イラストコンバート第二弾 ハイブリッドヘブン スタート!

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『未来への選択肢 ――縁は宙を越えて友誼を結び、メロディを奏でていく』
吉良川 鳴la0075)&不知火 仙火la2785

●賑やかなバッティングセンターにて 

 ――カ……キィン!
 ここは吉良川 鳴(la0075)が管理人を務めるバッティングセンター。放課後ともなると近隣の野球少年が集まり、威勢の良い声を上げながら白球を打ち上げていた。
「へぇ、ここが鳴の職場か……結構繁盛してるんだな。少し邪魔していいか?」
「ああ、仙火。ここに来るのは初めて、だっけ? 昼間は割と静かなんだけど、ね。放課後になると結構子供達が、来るんだ。冬はほら……地面のコンディションが、悪いし。後は夜、かな。結構会社員も来る。……仙火も遊んでく?」
「ああ、いや。丁度任務の帰りで一息つきたかったんだ。それに何より伝えたかったことがあったし……結婚おめでとう。可愛い嫁さんに恵まれて何よりだな」
 突然の来客である不知火 仙火(la2785)は鳴にそう言うと、結婚祝いとばかりに長細いワインレッドの紙袋を彼に手渡した。
「あ、これは……!?」
「おまえの嫁さん、今んとこ未成年だろ。だから次の誕生日を迎えた時にふたりで封を切りゃ、ちょっとした記念になるんじゃないかと思ってな」
 仙火の贈り物は鳴の妻が生まれた年に仕込まれたワイン。ロゼの優しい赤が桜色の瓶の中でちゃぽん、と揺れた。
「あ、ありがとう……こっちは仙火達に何もしてない、のに」
「なーに言ってんだよ。鳴の後方支援があるから俺達は敵の隙を突けてるんだぞ? 実際、この前も俺の……助けてもらったし」
「それは当たり前の、ことだ。友達の大切なヒトは俺にとっても大切。俺は仙火が悲しんだり悔やむ顔なんて見たく、なかったから」
 そう言いながら仙火をベンチに案内し、早速ホットドリンクを馳走する鳴。彼は仙火に許可を受けた上で煙草に火をつけると、紫煙をぼんやりと吐き出した。
「……なんていうか、俺って子供の頃から孤独に慣れてた部分があって。だから逆に誰かが大切な存在を失って泣くのが、本当に辛いって……嫌だって思ってさ」
「孤独に、慣れてた?」
「ん。小さい頃に両親を亡くして。それからあちこちの施設を巡った、んだ。親切な里親にめぐり会えたことはよかったけれど……今は別に暮らして、る。ここで働くようになったのも、里親にいつまでも助けてもらうのはよくないって思ったから……自立するべきだと、思ったんだ。だから今回の結婚は……もうひとつの人生の転機だと、思ってる。幸せな人生にハンドルをきるため、の。……仙火があの人の想いに応えたのも、そういうことなんだろう?」
 煙草の火はじりじりと紙筒を赤く燃やし、燃え尽きた草が灰となり硝子の皿に落ちていく。それは過去の鳴と重なっているかのように、仙火は感じた。
 鳴はそう呟いたきり、野球の練習に励む子供達を柔らかな目で見つめる。それは彼らの楽しそうな声に自分の過去を重ね、追体験しようとしているからだろうか。
 ――と、その時。SALFから支給された端末が勢いよく震えだした。
『緊急事態発生。昆虫型ナイトメアが住宅街を襲撃中。現場状況を地図と併せて配信しますので、近隣の地域で待機中のライセンサーは大至急対応に当たってください!』
「……! この地図、ここのすぐ近く、だ。すぐに子供達を、避難させないと!」
 急いで鳴は管理室でマイクを握り、防犯カメラで利用者達の人数を確認しつつ最奥の事務室へ隠れるように誘導。
 その手際の良さに仙火はふっと笑みを浮かべる。ここから最速で移動すればナイトメアと十分に対峙し、子供達を危険に陥らせることはないはずだと。
「このナイトメアも運が悪い野郎だな。ここに腕利きのスナイパーとゼルクナイトがいるってのに」
「でもSALFから具体的な情報がまだ来てないってことは……多分、油断できない。きっと他のライセンサーも協力してくれると思うけど……力を尽くす、しか」
 そう言って鳴はLMG―ブラック・ペインA1を肩から下げ、二丁の銃も背に負った。
 仙火もこくりと頷き、腰に挿した刀に手を掛ける。
「バックアップは任せた。その分、俺がお前を護る。調子に乗っている奴に思い切り銃弾をぶち込んでやってくれよ」
「……ああ!」
 勢いよく受付のドアを開け、駆け出すふたり。幾度の戦いを共に乗り越えてきたふたりには悪夢への恐怖よりも、共有する使命感が胸を高く高揚させていた。


