【王立ゴーレムニスト学園2】初めの一声
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■シリーズシナリオ
担当:天音
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:4
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月04日〜10月11日
リプレイ公開日:2008年10月12日
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●オープニング
『ゴーレムニスト学園第2期生募集』
そんな張り紙がギルドへと張り出された。
講師は引き続き、ゴーレムニストのユリディス・ジルベール。
場所はゴーレム工房近くに建てられた特別施設、ゴーレムニスト学園。
期間中の生活は併設の寮でとなる。
ちなみに寮にはリリィという猫がいる。寮で飼う事になった当初は子猫だったが、今ではだいぶ成長したようだ。
「あれ‥‥今回は前とはちょっと違いますね」
依頼書を見て、職員が傍らのユリディスに尋ねると、彼女はまあね、といって妖艶に笑って見せた。
「ゴーレムニスト転職希望者だけでなく、既にゴーレムニストになった者とゴーレムニスト過程を終了した者の中から希望者を募るわ。補習扱いよ」
ゴーレムニスト転職希望者は講義全てに参加しなくてはならないが、既に課程を修了し、なおかつ更に勉強をしたいという者に設けられた補習の枠に参加する者は欠席が許されるという。
「新たに講義を受けようとする人達にとっては先輩に当たるわ。人に教える事で自分が学ぶ事ってあるし」
「あと‥‥この助手募集っていうのは何ですか?」
「それは文字通り、授業の間私を手伝ってもらう助手の事。こっちは既にゴーレムニストになっている人に限るわ」
基本的に講義参加はゴーレムニスト転職希望者優先だが、空きがあれば補習希望者や助手を募集しようという事らしい。
「あと‥‥注意書きがありますね」
「そうね。よく考えれば分かることなんだけれどね」
ユリディスは苦笑する。追加されている注意書きというのは他国への渡航についてだ。
ゴーレムニストは要職だ。ゴーレム工房に入るということは国内のゴーレムの機密を知る事にもなる。そんなゴーレムニストが他国へ渡ったらどうなるだろうか?
ゴーレムニストはお金持ちだ――そういう認識から、強盗に襲われることもある。それだけなら国内でも十分ありえることだが、問題は他国のゴーレム工房に関わった場合。
メイのゴーレム工房関係者だと分かれば間諜だと疑われるのは間違いない。また他国に情報を売ろうとしても、簡単に国を裏切るような者を信頼する者達はいない。その上もしメイに戻ってきたら――?
もちろん、こちらのゴーレム工房にも入れるわけには行かなくなる。他国のゴーレム工房に関わった者は、情報を漏洩した裏切り者である可能性と、あちらからの間諜の恐れがあるからだ。
事実はどうであれ、どちらからも疑われるのは間違いない。結果的に、どちらの工房にも入れなくなる可能性が高い。
ゴーレムニストになるということは、その後の身の振り方もある程度縛られるという事。それを覚悟の上で志願して欲しい、と。
「第一回目の講義は前と同じ、面接とディスカッションを行うわ。この面接は『落とすため』のものではないわ。それぞれの個性や望む方向性を知るためのものよ。自己紹介、と言い換えてもいいかもしれないわね」
学園入学を希望した動機、学園で何を学びたいか、いずれはどんなゴーレムニストになりたいか、そんなことを語ってみると良い。
「後は‥‥もしもウィル出身の人と地球人がいたら、『何故メイでゴーレムニストになることを選んだのか』を聞きたいわ」
重要な事だから、と言ったユリディスの瞳は、少しばかり悲しそうに見えた。
●リプレイ本文
●ここはゴーレムニスト学園
メイディア王宮敷地内に存在するその施設は校舎、宿舎からなる「学校」。
勿論ただの学校ではなく、特別な学校だ。ゴーレム作成のための術を施す術者、ゴーレムニストを育成する学校。
