●リプレイ本文
●うさみみ☆くえすと #1 ●伝説のうさみみ
「うさみみ‥‥かわいい‥‥でも‥‥ソフィーさん以外‥‥作ってもらえない‥‥はぅぅ」
たくさんのうさぎさんが現れたと言う「あっちの村」に向かう途中、エスナ・ウォルター(eb0752)ちゃんは残念そうな顔をしながら歩いていました。
「うさみみ職人さんはねー、職人として最後の作品を作る為に、ボクに『伝説のうさみみにふさわしいうさぎ』を捕まえるという課題を出してくれたのー! ごめんなのー!」
「そうなのですか‥‥はぅぅ」
ソフィーちゃんがそう言うと、エスナちゃんはちょっとがっかりしました。
「伝説と名が付くからには、素材もそれ相応のものを用意しなければいけないね。うん」
ユウン・ワルプルギス(ea9420)ちゃんは話を聞いて納得している様子でした。
「うさみみ‥‥ですか‥‥」
リーラル・ラーン(ea9412)さんは、何やら考え事をしているようです。
「伝説のうさみみ、作れるといいですね」
淋麗(ea7509)さんがソフィーちゃんに話しかけます。
「うん! ぜーったい、『伝説のうさみみ』を作ってもらうのー!」
ソフィーちゃんは元気いっぱいに答えました。
返事を聞いて麗さんは優しく‥‥そして、どこか悪戯っぽく‥‥微笑むのでした。
「世間じゃあ『ねこみみ』の方が人気があるのですけど、何で『うさみみ』なんて追い求めてるのですか?」
ラディス・レイオール(ea2698)さんがソフィーちゃんに尋ねます。
「『うさみみ』って清楚なイメージがあると思うのー! ボクは癒し系ウィザードを目指しているから『うさみみ』は必須アイテムなのー」
ラディスさんの問いにソフィーちゃんが答えます。
どうやら、ソフィーちゃんは『うさみみ』について、そのようなイメージを持っているようです。
「癒し系‥‥ですか?」
少し微妙な間を置いて、ラディスさんがソフィーちゃんを見つめて言いました。
「何なのー! その目はー!」
ソフィーちゃんはどちらかというと、活発で明るいボーイッシュな女の子です。
まぁ、癒し系を目指すのはソフィーちゃんの自由ですが‥‥この子には『うさみみ』より『ねこみみ』が似合うんじゃないかと思うラディスさんでした。
「『伝説のうさぎ』か‥‥きっと、普通じゃないうさぎなんだよな? 一体、どんな感じのうさぎなんだ?」
劉蒼龍(ea6647)さんが『伝説のうさぎ』について、ソフィーちゃんに尋ねました。
「わかんないけどー、きっと、すごいうさちゃんなのー!」
「‥‥と、いう事は、見たことが無い訳ですね‥‥」
ソフィーちゃんの返事を聞いてロゼッタ・メイリー(eb0835)ちゃんが不安げに呟きました。
「『伝説のうさぎ』かぁ。そんなのが本当にいるんだとしたら、欲しい。研究に、是非」
イロモノ系の依頼を調査しているというロート・クロニクル(ea9519)さんですが‥‥
「だめなのー! 『伝説のうさみみ』を作ってもらうのー!」
「うさみみなんぞ作るために伝説を消しちまうなんてもったいなさすぎるぜ!」
「その伝説を後世に語り継ぐ為に『うさみみ』にするのー!」
何やらソフィーちゃんと言い合っているようです。
たくさんのうさぎさんらしいモンスターが現れたという「あっちの村」まで、一行はこのようにわいわいと賑やかに向かうのでした。
*
「あっちの村」に到着した冒険者達。
早速、うさぎさんらしいモンスターについて調べます。
「この辺りにある伝説の兎、または、変わった兎についての伝承や目撃情報などありませんか?」
麗さんは村人にうさぎさんについての情報を聞いていました。
でも、この近くには昔からうさぎさんは住んでいないとの事でした。
「どうやら、最近になってうさぎ型のモンスターが現れたみたいだな」
ロートさんが調べていたところ、うさぎさんが現れたのは、ここ最近の出来事だそうです。
最初は数匹だったのですが、あっという間にその数が増えて、今では十数匹も村の近くに住み着いているとのことでした。
「やっぱり、普通のうさぎとは違うようだな。戦うのが楽しみだぜっ!」
蒼龍さんは、何やらすごく気合が入っている様子です。
「このうさぎさんは、村の食料を食い荒らしているようですね。凶暴性は無いみたいですので‥‥できれば、倒すのではなく、村から遠ざけるようにできないでしょうか」
村人から話を聞いたロゼッタちゃんが皆に提案しました。
「とりあえず‥‥檻を作ってみたのですが‥‥この中に入ってもらいましょう」
リーラルさんは一生懸命、檻を作っていました。
