【王立ゴーレムニスト学園】入学試験?
|
■シリーズシナリオ
担当:天音
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:4
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:01月30日〜02月06日
リプレイ公開日:2008年02月06日
|
●オープニング
●ゴーレムニスト学園、始動
メイはゴーレムに関しては後進国である。カオス勢やバの国という敵対勢力があるにもかかわらず、ゴーレムの数もゴーレムニストの数も少ない。
故に王宮とゴーレム工房は考えた。門戸を解放し幅広い層から人材を登用する事で、メイのゴーレム開発の今後を担う人材不足が解消出来るのではないかと。その上様々な視点からの意見を取り入れることが最終的に国力の増強に繋がるだろうと。
故に王宮の支援により、ゴーレム工房の近くに新しい建物が建設された。二階建てと三階建ての建物二棟と寄宿舎という相当な規模のものである。一部には屋根裏部屋があるという話だ。しかも王宮の支援があるとあって、造りは堅固。
その建物は「王立ゴーレムニスト学園」と名を冠して運用される事となった。
今回は学園の第1期生として10名を募集する。全ての講義に出席し、資質を認められた後に工房からの推薦状がもらえる――現在のところそういった仕組みだ。一人前のゴーレムニストになるまでの道のりは果てしないかもしれない。それでもこの道を進みたい者がいれば、受講してみるといい。以前工房長の行った本来の意味での一期生養成の講義とは大分異なるとは思うが。
ちなみに今期の募集定員に入れなかった場合、ゴーレムニストになる道が閉ざされてしまうという事はない。第2期生以降も募集はなされる予定だ。
なお、今回の募集には種族の制限がある。鎧騎士の制限と同じ様にシフールとジャイアントは受講する事が出来ない。これは今後改善される可能性はあるが、今のところはその2種族の方は入学しても申し訳ないがゴーレムニストとなることは出来ないというわけだ。
●講師は?
「講師を務めさせてもらうユリディス・ジルベールよ。よろしくね」
長い金色の髪をなびかせ、青い瞳を好奇心でみなぎらせながらその女性は口を開いた。白い丈の長いドレスを上手く捌いて入学希望者達の前へ歩み出る。彼女は入学希望者達の視線を浴びても萎縮することなく、艶然と佇んでいた。
「一度の講義は一週間。その間は寄宿舎に寝泊りしてもらうわ。校舎も寄宿舎も私達以外に使用する人は今の所いないから。寝泊りする部屋は自由よ。一人部屋を選ぶもよし、誰かと同室を選ぶもよし。もし部屋割りに希望があったら言って頂戴」
そう言い、ユリディスは手に持った羊皮紙に一旦目を落とし、顔を上げる。
「第一回目の講義は面接とディスカッションを行うわ。この面接は『落とすため』のものではない事をまず理解しておいてね。それぞれの個性や望む方向性を知るためのものよ。自己紹介、と言い換えてもいいかもしれないわ」
つまりこれから短くはない付き合いとなるユリディスに対して自己紹介をしろということである。
「普通の自己紹介のほかに、ゴーレム魔法といっても色々あるから、何を作りたいのか、どの道に進みたいのかとか有れば教えてね」
それに加えてディスカッションがあるという。
「ディスカッションといってもようは親睦会みたいなもの。受講に対する意気込みや今後の目標、はたまた自分がゴーレムニストになったらしてみたいこと、なんて語ってみるのもいいかもしれないわね」
初回の講義ということで今回は難しい座学などはないという。面接や親睦ディスカッションにもかなりの日数を割いて、生徒の人となりと目標を把握するのが目的らしい。
「学園という組織として人に教えるなんて初の試みだし、これでも私、緊張しているのよ?」
