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『映画MUNAキュアtheファイナル! ――これで本当にお別れです?――』
la3453)&向野・A・黒子la0227)&月居 愁也la2983)& フィノシュトラla0927)&仮森 仰雨la3605)&点喰 縁la3038)&A・Rla3033)&赤羽 恭弥la0774


 君は覚えているか
 戦士の胸に燦然と輝くあのMUNAGEを
 三人のMUNAキュアと一羽のKAMOキュアの熱き戦いを

 いや、もう覚えてはいないだろう
 一年も前のことなんて

 世界にはMUNAGEぱわーの通用しない新たな敵が現れ
 それに対抗する新たな戦士達が生まれた

 今や大人も子供も大きなお友達も、皆が新しい戦士に夢中だ

 MUNAGEの戦士は人々の記憶から消えた
 MUNAキュアの一人もまた消えた
「化学調味料と時代の流れには勝てなかった」
 そんな言葉と一本の鰹節を遺して

 あの何でも屋、美爛堂さえ閉店を余儀なくされたのだ
 悪の組織は株式会社「悪の組織」として、ただのブラック清掃会社に転身した

 ここはそんな世界である


 ――――――☆


 年の瀬も迫る、ある寒い日のこと。
 KAMOキュアこと鴨(la3453)はかつての宿敵、悪の手先であるバイト怪人カリカリモリモリこと仮森 仰雨(la3605)と、天才カラクリ師ヨスガンダーこと点喰 縁(la3038)、そしてMUNAGEの妖精フィノっぴぃことフィノシュトラ(la0927)の三人と共にこたつを囲んでいた。
 カオスな取り合わせだが、互いに色々あったのも今は昔、昨日の敵は今日の友。
「しがらみは捨てるものですよね」
 実は仰雨さん、今も現役で悪のバイト怪人である。
 だが今や清掃会社となった悪の組織の、しかもバイトという身分はつまり、ほぼ一般人。
 ヨスガンダーとして悪の科学界を牽引していた縁も、今や表向きは一般家庭向けお掃除アイテムの研究開発担当として働き、裏ではやっぱり大好きなトラップ作りに精を出す平和な日々を過ごしていた――勤務時間とノルマがアレな事を除けば。
 年末の忙しい時期、そんな彼等に奇跡的に訪れたこの丸一日のオフタイム!
 何か裏がありそうで素直に喜べない、そんな気持ちを心の隅に押し込めて、四人は楽しく平和に和気藹々とこたつを囲んでいた。
「今日は特別サービスに、お鍋を持って来たのです!」
 フィノシュトラはこたつの真ん中にカセットコンロを置いて、大きなお鍋をどーん!
 なお煮えるまで蓋を開けてはいけない。
 具材を覗き込んだ瞬間、その魂は永遠の闇に囚われるであろう。
 約一名、既に闇に沈んだような目をした人がいるけれど。
「え? 家族サービスですかぃ?」
 縁は虚ろな笑みを浮かべた。
「今日ね、久しぶりに我が家に帰ったんでさ。そしたら誰もいなくてね……ええ、家族で温泉旅行だって……俺はもう、家族の頭数にゃ入れて貰えねぇんでさ……」
 考えてみれば、もう何年も家族で正月を過ごした覚えがない。
 娘には誕生日やクリスマス、その他の折につけてプレゼントを贈っているし、お年玉だって欠かさずあげている。
 けれど娘にとって父はもう「プレゼントや小遣いをくれる良いおじさん」でしかないのかも――
「あっ、そういや餅切らしてたんでさ! この季節、鍋に餅は欠かせねぇですよね!」
 こみ上げてきた何かを誤魔化す様に、縁はこたつの魔力を振り払った。
「ちょいとそこまで買いに行ってきやす!」
 綿入れ半纏をなびかせて裸足のまま玄関へと駆け出す後ろ姿には涙を禁じえない。
 けれど、それはそれ。
「みんなと一緒にこたつの住人になって映画見まくって過ごすんだー」
 仰雨はウキウキと準備に勤しむ。
 カップ麺にお湯、ジュース、お菓子にみかん、それにバケツアイスにコーラの大きいペットボトルを揃えて完璧!
「今日はMUNAキュア映画全部一気に振り返り鑑賞会するかも!」
 鴨の家にはこれまでに発表されたMUNAキュア映画、その全てのDVD(一部ブルーレイ)が揃っていた。
 だが劇場で一度観たものは、なかなか家でもう一度観ようとは思わないものだ。
 子供の頃は何度でも繰り返し観て、何度でも楽しめたのに。
 人は(鴨も)何故、大人になるとどんなに夢中になった作品でも「一度観たからいいや」になってしまうのだろう。
「わからないかも!」
 観ないことがわかっているのに、何故円盤を買ってしまうのだろう。
「お布施だからかも!」
 そんなわけで、本日はこたつで耐久MUNAキュア映画マラソン。
「第一作から栄光の歴史を辿るかも!」
 餅を買いに出た縁の事はすっぱり忘れ、デッキにディスクをセット――しようとした、その時。

