自称陰陽師、相方は黒髪ロングの狩衣少女

ここには彼と彼女の出会いが綴られている。

沖　一真
◆経歴
　幼少の頃、現在の契約者月夜と出会う。ただし、それは現在の月夜そのものではなく、異世界にいた頃の月夜と鏡越し（ライヴスを介した物と思われる）に邂逅したに過ぎない。そこで彼が聞いたのは、ただひたすらに戦いに明け暮れる少女の敵に対する冷酷な声とその裏にある本当の気持ちであった。

　それから5年後、彼は愚神に襲撃される。異界接触後の多くの悲劇と同じように、彼もまた愚神に無慈悲に殺害されるところだったが、度重なる幸運とHOPEエージェントによって救われる。彼の中にエージェントという将来の青写真が出来たのはこのころである。

　月夜と再会したのはそれからしばらく後のことだった。正確には2人は直接出会ったことは無かったのだが、それでも一真の方は月夜の声を覚えており、そのことが嬉しかった月夜は彼との誓約を果たす。

　再会した時、月夜は異世界に来たばかりであったが、その時、彼女は一人の愚神を共に引き連れていた。その名は「沙夜」姉妹とも言える対になる存在であり、尚且つ宿敵。月夜は力を大いに損耗しており、半ば邪英化することで沙夜と渡り合っていた。だが、それも限界に達し、姉妹である愚神にあわや殺されるところでの、一真との誓約であった。

　誓約を果たした一真は、目の前の愚神を月夜の指示通りに戦い倒すことに成功する。が、沙夜にとどめを刺す事が彼には出来なかった。その心の隙を突かれそうになったところを間一髪で、月夜が身体の制御を半ば奪うようにして沙夜にとどめを刺した。

　殺した時の感触を一真は、それ以降も鮮明に脳裏に焼き付けることとなるが、その出来事のおかげで、エージェントになった後も彼は愚神や従魔相手にとどめを躊躇うことなく刺せるようになったのである。

　当初、月夜は必要以上の事を喋ることはない寡黙な少女だったが、一真の無鉄砲さや裏のない明るさに感化されていき、現在のような性格になった。

月夜
◆経歴
　元の世界では愚神を引き寄せる体質であり、愚神と戦う強大な霊力を持っていた為、「愚神を寄せる月光」と呼ばれていた。

　愚神を引き寄せ戦うその姿から、彼女の存在は「神」として崇め奉られたが、彼女自身は「一人の少女として扱って欲しい」というのが本音であった。そんな背景から彼女は守るべき人間に対して他人行儀であり、尊大な態度を取っており、時には彼らを恨み妬むことすらあった。そして、その怨念はいつしか彼女の影なる存在として「沙夜」を生み出してしまう。

　沙夜は月夜とは対となる存在であり愚神で、月夜の影から生み出された。彼女は無知蒙昧な人間こそ月夜が殲滅すべき存在だとして、周囲の人間の殺害を密かに実行する。不可解ながらまるで月夜がやったかのような跡が残された殺害事件に、月夜は次第に周囲の人間から命を狙われるようになる。

　月夜は自分が沙夜を生み出したということを知らなかったが、何か違和感を感じるのも確かだった。彼女はこれまで愚神から守ってきた人間達に命を狙われつつも、真の犯人を捜し、そして沙夜を見つけることが出来たものの、それは最早手遅れであった。

　沙夜は月夜と同じく愚神や従魔を引き寄せる体質の持ち主であり、尚且つその能力を彼女は自分の意のままに操ることが出来た。

　月夜のいた国は、大挙して押し寄せた愚神達によって滅ぼされ、一人戦い、生き残った月夜は異世界へと逃げのびる事となる。

　逃げた先で月夜は一真と共鳴の誓約を果たし、沙夜を結果的には自分の手で討つことに成功する。しかし、沙夜が自分自身の「影」から生み出された人間であること、そして、その「影」が自分のいた世界を滅ぼしてしまったことを悔いる。

　その後、しばらくして一真から自分のいる異世界が見える鏡を渡され、沙夜に滅ぼされた国にいた人間達が少しずつではあるが立ち直っていく姿、愚神から守ってくれた月夜に感謝し、疑った事を懺悔する人々の姿を見ることとなる。　

　異世界に来た当初は、誓約者である一真に対しても「君」と他人行儀に呼んでいたが、一真は断片的に月夜が元の世界でどんな目に遭ったのかを理解していた為、特には気にしていなかったようである。

　その無鉄砲さと明るさ、なにより自分の事を気遣ってくれる一真に感化され、今の月夜がある。