材料を村の人に借りて作ったのですが‥‥うさぎさんがこの中に入って大丈夫でしょうか‥‥まぁ、やってみないとわかりません。
「‥‥捕まえたら‥‥みみ‥‥切っちゃうの? ‥‥はぅぅ」
エスナちゃんはペンダントを握り締めて、ブルブルと震えています。
『うさみみ』を作るときは当然、うさぎさんの『みみ』が必要になります‥‥つまり、ちょんぎっちゃうんですね。
多分、エスナちゃんは、その様子を想像しちゃったのでしょう。
「私もそのような作業を見るのは耐え難いです‥‥『うさみみ』の為とは言え、無駄に命を散らす事はよくありません」
ロゼッタちゃんはソフィーちゃんにそう言いました。
「わかったなのー。1匹だけ、すごそうなうさちゃんを捕まえたら帰るのー」
ソフィーちゃんは素直に従いました。
「どうやら、村の外に12匹程いるみたいだね」
バイブレーションセンサーでうさぎさんの居場所を探していたユウンちゃんが帰ってきました。
「それでは、檻を設置して待機しますね」
「この檻の中に追い込むんだな」
リーラルさんが作った檻をロートさんが運びます。
「私は上空からうさぎを探しますね」
麗さんはミミクリーで鷹に変身し、空からうさぎさんを探します。
暫くして、麗さんが戻ってきました。
どうやら、うさぎさん達を発見したようです。
「よしっ! 作戦決行だぜっ!」
意気揚々とうさぎさんのいる場所へ向かう蒼龍さん。
村の外に出て少し歩くと、ぴょこっとうさぎさんが1匹現れました。
「あー! うさちゃんなのーv」
それを見たソフィーちゃんはおおはしゃぎです。
「あれ‥‥うさぎ‥‥と、いうよりは‥‥」
ちょっと難しい顔をするラディスさん。
パッと見た感じはうさぎさんなのですが‥‥
ラディスさんはこのモンスターが何だったか、思い出そうと頭を捻ります。
「うさちゃん、いっぱいいるのーv」
続けてゾロゾロと出てくるうさぎさん。
それを見てソフィーちゃんは大喜び。
「で、どいつが『伝説のうさぎ』なんだ?」
「特徴でもあればわかりやすいんだけどなぁ。どれも同じに見えるぜ」
蒼龍さんとロートさんはたくさんのうさぎさんを見渡します。
「あ! 多分、あれが『伝説の』うさちゃんなのー!」
ソフィーちゃんが1匹のうさぎさんに指を指しました。
集団の中で、他のうさぎさんよりも少し大きめなのがいるのです。
「成程、ソフィーにはわかるんだね。あのうさぎが『伝説のうさぎ』だという事が」
ユウンちゃんがそのうさぎさんを見てソフィーちゃんに言います。
「では、捕まえましょう。傷つけないようにしなくてはいけませんね」
リーラルさんが檻を開けて準備しました。
「はぅぅ‥‥うさぎさん‥‥ごめんなさいぃ‥‥」
エスナちゃんは指示された以外のうさぎさんを追い払うためにアイスブリザードを唱えます。
「はぅぅ‥‥上手に出来ました‥‥」
なんと、大成功!
ひゅぅぅぅ〜と、吹雪がうさぎさんを襲います!
魔法を受けて、うさぎさん達は一目散に逃げ出しました。
「こらっ! 待てっ!」
蒼龍さんは『伝説のうさぎ』と思われるうさぎさんと追いかけっこ中。
なかなか、すばしっこいようです。
空からは鷹に変身した麗さんも捕まえようと攻撃を仕掛けます。
「ここは任せておけ!」
逃げ回るうさぎさんの前にロートさんが立ちはだかります。
そして、高速詠唱でストーム!
ぴゅぅぅぅ〜。
うさぎさんは吹き飛ばされてしまいました。
そして、ユウンちゃんが投網をサイコキネシスで操作して吹き飛ばされたうさぎさんを捕らえます。
「これで、捕獲完了です」
ロゼッタちゃんがもがいているうさぎさんを捕まえて檻の中に入れました。
*
「このモンスターはうさぎではなく『ラビットラット』と呼ばれるねずみの1種ですね」
「えー! うさちゃんじゃないのー! みみはうさちゃんなのにー!」
捕獲完了後、ラディスさんは思い出した内容を伝えました。
「こんなねずみもいるんだな」
ロートさんは檻に捕まった『ラビットラット』と呼ばれるモンスターを調べて、何やらメモを取っています。
「これじゃあ『伝説のうさみみ』は作れないのー!」
ソフィーちゃんはプリプリと怒っているようでした。
「殺さなくてよかったのですけども‥‥」
ロゼッタちゃんは複雑な表情をしています。
「いいですか? 食用でなく、人の欲望のための殺生は認めるわけにはいきません」
(「ううう〜、それじゃあ『伝説のうさみみ』が作れないじゃないのー‥‥」)
帰り際、麗さんはソフィーちゃんにお説教をしていました。
反論したいのですが、麗さんの話術に口を出すことも出来ないソフィーちゃんでしたとさ。
【第1話・おしまい】