 ピコンピコンピコン!

 テレビ画面の上部に臨時ニュースのテロップが!


 月居 愁也(la2983)は元MUNAキュアで今もMUNAGEの手入れを欠かさず、いつかMUNAGEの伝道師になることを夢見る普通のアラフィフだった。 普通#とは
 休日のアラフィフは基本的に怠惰である。
 食事にリモコンその他必要な全てを手の届く範囲に揃え、トイレ以外は一歩もこたつから出ない。
 いっそトイレもこたつの中に作ってしまおうか、堀炬燵ならそれもワンチャン――と、今の所は考えるだけだが、そのうち本気で考え始めるけれど考えるだけで実行には移さない程度には怠惰である。
 今日ものんびりこたつむり状態でぼんやりテレビを眺め、こたつみかんで至福の時。
「北海道だったらこたつじゃ我慢できなかった……ストーブの前でTシャツアイスだったなー」
 なんて考えてたら、テレビに「ニュース速報」の文字が!


 A・R(la3033)――アスハが契約している動画の定額配信サービスでは、年末特別企画としてMUNAキュアの最終回SPが始まろうとしていた。
 アスハの家にテレビのアンテナはない。
 代わりにネット環境は完璧に整えられていた。
「僕は無為に垂れ流されるテレビの映像を眺めて残りの人生を潰す、そんな年寄りにはならない」
 そんな信念のもと、厳選した意識高い系サブスク映像配信サービスのいくつかと契約し、いまここ。
 仏壇前に供えられた鰹節に手を合わせ、アスハはのそのそとこたつに潜り込む。
「怠惰の呼吸、壱の型、こたつむり!(シャキーン」
 イマドキのアラフィフは流行にも敏感なのである。
 全集中で怠惰を貪りテレビの画面をぼんやり眺め――なおテレビを見るのに老眼鏡は必要ない。
 子供の頃、テレビがまだブラウン管だった古の時代に言われた「テレビは2メール以上離れて見なさい」の呪縛が、液晶や発光ダイオードのディスプレイに変わった今でもアスハを囚えて離さないのだ。
 その距離では、老眼鏡は無力だった。
 それでもぼやけて見えるのは、単純に老化による視力の低下――
「ん?」
 その時、突然こたつがシャットダウン!
 そしてテレビ画面に映し出される赤羽募金のお知らせ!
「電波ジャックか!? いや、これは配信サービス……それさえも乗っ取る程の強大な何かが動き出そうとしているのか!?」
 しらんけど。


『臨時ニュースです。ただいま邪神が復活したという声明文が――』
 テロップとほぼ同時に、テレビの画面がニュースのスタジオに切り替わる。
 だが直後に画面が乱れ、真っ赤な背景が映し出された。

『あー、テス、テス』
 赤羽 恭弥(la0774)は、マイクに向かって控えめに声を出してみる。
 いや、彼はもう赤羽恭弥ではない。
 今やニュー邪神として覚醒した彼は、その名も――

