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『DOCK』
暁 大和la3248

 下手な動きを見せれば即座に殺し合いになる。
 暁 大和(la3248)はそんな空気を感じていた。
 ライセンサー達の目の前にはカモッラと呼ばれる非合法組織のボスが座っており、その周囲を強面の男たちが固めている。
 大和は男たちの服の下に銃があるのを悟っていた。
(さっきから話は平行線だ。だが、このままこちらが下がらなければ、相手がブチ切れるのは時間の問題だな)
 昔から政府に反発する傾向の強いこの地域ではカモッラが事実上の自治を強いており、すべての事において彼らの決定が全てとなっている。
 ライセンサー達も今回の任務に当たり、SALFからまず彼らのボスに会いナイトメアの捜索について交渉するように命じられていた。

 南イタリアの外れにあるこの場所には、とある強力なナイトメアが潜んでいる疑いがあった。
 そしてカモッラのメンバーにもまた、ナイトメアに加担するレヴェルではないかという疑いがかけられていた。
(まぁ、もし銃を抜けば、こちらも黙っていないだろうという事は向こうも分かっているのだろうが)
 大和に同行したライセンサー達は、できれば穏便に事を済ませたいと思っているようだった。
 相手がただの非合法組織であれば、取り締まるのはライセンサーの仕事ではないからだ。
「分かった。じゃあ、こうしよう。我々はSALFの要望を受け入れ、ライセンサーが街に入って調査を行うのを許可する」
 カモッラのボスは暫く黙った後、突然そう口にした。
 だが大和の方に視線を向けると、こう言い放った。
「ただし、全員を通すわけにはいかない。許可するのはヤマト、君1人だけだ」

 ボスが大和を指名した理由は分からなかったが、ライセンサー達はひとまず、カモッラとの交渉をこれで決着する事にした。
 話し合いが夕方まで及んでいたため、ひとまず大和は波止場近くにあるボスの屋敷に泊まり、明日の朝から調査を始める事にした。
「この屋敷の敷地から外には出ないでくれ。明日の朝からの調査には私の部下が同行しよう」
 ボスはそう、大和に言った。
 大和はSALFからの指示通り、ナイトメアの調査を妨害しない限りはその要求に従うと答えた。
「だが1つだけ教えて欲しい。何故、俺を指名した?」
「君は、本来は言葉よりも拳で語り合いたいタイプだろう」
 そう言ってボスは笑った。
「私もそのクチでね。一緒に仕事をするなら肌に合う相手を選びたかっただけさ」
 
 大和は来客用の部屋を宛がわれ、一晩を過ごすこととなった。
 しかし真夜中、大和は窓から差し込んだ強い光で目を覚ました。
(一体なんだ?)
 カーテンを開けると、外には船着き場が見えていた。
 この屋敷の裏からすぐに海に出られるようになっているらしい。
 見ると、カモッラの男達数人が巨大な木箱を荷車で運び、船に乗せようとしていた。
 大和を起こしたのは、その船の明かりだった。
(どうも怪しいな)
 直感的に大和はそう思った。
 だがドアの外には見張りがおり、大和が勝手に出歩かないように監視されている。
 そこで大和は屋根伝いに外へ出て、男達が何をしているのかを確かめることにした。

「ボスは?」
「女と部屋にいる。今のうちだ、急げ!」
 大和が倉庫の屋根の上から様子を伺うと、そんな会話が聞こえてきた。
 荷物を朝までにどこかの港へ届け、そこからトラックで北部へ運ぶ算段のようだ。
 ボスに内緒で事を運ぼうとしているのは明らかだった。
「クソっ、何でこのタイミングでSALFが来るんだ! ボスが何か感づいたんじゃねえのか?!」
 そんな声が聞こえてくる。
 これはクロだな。
 大和はそう思い、武器を手に屋根を飛び降りた。
「そこまでだ。話は聞かせてもらった」
 男達の前に立ちはだかるようにしながら、大和はそう言い放った。
「どうやらSALFが調査すべき案件のようだな。箱の中のものを見せてもらおうか」

