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『ドラマ「コールド・ロータス」 NG集 パート3』
柞原 典la3876

●シーズン4「惑い映す青」より
 その後も、七並べの様に二人の言い争いは続いた。最終的に柞原 典(la3876)が、
「あんた、兄さんの保安官事務所時代の話ようするけど、俺もライセンサーなる前の兄さんとは十回くらい一緒しとるからな。過去の栄光にしがみついてて、みっともないわぁ。見てられん……いや、ええ見世物やね。もっと惨めったらしく過去にすがっててくれてもええんやで」
 断ち切るように言い放つ。地蔵坂 千紘(lz0095)は片目を細めて、
「顔しか能がねぇ癖に言ってくれるよな。中身空っぽなのに。ああ、そうだ。僕がお前食ってその顔になりゃ万事解決だよな! 安心しろよ、僕は誰にも愛されねぇ奴と違って普通で真っ当な人間の記憶があるから!」
「自称普通で真っ当な人間の愛とか迷惑千万やわぁ。そないなもんありがたがってる時点で底が知れるで」
「いい加減にしろ! お前らは俺の歴代彼氏かなんかか!? 人の過去を暴露するんじゃねぇ! プライバシーを尊重しろ!」
 やや顔を赤くしたヴァージル(lz0103)が一喝した。

●NGシーン
 このシーン、最初に「アドリブで広げて」と言う指示が出された。段々ヒートアップしてきた二人は、あろうことか「役者」としての相手の欠点について言及し始めたのである。
「ちゅうか、あんた休憩中も喋りすぎや。これで本番声出ませんー、言うたらお笑いぐさやぞ」
「典くんだって、オフだと遅刻多いじゃん! 君が来るまで僕がお喋りで間を持たせてるんだから感謝してよね」
「待ち合わせ場所は寄席とちゃうねん」
 もはやNGである。それを二人ともわかっているので、ニヤニヤしながらもネタになる程度に相手の欠点をあげつらう。DVDの特典になればいいな、という魂胆だ。商魂がたくましい。
 ちなみに、典の遅刻は先日ヴァージルに誘われた食事でもそうだった。仕方ないから場を持たせるために千紘が喋っていたところに典が現れた。声ですぐわかったとのことである。
 ただし、店は定休日だった……。
「兄さん、誘うなら調べといてや」
「何で俺に飛び火してんだよ!」
「……私、誘われてません」
 グスターヴァスはしくしくと泣き真似をする。普通に忘れていたそうであった。

●劇場版「氷の星を落とせ」より
 典は立ち上がり、グスターヴァスへ歩み寄った。百旗槍キリエを構え、
「俺が審判下すのは人類やのうて、あんたらも合わせた『俺の敵』へや」
 冷たく、凄絶な笑み。グスターヴァスは、身の破滅を悟ってもなお、その姿に見とれたような顔のまま。
「美しいですね、わたしの……冷たい蓮」
「あんたのちゃうわ」
 紅蓮が散った。

●NGシーン
「俺が審判下すのは人類やのうて、あんたらも合わせた『俺の敵』へや」
 冷たく、凄絶な笑み。
 そして世界は静まり返った。グスターヴァスの台詞が続かない。
「もう、ぐっさんNGやんー……て、あれ?」
 典が言うまで、誰もNGを指摘しなかった。見れば、彼に限らず、その場の全員が凍り付いた様に動かない。千紘までもが口をつぐんでいる。
「どないしたんや」
「表情の破壊力が酷い」
「幹事の物言いが一番酷いやん」
「いやー……酷い。これは褒めてる」
 真っ先に正気に返ったのは千紘だったが、それでも典があの表情を作ると、「うーん」と言いながらフリーズする。
 結局、少なくともグスターヴァスが台詞を言えるようになるまではその表情をさせられた。間近で正面から見る都合、彼に耐性がついたのは一番最後だった……。
「……顔が疲れた」
 明日、表情筋が筋肉痛になるのではないか。典は頬を両手でほぐしながらぼやいたのであった。

●シーズン3「病める時」より
 普段の典ならそう言うことはないのだが、身体の不調というものは判断力にも影響するものである。相手も確かめずにドアを開け、
「よう。大丈夫か?」
 私服にマスク姿のヴァージルだったのを見て、そっとドアを閉じようとした。次の瞬間ねじ込まれるスニーカーの足。兄さん瞬発力たっか。
「閉めんな」

●NGシーン
「よう。大丈夫か?」
 私服にマスク姿のヴァージルの台詞の後、典はドアをそっ閉じした。その隙間にヴァージルが脚をねじ込むのだが……。
「……」
「……」
「早うねじ込めや」
「すまん、その、怖くて……」
 閉まるドアに足を挟むのが怖かったらしい。典も、ヴァージルがなかなか足をねじ込まないので、大変にスローなそっ閉じになり、ねじ込み待ちが見て取れた。
「何が怖いねん、そっ閉じやで。早う足出せや。減るもんちゃうやろ」
「足のカツアゲやめろ」

●シーズン4「銀の今に繋がるもの」より
 一人にもしておけないので、典はヴァージルの自宅にパソコンを持ってそこで作業をすることにした。パソコン用の眼鏡を掛けてモニターを見つめ、手元ではキーボードを叩いている典の傍で、ヴァージルはタブレットで絵を描いている。
「これ、つかさね。こっちがおれ」
 灰色の団子に身体のようなものが付いているのが自分、同じ形で黄土色のがヴァージルらしい。てっぺんに十字のついた三角は教会だろうか。
「上手やね。これは何の絵?」
「けっこんしき!」
「さよか」
「えへへ」
 ヴァージルは照れた様に典に飛びついた。自認している身体の大きさと実際の大きさに乖離がある。典は抱き留めながら後ろに手を突いた。
「つかさ、きれい」
 うつくしいものに憧れる目つきで彼は言う。

●NGシーン
「上手やね。これは何の絵?」
「けっこんしき!」
「さよか」
「えへへ」
 ヴァージルは照れた様に典に飛びついた。充分に加減したつもりだったが……勢いが付きすぎて典をそのまま床に押し倒した。咄嗟に受け身を取って事なきを得たが、ヴァージルがやたらと気まずそうな顔をしている。典はにやにやしながら相手の頬を撫で、
「なんや兄さんのすけべ」
「悪かったよ……って、千紘は何してんだ?」
 スマホのカメラでひっきりなしに写真を撮りまくっている千紘。極めて真剣な顔で、
「これを公式アカウントからオフショットの名目で流せばフォロワーが増えるかもしれない」
「やめーや」
「それにしても、なんかこう、割と二次創作がはかどる眺めだったな……解釈の余地がたくさんある……」
 後日、比較的無難なオフショットがSNSの公式アカウントから投稿され、二次創作の投稿数が跳ね上がったと言う。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
こんにちは三田村です。ご発注ありがとうございました。
休憩中にベラベラ喋ってる千紘と、プライベートで遅刻してくる典さんは割と想像できました。仕事じゃ絶対遅れないんだろうなぁ。
またご縁がありましたらよろしくお願いします。

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三田村 薫 クリエイターズルームへ
グロリアスドライヴ
2021年02月01日

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