「あっ! なんだか見覚えあるかも!」
 鴨がテレビの画面を指差す。

「邪神ぽんぽこぽーん! かも!」

『そう、我が名は邪神ぽんぽこ……違う!』
「すごいかも! テレビの向こうと話が通じてるかも! これがほんとのテレビ電話かも!」
『ふっ、邪神の能力があれば視聴者の声を聞くなど造作もな……違う!』
「違うかも? 聞こえないかも? あてずっぽで言ってるだけかも? 邪神とか大したことないかも!」
『だから違うのはそこじゃない! 我が名は……我が名は……』
 やべーまだ決めてなかった。
「邪神アカバーネで良いんじゃないか?」
 しらんけど。
『それだ!』
 アスハの声に、邪神は思わず縁台を拳で叩く。
 その拍子に懐に隠し持っていた何かがばさりと落ちて、カメラに映った。
(あっ)
 フィノっぴぃが心の中で叫ぶ。
(あれは私がこの前うっかり落とした愛読書なのです!)
 いくら探しても見付からないと思ったら、あんな所に!
 なおそれは「邪神のお仕事」というタイトルの『フィクション小説』である。
 邪神業のお仕事マニュアルではない。
 断じてない。
 しかし。
(あれを落とした直後から、世界に邪神復活の兆しが現れ始めたのです。まさかあれを参考に……?)
 よし、お口チャック!
(この秘密は私が墓場まで持って行くのです)
 MUNAGEの妖精は死なない気もするけれど。
 ともあれ邪神が復活したからには倒さねばならない。
「今こそMUNAキュアの出番なのです!」
 フィノっぴぃは跳んだ。
 手にした鍋と共に、この世界に残された最後の希望、MUNAキュアアスハとMUNAキュアシュウヤのもとへ。


「えーめんどくせえしアスハさんに任せよ」
 応援に徹すると決めた愁也は両手をこたつに突っ込んでぬくぬくと……してたらフィノっぴぃに蹴り出された!
「訴訟! 訴訟!」
「この世界が邪神の手に落ちてしまったら訴訟どころではないのです!」
 フィノっぴぃは持っていた鍋をこたつの天板にドンと置いた。
「働かないと、この鍋の具材にするのです」
「ヒェッ」
 蓋を開けて中を覗く勇気はあるかい?
「MUNAキュアシュウヤ、逝きまーす!」
 全ては世のため人のため、みんなの明るい笑顔のために!
「おのれ邪神ぽんぽこぽーん! 俺の貴重な休日を! 許さねえ!」
 世界平和どこいった。


「折角色々用意したのに邪神復活とかぇー困るかもー空気読んでほしいかもー」
 寒さでテンション上がらない鴨は、世界の危機にもこたつでゴロゴロを続行中。
 そこに鳴り響く古のポケベル!
「4951……至急来い? 緊急招集!? 至福タイム強制終了じゃないですかヤダー!!!」
 今時何故ポケベルなのか、それは訊くな。
「どっかの邪神がこっちの邪神に喧嘩売ってきたとかしらんがな!」
 そう、テレビに映った邪神は復活したものではない。下剋上を目論む、ポッと出邪神だったのだ。
「ああ、でも行かないと酷い目にあいそうだし行くしかないじゃないかー! 行くぞ鴨くん死なばもろともーーーっ!」
 仰雨は鴨をむんずと鷲掴み、こたつから引っ張り出して強制連行!
「鴨はこたつと仲良しになりたいかもー!! 邪神復活はいらないかもー!!」
「復活じゃなくて増殖だよ鴨くん!」
「それはもっといらないかもーーー!!!」
 じたばた暴れる鴨の抗議の声を聞き流し、仰雨は――いやバイト怪人カリカリモリモリは玄関を飛び出した。
 途中で何か轢いた気もするけど、きっと気のせいだ。


 くそさみなのに面倒くささが勝った縁は裸足にサンダルをつっかけて外に出ようとした――ところで、緊急出動のサイレン(鴨の悲鳴)を鳴らして駆け抜けたバイト怪人に轢き逃げアタックを喰らった。
「痛っててて……っ」
 一体何が起きたのかと呆然としているところに、時間差で緊急呼び出しのポケベルが鳴る。
「8451……はよ来い、ですかぃ」
 行ってもヤな予感しかしないが行かなくても危険なことは本能が知っている。
 縁はカラクリ師ヨスガンダーへとモードを切り替え、地域の酉の市イベント用にせっせとバイトで作っていた花火玉を担いで、轢き逃げ犯を追いかける。
 点けっぱなしのテレビからは、自称ニュー魔王の演説が滔々と流れ続けていた。