とても緊張しているようには見えないが――相変わらず泰然とした様子でユリディスは集まった生徒達に微笑みかける。
「何はともあれ貴方達を知る事から始めたいわ。よろしくね」
こうして王立ゴーレムニスト学園の第一講義が始まったのである。
●リプレイ本文
●学園内へ足を踏み入れて
どきどきだろうか、わくわくだろうか。色々な思いを抱いて8人の冒険者達が二階建ての建物の中へ足を踏み入れた。きょろきょろと忙しなく辺りを観察する者もいれば、緊張で前しか見えていない者もいるかもしれない。そんな彼らが通されたのは大きな石版と教卓代わりの机が前方に置かれ、その向かい側に小机と椅子が設置された『教室』らしい部屋。2月といえば気温が一番下がる季節。室内とはいえ石造りの建物は冷える。そのためか、きちんと暖炉に火は灯されていた。
「好きな席に座っていて頂戴。一人ずつ順番に、呼ばれたらこの2つ隣の部屋に行く事。私はそこにいるわ。呼ばれるまでは自由に寛いでいて構わないから」
自由に寛いで――と言われてもさすがに大声を出して騒ぐわけにも、部屋を勝手に出るわけにもいかないだろう。その辺は彼らも分かっている。待ち時間に出来る事といえば軽い自己紹介と、面接が済んだ者を囲んで様子を窺うくらいか。
「じゃあまずレン・コンスタンツェさん。私と一緒にあっちの部屋へ」
「はーい」
ユリディスに呼ばれ、銀髪のエルフが彼女の後ろをついていく。二人が消えた後、残された七人はなんとなく空いている席に座り、微妙な緊張感の中どうしようかと思案するのだった。
「ビザンチン帝国出身のバード、レン・コンスタンツェです」
「座っていいわよ」
ユリディスはレン・コンスタンツェ(eb2928)に椅子を勧め、自らもその向かいに座る。
「私の目的はねー、チームというかバンドとか楽団だっけ? 色んな人が集まるの。そういう専門も能力も異なる者で何かできる事を作ってみたいんだな」
「あら、ゴーレム制作もゴーレムニストだけじゃないのよ?」
レンの主張にユリディスは微笑みながら続ける。
「ゴーレムニストもゴーレム魔法4系統集めないといけないし、素材を形にするまでに石工などが得意な人の手を借りることになるわ。ゴーレムニストがいなければ最後の仕上げは出来ないけれど、素材を切り出して加工する人たちがいなければ始まらない――」
「うん、それはそうなんだけど、もっと幅広くというか、できれば新しいレシピを作ってみたいんだな」
ユリディスは羊皮紙にアプト語でなにごとかをさらさらとメモしていく。
「わかったわ、じゃあ続きはディスカッションで聞かせてね」
「ウィザードのイリア・アドミナルです。宜しくお願いします」
次に呼ばれたのはイリア・アドミナル(ea2564)。彼女は礼儀正しく挨拶をしてから椅子に腰をかけた。彼女の出身も先のレンと同じくビザンチン帝国で、趣味は生成学だという。
「最近地球という天界の品で『伊達メガネ』という物が気になっています。ゴーレムニストになったらつけてみたいです」
「『伊達メガネ』? 面白そうね」
メモを取っていたユリディスの手が止まる。私も少し興味があるわ、と告げた彼女を見て話が逸れてしまいそうな気がしたのか、イリアは自己紹介を続けた。
「魔法分野は水の魔術を修めています。魔術師として培ってきた精霊魔術をゴーレムニストとしても活かしたいと考え、入学を希望しました」
「なるほど。あなたはかなり優秀な水の魔術師さんですものね」
「ゴーレムという最先端の分野を学ぶ事が出来て光栄です。これからよろしくお願いします」
丁寧なイリアにこちらこそ、とユリディスは軽く笑んで答えた。
「フランク王国出身のカレン・シュタットです」
「どうぞ」
金の髪をさらりと流しながら入出してきたカレン・シュタット(ea4426)にユリディスは椅子を勧める。
