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『今日、佳き日の2人』
珠興 若葉la3805)&珠興 凪la3804

(結婚……したんだなぁ、俺)
 くすぐったい感情を噛みしめながら、皆月 若葉(la3805)――珠興 若葉は隣を歩く、愛する人の横顔を見つめた。
 2060年11月1日。
 青い空がきれいな、小春日和の秋の日だ。
 珠興 凪(la3804)は声を弾ませ、さっきからずっと楽しそうにワインの話ばかりしている。
 その左手の薬指には、若葉とおそろいの銀の指輪が光っている。
(新しい指輪、まだ何だか慣れないなぁ。だけどこの指輪を、一生付けて過ごすんだよね……これから)
 冷たい銀の指輪が2人に温もりを与えられ、体の一部のように馴染んでいく。
 共に歩む2人の人生に寄り添う、その絆の証としてこのまま、一生。
 まだ少しくすぐったい薬指のこの感触が自分達に馴染んで、いつしか当たり前になっていくのだろう。
 若葉がそんな事を想像していると、凪がこちらを見てにっこりと笑った。

「ねぇ若葉、今年はすごくいい出来なんだって言ってたよね、ノルトブローゼのあのワイン」
「あ……うん! 味見した時すごくフルーティーで、おいしかった!」
「初めてのワイン、楽しみだなぁ。手紙に、『ナッツとチーズが合います』って書いてあったよね? 若葉、何がいいと思う?」
「うーん、カマンベールよりブリーのほうが合うかもしれないなぁ。あ、凪ってブルーチーズ食べられたっけ? あとはドライフルーツのいちじくと、キウイなんかもいいかもね♪」
 晴れてお互い伴侶となった今夜は、凪の20歳の誕生日のお祝いもしたい。
 エオニア王国、ノルトブローゼから送られてきた思い出のワインに合うおつまみや料理を用意して、乾杯しよう。
 ディナー担当の若葉は「一生の思い出になる日だから」といつも以上にウキウキと張り切っていた。

「ねぇ凪、これ買おう! グリル野菜の付け合わせで入ってたらお洒落だよ」
「ロマネスコ? ブロッコリー、じゃない、カリフラワーだっけ?」
「正解♪ あとはパプリカを焼いて、サラダにトレビスとルッコラかな」
「わぁ、なんか大人な感じ! 若葉、クルトン要るよね? ドレッシングは?」
「ドレッシングは俺が作るから任せてよ。あ、凪! そっちのいろんな色のミニトマトのパックとって!」
「これもサラダ? カラフルでいいね♪ 楽しみだなぁ! ねぇ、ワイングラスって家にあったっけ?」
「記念に新しいの買っちゃおうよ、せっかくだし、ペアで♪」
「そうだね! いいのあるかなぁ?」
 夕食は凪のリクエストで煮込みハンバーグになった。
 必要な食材を買ったら、最後はお気に入りのパティスリーへ。
 注文してあったケーキを手に、パティシエが「プレートのメッセージはどういたしますか?」と笑いかける。

「凪様のお誕生日のお祝いでご注文を承っていたのですが、ケーキの上のチョコプレートにお入れするのは“Happy birthday NAGI”でよろしいですか?」
「え、若葉、ケーキは僕のお祝い……でいいのかな? だって、今日はさ」
「じゃあ、“Happy birthday & Happy wedding”って入れられるかな? プレート少し大きめにしてもらって……ギリギリになっちゃうかな?」
「大丈夫ですよ〜♪ お誕生日とご結婚、本当におめでとうございます♪」
 パティシエがそう言ってケーキのプレートを仕上げるのを見ながら、凪と若葉も笑顔を浮かべる。
 お祝いのケーキを大事に持ち帰ると、若葉はさっそく張り切って料理にとりかかった。
「とびきり美味しいの作るから、待っててね♪」 
「うん、楽しみにしてるよ若葉♪」
「よーし、じゃあまずは玉ねぎとニンジンをすり下ろして煮込みソースを……ローリエどこかな?」
「スパイスはそっちのグレーの袋だよ」
「ありがとう。あ、ソースより先にキャロットラぺかな。えーと、クミンシードとオレンジジュースと」
 凪の笑顔を思い浮かべれば自然と笑みがこぼれ、付け合わせにも手は抜かないぞ、と若葉は気合を入れる。
 そしてふと視線をあげると、凪がカメラをこちらに向けてにこにこ笑っていた。
 わくわくそわそわ、ソファにじっとしてられなくなったようだ。
 若葉はニンジンを切る手を止め、左手の指輪をカメラに向けて微笑み返す。