 カモッラの男達は大和の姿に激しく動揺を見せた。
 そしていきなり大和に銃を向けると、「ぶち殺せ!!」と叫んで引き金を引いた。
(やはりこうなったか)
 大和は素早く木箱の陰に身を隠した。
 応戦する用意はあるが、できれば武器は使いたくなかった。
(レヴェルなのは明らかだが、まずは話を聞かねばな)
 隙を突いて飛び掛かり、動きを封じるべきか。
 しかしそう、大和が思った時だった。
 一発の流れ弾が木箱を固定するロープに当たった。
 そしてロープが切れた途端、木箱が荷車から滑り落ちたのである。

(なんだ、あれは?)
 地面に落下した木箱はバラバラになり、そこから飛び出したのは3mはあろうかという巨大な卵だった。
 卵は地面に落下した衝撃でひび割れ、中からは液体が溢れ出した。
(動いている? まさか、孵化するのか)
 大和は卵が動き、そして殻が割れるのを見た。
 カモッラの男達の悲鳴のような声が響く。
 卵から現れたのは、真っ赤なトカゲのような形態をした巨大なナイトメアの幼体だった。
「まずい! 離れろ!!」
 誰かがそう叫んだ。
 ナイトメアは自分の近くに人間のいる気配を感じ取ると、突然その口から青い炎を吐き出したのだ。

(間違いないな。これは、例のナイトメアの子供だ)
 大和は武器を手にし、その場から飛び出した。
 この地に潜むナイトメアについて、既に2つの性質が明らかになっていた。
 1つは死ぬ前に大きな卵を1つ残すこと。
 そしてもう1つは、孵化した幼体は生まれてすぐに「狩り」を始めるということだった。
(どうやらカモッラの男達はボスに黙って商材としてこのナイトメアの幼体を売買しようとしていたようだが、それを阻止できたのがせめてもの救いだな!)
 大和はロードリーオーラを放ちながら、ナイトメアの前に躍り出た。
 ナイトメアは大和に気づき、その首をこちらに向ける。
 ショットガン「NEXUS」を手にした大和は、そのまま相手に向けて引き金を引いた。

(もしこれが成体ならば、俺1人ではとても太刀打ちできなかったはずだ。悪いがここで、成長を終わりにさせてもらおう)
 けたたましい銃撃音が響き、ナイトメアは悲鳴を上げた。
 だが怒ったように咆哮すると、再び真っ青な炎を吐き出した。
(おっと、そうくるか)
 大和はジャイアントシールドを構え、炎を防ぐ。
 するとナイトメアは地面を蹴って高くジャンプし、大和に飛び掛かって来た。
(くっ……生まれたばかりでこの動きか!)
 素早く身をかわすと、大和は盾を捨て、台車の下へと転がり込んだ。
 そして武器をデザイアアックスに持ち替えた。

(ここまで近づかれたら、このほうが効率はよさそうだ!)
 大和は銃を捨て、ナイトメアとは反対側へ飛び出した。
 そして台車の上へ駆け上がると、そのままナイトメアの背に向かって飛び移った。
(これは、さっきよりも成長している……?)
 ナイトメアの背には、先程まではなかった翼のようなものが生え始めていた。
 成長させてはならない。
 大和はその背に向けて、斧の刃を振り下ろした。
「うわっ……?!」
 ナイトメアの背が跳ね上がり、大和は振り落とされそうになる。
 だが大和は伸び始めた翼を掴んで堪えると、続けて斧をナイトメアの首へと振り下ろし、そのままとどめを刺した。

「これで全部か?」
 大和がそう聞くと、カモッラの男達は黙って頷いた。
 恐らくこれで、カモッラは今までよりも協力的になるはずだ。
 SALFに対し、大和はそう報告したのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございました、九里原十三里です。
今回はおまかせノベルということで、暁 大和(la3248)さんのお話を1から作らせていただいております。

舞台は、南イタリアのちょっと治安の悪い場所です。
敵はナイトメアを売買しようとしていた組織のメンバー、そして結果的にはライセンサー達が追っていたナイトメア、という形になります。
大和さんは戦闘民族出身、という事だったので体一つで向かっていくのが本来の姿なのかな、と思い最後はデザイアアックスでとどめを! という展開に書かせていただきました。

改めまして今回はご依頼ありがとうございました。
どうぞ最後までグロリアスドライヴをお楽しみください!
おまかせノベル -
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グロリアスドライヴ
2020年12月09日

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