「私は素材の研究とか、出力系とかを学びたいですね」
「素材というと木から金属まで幅広いわね。出力系といえば精霊砲とかかしら?」
「はい。正直ゴーレムニストというとゴーレムやグライダーなどの物を思い浮かべますが‥‥」
青い瞳を真っ直ぐに向けてくるカレンから、ユリディスも目を反らさない。
「分かったわ。その続きはディスカッションで皆にも聞かせてあげてね」
「ヤ、どーもどーも。半月ぶりねユリディスさん‥‥じゃなくてユリディスせんせ。これから暫く宜しくね!」
次にやってきたのは以前石運びを手伝ったラマーデ・エムイ(ec1984)だ。ウィルのセレ出身の彼女は今までの三人と違ってとても明るく、いい意味で気が抜けている。
「ウィルじゃ機密だって煩いゴーレム魔法を学べるって面白そうじゃない? だから参加」
とってもわくわくしているらしい彼女は饒舌だ。
「まだ良くわからないけどゴーレムニストって数が少ないんでしょ?」
ええ、と頷くユリディスにだったら、とラマーデは告げる。
「とりあえず目指すはオールマイティ。特化はちゃんと勉強してから考えるわ」
「オールマイティとは大きく出たわね。頑張って勉強して頂戴ね」
ユリディスはくす、と笑みを浮かべた。
「天界人の門見雨霧です」
「はい、よろしくね」
門見雨霧(eb4637)は椅子に座ったが背筋が曲がっている。猫背が癖になっているのだろう。
「得意なことは機械工作と設計、あと向こうの世界で物理学といわれる学問についてかな」
「向こうの世界ってどんな所?」
「は?」
いきなりユリディスの口から出た質問に僅かに戸惑う雨霧。どう考えてもそれはこの面接で必要な質問だと思えなかったからだ。
「えーと」
それでも何かあるのかもしれない、と地球の話をかいつまんで聞かせる雨霧。だがこれはユリディスの純粋な興味だ。
「今後の目標はゴーレムの整備が出来るようになる事かな」
何とかそう締めくくって面接室を後にする雨霧だった。
「私は‥‥天界人と呼ばれている結城梢と申します。年齢は18歳‥‥です」
「あまり緊張しないでいいわよ?」
彼女とも二度目の対面となるユリディスは、緊張気味の結城梢(eb7900)に座るように促す。
「一応こちらに来て一年以上経過していまして‥‥だいぶこちらの生活には慣れてはいるのですが、まだ分からない事も多いですので迷惑をおかけする事もあるかもしれませんが、宜しくお願いします」
深々と頭を下げる梢。ユリディスは羽ペンを弄びながら彼女の緊張を崩すために質問を投げかける。
「普段は何をしているの?」
「今は、困っている方のお手伝いをしています。一応風魔法の方が使えますので‥‥」
それでもなかなかに梢の緊張は解けそうになかった。
「ジ・アースのビザンチン帝国生まれのガルム・ダイモスです。宜しくお願いします」
長身のガルム・ダイモス(ec3467)は、椅子に座ってもその大きな体躯は目立つ。その身体を見れば趣味が身体を鍛える事だというのも納得だ。
「カオスニアンという脅威に立ち向かうためにはゴーレムを学ぶ必要があると考え、今回入学を希望しました」
ハキハキと自己紹介を続ける彼。
「志望進路はゴーレムを強化服として使用する分野の研究です」
「強化服ゴーレム‥‥?」
そういえば最近ジェトにその様なものがあると聞いた気がするけど、とユリディスは思ったが口には出さないでおく。
「また機体の性能限界と操縦者の能力限界の格差を埋める研究を行いたいと思います」
ガルムはやる気を満々見せ付けて面接を終えた。
「最後だな、わしはローシュ・フラームだ」
面接最後はノルマン王国出身のドワーフ、ローシュ・フラーム(ea3446)だ。彼はこれまでもゴーレム開発関係の依頼に参加してきており、ゴーレムに関しては関心が高かったという。
