精霊達の願い 〜アーレアン〜
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■シリーズシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:6 G 32 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月25日〜07月07日
リプレイ公開日:2008年06月30日
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●オープニング
「やっぱり一人だと心細いもんだね」
真夜中の森の中、アーレアンは大木の上で寝ていた。太い幹が分かれた場所は縮まれば寝転がる程度の広さがある。念の為、落ちても平気なようにロープで身体と幹を結んでおいた。
森を訪れたのには特に理由はない。ただ一人になりたい気分になり、パリを飛びだしたのだ。この森に辿り着くまでの夜は、立ち寄った町で宿をとってきた。
たまに獣の遠吠えや梟の鳴く声が静かな森に響く。なかなか寝付けずに、アーレアンは二つの月を眺める。近くの湖面にも月が映り込んでいたのだ。
「ん?」
月明かりに反射して何か蝶のようなものがアーレアンの視界を通り過ぎた。辺りを見回すと枝の上に座るフェアリーを発見する。
「冒険者が飼っているの以外には滅多にみな‥‥いの‥‥に?」
いつの間にかアーレアンはたくさんのフェアリーに囲まれていた。
「えーと、俺、なんか悪いことした?」
アーレアンは冷や汗をかきながら木の幹に背中を這わせる。
「お話があるのです。降りてきて頂けますか?」
下方から声が聞こえて、アーレアンは見下ろす。そこには少女が一人立っていた。
五秒程、アーレアンは考えを巡らす。覚悟を決めると木の上から飛び降りた。
「この近くには人家はないはずだ。きみは何者だ?」
「わたしは湖の精霊、フィディエル。名前もあります。クールネと呼んでもらえますか?」
「‥‥俺はアーレアン・コカント。‥‥何がおかしい?」
「いえ、なんにも」
そういいながらもクールネはアーレアンを見ながらクスクスと笑った。
「俺には覚えがないが敵だというのなら戦うぜ。ただやられるのはゴメンだからな」
アーレアンは魔法が唱えられるような体勢をとる。
「お願いがあるのです。まずは聞いて下さい」
クールネは湖近くにある岩へと座り、話し始めた。
この森の地下には古代遺跡の迷宮がある。どこからかやって来たのか、もしくは何からの魔法で保存されていたのかはわからないが、数ヶ月前から『ゴーゴン』が徘徊するようになった。
ゴーゴンとは髪の毛一本一本が蛇で出来た女性の姿に似たモンスターである。上半身は人だが下半身は蛇のようであり、指には曲がった爪が生えている。
森の様々な個所に古代遺跡への出入り口は存在する。ゴーゴンは地上に現れては森に住む人や動物を石に変えてしまった。
いくつかあった人の集落もゴーゴンを恐れてもぬけの殻となる。それを機にしてオーガ族が我が物顔で森を蹂躙し始めたのだ。
「ちょっと待てよ?」
クールネの話にアーレアンは疑問を持つ。
人は動物を狩るし、木も伐る。アーレアンも腹を満たす為に動物を狩り、落ち枝がない時は木を伐って焚き火をした事もある。
森を壊す対象が人からオーガやゴーゴンに変わっただけではないかと、アーレアンは考えたのだ。
クールネに訊ねると意外な答えが返ってきた。
人は自分自身の未来の為、過度に森を傷めるような真似はしてこなかった。比べてゴーゴンとオーガ族の行動は目に余るという。
「もっとも、人が同じような行動をとれば敵と見なします。ただ、これまではよい関係であったのです。人と湖、森は」
この湖は森があってこそとクールネは語った。大樹が水を蓄えて湖に川へ少しずつ流してくれるおかげで常に潤いがある。
「そうさ。だからなんとかしたいんだよ。頼むよ、人間」
