 くすりと笑うと、二人は連れ立って入って行った。

 このお化け屋敷も、BGMは切り忘れたらしい。入るなり、甲高い悲鳴の様な笑い声が二人を出迎えた。
「ひょっ」
 グスターヴァスは頓狂な悲鳴を上げると、桃李の後ろに隠れた。
「怖いのかい?」
 くすくすと笑いながら桃李は尋ねる。彼はふるふると首を横に振り、
「突然でびっくりしただけです。大丈夫ですよ。何か出ても私が守ってあげますからね……」
 後ろに隠れながら言っても説得力がないのだが。桃李はわざわざそんなことは指摘せず、グスターヴァスをそのまま後ろに立たせて先へと進んだ。
 日本の墓地をモチーフにしたようなエリアでは、墓の裏から髪の毛を振り乱した女の上半身を模した人形が「ヒャハー!」と叫びながら飛び出して来る。
「ぎゃーっ!」
 グスターヴァスが桃李の後ろで絶叫した。
「やっぱり、お化け怖いの?」
「突然でびっくりしただけですよ! 事前に言って欲しい……」
 ぶつくさ言いながら、グスターヴァスは桃李の肩を握りしめた。なんだ、割と刺激には弱いんじゃないか……? と思いつつ、桃李は提案する。
「じゃあ、こうしようよ。ナイトメアが出てきたら合図するから、グスターヴァスくんは目をつぶっていれば良いじゃない」
「あ、危なくないですか?」
「びっくりしたグスターヴァスくんが転んで、一緒に倒れる方が危険」
「うっ」
 もっともな指摘をされて、グスターヴァスは従った。固く目を閉じ、桃李が差し出した腕を抱きしめてそろそろと歩く。BGMに入っている、定期的に聞こえる悲鳴の効果音にもいちいち反応するその姿が面白くて、桃李は周囲を警戒しながらも、グスターヴァスの姿も飽きずに見ていた。


 墓場の次は病院風のエリアだった。ストレッチャーの下から、手が這い出してくる。なんだか妙に感じた桃李は立ち止まった。
「ひっ! な、何ですか!?」
 急なブレーキに戸惑ったグスターヴァスが叫ぶ。そのタイミングで、返事をするように遠くでギミックが作動。「ヒョーーオウ!」と言う声が聞こえて、グスターヴァスは怯えた。
「グスターヴァスくん、ナイトメアがお出ましだよ」
 桃李は鞭を取り出した。ストレッチャーの影から出てきたのは、手であるく魚の頭だ。ぎょろりとこちらを見ている。
 不意にグスターヴァスが静かになった。桃李から手を離している。まさか、気絶でもしたんじゃなかろうかと、後ろを振り返った。
 目に光のない、背の高い男が、ナイフを持って真顔で立っている。桃李でなければ、殺されるのは自分ではないかと思うくらいの変わりようだった。どうやら狂化を発動しているらしい。
「ふふ、グスターヴァスくんも、やる気だねぇ」
「相手が超小型なら、長引くほど逃走を許す可能性が高くなります。ここで仕留めましょう」
「勿論……そのつもりさ」
 桃李は鞭を振るった。ひゅおん、と長く柔らかな物を振るった時特有の、耳に残る奇妙な音がする。それをストレッチャーの脚部分に巻き付けて、引き倒した。けたたましい音がする。ナイトメアは背後から攻撃されると思って身構えた。
 グスターヴァスが迫った。素早く切っ先を繰り出す。移動に使う指先を狙った。桃李はストレッチャーから鞭を解くと、相手が飛び退ったタイミングで背後の床に打ち付ける。
「グスターヴァスくん」
 桃李が声を掛けると、グスターヴァスは了解した。桃李の脇を通って、鞭に驚いたナイトメアにナイフを突き刺した。


「イヤーッ!」
 その後も、ナイトメアがいないか確認しながら、二人はお化け屋敷を見て回った。戦闘が終わると、グスターヴァスはすっかり元通りになり、桃李にしがみつきながら歩いている。
「ナイトメアは全然平気だったじゃないか」
「ナイトメアはそこにいましたから! こういう、突然飛び出して来るのは嫌です。ギョエッ!」
「ふふ」
 桃李は笑いながらゆったりと歩く。やがて、お化け屋敷は終わりに差し掛かった。
「ひえ〜助かった〜」
 グスターヴァスは出口の光が見えるや、ほっとした様子で桃李を置いて足早にそちらに向かった……が……。
「ヒェーイ!!!!」
 最後の一体が、突然天井から上半身を逆さに登場して、グスターヴァスの目の前に現れる。
「ギィヤーッ!!!!!」
 グスターヴァスの絶叫は、外にまで聞こえ、待機していたスタッフはライセンサーが死んだと思ったとか思わなかったとか。
 とにもかくにも、任務は無事に終了。桃李は抜け殻のようになったグスターヴァスを連れて、SALFに帰還したのであった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
この前のおまかせも遊園地だった気がするんですけど、なんとなく桃李さんはアトラクションで遊びながら戦っているのが映える気がします。
グスターヴァスは実際幽霊怖いのかどうかはわかりませんが、割と理不尽な目に遭うのは嫌いそうだなと思いました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
おまかせノベル -
三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年12月08日

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