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『ドラマ「コールド・ロータス」シーズン4 第12話「希望を抱いて駆け上がれ」』
柞原 典la3876


 ナイトメアによるテレビ局占領の知らせが入った。柞原 典(la3876)は、概要を見て顔をしかめる。
「モブ、気張りよるな……」
 地蔵坂 千紘(lz0095)が率いるナイトメア集団だった。逃げ遅れた一般人もいるようで、ナイトメアの討伐に加えて、一般人救出も並行して行なわなくてはならない。しかし、それこそ彼の狙い通りのようで、
「ライセンサーが無様にやられる姿を中継すれば、人類は絶望するだろ?」
 笑いながら言う。だから、絶対に失敗はできない。
 とは言え、エレベーターも止められ、下から階段で行くには時間が掛かりすぎる。では上からヘリで? 否。音でバレる。千紘は遠距離攻撃に長けたナイトメアだ。撃ち落とされるのが関の山だろう。
「スナイパーには、スナイパーで対抗するのはどうなん?」
 典がヴァージルを見上げながら言った。
「ビルの隙間言うたら、十五メートルもないやろ。チェーンスライドで充分届くのとちゃう? チェンスラ使えるお人らが隣の屋上から飛んで侵入する。俺らは一階から攻めてあちらさんの気を引く。どうや?」
 典の案は採用された。チェーンスライドを習得していたヴァージルは、屋上組に配置された。典本人は下からの陽動組だ。
「モブは俺を目の敵にしとるし、気ぃ引くには適任やろ?」
 典が笑って見せると、ヴァージルは少し心配そうな顔をしながらも頷き、
「じゃあ、後でな」
 ヴァージルは、自分が持っている中で一番命中精度の高い銃をメインに持ち替えると、典に声を掛けた。背中を向けて、隣のビルへ向かおうとした。
「兄さん」
 その相方に、典が声を掛ける。
「ん? どした?」
 ヴァージルが首を傾げながら近寄ると、典は自ら腕を延べて相手を抱きしめた。彼の方からそうするのは初めての事で、ヴァージルは目を瞬かせた。けれど、すぐに自分も彼を抱きしめる。
「気ぃつけてな」
「お前も」
 短いハグ。互いの背中を叩いて、二人は別れた。


 蜂型が羽音を立てて飛んでくる。毒針による攻撃は、傘で防御。抵抗力は上げてある。よしんば毒に掛かったとして、典を始めとしたセイントたちの回復がすぐに飛んだ。
 蜂は数が多かった。ただし、千紘の指示で一般人には手を出していなかった。ライセンサーが目当てと言うのもあるだろうが、蜂の体力を温存しておく目的もあったようだ。典たちを見るや、一斉に唸りを上げて飛びかかる。
「はぁ、しんど。どんだけおるんや」
 それらを、範囲攻撃も併用しつつ地道に倒して行く。蜂を全滅させたフロアでは、拘束されていた一般人たちを解放する。付き添いのライセンサーが一人、また一人と抜けて行く。
 最上階の一つ下のフロアで、一般人たちを解放している間に、典は階段を上がって行った。
「待たせて堪忍なぁ」
 典は笑う。ヴァージルが見たら懐かしいとすら感じさせる、目だけ笑っていないあの笑み。
「遅いね。ナメクジ以下ののろまだよ。相方はどうしたの? もしかして、愛想尽かされちゃった? 女取っ替え引っ替えしてるクズなんかに関わりたくないって?」
「俺が取っ替え引っ替えしてるんとちゃうの。俺は来るもの拒まず去る者追わずなだけや。追っかけても振り向いてもらえないあんたと一緒にせんといて」
 千紘は舌打ちした。
「希望と共に失墜しろ」
「絶望と一緒に散ったらええ。エルゴマンサーが無様にやられるの中継してやれば、人類は希望持つやん?」
 艶やかに笑う。それから呆れ顔になり、
「ちゅうか、あんた、この局だけで全世界に回ると思っとるんか? こんなんアメリカの一部地域やで。欲張ってもせいぜい合衆国全土や」
「充分だろ。天下の合衆国が絶望してくれれば、それは世界中に伝播するさ」
「世界に国がいくつあるん?」
 仮に、世界がそれを脅威に思って中継を繋ぐにしても、時間がかかる。効果は限定的だろう。遠く離れた地域の彼らが見るのは、突入のライセンサー全滅、という、珍しいが、決してあり得ないとは言い切れない見出しだけだ。
 千紘は気色ばんだ。彼もわかっていたのだろうが、典に指摘されたのが相当嫌だったらしい。
「本当に……お前、嫌い」
「さよか。そら安心したわ。ちゃんと嫌って貰わんと、こっちも倒し甲斐ないしなぁ? あんまり、個々人の希望を軽く見ない方がええで」
「ご忠告痛み入るよ」
 蜂が飛んだ。典は傘を開いてそれを防ぐ。イマジナリーシールドに毒針が突き刺さり、汚染する。けれど、それくらいで典は怯まない。すぐに天罰で反撃した。
「それくらいで僕が当てられなくなると思ってもらっても困る」
「命中はええねん。俺もそんな避けるの上手いわけちゃうし──あんたもやろ?」
 生前の千紘はセイント×スナイパー。グラップラーの様な回避能力はない。指揮能力に物を言わせた、高みの見物が得手ならば。
 その時、窓の向こうに典の待っていた光景が見えた。その表情を見て千紘は振り返る。チェーンスライドで屋上に飛び移るヴァージルの姿。
 数秒後、屋上からのドアをヴァージルが開けた。彼に続いて、スナイパー集団が乗り込んで来る。
「本当に」
 千紘は典を睨んだ。
「お前嫌い」
「俺はあんたのこと、どうでもええな」
 典は微笑んで、傘を開いた。


 勝敗は案外すぐに決した。十一焔によって燃やされた千紘は力無く倒れる。目は閉じられ、捨て台詞も飛んでこない。
「やったな、兄さん」
「とりあえず、カメラ止めるか」
 ヴァージルがそう言って、カメラの録画を停止したその時、局内の電気が全て落ちた。階下からも、戸惑いのざわめきが聞こえる。電気系統の近くにいたライセンサーたちの機転で、すぐに復旧したが……千紘の遺体がない!
「あいつは?」
 ヴァージルが目を瞬かせると、外で動物の鳴き声がした。見れば、大型の鳥類を模したナイトメアが局のビルから離れるところで、どうやら二人ほど乗せているらしいのが見て取れる。振り返ったその顔は……グスターヴァス(lz0124)だ。その膝から千紘が顔を出す。弱々しいが、憎たらしい笑みを浮かべていた。
「あいつ……! 生きてたのかよ!」
「モブは死んだふりか……まだ、決着付けさせてもらえへんみたいやねぇ……」
 典は呟いた。割れた窓から、一陣の風が吹き抜けるのだった。

●劇場版予告
 沖合に浮上した七芒星型の大西洋インソムニア。
「希望と心中する覚悟はあるか?」
「堕ちた星は消し去るのが情けです」
 生き残ったエルゴマンサーたちとの決戦が始まる。
 「コールド・ロータス」劇場版。近日公開!

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
典さんと千紘の言い合いを書くのが地味に毎回楽しいのですが、典さんが若干ウェットになってしまうのがなんとも。
ヴァージルは典さんからハグされて、ちょっとほっとしたのではないかと思いました。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。
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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2021年01月08日

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