 赤羽恭弥は特筆すべき点もない、ごく普通の一般的な学生だった。
 一点だけ普通ではない点を挙げるとすれば、それは彼が久遠ヶ原学園の学生であるという事だろう。
 だが異能異才の変人集団であるかの学園に於いて、彼がごく目立たない学生であったことは想像に難くない。
 そんな彼に転機が訪れたのは、木枯らしの吹くある日のことだった。
 空から天啓が降って来たのだ。
 天啓は本の形をしていた。
「読める! 読めるぞ!」
 それを貪るように読み尽くした彼は遂に、己の使命に目覚めた。
「オレは……いや、我は今から世界を統べる邪神となる!」
 そんな感じの来歴をつらつらと述べて、演説は終わった。


「ざけんなこのクソ雑魚三下野郎」
 向野・A・黒子(la0227)は空になった掛蕎麦のどんぶりをぶち割る勢いでカウンターに叩き付けた。
 悪の組織の派遣戦闘員(家事から『掃除』まで何でもこなす万能メイド)だった黒子は今や、組織の頂点にまで上り詰めていた。
 こうして時折メイド姿(お仕事着)で場末の立ち食い蕎麦屋に現れては、かつての気楽な派遣戦闘員時代を思い出すのが、彼女にとっては至福の時。
 しかその幸福な時間は無残にも奪われた。
 許すまじニュー邪神。
「邪神のリアルって奴を思い知らせてやるぜ」
 そう、黒子こそがこの世界の真の邪神だったのだ!
 黒子――いや真邪神はポケベルで配下のバイト怪人カリカリモリモリを呼び出した。
 オフである今、部下の名簿など持ち合わせていない。素で番号を呼び出せる者が他にいなかったのだ。
 いや、もうひとり思い出した。
「些か頼りねぇが、数合わせにはなるだろ」
 真邪神はカウンターに代金を置いて店を出る。
 さあ、ショバ代の取り立てだ。


 そして今、彼等は荒野に佇んでいた。
「ふはははは……よく来たなMUNAキュア!」
 ニュー邪神はマントで半分顔を隠しながら眼光を鋭く光らせた。
「我が計画を尽く妨害してきた邪魔なMUNAキュア達を、今日こそ……え? あれ? MUNAキュアは?」
「ここにいるよ!」
 バイト怪人カリカリモリモリが鴨を突き出す。
「違うかも! 鴨は善良で平和を愛するただの可愛らしい鴨かも!」
 その姿をじっと見て、ニュー邪神は言った。
「丸々太って美味そうだな」
 ひとまずそのカモは食材として確保しておこう。
 だが今問題なのはそこではない。
「MUNAキュアは三人のオッサンだと聞いているが……何故奴らは現れない?」
 今だけではない。
 これまでにも何か色々裏から手を回して世界で争いを起こしているのに、MUNAキュアは現れなかった。
 マニュアルに倣ってSAN値回収を頑張っても何の妨害もない。
 何故だ、何故MUNAキュアは来ない?
 そうか、知名度が足りないのか! ならばここは敢えてテレビで大体的に活動開始を宣言し、MUNAキュアを誘き寄せて罠にかける――という作戦だったのに!
「来ないじゃないか!」
「いやワタシに言われてもね!?」
「丁度良い、邪魔が入らないうちにお話といこうか、ニュー邪神さんよ?」
 邪神ザ・オリジン黒子が進み出る。
「あっ、もしかして邪神の先輩ですか!」
「あん?」
「先輩が書かれたこの本、いつも参考にさせて貰ってます! もうバリリスペクトですよ! 良かったらサイン頂けませんか!」
「何言ってんだてめぇ」
「え? だって……この本を書いたの先輩ですよね?」
「確かに書いた。邪神の座を得てから余りにも暇だったんで、手慰みの夢小説としてな」
「夢……小説……? ノンフィクションでも手引書でも、ない……?」
 ばさり、ニュー邪神の手から「邪神のお仕事」が落ちる。
「うそだそんなことー! だったら、今までオレがやってきたあんな事やそんな事、それに頑張ってきたSAN値回収は何だったんだ!」
「知らねぇよ、そんなもん」
 膝から崩れ落ちたニュー邪神に真邪神が迫る。
「さてと、俺のシマ荒らした落とし前は付けてくれンだろうな? まあ今回は丁寧な詫び入れと荒らしの即時終了、それにショバ代で勘弁してやる……どうだ?」
 だがニュー邪神は拾い上げた本を胸に掻き抱いた。
「嫌だ! たとえこの本が偽物でも、オレが抱いたこの想いは本物……誰にも邪魔はさせない! オレがこの世界の真なる邪神になってやる! 老害は引っ込んでろ!」
「はっ、よくぞ言った」
 真邪神は嬉々としてスカートの下からランダル銃と護拳付きナイフを取り出した。
「破断成立。行くぞ仮森、休出手当は出す」
「よろこんでー!」
 手当が出ると聞いて俄然やる気を出すバイト怪人カリカリモリモリ!
 だが、そこに――