後ろから声が聞こえてアーレアンは振り向く。今度は少年のお出ましである。
「アースソウルのキリオートっていうんだ。よろしくな、人間」
「えっと、わかったから人間って呼ぶのは止めてくれ。アーレアンだ」
アーレアンはキリオートに挨拶をする。
「あなた一人では大変でしょう。こちらをお渡ししますので、どうか仲間を募って解決してもらえますか?」
クルーネは古びた木箱を取りだす。蓋を開けると眩い宝玉や金製品が入っていた。
「う〜ん‥‥」
アーレアンはしばらく考えた後、金で出来た小さなナイフを手に取る。
「これでいいや。いっぺんにもらうと悪いしさ。まずはこれを換金して仲間を集めてくるよ。パリには冒険者ギルドって便利な施設があるんだ。俺も入っているんだけどさ」
アーレアンの行動にクルーネとキリオートは顔を見合わせた。
あまりに強欲な態度を見せたのなら信用せずに追い返そうと考えていたのだ。アーレアンは合格である。
「まずお願いしたいのは森の中に放置されている石化された人や動物についてです。できれば動物も元に戻してあげたいのですが無理はいいません。石化した人達を保護して下さい。大きな町の教会に連れていけば元に戻す術はあるはずです」
クルーネがアーレアンに森の中にある道についてを教える。細くはあるがギリギリで馬車が通れる道がいくつか存在する。
道から外れた場所にも石化した人はいるはずなので、工夫は必要だがそこはなんとかして欲しいという。
「ゴーゴンとオーガ族には気をつけて下さい」
「わかったよ。またな」
気がつくと太陽が昇ろうとする時間であった。
アーレアンは森の精霊達に別れを告げると、木の上に登りなおして睡眠をとる。
数日後、パリに戻ったアーレアンは仲間を集める為に冒険者ギルドに依頼をだしたのであった。
●リプレイ本文
●森
「結構、大きな森だね、アーレ坊」
諫早似鳥(ea7900)は佇む森のシルエットを眺めた。
二日目の夕暮れ時、パリを馬車で出発した冒険者達は森の外縁部で野営の準備を行っていた。まったく知らない森に夕方から入り、夜を過ごすのは危険と感じたからだ。
「森から現れる川が見えるだろ。あの川の上流に湖があるんだよ。そこで頼まれたんだけどね。女の子の姿をしたフィディエルのクールネと、男の子みたいなアースソウルのキリオートに」
アーレアンは壬護蒼樹(ea8341)と運んできた枯れ枝を降ろしながら諫早似鳥に答えた。
「少し見てきましたわ」
森上空からシフールのシャクリローゼ・ライラ(ea2762)が戻る。フェアリー、フィーネルとラウファーも一緒だ。
「この子達のはしゃぎようからいっても、たくさんの妖精が住んでいる森のようですわ」
二体のフェアリーがシャクリローゼの周囲を飛び回っていた。
「川の方にも大きな動物はいなかったです。オーガ族も」
リーマ・アベツ(ec4801)は汲んできた水桶を置くと仲間に報告する。目視とバイブレーションセンサーによって探ったので間違いはないはずだ。
「よしよし、これからが大変なんじゃ。よろしく頼んだぞ」
フランシス・マルデローロ(eb5266)は馬達を撫でながら草を食べさせた。馬車にも飼葉はたくさん載せてある。馬達の元気が今回の依頼では重要になると、多くの冒険者は考えていた。
「なんだ?」
アーレアンは頭の上にぽふっと乗せられた物を手に取る。ウィザードにとって、とても良さそうな帽子である。
「遅くなりましたが、誕生日の贈り物です」
「いいの? もらっちゃって」
アーレアンが目を丸くして喜んでいる姿に壬護蒼樹の顔が微笑んだ。
日が完全に暮れる。
一行は保存食を食べながら、森を間近にして改めて作戦の確認を行う。
馬車と空飛ぶ絨毯を最大限活用してパリと森を往復し、石化した人々を安全に教会まで運ばなくてはならない。
障害となるのはゴーゴンとオーガ族だ。後には退治しなければならないが、今優先すべきは石化した人達の救出である。
見張りを決めると早めの就寝をする一行であった。
●精霊
