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『Wisteria』
珠興 凪la3804)&珠興 若葉la3805

 4月29日。この日に皆月 若葉、改め珠興 若葉(la3805)と珠興 凪(la3804)はエオニア王国・ランテルナで挙式を上げた。入籍自体はもっと前に――戦いが激化する中で決めた事だ――してしまったけれど、2人とも、お互いの一生に一度とも言うべき姿をこうして見ることができたことが嬉しくて、ほんのちょっぴり気恥ずかしい。
 そんな幸せ一杯の挙式を終えた2人はGWに新婚旅行として目いっぱい楽しむべく、引き続きエオニア王国へ滞在していた。まったりとする時間は勿論、折角エオニア王国へ滞在するのだから色々と楽しみたいと、利便性の良いホテルをバッチリ確保しているのである。
 さて、そんな1日の朝。海辺の見える部屋でゆっくりとルームサービスをとり、2人は濡れても良い恰好に着替えて海辺へと向かった。潮風が海から吹き、日差しで火照る肌を冷やすように撫でて行く。
「ねえ、凪! 気持ちいいよ!」
「わっ!? もう、若葉がその気ならっ」
 ビーチサンダルをつっかけた若葉が海に足を浸した――かと思えば、凪へ水をかけてきて。その水の気持ちよさに凪は笑みを浮かべながら自分もと駆けだしていく。服が濡れたって、今日はすぐ乾いてしまいそうなくらいの快晴だもの。
 予定の時間より早めに出たのを良いことに海辺で遊んだ2人は、概ね時間通りでパラセーリングの受付へ辿り着く。受付を済ませた2人は再び外へ出た。
 パラセーリング、とはマリンスポーツの一種だ。パラシュートをボートで引いて貰うことによって凧のように飛ぶことが出来るのである。
「楽しみだね」
「うん。楽しみ♪」
 2人用のパラシュートとハーネスで自らを繋いだ2人は、どんどん遠ざかっていくボートを見ながらうきうきと表情を弾ませる。弛んでいたロープがだんだんとボートに引かれ、張って――。
「うわぁ……はは、すごいやっ!」
 地面から足裏が離れ、どんどん上昇していく様に若葉は目を輝かせる。隣を見れば、凪も同じようにキラキラとした表情で。
「ほんとに飛んでるみたい!」
 風を受けて、海と、空の青を一望する。下を見ればロープを引くボート上でスタッフが大きく手を振っていて、2人も大きく手を振り返してそれに答え、再び視線を景色へと向ける。
 2色の青。横を見るとエオニア王国をも空から眺められ、そこにはランテルナだったり、先程滞在していたホテルも小さくだが見ることができる。
「あ、見てよあれっ!」
「え? ……あ、前に行った」
 若葉に示されてそちらへ目を凝らす凪。これまで訪れたエオニアの地を見つけてその表情がほころぶ。度々この国を訪れていたけれどこうして全体を、しかも空から見ることができるなんて中々ない機会だろう。
 エオニア王国の人々が、そしてライセンサーたちが復興してきた場所も。まだまだ復興や発展ができる場所も瞳に――記憶に、焼き付けられるように。足が再び地につくまで、2人は飽きることなくエオニア王国の風景を眺めていた。

 次の日の若葉と凪はホテルでのんびり、とはいっても、ホテルの中も時間を潰せるようなサービスは多い。特に2人の滞在する最上階の部屋はとっておきのサービスがついているのである。
「若葉、忘れてないよね?」
「もちろん!」
 2人はいそいそと水着に着替え、部屋から繋がった屋内プールへと向かった。外へ面した方角からは光りが溢れているが、洞窟のようになったそこは基本ひんやりと冷たい。
「つめっ……たくない?」
「温水プールってやつみたいだね」
 プールへ先に手を入れてみた凪が思わず『冷たい』と言いかけ、それからあれ? と目を瞬かせる。隣で同じように手首までプールへ付けた若葉が笑い、それからザブザブ入っていくと振り返って手を差し出した。
「転ばなないように気を付けて」
「ありがとう、若葉」
 凪はその手を取り、同じようにプールへ入る。ゆっくりと首まで浸かって慣らしてしまえば、後に残るのは心地よさだけだ。
 若葉の持ち込んだ浮き輪に2人で捕まり、ぷかぷかと浮く2人。水面を反射した光が洞窟の天井にゆらゆらと煌めいて、ホテルにいるのに全く別の場所にでもいるような不思議な気持ちになる。
「なーぎっ」
「ん? わっ」
 ふと若葉に声をかけられ視線を向けた凪は、飛びついてきた彼と共に一瞬だけプールへ潜る。すぐさま水面へ浮上し、驚いていたから水を飲む暇もなかったけれど――若葉は頭までびしょびしょになった互いの姿にぽかんとして、それから小さく苦笑い。
「ごめんね、勢いつきすぎちゃった」
「……ふふっ。いいよ、でも、」
 でも? と凪を見つめる若葉にふっと笑いかけ、凪もまた若葉へぎゅっと抱き着き返す。再び小さな水柱が上がって、それからやっぱりびしょ濡れになった2人が水面から現れた。
「ふ……ふははっ」
「あはははっ」
 洞窟内に2人分の笑い声が響く。それからは浮き輪でのんびりしたり、こうしてじゃれつき合って水をかけて見たりと繰り返し、時間の経過に気付いたのは差す光がオレンジ色へ染まった頃。凪が気づいて若葉へとそれを示す。
「今なら、ちょうど夕日が見えるんじゃない?」
「ほんとだ! 行ってみよう♪」
 ザブザブと外へ面した方へ進む2人。日の光も和らいで、これから隠れようとする橙の陽光がエオニアの町並みを照らしていた。
「……綺麗だね」
「うん。……一緒に見られて、良かった」
 若葉と凪はどちらからともなく身を寄せ合い、その景色を眺める。隠れ行く光が街並みに届かなくなって――まるで地へ星空を映したかのように、灯りがぽつぽつと煌めくまで。