「あー、なんだ最終回SP用の新しい敵かー」
 まあフィクションだし撮影にも呼ばれてないし、関係ないよねとアスハは怠惰の呼吸を乱さずみかんの皮を剥く。
 だがそれはリアルに世界の危機だった!
「ならば今こそ新調した(そして度を上げた)老眼鏡の威力を魅せる時! MUNAキュア、出勤!」
 こたつむりのまま、ずーるずーる。
 みかん片手に昔の敵は今も敵、邪神クロコにチクリに行って邪神大決戦を扇動――しようと思ったらもう戦ってた!
「くっ、出遅れたか!」
 しかし問題ない、タイムシフトなら見たい番組もう見逃さない、二倍速でリアタイに追い付くよ!
 みかんを食べてお茶をすすり、煎餅をバリボリ齧りながら……
「しまった、煎餅の咀嚼音で音声が聞こえない!」
 アラフィフは目や腰だけではなく、耳の機能もそれなりに衰えているのだ! ついでに歯もちょっと痛いぞ!
 仕方ないので煎餅を封印し、もう一度最初から。
「よし、大体わかった」
「なるほど、そういう事ね」
 いつの間にかこたつにインしていた、こたつを背負った愁也がお茶をすすった。
「アスハさんちのこたつ大きくていいなー、俺の一人用だから背負うには良いんだけど足伸ばすと出ちゃうんだよね……あ、お茶とみかん頂いてます、代わりに饅頭持ってきたよ」
「良いね、これなら歯にも優しいし音もちゃんと聞こえる。大福と違って喉に詰まる危険も少ないな」
「だろ? なんか40代も半ば超えたら急に何でもないことで咳き込むようになってさー、怖いよね誤嚥性肺炎とか」
 え? 何をしてるのかって?
 見てわかりませんか、こたつでまったりです。
「そんなことしてる場合じゃないのです!」
 フィノっぴぃは無情にもこたつ布団を引っ剥がした!
「働かないとMUNAキュアじゃなくてHAGEキュアにするのです!」
 それは困る、数ある不具合(老化現象)に見舞われる中でも髪だけは辛うじて無事なのに!
 仕方なく立ち上がるアラフィフ二人、でもちょっと待ってねアラフィフは急には動けないのよ腰とか膝とか傷むから。
 ゆっくりゆっくり慣らしながら、いざ変身――

「出たなMUNAキュア!」
 その時、ニュー邪神が嬉々として因縁をつけてきた!
「この日を待っていたぞ、って言うか何で今まで出て来なかったんだよ、来てくれないから思わずこっちから出ちゃったじゃないか!」
 しらんがな。
「だが残念だったな。我は知っている、MUNAキュアは三人揃わなければ変身が出来ないことを!」
「だったら今まで現れなかった理由も明らかなのでは」
「……はっ!!」
 アスハの指摘に思わず赤面するニュー邪神、その隙に三人でMUNAキュアに変身だ!
 そう、MUNAキュアはちゃんと三人揃っている――正確には二人と一羽だがこまけぇことはいいんだよ。
「本体アプデ完了、視界くっきりMUNAキュアアスハ!」
「ふわふわMUNAGEで世界を守る! MUNAキュアMUNAGEとは俺のこと! MUNAキュアシュウヤ!」
「もこもこダウン100%、UMOUのチカラがみんなを包む! 驚きの包容力、KAMOキュアカモかも!」
 MUNAGEとUMOUがブレンドされて、もこもこ率1000%!
「ふん、鰹出汁のないMUNAキュアなど我の敵ではないわ!」
「鰹出汁より鴨出汁の方が美味しい、じゃなくて強いかも!」
 だが変身してもMUNAキュア達は戦わない!
「はぁー……ぬっくい……」
「変身はしてみたけど、やっぱり歳には勝てないよな……」
「天国かも……」
 こたつでほっこりするMUNAキュア達。
 だって変身バンクの最中に始まってるんだもん、新旧邪神の戦いが。
「僕達の入り込む余地はないな」
「バケツアイス持って来たかも!」
「いいねえ、今ならアイスも寒くないし」
 MUNAキュア、まったり応援モードである。
「がんばえー、じゃしんさーん」
「どっちの邪神さんかも?」
「真の方だろ後が怖いし」
 どっちの邪神も応援しちゃいけない気がするけど、そこはノリで。