「ふふ……今日の主役は凪だよ?」
「若葉だって主役の一人だよ」
 凪はそう言って自分の指輪を若葉に向ける。
 それを見て、若葉が「うん、そっか」と笑い返す。
 カメラをズームし、凪は画面いっぱいにその笑顔を録画した。
(だって、若葉が僕の20歳の誕生日と結婚初日のお祝いで料理してくれるなんて、一生に一度しかない日だから)
 玉ねぎを刻む手元、スープの味見をする口元、そして時折こちらに向ける「まだ撮ってるの?」という笑顔を凪は映像にしっかりと残した。
 何を食べたか、どんな1日だったか。
 きっとこれをいつか未来の遠い日に見返した時に、愛おしくてたまらなくなるだろう。
 凪は愛する若葉の姿を映しながら、そんなことを思った。
「うん! ソースはこれで完璧♪ 凪、これは野菜やパンに絡めたら絶対美味しいよ!」
「やったぁ♪ じゃあ、そろそろ完成?」
「次で最後の仕上げだよ♪ 凪、ちゃんと撮っててね!」
 グリルして火を通した手作りハンバーグを熱したスキレットに乗せ、若葉が凪のカメラを呼ぶ。
 そしてズームアップされた熱々のスキレットの上に、特性デミグラスソースがジュワーっと音を立てて注ぎ込まれた。 
 ソースがぐつぐつと煮える美味しそうな香りが広がり、凪は思わず「わぁ!」と声を上げた。

「ああ僕もう待ちきれないよ、若葉! 早く食べたい!」
「お皿とか並べてる間に完成するよ。そろそろサラダとか出して、バケット切ろうか♪」
「じゃあ僕、ワイン開けるね。あとはチーズと生ハムとドライフルーツと……!」
 カトラリーを並べ、食卓をセッティングしている間にスキレットの上のハンバーグにソースがしっかりと染み込み、煮込みも完璧に。
 食卓にカメラを固定した2人は新しいグラスにワインを注ぎ、乾杯した。
「20歳の誕生日おめでと、凪」
「ありがとう若葉。こんな風に成人のお祝いができてうれしい。最高の誕生日だよ」
「こちらこそ。今日は凪のおかげで、最高に幸せな1日になったよ」
「末永く、よろしくね若葉。ああ、このハンバーグ本当に美味しいね! ワインも絶品♪ いくらでも飲めちゃいそう!」
「凪、ペース早いよ? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫♪ ぜーんぜん、なんともないよー♪ ふふ、楽しいねぇ若葉♪ これからもずっと、こうやって一緒に思い出作ろうねー♪」
 ハイペースで飲む凪の顔を心配そうに覗込む若葉と、楽しそうにけらけら笑っている凪の様子が映像に納められる。
 愛する人と過ごす至福のひと時だ。
 
「美味しかったね〜♪ 若葉ぁ、僕もうふにゃふにゃ〜♪」
「凪、大丈夫? 少し横になろっか? 寝てもいいよ?」
「ん〜、でもケーキ食べるんだよ〜」
 すっかり酔った凪がソファで若葉にゴロゴロと擦り寄る。
 初めて本格的に飲んだお酒でかなりご機嫌の様子である。
「ねぇ、わかばぁー」
「ん? どうしたのー?」
「わかば、生まれてきてくれてありがとー」
 うふふふ、と笑いながら凪が若葉にぎゅうっと抱き着いた。
 気持ちがあふれ出してしまったように、嬉しそうに笑っている。
 酔った勢い、ではなさそうだ。
 若葉も顔を綻ばせ、凪をぎゅっと強く抱きしめた。
「凪も生まれてきてくれて……俺に出会って好きになってくれてありがと」
「僕と同じー? 嬉しー♪ ホントにね、ホントに、こうやってわかばと一緒にいられて嬉しいんだよー」
「うん、俺も幸せだよ」
「へへへー」
「凪、ケーキ食べよっか?」
「んー、だけどもう少しこうしてたいな……♪」
 ぎゅっと握りあう左手で、2つの指輪がきらりと光る。
 愛する人がいて、同じ思いを重ねて。
 これから2人歩む日々を思い描き、若葉と凪は今の幸せをみしめていた。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ご依頼ありがとうございました、九里原十三里です。
今回は皆月 若葉(la3805)さん、珠興 凪(la3804)さんの入籍した夜のお話を書かせていただきました。
凪さんの20歳の誕生日、という事で一生に一度の大切な日ですよね!

発注文に「楽しんで書いてください」と書いてあったので、楽しく書かせていただいた結果、料理の描写がとっても多くなってしまいました(笑)
若葉さんのお料理を美味しそうに描けていればいいな、と思います♪
改めまして、今回はありがとうございました。
末永くお幸せに♪
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グロリアスドライヴ
2021年02月26日

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