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『+ ララ香辛料店隊商護衛―そして旅立つ― + 』
ルド・ヴァーシュ3364)&ザド・ローエングリン(3742)&マーディー・ララ(3755)&(登場しない)



 護衛採用通知は面接の翌日に届いた。
 郵便配達人から受取った手紙には採用の言葉と共に依頼の為にまた店に来て欲しいと記されている。
 ルドはそれをザドにも読ませ告げるとクローゼットの前へ立つ。
 依頼のために普段着ではなく仕事着を選ぶのだ。
 上の服装は焔の文様が入った生地に胸元から腹部は白紐で結ばれているもの。その上には白いパーカータイプの羽織着。下は革ベルト、それからパンツルックだ。
 通常の衣服より防御力も上がるし何より動きやすい。
 ルドもベルトが多々取り付けられた黒の特殊スーツに身を包み込み、簡単では有るが髪をセットする。ザドも自分の髪に革紐を括りつけた。


 今日の二人は一段と気合を入れ店へと向かう。
 再び訪れた二人を出迎えてくれたのは依頼主のマーディー・ララだった。


「で、使ってみてどうだった?」


 開口一番彼女は二人にそう質問する。
 ニヤリと笑んで問う彼女に対し二人は何気なく顔を向き合わせた後、各々感想を述べた。


「おにく、おいしくなったよ!」
「料理の幅が広がりそうだ」


 その表情は笑顔以外の何者でもない。
 依頼の面接の後、貰ったスパイスで何を作ったかと言えば肉野菜炒めと卵スープ。それに買ってきたパンを温めて夕食にした。そう告げればマーディはうんうん、と幸せそうに微笑みながら頷いた。
 彼女は香辛料店の娘。
 スパイスを使い誰かが楽しそうにする姿を見るのが何よりも好きなのだ。
 ほぐれる緊張に和む空気。ほんわかとした雰囲気が三人を包み込む。


「うんうん、あんた達ならそう言ってくれると思ってたよ」
「でもたまねぎはめにいたい〜……」
「次はゴーグルでも付けてやるか?」
「あはは! たまねぎを切るのは確かに難しいね。子供は大人に比べて物との距離が短いから尚更さ」
「でもね、あのスパイスを使ったおにく、ほんとにおいししかった!」
「あれはうちで一番売れている基本のブレンドスパイス。初心者も使いやすいくせの無いものなんだ。あとは好みで香辛料を足したり引いたりしてもいいんだよ。時間が有ればまた私が教えてあげるけど――おっと、今日は打ち合わせのために来てもらったんだ」


 いつの間にか店先で談話し始めたが、ふとマーディは時計を見遣り苦笑する。
 そして二人を手招くと店の奥へと案内を始めた。
 そう、今日の目的はスパイス談義ではない。隊商の旅程を打ち合わせるための会議に二人は参加しにきたのだ。奥へと歩を進めれば旅に同行する他の従業員達も同席している。それは以前店の方で働いていた人間だったり、初めて見る顔だったりと。
 ルドもザドもまた自己紹介をし、彼らからも紹介を受ける。
 その際出来るだけ特徴や印象を頭に叩き込むと、地図を広げた机――依頼主であるマーディーを中心に皆体を寄せた。彼女はペンの背で地図を示しながら適切に説明を始めた。


「まず危険な区域は当然避けて宿泊所を決めたい。私は此処と此処、そしてこの道筋なら良いと考えている。反対にこっちの道は駄目だね。地盤が緩くて危ない上に崖も多い。反対に盗賊の危険性は低いが荷が駄目になっちゃ元も子もない」


 マーディーの意見に対して従業員が持つ知識を合わせる。
 此処は駄目、此処がいい。
 そう口に出すのは簡単だ。しかし彼らも仕事人。今まで培ってきた知識と幅広い情報が的確なルートを生み出していく。
 やがて幾つかの安息所を定めるとマーディーは其処に僅かな印を付けた。


「事が迅速に進めば問題は無い。だがもしもの時にはルド、それにザド。二人の出番だ。分かってるね?」
「ああ、しっかり護らせて貰う。被害は最小限に抑えるように努めよう」
「ちゃんとスパイスたちまもるからね!」
「二人の腕は確かだ。頼りにしてるよ。さて次に現地での分担だが――」