ゴーレム技術自体はメイはウィルに及ばない。その上バという敵対国があるためゴーレムの工房は休む事を知らない。勿論作り出されるのは、戦時投入用のゴーレム。危険地域に配置されるゴーレム機器。
ゴーレムニスト――それはゴーレム機器を作成する上で欠かせない職業。けれどもゴーレムニストだけでゴーレムが造れるわけではない。素体となる原材料を切り出して運ぶ者たち、素体を作り出す者達、そしてその上にゴーレムを操る鎧騎士がいて、初めてゴーレムは一人前となる。
そのゴーレムに魔法をかけて命を吹き込む者、ゴーレムニストを主に冒険者から募って育成しようという計画、それがゴーレムニスト学園だ。冒険者以外からの入学も検討されているが、そちらはいまだ検討中という段階だ。
「さて、面接を始めましょうか」
学園担当のゴーレムニスト、ユリディス・ジルベールは傍らに佇むカレン・シュタット(ea4426)へと微笑む。彼女は今回ユリディスの助手を申し出たゴーレムニストだ。ゴーレムニスト学園の第1期生で、風と地のゴーレム魔法を学んでいる最中であった。
教室の椅子にカタンと腰をかけたユリディスは、カレンを隣の椅子に座らせる。彼女の前には数枚の羊皮紙と羽根ペン、そしてインクがあった。ユリディスは彼女に面接の助手を頼んでいた。つまり面接の内容を記録する係である。初回はユリディスが面接をしながらメモをしていたが、これならば面接に集中できるというわけだ。
「鷹栖冴子さん? どうぞ」
「よ、あたいは鷹栖冴子。おタカって呼んどくれ」
入室してきたのは鷹栖冴子(ec5196)。天界人の女性だ。
「ジルベール姐さん、さあ約束どおりさね。来たよ、あたい!!」
勢いつけて椅子に座った冴子を、ユリディスはいつもの微笑で見つめる。
「お久しぶりね」
彼女は昇降用グライダー(仮)『サドルバック(仮)』の作成に携わった関係で、ユリディス達と面識はあった。
「じゃ、お決まりの質問。貴方がゴーレムニストに志願した動機は何?」
「そうさねぇ」
ユリディスの質問に冴子は夢があるのだ、と告げる。
「あたいの夢は『ゴーレムの平和利用と土木用ゴーレムの開発』さ」
それは現在のメイでは難しい。バという敵対国がある以上、戦地へ投入されるゴーレムの作成が優先されるのだ。
「それを実現させるには、まずは戦をなくさないとね」
「わかってるさ。あたい自身依頼でゴーレム操縦者の訓練もちょいと受けてきたのさ。ギルドにもゴーレムの凄まじい暴れっぷりが山と記録されているじゃないか。そんな代物に関わるんだ。まったく、カオスゴーレムだのドラグーンだの。あんなおっかないもん造って、一体何が楽しいんだかね‥‥」
「でも、貴方がいたチキュウにはもっと恐ろしい戦闘兵器が山ほどあるって聞いたわよ?」
ユリディスの言葉に、冴子の顔が厳しくなる。
「たった一つの小さな爆弾で、都市を消し去り、その後もずっと土地と人々に後遺症を残させるっていう」
「そりゃあるけど‥‥だからこそ、ここに来てみて、ただ壊すだけのゴーレムたちの生まれを少しでもよいものにしたいのさ」
強力な兵器があることを知っているからこそ、兵器を平和利用したい――それはわかる。だが。
「貴方はゴーレムに感情移入しすぎているわ。確かに戦の無い世の中に英雄は要らない。戦が無くなったら英雄も兵器も不要。けれどもそれは『戦が無くなったら』の話。その戦がなくならない以上、私達が作るのは紛れもなく命を奪うための兵器なのよ」
ユリディスの言葉は静かだが、真っ直ぐに冴子を射抜く。カレンはふと羊皮紙から顔を挙げ、ユリディスの横顔を見た。
「覚悟がまだ甘いわ。実際ゴーレムニストになってから『自分が作りたかったのは命を奪う道具じゃない』なんて泣き言を言うことはできないのよ。貴方の視線は今、遠い未来に固定されているわ。まずは現実を認めるところから始めなさい」
ゴーレムの平和利用が無理だといっているわけではない。今求められているのは何か、それをきちんと見極めろ、そういうことだ。
「‥‥あたいは、不合格かい?」
「‥‥‥いえ」
心配そうに問う冴子に、ユリディスは微笑んで。
「現実を教えるのもこの学園の仕事。不合格にはしないわ」
横から見ていたカレンは、そういえば自分達も覚悟を問われた事があるのを思い出していた。
