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『わら一本と近所探索』
小宮 弦方la4299

 小宮 弦方(la4299)は休日となった今日、部屋の窓から外を眺める。
 爽やかな空の色や、窓から入る穏やかな風から、明らかに外出日和だ。
「旅に行くのもいいけれども、思い立って突然遠くには行けないからなぁ」
 ナイトメアがいる状況だと気軽に旅はしづらい。
「本当、旅日和」
 弦方の頬が緩む。
「遠出するには予定を考えないと行けないけれども、散歩より少し遠目を考えようかな」
 早速出かけることにした。
 散歩は散歩で新たな発見、ちょっとした変化気づくだけでも楽しいものだ。

 目的地をまず、自然公園にした。目的地を決めないとどこに行くか迷いため、景色を楽しめない。
 歩き出してしばらくして、ひゅう、と一陣の風が吹いた。
 ちょっと強い。その風の冷たさは冬が来ると思わせる。
 何かが足に引っかかった。風に飛ばされて来たのだろう。
「草? ……わら?」
 拾って周囲を見た。
「田畑はここにないし、鳥が運んでいたとか?」
 鳥が巣材として運ぶ途中で、一部落したのかも知れない。
 どこにあったものだろうかと考えるが、これがありそうな田畑がある記憶がない。
「住宅街だし……あったかな?」
 商店ですらあまりないところだ。
 田畑があるならば、住宅街の外れとなるだろうか。
「そうだ、この出所を探すというのはどうだろうか?」
 弦方は考えた。
 自然公園に行くのはいつでもできる。
 天気もいいのだから、このわらが飛んできた方を見てみるのも面白いかもしれない。
 わらを一本持って歩いても対した荷物でもない。
「見つからなくてもそれはそれだし」
 地図を見れば一目瞭然かも知れないが、何もせず歩き出した。
 風を手がかりに、北に足を向けた。
 来た道を戻ってもいるが、何か新鮮だった。
「目的があると、気が引き締まるかも」
 弦方の歩幅は自然と広くなった。

 しばらくすると、道の隅に立ち止まる子どもと視線が合った。
 子どもの視線は時々、弦方の耳と尻尾に向う。
「こんにちは」
「……あ、ごめんなさい」
 だだだと走って消えた。
 弦方は声を掛けない方が良かったかと悲しい気持ちになったが、道の角に姿が見えて、苦笑した。
「耳、動きますよ」
 弦方は子どもの視線に合うようにかがむと、耳を動かした。
 子どもが目を丸くした。
「尻尾も動きますよ」
 子どもの目が輝いた。
「キカイなの?」
 おずおずと問う。
「それが……生えているものですよ」
 生えているというのもおかしいけれども、伝わりやすい言葉を選ぶ。
「ぼくにはないや」
 しょんぼりする子ども。
「人間だから仕方がないですよ」
「おじさんは、にんげんじゃないの?」
「おじ……えっと、放浪者といって、違う世界から来たんですよ」
 放浪者といって通じるかちょっと心配もある。
 子どもは少し考えたが、うなずいた。
「こわくない?」
「怖いですか?」
 子どもは首を横に振った。
「良かったです」
「ぼくがじっと見ていて、おこった?」
 弦方は首を横に振った。
「驚かせて申し訳ないと思っただけです」
 子どもは首を激しく横に振った。
「耳なら、触っても良いですよ。本物だという証拠のために」
「い、いいの?」
 子どもが近寄り、ドキドキしながら触った。
「本当だ、ついてる!」
 嬉しそうだった。
「そうです。このあたりでこれがたくさんあるところは知ってますか?」
「しらない」
 子どもは申し訳なさそうにいう。
「ありがとう」
 子どもと別れて道を進むのだった。

 わらを持ったまま町を歩く。
 住宅街は特に変化はないけれども、きれいな紅葉や銀杏の木を見つけた。発見はそのくらいだった。
「わらとつながる物がない」
 首を傾げる。それこそ、どこから飛んでくるか分からないということだ。
 そろそろ引き返そうかと考えた頃、畑が見えた。
 見える範囲は土だけだ。
「関係ない?」
 風がびゅーと吹く。
 枯れ草に混じってわらが数本転がってくる。
「あっちから?」
 弦方は向う。畑に入るのはためらわれたので、農道などを通り、推測で回り込む。

 畑の入り口に到着した。トラックの出入りができる門と、平屋建てがある。
 柵から見える畑はかなり広かった。
 建物の脇に、何かに使うらしいわらが積んである。
 持っているわらの答えではないかも知れないが、一つの区切りが来たと、弦方は思った。
「どうかしましたか?」
 畑にいる男性が声を掛けてきた。近寄ってくる。
「お邪魔してすみません。実は、飛んできたわらを持って、散歩してきたんです」
 弦方は簡単に説明した。
「なるほど。結構遠くからですよね?」
「あれこれ見ていたので気にはしていませんでしたが、それなりに歩いています」
 畑があるということを知らなかったのだから、散歩でなかなか来ない範囲なのは確かだ。
「わらを拝見しても?」
 弦方が見せると「うちのですね……といっても、わからないですけど」と男性が笑う。
「ですよね」
 弦方も笑う。
「いまお時間いいですか? せっかくですし、畑について伺っても? どんな野菜を作っているんですか?」
 男性が話してくれる、先日まであった野菜から今後の野菜まで。そして、野菜販売所が入り口の脇の建物だという。
「それは、興味が湧きました。是非、野菜販売されているころ来てみます」
「ありがとうございます。あ、これでよければ持っていってください」
 家で消費するために取ってきたという。
「悪いですよ」
「むしろ、この一束で申し訳ないですが、わらの縁ということで。次はぜひ買って正味してください」
「ありがとうございます。そうですね。たくさん買います」
 笑顔で二人は別れた。

 弦方は帰宅して、それをゆで食べる。その葉は太陽と寒さを受けた味がした。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 発注ありがとうございます。
 旅、良いですね! とはいえ、近所探索になりました。
 結果、大変、ほのぼの系になりました。
 いかがでしたでしょうか?
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グロリアスドライヴ
2020年12月21日

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