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『【Great friend vacation/Forward】 』
空閑 ハバキ(ga5172)

●夏夢

 ――夏が、来る。

 眩しい陽光に揺れる一面の向日葵に、染み入るような蝉の声。
 涼を求めた岸辺であがる、水飛沫と歓声。

 あるいは祭囃子に、縁日屋台。
 夜には鮮やかな炎の芸が、大輪の花を空に咲かせ。
 時には、揺らめく蝋燭の火に儚い思いを重ねる。

 辿る幾多の記憶は、尽きず。
 これより迎える記憶も、また尽きない。
 ……そして。

 今年も熱い、夏が来た――。


●親友バカンス
 外へ飛び出したくなるような、夏空の下。
 思い立って、スタジオを兼ねた友人の部屋を訪ねてみれば、あいにくの留守だった。
 が、そこで踵を返さず、勝手知ったる何とやらの如く、我が部屋のようにカギを開けて侵入する。
 ぐるりと室内を見下ろし、とりあえずリビングの真ん中にぽつんと座って、間もなく。
 ガチャガチャと乱暴にドアを開け、暑さにうんざりした表情で戻ってきた部屋の主は、ちんまり陣取った彼の姿に凍りついた。
 そんな相手に、きらきらと彼は目を輝かせ。
「アス、海に行こーっ!」

 ――何かを言いかけた友人は、彼の一言でそれが吹き飛んだのか、再び言葉を失った。

   ○

「わーい、海だー!」
「おー、絶景絶景ッ!」
 どこまでも青い光景の中へ、歓声をあげて同時に駆け出す、20代後半の男二人組。
 競うように寄せる波へ正面から突っ込んで、思いっきり飛沫を散らす。
「んー、気持ちいいーっ」
 波打ち際から一気に腰が沈むあたりまで進むと、感触を楽しむようにハバキは両手で水を叩き、あるいはすくい上げた。
「暑いのはアレだが、やっぱ夏はいいなぁ……」
 額に手をかざし、身を焼くように照らす眩い太陽をしみじみとアンドレアスが見上げる。
 彼の傍らでは、身を屈めるようにざぶんと頭の天辺まで海へ潜ったハバキが、水をくぐって顔を出し。
「ぷはぁ!」
 大きく息を吐くと、ふるふると犬のように頭を勢いよく左右に振った。
「ちょ……冷てぇだろ、ハバキッ」
「アスも潜ったら? 楽しいよ」
 跳ね上げた水滴がかかり、抗議するアンドレアスの言葉をがっつり無視して、無邪気な微笑みを返す。
 僅かに前傾姿勢を取って肘を曲げ、手の平を上にして水へ浸し。
 屈託のない笑顔へ、力いっぱい水をかけ返した。
「うぇ、しょっぱ〜っ!」
「そりゃあ、海の水だからな」
 濡れた手で顔を拭っても大差はなく、上目遣いで見返すハバキにアンドレアスがニッと笑ってみせる。
「えぇい、仕返しー!」
 のん気に笑っていると、報復攻撃が顔面に直撃し。
「こらっ。先に水を飛ばしたのは、そっちだろーがッ」
「そっちが、ぼーっとしてるからだろーっ」
「別に、ぼーっとしてねぇよッ」
「してたっ。あと水を飛ばしたのは、アスのが先だからっ」
 他愛もない事を言い合いながらバシャバシャと掛け合い、二人が撒いた水飛沫が陽光を反射した。

 ある意味、不毛な男同士の水の掛け合い合戦の後。
「あー、休戦休戦。一休みだ」
 水を滴らせる前髪をかき上げ、後ろで束ねた長い髪を振りながら、先にアンドレアスが音を上げた。
 ざぶざぶと水を分けて来た方向へ戻る背中を、じーっとハバキは緑の瞳で追いかけ。
「と〜ぅ」
「ぐあぁッ!?」
 後ろからぶら下がる重量に、当然バランスを崩すアンドレアス。
 どぼーんと盛大に水柱を上げてひっくり返った後、浮力に助けられながら、水面へ顔を出す。
「ビックリした?」
 首から背中へぶら下がった背負ったままのハバキは、楽しげにからからと笑った。
「お前は、おぼれさせる気か!」
「だってアス、疲れたとかって言って逃げる気だろ?」
「そうは言うが、俺も来年は30代突入だぜ」
「でも、来年までは20代だから問題ナシ!」
「そういう問題じゃねぇ!」
 水かけ合戦の次は口での『戦闘』を続行しながら、背中にハバキをぶら下げたアンドレアスは、ダルそうに波打ち際へ戻ってくる。
 さすがに陸へ近付くと、おんぶお化けと化していたハバキは友人の背中から手を離した。
「アス……あれ、あそこ」
 ちょいちょいと肩をつつくハバキに、何事かと足を止めて振り返れば、きらきらと瞳を輝かせて人々が遊ぶ砂浜を指差し。
「おにゃのこの水着ー、かわいーい!」
「お? 確かに、なかなか……って、お前……」
 含みのある言葉に気付いたハバキは、足首を洗う波を蹴り上げる。
「浮気じゃないよ! 彼女は、別格だから……っ」
 嬉しそうに、そして誇らしげに、二つほど年下の友人は胸を張った。
 それから数歩進んで、足を止めたまま友人に気付いて振り返れば、アンドレアスが目を細めるように彼を見つめている。
 ――その表情は、さっきの太陽を見る仕種とどこか似ていて。
「ジュース、買ってくる! さっき塩水飲んじゃったから、口直しにアスのおごりで。決定!」
「こら、勝手に決めるな」
 半ば無駄とは思いつつ抗議してみるが、ビーチサンダルを引っ掛けたハバキは楽しげに砂を蹴って駆け出した。