三日目の早朝、一行の馬車は細い森の道を進んだ。道は川沿いにあり、やがて湖の畔にたどり着く。
「俺だ、アーレアンだ。約束通り、仲間を集めてやってきたぞ」
アーレアンが湖に向かって話しかける。
湖面に少女が現れると冒険者達のいる岸へと近づいた。
「この度はありがとうございます。どうか湖と森を救う為、まずは石化した人達を助けてくださいませ」
少女の姿をした湖の精霊フィディエルのクールネが挨拶をする。
「よお、アーレアン。約束守ってくれてありがとな」
森の中からアースソウルのキリオートも現れる。
「教えてもらいたいことがあるんだ」
アーレアンは身を隠せそうな集落跡地があれば連れて行って欲しいとキリオートに頼んだ。
安全かは保証出来ないが、破壊されておらず、人だけがいなくなった集落をキリオートは案内をしてくれた。
集落に到着し、まず諫早似鳥が潜入する。敵がいないのを確認すると、次は食料庫と井戸を調べた。
食料庫にはほとんど残っていなかった。
井戸の方は、長く放置されていたのにも関わらず、汲み上げた水にはボウフラさえいない。とりあえず近くの雑草に井戸水をかけておいて保留にする。翌日にわかる事だが、井戸水がかけられた雑草は枯れ果てた。オーガ族に対する消えた集落民の報復の策であろう。
諫早似鳥は仲間を呼び寄せる。集落内をくまなく探すが、石化した人は発見されなかった。
一行は隠れやすそうな大きめの空き家を拠点にする。
さっそくキリオートから森の様子を聞いて、基礎となる地図作りを行う。担当はシャクリローゼとなる。森には非常に詳しいし、シフールの機動性は誰もが知るところだ。加えて二体のフェアリーが、森の同族とコンタクトをとってくれるのも利点である。
「石化した人は――」
キリオートは知っている限りの石化した人が倒れている位置も教えてくれる。
「さてと、行こうか」
フランシスが御者台に乗り、壬護蒼樹とアーレアンが乗り込む。まずは道沿い近くで石化している人達を片っ端から回収である。
諫早似鳥とリーマはコンビを組んだ。道から外れて石化している人達を空飛ぶ絨毯で運ぶ算段だ。
シャクリローゼはまず地図を完成させる事に注力する。終われば、石化した人がどこにいるかの探索に行動を移すつもりでいる。
まずはオーガ族の徘徊があまりない周辺からの捜索が開始された。
●馬車
「フランシスさんは、いつでも発車出来るようにお願い」
「そうさせてもらおう。アーレアン、頼りにしているぞ」
馬車から飛び降りるアーレアンと御者台のフランシスは言葉を交わす。
「ここに三人います。重いですよ」
壬護蒼樹が草むらの中に親子らしき石化した人達を発見した。破損しないように壬護蒼樹とアーレアンは二人で馬車まで運ぶ。
フランシスは御者台に座りながらも弓矢の用意を行う。比較的安全な地域のようだが、油断は禁物であった。
馬車を守るように、諫早似鳥の犬、小紋太も周囲を警戒する。
壬護蒼樹は諫早似鳥から借りた浄玻璃鏡の盾を常備していた。ゴーゴンが現れた時の用意である。
石化の恐怖のせいか、複雑な恰好で固まっている人が多い。十体も回収すると馬車は一杯になり、拠点の集落へと戻る。
空いている家屋に石化した人達を寝かせると、再び馬車を走らせた。森の道は大まかにいうと三本あり、それらを繋ぐ道がいくつかある。
伸びた雑草のせいで石化した人達は見つけにくくなっているが、弱音を吐いている暇はなかった。
抱えて運べない滑りやすい斜面の下にも石化した人は転がっていた。壬護蒼樹がロープと毛布を取りつけたベゾムで吊り上げて馬車まで移動させる。
「ここがキリオートさんがいっていた場所の一つでしょうか」
石化した人を探している途中、壬護蒼樹が石造りの祠を発見する。
「そうだと思う」
アーレアンが祠の穴を覗いた。地下深くまで続いていそうだ。
「道のこんな近くにまであるとは驚きじゃな」
フランシスは馬車を走らせながら、二人から祠の様子を聞いた。キリオートによれば、祠はたくさんあってすべてを把握するのは不可能に近いという。