 マーディーが周りに役割分担を与え指示を下す。
 それに対して抵抗があればそれに対する意見を述べる。其処に上下関係などなく非常に気さくに……けれど内容は真面目に話し合っていた。
 マーディー達の会話、そして情報をルドとザドは懸命に頭の中に叩き込み、そして自分達がどう動けば良いのかイメージしていく。


「悪いけど二人にも昼夜交代しての見張りの他に荷積みの仕事も手伝って貰うよ。なんせ最小人数で動くからねぇ。人手が足りないんだ。その分の金銭も弾むから宜しく頼むよ。――とは言ったものの、皆、こき使うんじゃないよ。護衛が力尽きちゃ意味が無いからね」
「マーディーが一番人使い荒いくせに」
「おや、今発言したのは誰だい。後で頬を抓ってやろうじゃないか」


 他愛ないふざけ合いに皆声をあげて笑う。中には口笛を吹いてからかう者も居たほどだ。
 長閑な雰囲気にわずかばかり緊張していた二人も思わず頬が緩む。マーディは再び目的地を指し示した。


「目的地は山岳地帯の小さな村、アルフォランス。毎年訪れてはいるが油断は禁物。情勢は日々変わり行くものさ。モンスターが出るかもしれない、いつの間にか根城を変えた盗賊団に襲われるかもしれない。そうでなくとも自然災害に見舞われるかもしれない。何が起こっても大丈夫だと言い張れる様に万全の準備をして行くよ。全ては美味しいスパイスをお客様にお届けするためにね」


 彼女はそう言い終えると出発時刻を告げる。
 そして解散の挨拶を簡単に終えると集まっていた従業員達はどこか楽しげな表情を浮べながら店の方へと姿を消した。


「さて、分からなかった事があるなら今のうちに何でも聞いておくれよ。現地に着いてから『聞いてなかった』って言うのは許さないからね」
「じゃあ一つ聞く。アルフォランスには毎年訪問していると言っていたが、今までに何か起こった事は?」
「途中の山で飛行型モンスターと出遭った事があるよ。その時は護衛がいなくて自分達だけで何とか対処したけど、馬車や肝心の荷に損害が出てね。それ以来、絶対に安全だといえる場所でない限りは護衛を付ける事にしているんだ」
「飛行型、か。……他には?」
「うちの馬車じゃないが盗賊に襲われたっていう話を聞いたね。何でも根こそぎ持っていかれたって話だ。幸いにも死人は出なかったらしいけど」


 マーディーの回答に対しルドは眉間の皺を深める。
 ちらっとザドを見れば相手は特に何も感じていない様子。むしろ逆に「そんなわるい事どうしてするの!」と怒りを燃やしている。ルドは親指の腹で唇を撫でる様に拳を口元に触れさせた。
 そんな相手に対しマーディーは手をあげ、そしてやんわりと背中を叩いた。


「気楽にやりな。そう堅苦しい話じゃない。こっちから何かを仕掛けるわけじゃないし、不運な出来事がそう頻繁に起こってたまるものか。さ、今日はこのくらいにして出発まで自由に準備をしておくれ。そうだ、先日は肉料理に合うものを渡したから今日は魚にあいそうなものを選んであげるよ。それを使ってザドと一緒に美味しいものを作って食べな」


 おいでと彼女は二人を店の方へと手招く。
 ザドは素直に興味を抱き後を追った。やがて店の方からは二人の楽しげな声が聞こえ、その音を聞きながらルドは自身の手を見下ろしぎゅっと拳を作る。
 今は前へ。
 それはこの依頼が成功すればザドを独りにしなくても済むという期待を込めて――。



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 そして数日後の早朝。
 マーディー率いる隊商はエルザードを出て東へ。


 馬車に揺られながらルドとザドは身を寄せる。
 まだ依頼は始まったばかり。
 だけど、これは――自分達が乗り越えるべき道だとそう信じ、二人は目を伏せた。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3364 / ルド・ヴァーシュ / 男性 / 26歳(実年齢82歳) / 賞金稼ぎ / 異界人】
【3742 / ザド・ローエングリン / 中性 / 16歳(実年齢6歳) / 焔法師 / レプリス】
【3755 / マーディー・ララ / 女性 / 25歳(実年齢25歳) / 冒険商人 / 人間】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、発注有難う御座います。
 本日は会議〜出発までを執筆させて頂きました!
 やや堅苦しいかなと思いますがそこはマーディーさんの存在が大きく、柔らかなものになったのではないかなと思っております。
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2009年09月08日

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