「ニュー邪神さんにドロップキック!!!!」
 出会い頭にカリカリモリモリの渾身の一撃が炸裂する!
 だがドロップキックは返り討ちに遭うのが近頃のお約束、ニュー邪神は一生懸命距離を取って、なんかよくわかんないビームを撃つ!
「ぷぎゃっ!?」
 カリカリモリモリ、早くもリタイア!
「使えねぇ……休出手当はやっぱ無しな」
「そんな殺生な……!」
 ピクピクしながら訴える怪人をスルーして、真邪神は新参者に向き合った。
「覚悟は出来てんだろうな?」
 某西部劇で主人公が愛用していたカスタム銃のガワを被った何かが火を噴く。

 ドォン!

 その威力は艦砲射撃並、射程もそれに準じてバカ長い。
 どんなに遠く離れても、どんなに頑丈な障害物に隠れても、無駄無駄無駄ァ!
「ちょ、待て、それはいくら何でもチートすぎるだろ!」
「チートだぁ? この程度がチートに見えるなんざ、邪神を名乗るにゃ百万年早ぇんだよ!」
 機関銃の様に弾をバラ撒きながら、真邪神はニュー邪神にゆっくりと歩み寄る。
 なお威力と速射性は反比例で調整が可能、ついでに弾数は無限だが真の邪神ならこの程度は普通ですよね。
「さあ、覚悟は決まったか?」
 穴だらけの大岩を蹴り崩し、真邪神はナイフを突きつける。
 そのナイフもまたチートな代物であろう事は容易に予想が付いた。
 だがニュー邪神はまだ、奥の手を隠し持っていたのだ!

「ぽんぽこぽーん!」

 ニュー邪神は鳴いた。
 ぽんぽこ神のお告げを受けて、力の限りに。
 これぞ必殺のぽんぽこSAN値回収! 全てのSAN値が今、ニュー邪神の元に集まる!
「あっ、お鍋の蓋が!」
 フィノっぴぃが抱えた鍋の蓋がカタカタ鳴っている。
 この中では全人類のSAN値を根こそぎ直葬する程の闇がじっくりコトコト煮詰まっているのだ。
 今これを解き放てば、溢れるSAN値がニュー邪神に絶大にして絶対的な力を与えてしまう!
「どうすれば……はっ!」
 その時、フィノっぴぃの脳裏に美爛堂店主の言葉が閃いた。
「全部燃やしてしまえば良いのです!」
 お鍋セット、油ばしゃぁ、マッチしゅぼっ、からの、ぽーい。

 ぼぼんっ!

 よいこもわるいこも、決して真似をしてはいけません。
 これはコメディ時空だからこそ許されるのです。
「さあMUNAキュア! 今のうちにニュー邪神を仕留めるのです!」
 無茶振りされたMUNAキュア達は、こたつからのそのそ這い出した。
「俺の情熱を感じ取ってオーラも熱……え、引火? ギャー燃えてるううううう」
 危うしMUNAキュアシュウヤ!
 だが落ち着いて炎を払えばどうってことないさ、天然毛は燃えにくいんだぜ多分!
「おのれ邪神(ry」
 黒くすすけたMUNAGEでバトル! 強めの焙煎は大人の味!
「必殺! MUNAキュアスピンMUNAGEアタッk――」
「MUNAGEを信じろ……俺たちの青春のMUNAGEを!!」
 MUNAキュアアスハは今にも燃え尽きそうなMUNAGEに祈りを込めて、残された全ての力でKAMOキュアを鷲掴み!
「これ黒子さんと赤羽さんの大怪獣(邪神)決戦じゃないですかやだー、これじゃ鴨たちの出る幕なんて……くわわっ!?」
「喰らえ! 捨て身のアルティメットKAMOボンバー!!」
「クワァァァァァァ!!!!!!!????????」
 おおきく振りかぶって、投げ――