拠点に戻ると祠の事を他の仲間にも伝えるのであった。
●絨毯
諫早似鳥はカッコウの鳴き真似をし、合図を出す。鷹の真砂が発見した石化した人を確認したのである。
白い細布を石化した人の上に置いたのは鷹の真砂であった。
合図を聞いたリーマが空飛ぶ絨毯で近くに舞い降りた。石化した人は猟師の恰好をしていた。
リーマはバイブレーションセンサーで安全を確認する。そして石化した人を乗せると、すぐに拠点の集落へと戻る。多くを乗せなかったのは安全を考えてである。
その間に諫早似鳥は再び石化した人々を探した。
パリから一番遠隔地となる集落跡から調べたいと考えていた諫早似鳥だが、一旦取り止めにする。何故なら真っ先にオーガ族に乗っ取られた集落地だとわかったからだ。
ヘタに刺激すると、オーガ族の徘徊範囲を拡大させてしまう危険がある。騒ぎを起こすならば、まだ最終日に近い方がよいと判断したのだ。
草などを擦りつけて体臭をわかりにくくし、なるべく森と同化しながら諫早似鳥は探し続けた。
拠点の集落に戻ったリーマは現れたキリオートに手伝ってもらい、石化した人を家屋に運んだ。
「よろしければ」
リーマは水鳥の扇子などをキリオートに進呈しようとする。
「おいらじゃうまく使えないしさ。気持ちだけ受け取っておくよ」
キリオートははにかんだ。
●地図
シャクリローゼは森の上空をひたすらに飛んだ。
フェアリーのラウファーにブレスセンサーで周囲に注意してもらいながら、地図に様々な状態を描き込んでゆく。
盗賊の手袋のレミエラも発動させておき、もしもオーガ族と遭遇したのなら有利に事を運べるようにしておいた。
突然の敵襲にはフェアリーのフィーネルにスリープをお願いしてある。ただしフェアリーは戦いを避ける傾向にあるので信頼しきる訳にはいかない。
まずはなるべく正確な森の道を描いた上で、集落や祠の位置を記してゆく。石化した人を発見したのなら仲間に知らせる為にも描き加えた。
「どこかで石化した人みかけたか聞いてもらえるかしら?」
シャクリローゼは森のフェアリーに出会うとペットの二体に頼んだ。手振り身振りを合わせながらフェアリー同士が会話する。
「ありがとう」
情報をもらったシャクリローゼはお礼をいって確認しに向かうのだった。
●搬送
三日目から四日目の日中まで、冒険者達の行動は石化した人達を集める事に費やされた。
四日目の夜、空飛ぶ絨毯に石化された三人をロープで固定して、アーレアンとシャクリローゼが拠点の集落を飛び立つ。
二人で向かうのには理由がある。安全の為に最高速度は出せないので、一人だと魔力が尽きる可能性があったからだ。六時間の睡眠による魔力回復より、二人での行動を選択した形となる。
アーレアンが選ばれたのは、教会との交渉をしなければならない為だ。
もう一人がシャクリローゼになったのにも訳がある。当たり前だが、絨毯の広さには限りがあった。身体が小さくて体重の軽いシャクリローゼでなければ三体の石化した人を運ぶのは無理だったのだ。
諫早似鳥の意見によって石化している猟師と木こりが運ばれた。
馬車の出発は翌日に持ち越される。真夜中の疾走は、あまりに危険なのが理由である。
翌朝の五日目、フランシスとリーマが十七体の石化した人を乗せた馬車でパリへ出発した。こちらも二人なのは道中での安全を考えてだ。野営するにも一人だと危険が大きい。諫早似鳥の愛犬、小紋太も連れてゆく事となる。
空飛ぶ絨毯の所有者であるリーマには相談によって馬車組になってもらう。今回、移動が激しい為、馬にも負担がかかるが、それは馬車本体も同様である。木工に覚えがあるリーマなら馬車の点検、修理を任せられるのがとても大きかった。
残った諫早似鳥と壬護蒼樹は、未発見の石化した人を拠点の集落まで運んだ。キリオートも手伝ってくれる。
諫早似鳥が鷹の真砂と共に石化した人を探しだし、壬護蒼樹がベゾムで拠点の集落まで搬送するのを繰り返した。