なぁ〜ん‥‥
どこから入ってきたのか、猫のリリィがカレンの足に擦り寄っていた。
「私は技術屋としてメイで生きるため、勉学に勤しんでゴーレムニストになりたいです」
そう告げたのもまた、地球人の白金銀(eb8388)。彼はユリディスにメイでゴーレムニストになりたい理由を聞かれると、素直に答えた。
「天界の地球からこちらに来た際に、まずメイにお世話になったのがきっかけではあります。縁‥‥とでもいうのでしょうか。ウィルにもいきましたが‥‥」
「あら、ウィルに行ったことがあるのね」
ユリディスの瞳が少しだけ鋭くなる。それは銀を疑っているというわけではなく、もし一生懸命教えた生徒があっさりと他国へ渡ってしまったら寂しい、そんな心情が込められているようであった。もちろん、メイで技術を学んだ者が他国へ渡ってすぐに他国で信用されるかといえば否、だが。
「はい。けれども自然と気持ちの上では優れた技術をどうメイに持っていくかを考えていましたので‥‥なぜメイなのか、と聞かれたら今のところこう答えるしかないです」
ウィルの人に聞かれたらすごく怒られるかもしれない、そんな内容をさらりと言ってのけた銀。それだけ彼の思いの強さが伝わってくる。
「新型人型ゴーレムの開発、『サドルバック(仮)』の試作や、F5型の改造案等の提案を行ってみて、私自身技術屋としての壁を感じています。その壁を打破してメイのお役に立つものを造るには、ゴーレムニストになるかもしくはゴーレムの知識を深めるしかない、と思いました」
銀は地球の電子機器に関する知識を豊富に有している。だが地球のそれとこちらのゴーレムに関する知識で齟齬が生じるのも事実。こちらの人たちは地球のことを知らない。とすれば自分の伝えたい事も上手く伝わらない事もあるし、自分の持ってきた常識が通じない事も多い。
「自分の力を十全に発揮するために、もっとゴーレムの事を知りたいというわけね」
「簡単に言ってしまえばそういうことです」
けれども色々悩んだのです、と銀は続ける。
「本当はもう少し実践的な、ゴーレム操縦系統を極めてからこちらで学び、現場の実情に合ったゴーレム機器の開発、思索や提案をしたかったのですが。二足の草鞋は難しいので作る、直す方の知識修得に力を入れて生きたいと思います」
「賢明な判断ね。でも」
ユリディスが隣に座るカレンに目配せをする。カレンは一瞬迷ったが、銀の方を見て口を開いた。
「私たちゴーレムニストが手がけるのは、本当に仕上げの部分です。修理の大半は鍛冶師などの力が必要で、私達が手をかけるのは鍛冶師達によって物理的に修理された部分に、仕上げとなる魔法をかけることです」
よくできました、とユリディスがぽんと手を叩く。
「つまり、修理もできるようになりたければ、木工などの勉強もなさい。殆どのゴーレム機器は木製だから。船に携わりたいならそれに加えて船舶知識、チャリオットなら地上車。グライダーなら航空。色々な知識が必要になるわ。覚悟はできて?」
ごくり、銀が唾を嚥下する。
だがここまで来て覚悟は揺らがない。自分はもういい年だ。ここまできて迷っていても仕方がないことはわかっている。
ゆっくりと、真剣な瞳で銀はユリディスの問いに頷いて見せた。
●展望
「先生、次回の準備などお手伝いする事はありますか?」
「とりあえず、リリィにご飯を上げてくれる?」
「はぁ‥‥」
カレンはゆっくりと足元の猫を抱き上げた。初めにあった時はまだ子猫だったが、今では大分大きくなっている。
「次回はやはり座学ですか?」
問われ、ユリディスは不敵な笑みをカレンに向けた。
「課外授業もいいと思うのよ」
一体この先生は何を考えているのだろうか。
「‥‥開発もあるし、バの侵攻も再発しているからそちらへ回す分の機体も増産しなければならないし‥‥工房はいつも忙しいわね」
「工房が静かになったら、私達は職を失うのでしょうか?」
「あら、ゴーレムの使い方は戦いだけじゃないでしょう? 冴子さんの言葉じゃないけれど、今も足としてゴーレムシップが運行していたりもするし」
確かに、とカレンは頷く。
ゴーレムはもはや、この国に無くてはならない存在となっているのだ。
主な利用方法は、戦時登用とはいえ。