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『利害の一致』
cloverla0874


 クラーティオ(lz0140)はニジェールインソムニア決戦で、clover(la0874)の熱い説得を受けて投降した。cloverは良いけど国連軍は嫌、という、かなり拗らせた感情を持っているクラーティオは、ものすごくふてくされながらグスターヴァス(lz0124)のFS-10に乗ってSALFに連行された。機内でcloverに案内されながら、
「このネジ、抜いて良いですか?」
「ダメだと思う」
 なんてやり取りをしたとかしないとか。

「よく来たわね。歓迎するわ」
 オペレーターのパメラ・ハーロウはそう言って鷹揚にクラーティオを迎えた。クラーティオ投降の報を受けてから、上に掛け合い、急ピッチで受け入れ準備をしていたらしい。彼女は、「SALFのしおり」なるものをクラーティオに渡す。まだインクの匂いがした。
「大体の決まりはそこに書いてある。三十年共同生活をやったあなたがそれを守れないとは思わないけど。それと、リシャールを含めたSALFのライセンサーや一般人に危害を加えないこと」
「破ったらどうなりますか?」
「アサルトコアを百機動員して、アンタを殺すって言う連中の説得をやめるわね。私刑のように惨めに死にたくなければ、約束は守りなさい」
「わかりました。では僕からも条件を。あの人に、僕の前に面見せるなと伝えてください。下手な和解など要りません」
「良い根性ね。わかった。伝えておく。彼が約束を破った場合の戦闘についてはできるだけ扱いに配慮するわね」


 数週間後、cloverはパメラに呼び出された。
「アフリカ復興に伴って、詐欺グループが動いてるのよ。ちょっと悪質なところで、非合法EXISなんかもあるらしいの。ライセンサーじゃないと対応できない。で、ここにクラーティオを行かせようという話が出ている。知能があって、戦闘力も高いからね。コートジボワールのことがあるから、彼も首を横には振らないはずよ」
「クラーティオを利用するの?」
 少し眉根を寄せてcloverは尋ねた。パメラは頷き、
「聞こえは悪いけど、そうなる。ただ、悪い話じゃないと思うわよ。アフリカ復興の一端に功績を残せれば、この世界を去るにしても残るにしても、ただの悪党として名前は残らないわ。ただ、エルゴマンサーを一人で行かせるわけにもいかない。表向きはお目付役として、実体はサポートとしてcloverにも行って欲しいの。EXIS使われたら、クラーティオはやられちゃうし。他にもライセンサー募集するけど、あなたには最初に声掛けとかないと、と思ってね。どう?」
「そっかー……わかりましたっ! 俺がクラーティオのこと守れば良いんだねっ! まかせてよっ!」


 そして、現地。他のライセンサーが陽動している間に、小柄な二人が内部に侵入する。クラーティオは、斧よりも幾分か殺傷能力の低い杖を武器として持たされていた。EXISではないが、暴走込みで殴り掛かれば良くて大怪我、悪くて死ぬだろう。
「とりあえず、非合法EXIS全部没収しちゃえば良いんだよねっ」
「そうみたいです。可能なら何らかの情報も欲しいとパメラおねーさんが言ってました……おねーさん?」
 二十代のパメラは、少なくとも三十年は生きているクラーティオからしたら年下の様な気がするが、この見た目で「パメラちゃん」とか言うのもちょっとな……と思うクラーティオである。なお、敬称の付け方はcloverに影響されているらしい。
 廊下を堂々と進んでいると、二人はすぐに見つかった。
「お嬢ちゃん、お坊ちゃん。ここは子供の来る所じゃないぜ」
 にやにやしながら近寄って来る、明らかに悪そうな男。
「遠慮は?」
「要らないと思うっ!」
 クラーティオは深呼吸すると、床を蹴った。杖を振るって、相手の顎を殴打する。不意を打たれた男は驚いたようだった。それは少年に突然殴られたことなのか……はたまた、それがEXISでないことなのか。
「ぼくは元々ニジェールインソムニアにいました、と言えば、ぼくが怒っている理由はおわかりではありませんか?」
「ナイトメア残党か! SALFに尻尾振った負け犬が!」
 クラーティオがその一言に激怒したのはcloverにもわかった。相手が銃を取り出す。恐らく非合法EXISだろう。普通の銃弾ならリジェクションフィールドでいかようにもなるクラーティオだが、EXISは問答無用でダメージが入る。自分でも渡り合えると思っているのだろう。
「危ないっ!」
 cloverがアリーガードで割って入った。ロスヴァイセに仕込まれた板金で受け流す。それからすぐに、ぬいぐるみをフルスイングで振り下ろした。
 ぐれんのわんこがカコウ【姫椿】を放つ。舞い散る赤い花弁。まるで火を吹いたかの様だ。衝撃が相手の手から武器を弾き飛ばす。その隙に、クラーティオは再び杖で相手を打った。
「おじさんっ、俺たち別に暗殺に来たわけじゃないからっ! 大人しく案内してくれたら悪いようにはしないけどー……どうする? そうじゃないと、大きな蛇に丸呑みにされてしまうかもっ……」
 釈然としない顔をしていた。クラーティオは素早く相手の背後に回ると、飛びついてそのまま締め落とした。


 やがて、二人は武器庫に辿り付いた。中には、それこそ斧から盾、剣、果てはロケットランチャーまで。
「よくこんなに集めましたね……」
「すごーいっ! 応援を呼んで運び出してもらおう。ここはとりあえず、閉めておけば良いよね?」
「そうですね。そろそろ別働隊も突入する頃です……」
 その時だった。後ろでどたばたと足音がする。振り返ると、先ほどの男と、細かいパーツだけ換えたような風体の人間たちが二人を囲むように駆けつけた。
「囲まれちゃった。おじさんたち、このびしょーじょとびしょーねんに酷いことをするつもり? 売り飛ばしたりするの?」
「そうだな。酷い目に遭ってから売り飛ばされるか、売り飛ばされてから酷い目に遭うかのどっちかだな」
「こわいおじさんたちだっ……」
 あまり怖がっている風には見えない物の言い方に、男たちは気色ばんだようだった。何やら嫌な目でこちらを見ながらひそひそと話している。
(クローバーくん)
 ひそり、とクラーティオは声を掛けた。
(ぼく、周囲をなぎ倒す攻撃できないんです。君、ありますよね?)
(りょーかいっ)
 cloverは一歩前に出た。ぐれんのわんこは笑んでいるような口元を保っている。
「どうしたお嬢ちゃん。いつ酷い目に遭うか決めたのかい?」
 品のない問いかけに、cloverとぬいぐるみは檜扇の花弁で応じる。そこそこ体格の良い男たちがなぎ倒され、その上にクラーティオが飛びかかった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
クラーティオ投降イフとなります。
実際、シナリオで投降してもこうはならなそう、とは思いますが、せっかくのノベルなのでこうなったら良かったのにな、というルートを書かせて頂きました。攻守のバランスは取れている気はしますね。二人とも自前の回復能力ありますし、粘り勝ちできそうな。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
おまかせノベル -
三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2021年01月04日

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