●心重ね、剣が舞い、弾は風を斬る

「流石は昆虫型、殻の硬度は上等か!」
 仙火はナイトメアに遭遇すると、幾度か守護刀での攻防を繰り返し――ぐっと力を篭めると、ナイトメアの甲殻の隙間を目掛け『八重の遠』を放った。
 するとそれまでの負傷で弱っていた部位からどばあっと噴き出す粘液。それがなんということか、仙火のイマジナリーシールドを溶かし出した!
「くっ! 体液が溶液仕様かよ!!」
 瞬時に跳び退る仙火。しかしシールドは揺らいでおり、追撃を受ければ仙火自身が負傷しかねない!
 咄嗟に鳴はフィールキュアを詠唱し、仙火のシールドを修復。銃を構えつつ叫ぶ。
「仙火、相手は今までの応酬で体液をかなり、失ってる、はず。俺がサポートするから、ここで一気に!」
「了解だ! これ以上の破壊行動をさせるわけにはいかないからな!」
 と、そこにナイトメアが仙火の腸を掻きだそうと硬い爪を突き出してくる。しかし守護者としての意思を取り戻した仙火はそれを刀でいなすと、そのままナイトメアの守りの薄い首に刀を突き立て――横に払った。
 それはまさしく致命傷だったのだろう。どろりと蛹になる前の幼虫のごとく溶けていくナイトメア。
 念のために鳴が『それ』に弾丸を連射するも反応はなく――戦闘が終了したことを確信した。
「SALF本部か? 先ほど連絡のあったナイトメアの案件は不知火仙火と吉良川鳴の2名で処分した。人的被害はないが、家屋がいくらかやられたのが悔やまれるところか。……至急、住民のケアを頼む」
 仙火は端末にむけて簡潔に報告すると鳴に「サンキュ、助かった」といつもの愛嬌あふれる笑みを向けた。
 その屈託のなさに鳴は安堵し「それじゃ、帰ろうか」とはにかむ。
 もちろん帰る場所は鳴のバッティングセンター。利用者達を事務室から解放すると子供達はすぐさま明るい表情でバットを握る。
 その日常に戻る瞬間こそがふたりにとって心穏やかになる――幸せな瞬間だった。


●好きだからこそ、道を隔てて、自由に

「さっきは一緒に戦ってくれて、ありがと。ところで、さ。仙火の世界に野球ってあった? サッカーとかバスケとか、そういのに似たスポーツとかもあるの、かな?」
 鳴は子供達をどこか楽しそうな様子で眺めている仙火にふと、気になったことを尋ねた。
 彼の目には知らぬものを見る好奇心ではなく、どこか親しみのある優しさが垣間見えたからだ。
 その問いに――仙火は「ああ」と頷く。
「一応、鍛錬の基礎となるスポーツは一通り経験した。ただ、うちは母方が旧い忍びの一族の末裔で、俺はその跡取り。父親も父親で剣術道場をやっていたから、子供の頃からボールを追いかけるより木刀を握る時間の方が長かった、と思う」
「そっか……まぁ、俺もヒトのこと言えないけど、な」
「ん? 鳴も野球経験は少ないのか? こういう生業をしているのに」
「管理人になるにあたって最低限のフォーム指導とかは受けたけれど、野球少年ってほどじゃなかった、な。さっきも言ったけど施設を転々としてたから。友達とキャッチボールをすることはあっても、リトルリーグに参加するようなことはなかった……な」
 ――その言葉に仙火はバツが悪そうに目を伏せた。そうだ、野球は保護者の支援や道具を揃えるための金銭的余裕が必要で。だから鳴が野球に憧れていたとしても……辛い思いをしていたかもしれない、と。
「……ごめんな、変なこと聞いて」
「ん? そんなことないけど。俺は野球はできなかったけれど、でも……それより楽しいものを見つけてたから。音楽があったから。音楽は、楽しい。ひとりでもできるし、機会さえあればオーケストラや合唱団のような大舞台で夢のような音まで奏でられる……夢のような、遊び」
 そう言って、指先をシンセサイザーの上で躍らせるように動かす鳴。その繊細な動きは確かに野球で必要とされる逞しさより、端正な美しさに満ちていた。
 そこで仙火は問う。
「……遊び、か。あのさ、嫁さんと一緒に音楽ユニットを組むとかそういうことは考えたことはないのか? 実現したら結構盛り上がりそうだと思うんだが。嫁さん、新人アイドルだろ? デビューのファーストステップには最適だと思うぞ」
「……ふむ、どうだろう。結構、好きなことって仕事にするのが難しかったりするんだ、よな。アマチュアやデビューしたてのインディーズなら自分の色を強く出しても問題ないけど……プロになると世間の流行とか、プロデューサーの趣味とか、スポンサーの戦略とか、色々絡んでくるから。だから俺は趣味で音楽を続ける、方かな。自信作が出来たら妻に提供するけど、基本的にはこっちメインで……音楽は家で楽しむよ。好きなものは好きなままでいたいから、な」
 鳴はそう言いながら、明らかに初心者らしき少年にバットの正しい握り方の指導に向かう。その指導ぶりは丁寧で、立派な野球コーチのようだった。
 仙火は「……へぇ、やるじゃないか」と呟くとその風景をのんびりと眺める。
 鳴は音楽を愛するがゆえに、音楽を人生の第一線から敢えて切り離し命の友とする道を選んだ。
 だからこそ今は人生を支えるもうひとつのものに真剣に向きあっているのだ――愛する人のためにも。