「常に新しいものに挑戦し続ける。これこそが職人の本分」
新技術を物にする好機と考え、入学を希望したという。実に職人気質の男だ。
「新しいものに目が行っちゃうのは私と似ているかもしれないわね」
ユリディスはくす、と笑った。
●余暇
寄宿舎は広く、部屋数も今後を見越してかたっぷりとあった。食事は厨房での自炊となるが食材は用意されており、保存食で食事なのかと心配していた面々を少しばかり安心させた。
一人部屋を希望した者と特に希望のなかった者は一人部屋となり、相部屋の希望を出した者と相部屋でも構わないと申し出たイリア、梢、ラマーデが三人部屋を使用することになった。ちなみにこの部屋割りは講義ごとに変更可能なので、希望が変わった場合は申し出て見るといい。
日当たりが良い場所を探す者、喫煙の為の出口を探す者、学園の内部探索に精を出すもの‥‥それぞれがこれからこの学園で過ごす自身の為に最適な場所を探そうとしていた。
●ユリディス先生のディスカッションメモ
【レン】
既存のレシピにとらわれず、今までにない新しい考え方を試したい。大きく力強く出来れば砦建設に使えたり、小さく部分だけに出来れば義手の研究に発展できそう。新しい試みにチャレンジしてみたい。
【イリア】
素材に対し様々な生成技術を使い、新素材を生み出し、より多くの素材からゴーレムを生み出したい。魔術師として戦場に出る際にゴーレムを見る機会も多いので、他国の技術も研究したい。
【カレン】
特徴を学んで用途別に使えるようにしたい。チャリオットなら走行重視や機動力重視など。将来の夢は空飛ぶゴーレム、ドラグーンに近いものを作ること。
【ラマーデ】
吟遊詩人の詩に出てきそうな、黄金製人型ゴーレムを作ってみたい。(白馬に乗った黄金の騎士を想像)
【雨霧】
ゴーレムが戦線で活躍するからこそ、ゴーレムに乗っていない兵隊達も生還率が高まる。それはゴーレムが万全の状態であるからこそ。故に少しでも多くの人が生還できるようにゴーレムの整備技術を学びたい。
【梢】
風魔法を使える故に、空を自由自在に飛びまわれるような機体を作ってみたい。地球の科学の知識も融合できればと思う。
【ガルム】
貴重な高品質素材の量産ではなく安価で、操縦者の意思と技量に応える反応を持つ追従型のゴーレム研究希望。ウッドゴーレム分野で安価で生体素材でなく、技術加工による加工材料から生み出された強化服タイプのゴーレムを研究したい。ゆくゆくはジャイアントやシフールなどの為の従来とはサイズの違った制御胞が作成可能なゴーレムを作りたい。
【ローシュ】
ゴーレムの点検整備を行うことが出来る、ゴーレム整備に精通した鍛冶師となりたい。以前から関わってきた『素体』の作成、ゴーレム技術を活かした武具作りにも関心あり。
「堅実なものから壮大なものまで――」
ユリディスは自身の取ったメモを見ながら艶然と微笑む。
「夢を持つって大切な事よね。8人とも入学決定」
それは自身の後進にあたる者達へ、希望を見出したが故の呟きか――。
●応答
最後に、少し話しに上がった中でユリディスが気になった部分を上げておく。
・依頼等で材料に魔力を注入する品を作った場合、工房は引き取ってくれるのか
ゴーレム機器製作目的の依頼ならば大体は可能。学園の授業の一環で作成する場合は、出来上がりの如何は問わず引き取り可能。
ただしゴーレム機器の作成は素材の入手から手間が掛かるため、個人がありあわせのもので作ることは難しい。
また、ゴーレム作成には多大な時間を要するため、依頼期間中に完成させることは出来ない。そして下手な所で作れば取調べの対象となる。
ゴーレムニストになったからといって直ぐに作成にかかれるというわけではないのだ。その技術は特殊なもの故、それなりの制約もある。それらも講義終了までに学んでいってほしい。