 プールですっかり遊んだ2人は、次の日ほんのちょっぴりお寝坊さんだ。決まった予定があったわけではないけれど、時計を見て、それから寝起きの互いを見てくすくすと笑い合う。
「ちょっと早いけど、昼ご飯だね」
「ブランチって言うんだっけ? 何か頼んで……カフェとかも良さそうかな」
 ルームサービスは以前取ってみたから、ということで2人は着替え、ホテルに併設されたカフェでサンドイッチなどを頬張りながら本日の予定を話し合う。とはいってもパラセーリングは行ったし、部屋のプールも楽しんだから――。
「街の散策、かな?」
「うん、そうだね。さっきホテルの人から、猫がよくいる場所を聞いたんだけれど……」
 その瞬間、若葉の瞳が輝いたことを凪は見逃さない。可愛らしい反応に小さく微笑んで、凪はそこへ行こうかと提案した。
 街の中でも通称『猫溜まり』と呼ばれるその場所は、どうしてなのかもわからないが猫が絶え間なくいるのだと言う。むしろここにいないのは何らかの脅威――走り回る子供達とか――が訪れた時くらいなのだと凪は人伝手の情報を若葉へ伝える。
「つまり、驚かしたりしなければ猫がたくさん……!」
「そういうことになるね。ほら、あそこじゃない?」
 凪が指し示した先には、猫。よく見るとその先にも猫。猫。猫。猫。端の方でむぎゅっと数匹身を寄せて日向ぼっこしていたり、2匹でじゃれ合っていたり、他の観光客に撫でられて気持ちよさそうにしていたりと様々ではあるが、怯えるような子はいないようだ。
 なぁう、と不意に足元で鳴き声がして凪は視線を向ける。お行儀よく座った猫が凪を見上げ、再びなぁうと鳴いた。愛らしさに微笑みを浮かべ、若葉を呼ぶと猫もまた若葉の存在に気付く。
「どうして欲しいのかな?」
「うーん……撫でて欲しい、とか?」
 しゃがみこんで視線の高さを近づけ、そぅっと手を伸ばす若葉。猫は逃げ出すことなく若葉に撫でられ、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「良かった、気持ちよさそう」
「若葉は手慣れてるね」
 気づけば他の猫もどんどん近づき、次は私だ僕だと言わんばかりになでなでを迫ってきている……ように見える。凪もよしよしとその辺りにいた猫を撫でてやると、猫はくたんと体を投げ出してされるがままだ。
「すごく警戒心がないように見えるんだけど……でも、危険がせまったらサッと逃げちゃうんだよね」
「そうそう。そのギャップも可愛いんだよ♪」
 なんて語りながらひとしきり猫を可愛がり、気が済んだら――なんてことはないので、別れを惜しみながら街の散策へ繰り出す。これまで行ったことのある場所も、ない場所も、食したことのある物も、そうでない物も楽しんで。2人がホテルへ帰ってきたのはすっかり暗くなってからだった。
「エオニアの猫も可愛かったねー」
「若葉、すごく楽しそうだったよ」
 満喫したと言わんばかりの表情にふふっと凪が笑う。ああでも、今日はまだ終わらないのだけれど。
「先どうぞ」
「ありがと……ん?」
 パチリ、と部屋の灯りをつけた若葉が目を瞬かせる。そこは数日2人で過ごした部屋のはずであるが、出た時とは様変わりしていて。
「若葉、23歳の誕生日おめでとう」
 凪にそう告げられて、若葉はああ! とまさに『思い出した』。というのも、式を挙げてここ数日が楽しすぎて、すっかり自分の誕生日が抜けていたのだ。
 凪自身は若葉とともに出かけていたのだから、おそらく凪がホテルスタッフにお願いして飾り付けてもらったのだろう。
「ふふ、ありがと。凪」
 振り返ってぎゅうと抱きしめる若葉。凪も抱きしめ返して、彼と同じように満面の笑みを浮かべる。
 祝ってくれたことが嬉しくて。
 喜んでくれたことが嬉しくて。

 嗚呼、どうか、どうか。こんな幸せが来年も再来年も、ずっと先の未来まで続きますように。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 お待たせいたしました。新婚旅行のひと時をお届け致します。
 最後となる納品で、感慨深い気持ちになりながら執筆させて頂きました。
 Wisteria(藤)は4/29の誕生花ともなっている花なのですが、『決して離れない』という花言葉がお2人に合っていると思いタイトルにさせて頂きました。
 これからも沢山の思い出を作りながら、未来へ進み続けるだろう若葉さんと凪さんへありったけの祝福を。
 まことにご発注、ありがとうございました……!
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2021年03月25日

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