●鳴の想い、仙火の想い

 鳴の野球指導がひとしきり終わったところで、彼は軽く手を洗うと再び仙火の隣で腰を下ろした。
「そういえば、さ。ペンギン達……ピングイノに帰っちゃったよ、な」
「ああ。ナイトメアに対抗する手段が見つかったんだ、軍人や一部の技術者が帰還するのは当然……無事だといいんだが」
「本当に……座標は見つかっているんだから、後は行き来できるだけの艦とエネルギーの安定供給さえできればいつでも、応援にいけるんだけど」
 SALFの宇宙船用ドッグからは既に二隻の宇宙船が宙に向かって消えていた。そして今はペンギン達が残した宇宙船の中でも比較的損傷の少ないものの修復が進み、新造艦も完成に近づいている。
 それはつまり……この世界と放浪者達との別れが近づいてきているということだ。
「ところで、仙火はこれからどうするん、だ? この世界に残る? それとも?」
「……んー、それは今のところ考え中ってところだな。俺は当初、ナイトメアに攫われた家族を助けるためにこの世界に来たんだ。だから家族が揃った今、その問題は解決してる。だからランダム転移でいいならいつでも帰れるんだが……」
「だが?」
「なんつーかさ、こっちに来てから生まれついての力が使えなくなって落ち込んだりしたけれど。でもそれに対して荒療治気味だったけど発破をかけてくれた良い奴とか、訥々と喋りながらも俺の背中を守ってくれる頼りになる奴とか、ここには良い奴が多すぎて。だからしばらくは……そいつらと一緒に日常過ごしたいなって思うんだ。少なくとも、悪意のあるナイトメアがいるかぎりは戦う理由もあるし」
 そう言うと仙火は引き締まった腿の上でしっかりと両手を組んだ。男に二言はないとばかりに。
 その答えに鳴が微かな笑みを向けると、仙火はベンチに凭れて天を仰いだ。それにしても運命とは不思議なものだと。
「あとさ……俺のいた世界は不思議とこっちと文化が多く重なっていたんだよな。もしかしたらあっちもあっちで宇宙船なんか造って座標探ししてるかもしれねえ。社会の構造や生活文化はよく似ていたからな」
「へぇ……だから仙火達は早めにこの世界に馴染めた、んだ?」
「ん。今思えば……姿かたちだけではなく思考や文化が似た、それでも異なる世界の人間が自然と出逢うというのも不思議な話だよな。それは特異点という科学的なきっかけじゃなくて、俺達自身にも縁があったのかもしれないと思ってる。……もしかしたら俺達の世界とこの世界が行き来できるのも近い未来かもしれない。そしたら嫁さん連れてコンサートしてくれよ。絶対応援に行くからさ」
 ――その願いに鳴は嬉しそうに頷いた。
「ああ、その時はとっておきの楽曲を用意する、よ。友達に聴かせる最高に……ハッピーな奴を」

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
いつも大変お世話になっております!

このたびはノベルのご発注、まことにありがとうございました。
しかも内容がまさかのおまかせ!
こちらもたまらずまったりトークに戦闘、
少し切ない未来予想図までできる範囲で精一杯書かせていただきました。
鳴さんと仙火さんの友情関係っていつも自然体で素敵だなと思っていたので
ある意味節目となるお話を書かせていただけたのもこれも御縁かなと。
仙火さんとご家族のこれからの道程はわかりませんが、
どうか鳴さんと仙火さんの友情が絶えずお互いに幸せであることを願います。
本当にありがとうございました!

また、何か誤りがございましたらOMC経由でご連絡くださいませ。
すぐに修正させていただきます。
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2021年02月22日

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