 ビーチボールでバレーをする水着姿の女性達を眺め、惜しいプレーにはやんやと声援を送って、微妙に寄り道しながらハバキは砂浜を横切った。
 海への遊歩道に近い場所まで戻ると、ようやくビーチパラソルの下に置かれたアイスケースが目に入る。
 ビーチサンダルをぺたぺた鳴らして小走りに駆け寄ると、彼は水を張り、氷を浮かべたボックスを覗き込んだ。
 浮かぶ缶にアルコール飲料のロゴを見つけるものの、手に取ればまだ生暖かく。
「これ、入れたばっかり?」
 暑そうに座り込んだ『店番』の男に聞くと、面倒そうに頷かれる。
「じゃあ、これでいっか」
 指が痺れそうな冷たい水の中から炭酸飲料とオレンジジュースの缶を拾い、ハバキは男に小銭を渡した。
 表面に水滴が浮かぶ缶を手の熱で暖めないようにしながら、砂に残した足跡を辿るように来た方向を戻る。
 アンドレアスと別れた付近まで来ると、ハバキは背伸びをして、きょろきょろと周囲を見回した。
 やがてすぐに、涼しげな木陰のレジャーシートで、怠惰に寝っ転がっている友人を見つける。
 木漏れ日を避けるためか、顔に麦わら帽子を乗っけていた。
 これ幸いとハバキは足を忍ばせて、そっと友人へ近付き。
 無防備な脇腹に、冷えた缶をピタリと押し当てた。
「だぁ……ッ!?」
 当然、麦わら帽子を飛ばし、反射的に身を引くアンドレアス。
 缶を傍らへ置いたハバキは思いっきり笑いながら、落ちた麦わら帽子を拾って砂を払う。
「ぷははっ、もしかしてアス、寝てた?」
 目に浮かんだ涙を拭うハバキを、アンドレアスは恨めしそうに見上げた。
「……っまえ、なぁ……寝てねーけど、半分寝てたぜ」
 前髪をかき上げながら口を尖らせ、それから缶へ目をとめる。
「……ビールじゃねぇ」
「おごられるんだから、文句言わない」
 笑いながら、ハバキは炭酸飲料の缶を突き出し。
 半ば眠そうにアンドレアスはじっと缶のロゴを凝視した後、おもむろにごろりと寝返りを打って、背を向けた。
「もしかして、拗ねた?」
 寝転んだまま尋ねる言葉をスルーされて、ハバキはむっと眉根を寄せる。
 とりあえず、レジャーシートを押さえるように缶を脇へ置き。
 そして背中を向けた相手に気付かれぬよう移動すると、ガシガシと両手で砂を掘り、友人の足を埋め始めた。
「埋めようとするなー!」
「え?」
 慌てて身を起こした友人へ、にこやかな表情で問い返すハバキ。
 レジャーシートからはみ出た足は、既につま先からふくらはぎ辺りまで砂が盛られていた。
「だって、せっかくジュース買ってきたのにアスはいらないって言うし、寝そうだし!」
 ぶーっと頬を膨らませるハバキに、ぱったりと上体を倒すアンドレアス。
 そのまま、二人の間にしばしの沈黙が流れ。
「ちょ、あーそーぼーおーよーっ? アースーっ!」
「うるせーぞ! 相手してやるから、泣くな!」
 砂を叩いて固めながらハバキは訴え、埋められる前にアンドレアスが折れた。

