▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『これまでのことを』
cloverla0874


 ドラマ「グロリアスドライヴ」、【4N】コートジボワール編撮影現場にて。
 clover(la0874)を演じた少女は、休憩室のテーブルに、四葉模様の紙ナプキンを敷き、その上に個包装のお菓子を置いてクラーティオ(lz0140)役の少年に分け与えた。
「はいっ、クラーティオくんもどうぞーっ」
「わーい! クロおねーさんありがとうございますっ!」
 なにかと共演の多い二人で、クラーティオは徐々にcloverの口調がうつってきている。それだけ関わりも密接な役柄だった。関わっている間に、二人はすっかり仲良しで、cloverはクラーティオを年下の可愛いお友達だと思っていた。弟に欲しい。クラーティオはクラーティオで、cloverには信頼と尊敬を寄せており、時折甘えに近いことを言ったりもした。

 今日は決戦編の撮影だが、順調に進んでおり、二人は控え室でのんびりしているところだった。人型のクラーティオは出番がもうなく、後はcloverたちライセンサー役が、ハリボテの大蛇たちを相手取って撮影する。ちゃんとした大蛇とウロボロスは後で合成する予定だ。

「最初、こんなことになるなんて思いませんでしたねー」
 クラーティオは足をぶらぶらさせながら、過去の台本をめくっている。書き込みや修正がたくさんあった。当初からなかなか予想外が多く、第一話にあたる「三十年前から」でも、他の演者の提案でクラーティオの出番が増えたのだ。その後も、撮影しながら意見を出し合い、当初の想定よりも良い意味で外れた展開になったそうである。
「ぼく、あの台詞好きです。『三十年間も村の人達を守って偉いと思う。頑張ったね、すごいよっ』て」
「えっ、本当?」
「はいっ。クローバーくんの優しさっていうか『クラーティオ』に対する誠意が出てて」
 人類側にも瑕疵がある、と言う設定でのコートジボワール編。エルゴマンサーと言うのは、「グロリアスドライヴ」においては、【DD】などでの一部例外を除いて概ね退治すべき存在であるので、【4N】も討伐前提でストーリーを組んでいた。
 けれど、演技をしている内に、台本にはない「キャラクター固有の方向性」という物が顔を出す。cloverの場合は、クラーティオに対していわゆる「光落ち」を望む考えだ。
 本来、作中のクラーティオが想定していたライセンサーの態度は「楽園の否定」である。否定に対する反論の台詞は用意してはいたが、「肯定」については流石に予想外で、その結果が「割れた天秤」での「絶句」である。
「向こうにとって悪いことをしている自覚はありますから、怒られると思って言い訳を考えるじゃないですか」
「うーん、そうだね」
 身に覚えがあるのか、それとも箱入り娘は怒られるようなことをしなかったのか、cloverは少し考えて、頷いた。
「でも、向こうから良いところを見つけてくれて褒められたらびっくりします」
「するかも」
「だから、あの台詞ってすっごく衝撃的で好きです」
「えへへー」
 cloverは照れた様に笑った。自分も一緒に台本をめくる。

「このまま戦い続けるの? どうしていいのかわからないのなら、俺も一緒に考えるよ? 一人で悩むより、誰かと話した方がきっと早いし楽しいよ? 一緒にいようよ、俺の事連れて帰ってくれてもいーしっ!」

 「割れた天秤」でのcloverの爆弾発言を見て首を傾げた。
「あの時もし“クラーティオ”が“clover”を連れて帰ってたらどうなってたんだろうねー?」
「うーん」
 クラーティオは腕を組んだ。
「多分ですけど」
「うんっ」
「『国連軍嫌い』を『クローバーくんといたい』が上回るわけですから、案外めそめそしながら愚痴を聞いて貰った、とか、あったんじゃないかなってぼくは思いますっ」
 クラーティオのSALFへの憎悪は根深い物があるが、cloverという一人のライセンサーとは、心の交流を持てたのではないか……と言うのがクラーティオの考えである。
「上手く言えませんけど」
「そっかー」
「インソムニアに客間ってあるのかな? ぼくだったら、クロおねーさんには一番綺麗なお部屋に泊まってもらいますね」
「ありがとー」
「ぐれんのわんこにもベッド用意しますっ!」
「あ、嬉しいなー」
 今もテーブルの上にうつぶせになっているぐれんのわんこを撫でる。ぬいぐるみは、広げられた菓子を虎視眈々と狙うようにも、二人の話を聞いて笑っているようにも見える。
「でも、ぼくだったらクロおねーさんには来てもらったのに、作中のクラーティオは断っちゃうのもったいないなーってずっと思ってました。嫌いな国連軍かもしれませんけど、クロおねーさんはクロおねーさんなのに」
 唇を尖らせる。役者の彼としては、真の姿について言及し合うシーンも好きなのだそうだ。最終的に大蛇の姿となった彼についてcloverは、
「蛇可愛かったなあ。爬虫類好きだから楽しかった♪」
 早い話、蛇型ナイトメアは舌を出しながら「食べちゃうぞ!」と言っているような物である。戦闘能力としては可愛くないが、配られた台本を見て、これ、シーンとしては可愛いんじゃないかな……と思ったcloverである。そんなほわほわしたcloverの笑顔を見ていたクラーティオ、口の端にクッキーのかすを付けながら、頭に豆電球が灯ったような顔をして、
「今度、動物園に蛇を見に行きましょうよ。お母さんに頼んで連れて行って貰いましょう?」
「あっ、良いね、行こう行こうーっ!」
「じゃあ、お母さんに許可貰ったら連絡しますねっ」
 クラーティオの母も、【4N】では共演しており、絡みはそこまででもないが知らぬ仲ではない。
「お弁当作って、お天気の良い日に行きましょう」
「そうだねーっ」
 アフリカに迷い込んだ一人の放浪者と、彼の姿を取ったナイトメアを巡る物語はもうすぐ終わる。
 それを演じて、紡いでいた少年少女は、明るい先の約束を。
 ささやかだけど、楽しい約束をする。

「あ、クラーティオくん、クッキー付いてる」
 cloverはティッシュで少年の口の端を拭った。
「あ、すみません。ありがとうございます」

 やがて、休憩が終わり、cloverが呼ばれた。撮影を見ていたいと言うクラーティオも連れて、彼女は撮影場所に向かう。

 物語の終わりのために。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
この二人にとって決定的なシーンってやっぱりあの場面かなぁ、と思ったので、そちらを中心に書かせて頂きました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
シングルノベル この商品を注文する
三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2020年12月17日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.