「ふう、どうにか間に合いやした!」
 そこに駆け込んで来たヨスガンダーは、周囲の状況を雑に確認。
「案の定やばいことになってやすね、でも俺が来たからにゃもう大丈夫でさ!」
 とりあえず上司が対峙してるニュー邪神に攻撃すれば何とかなるよね多分。
 周辺の安全確認?
 この場に少しでも安全な場所があるとでも?
 どこにいても危険なら今更少しくらい危険が増えてもどーってことないない。
「せぇーのっ!」
 花火玉、全力投擲そーい!

 たーーまやーーーーー!!

「あ、やべ」
 これイベント用じゃなくてガチ戦用の超強力メガトン花火だったよ間違えて持って来ちゃった(てへぺろ☆
 こたつまったり効果が抜けず、雑さに磨きがかかってたせいですね。
「そして最後は爆発オチに巻き込まれるんですね知ってたけどヤダーーー!!!」
 見事に打ち上がったカリカリモリモリは、お空の花と散りました。
 MUNAキュアも邪神も妖精も、勿論投げた本人も、みんな等しく見事に散ったちくわ大明神。

 こうして世界は平和を取り戻したのです。
 めでたしめでたし。


 ――――――☆


 今日はお馴染みのメンバーを集めての年越し映画鑑賞会。
 何故か誰もが黒焦げアフロのギリギリ状態で性別どころか誰が誰やら、鴨の他には殆ど見分けが付かない状態だが、気にする者はいない。
「やはり最後は爆破オチか、老眼鏡がなければ死んでいたな……」
「なんか我が家に帰ったような安心感があるよな、爆破オチ」
 アスハっぽい人と愁也っぽい人がしみじみと呟く。
「もう嫌だこんなブラックバイト……」
「俺は家族と過ごせる正月が欲しいでさ……」
 仰雨っぽい人と縁っぽい人が鍋をつつきながら溜息を吐いた。

 かくしてMUNAキュアのラストムービーはお約束に終わった。
 実力と経験の差をえげつなく見せつけて去った真邪神黒子は再びメイドに戻り、夢破れた挙げ句にショバ代として全財産を毟り取られたニュー邪神は久遠ヶ原学園の生徒に戻ったという。
 どの世界の久遠ヶ原かは明らかにされていないし、密かにリベンジを目論んでいるという噂も聞くけれど。

「世界征服? ンな面倒なことはパスだ、パス」
 特典のインタビュー映像で黒子はそう語っていた。
 ならばもう、この世界に邪神が復活する未来は訪れないのだろうか。
 これで本当に平和が訪れ、MUNAキュアは完全にその使命を終えたのだろうか。

「世の中には最初からファイナルと銘打ったご長寿シリーズがあるのです!」
 フィノシュトラの言葉にMUNAキュアの二人は自分の手を見る。
 そこには純白のMUNAGEがしっかりと握られているのだった。
「鴨の羽毛も無事かも!」

 そう……MUNAキュアは今日も明日も明後日も、未来永劫に平和を守るのだ!
 たとえ人気が低迷し、もう二度と映画を作る予算が回って来ないとしても!
 MUNAキュアは蘇るさ、何度でもな!!

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
大変長らくお待たせいたしました、MUNAキュアファイナルお届けいたします。
なおこの物語はフィクション(妄想)ですので、色々とでっち上げております事をご了承下さい。
発注文を確認する度に毎回「どうすんのこれ」と暫し呆然とし、呆然としたまま書き始めるのですが、書いてみると案外何とかなるものですね(何とか……なっているのでしょうか、これ(
ともあれ、この度はご依頼ありがとうございました。
またどこかでお会いできる日を楽しみにしております……MUNAキュア復活でもいいのよ?
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2021年01月18日

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