五日目の昼過ぎに絨毯組はパリのある教会に到着する。アーレアンが事情を話し、石化を解いてもらう段取りとなった。アーレアンとシャクリローゼは睡眠をとって深夜に絨毯で森へと向かう。
六日目の夕方、馬車組のフランシスとリーマはアーレアン達が訪ねたパリの教会に到着する。同じ頃、絨毯組のアーレアンとシャクリローゼは森の拠点に戻る。森に戻る時は全速力で飛べるので、パリに向かう時よりも早く到着出来た。
七日目の朝に馬車組はパリを出発した。同じ頃、絨毯組は森を出発し、深夜にパリへと到着する。
八日目、絨毯組は教会に立ち寄って朝にパリを出発して夜に森へ到着した。馬車組は夕方に拠点の集落へ到着している。久しぶりに全員の顔が集まる形となった。
●オーガ族
九日目は全員で作戦を実行した。
オーガ族が拠点としている集落跡への潜入である。戦闘は可能な限り避けて、情報を持っていそうな石化した人を回収するのが目的だ。
キリオートやフェアリー達に馬車を誘導してもらう。オーガ族の拠点近くでありながら、非常に見つかりにくい場所であった。
大人数で動くのは危険なので、オーガ族の拠点に潜入するのは諫早似鳥とシャクリローゼだけである。
空中からの搬送要員として、リーマが空飛ぶ絨毯で、壬護蒼樹がベゾムで待機する。合図があればいつでも飛び立てる用意であった。
フランシスは馬車を動かせるように手綱を握る。得意ではなかったがアーレアンは犬の小紋太と共に周囲を警戒していた。
諫早似鳥はパラのマントでオーガ族をやり過ごしながら奥まで足を踏み入れる。シャクリローゼは木々の枝葉に隠れながら近づいてゆく。
オーガ族が拠点としている集落跡にはかなりの石化した人達が転がる。残念ながら破壊されているものが多かった。
視界が紛れる夕日の中、作戦が実行された。
諫早似鳥はカッコウの鳴き真似をしてリーマを呼んだ。
シャクリローゼはフェアリーのフィーネルを壬護蒼樹の所へ向かわせる。
なるべく目立たないように木々の間を掠めながら壬護蒼樹とリーマは夕日の中を飛ぶ。すぐに石化した人を収容すると脱出をはかった。
諫早似鳥はリーマの空飛ぶ絨毯に飛び乗る。
シャクリローゼは壬護蒼樹のベゾムに掴まった。
物音に気づいたオーガ族がいたものの、気のせいだと思ったのか、騒ぐことはなかった。
戦いが起きずに全員がほっとする。冒険者達の行動がオーガ族に知られれば、これから先がやりにくくなったかも知れない。
安全に運ぶ為、石化した人達は一旦馬車に乗せられる。そのまま拠点の集落まで運ばれた。
●そして
九日目の深夜に絨毯組が拠点の集落を出発する。戻ってきたのは十一日目の夜である。
十一日目朝の時点で、他の冒険者達は拠点の集落を出発していた。
絨毯組は一晩を拠点で過ごす。十二日目のまだ日が昇らない頃、最後の搬送となる石化した三人を乗せて森を後にした。
夜にパリへ到着すると仲間が教会で待っていた。
合計で運んだのは四十六名。拠点に残してきたのは二十三名である。
石化を回復させる特別な品が足りなく、今の時点では全ての者を元通りにする事は叶わなかったが、取り寄せてくれる約束となる。
教会の厚意によって、しばらくは戻った集落の人達の面倒を見てくれる事となった。
復活した人の話によれば、ゴーゴンは何かに取り憑かれたように暴れ回っていたという。森の地下に広がる空間を利用して、祠から現れては人々を襲ったようだ。
「これ、クールネから預かってきたレミエラをギルドで交換したやつ。受け取ってね」
アーレアンはレミエラと残金を仲間で分配する。
「最後に森を出発する時、クールネから伝言をもらったよ。『みなさんにも休養は必要でしょう。少ししたらまたお願いすると思います。その時にはフェアリー達に伝言を頼みますのでよろしくお願いします』って」
アーレアンは次の依頼に必要な金製品を既に受け取っていた。
今回はゴーゴンと接触する事はなかった。
アーレアンは報告し終わると、別れの挨拶をしてギルドから立ち去るのだった。