   ○

 男二人、砂の上で並んで座りながら、すっかりぬるくなったジュースを煽る。
「不味い」
「すぐ飲まないからだよ」
 文句を言うアンドレアスに笑ってから、ハバキは立てた膝を引き寄せ、顎をのっけた。
「今度は、ボード持って来たいね」
「ああ、ビート板か」
「ちがーう、サーフボードだってばっ」
 頬を膨らませて訂正するハバキに、今度はアンドレアスがけらけら笑う。
 喉の奥で唸ってもまだ彼は笑い続け、遂にハバキが脇腹を小突いて『実力行使』した。
「……アス?」
「ん?」
 ひとしきり笑って一息つくと、おもむろにハバキから口を開く。
「あのさ。今日、楽しかった?」
「まぁな」
 短く、そっけない即答。
 だがそれで満足だと言わんばかりに、無邪気な笑顔をハバキは返した。
「よかった」
 午後もかなりの時間を過ぎ、浜辺で遊ぶ声は随分と減ってきている。
「夏は……いいよな。夏の海は、もっといい」
 呟く言葉に、隣の友人へ目をやってハバキは小首を傾げた。
 缶を手に片膝を立て、アンドレアスは水平線を眺めている。
「俺の地元は、港町でさ。年のうち4分の3は馬鹿みたいに寒くって、昔の栄光にしがみついてる古い街」
 一息置いて缶を口へ運んでから、彼は続きの言葉を紡いだ。
「いつ見ても、海は灰色で。早く街を出たくて、しょうがなかった。けど、やっぱ俺は、今も海が好きなんだよな」
 珍しい、と思った。
 自分の事を話す友人の横顔を、ハバキはじっと眺める。
 寒々しい、灰色の海。
 自分の故郷、ロスの海とは全く違う、感覚的にも距離的にも『すげー遠い』海。
(「……アスは、そういうトコで育ったんだ」)
 考えてから、妙に納得する。
 そしてオレンジジュースを一口含むと、ぬるくなったせいか妙に酸味を感じて、ハバキは酸っぱそうに口をすぼめ。
 それをやり過ごしてから、海の彼方を見やった。
「俺の育った街は、昼も夜もないくらいやたらと賑やかで、夏は馬鹿みたいに暑い街だったよ。海も、陽気で、だだっ広くて……でも」
 華々しい光景も今は遠い記憶のものだが、街は変わっても海はおそらく変わらない。
 ――遥か故郷を離れても、なお。
「其処も此処も、繋がってんだよな」
 さらりと、潮風が髪を撫でる。
 休むことなく打ち寄せる波は静かで、昼間の喧騒が嘘のようだ。
 さんざん熱を撒き散らした太陽は西へ傾き、海も空も赤く染まっていく。
(「でも、おかげで俺等は……」)
 知らずと口元に浮かんだ笑みに気付き、ハバキは隠すように立てた膝を手で抱えて、頬をのせ。
 何気なくそのまま、目を閉じる。
 似てるとこと、似てないとこが、だいたい半分ずつくらい。
 生まれた場所も育ってきた環境もこれまでの生き方も、全部いろいろ違うけど、何となく気が合って、馬鹿もやれて、何も話さなくても一緒にいるだけで心地いい友人。
 隣にいるアンドレアスがそんな存在であることが、改めてちょっと嬉しい。
 お互いの故郷の海は全然違う海だけど、海の街で育ったのは何かの縁なのかなぁとか、考えていると。
 かくんと、眠気に首が揺れた。
(「珍しく、壮大な事考えてたから……かな?」)
 そんな事を、頭の片隅でぼんやりと考える。
「なぁ、ハバキ。帰るトコがある、って実はすごく……」
 かけられた声は判るが、言葉の意味はもう届かない。
 波の音と耳に心地よい低音を聞きながら、ハバキは眠りの海へ舟を漕ぐ。

 嘆息し、苦笑したアンドレアスは、砂を払って麦わら帽子をハバキへ被せ。
 人の気配が少なくなった砂浜の上には、座る二人の影が長く伸びていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【ga5172/空閑 ハバキ/男性/外見年齢22歳/エクセレンター】
【ga6523/アンドレアス・ラーセン/男性/外見年齢28歳/サイエンティスト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 大変長らく、お待たせ致しました。完成がずいぶんと遅くなって、申し訳ありません。
「なつきたっ・サマードリームノベル」が完成いたしましたので、お届けします。
 何か電波がピピッと飛んできたので、初っ端から飛ばし気味になっていますが。ががっ!
 弄り大歓迎という事で、相当ノリで書いています。お二人の掛け合いが楽しかったので、個別シーンの部分は少なめとなりましたが……(汗)
 もしも「コレはちょっと違う」なトコロがありましたら、遠慮なく容赦なくリテイクをお願いします。
 大阪オフでは、本当にお疲れ様でした。そして、こちらこそお世話になりました。皆さんが楽しそうに話をしている姿を見るのは、MSとして本当に有難く嬉しい限りです。
 さて、遊びにいった海ですが、どこかのリゾート島の浜辺をイメージしてみました。
 ボケ過ぎ、ツッコミ過ぎてないか、ドキドキしていますが、素敵な友情を書かせていただいて楽しかったです。
 最後となりましたが、ノベルの発注ありがとうございました。
(担当ライター:風華弓弦)
なつきたっ・サマードリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2009年09月16日

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