A world for you & me #2:永遠

■シリーズシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:12月06日〜12月09日

リプレイ公開日:2005年12月23日

●オープニング

●前回のあらすじ
 峠で再び暴れ始めたバグベア闘士を討伐する為に集まった冒険者達。
 ある者は前回の屈辱を晴らす為に‥‥
 ある者は犠牲者の無念を晴らす為に‥‥
 それぞれの思いを胸に強敵へ挑んだ。
 人数はわずか6人。
 以前、冒険者11人の猛攻を退けたバグベア闘士に、この人数で挑んだのだ。
 周囲からは無謀という声さえ上がっていたのに。
 しかし、冒険者達はやってのけた。
 1人が2人以上の実力を発揮し、この難敵を葬り去った。
 仲間の凱歌と共にキャメロットへ戻る冒険者達は、何を得て、何を想うのだろうか‥‥

●永遠の誓い
 全てが終わった。
 終わりから始まる新しい世界。
 そう、あなたとあたしだけの世界が‥‥

「ジーン‥‥」
 ブリジット・キャミル(ez1004)は恋人の住む家へ来ていた。
 彼女は恋人と婚約をしており、結婚も近々‥‥だが、式を挙げるつもりは無い。金銭的な事‥‥それよりも、2人には両親や親類はいない。知り合いもそんなに多いわけではなく‥‥祝福してくれる人もいないのだ。

 ――それなら、式なんて必要ないじゃない?

 ――神の前で誓いをしなくても、夫婦として認められなくてもいいじゃない?

 ――あなたと2人きりでいられるのなら‥‥

 ――周りの声なんてどうでもいいよ‥‥いつも、そういう風に言われてきたから慣れてるよ‥‥

 ――つらい生活になるかもしれないけど、2人で幸せに生きていこうね‥‥


「ブリジットさん‥‥」
「ジーン‥‥愛してるわ‥‥」
 ブリジットの手と恋人の手が触れ合う。指には銀色に光る2人の絆。手を取り合いながら、2人は近くにあったベッドへ腰掛ける。
「何もかも終わったわ‥‥これから、ずっと‥‥あなたの傍にいてあげれる‥‥」
「あぁ‥‥ブリジットさん‥‥」
「‥‥『さん』はやめて! 男らしく『おまえ』って読んでよ! もぅ‥‥あたしはもう、あなたのものなのよ‥‥」
 ちょっと気弱な恋人は、返事の代わりに顔を薄赤く染めた。お互いに目を見つめ合い‥‥呼吸が激しくなる。
「ブリジットさ‥‥ブリジット! 好きだよ!」
「うふふ‥‥愛してる‥‥」
 誰にも知られず、2人だけの世界がそこにはあった‥‥
 が‥‥
「こんにちは〜。ジーンさん、ブリジットさん。ご結婚、おめでとう御座います‥‥って、すみません!」
「ち、ちょっと! リュミナス! 入ってくるならノックくらいしてよ!」
 突然、リュミナスと呼ばれた詩人が家に訪問してきた。ブリジットと恋人はベッドで抱き合う格好になっており、かなり気まずい雰囲気。
「で、何しにきたの!?」
 すぐさま立ち上がると、ブリジットはその詩人に尋ねる。
「えぇと‥‥ご結婚されるのですよね?」
「それがどうしたのよ!」
「話はお聞きしていました。そこで、結婚式の事なのですが‥‥」
「そんなのしないわよ! 付き合いはあるけど、あんたに関係ないでしょ!」
「いえ、もうミリエーヌさんが準備していますので‥‥」
「ち、ちょっと! エンフィルド家とは、既に関係は無いのよ!」
「で、でも、ギルドに依頼が行ってますが‥‥」
「ふぎゃぁぁぁぁ!」
 どうやら、最後までブリジットには安息は許されないようだ。

●結婚式準備のお願い☆
 私の知り合いが今度、めでたくご結婚される事になりました。
 新婦さんは元冒険者ということで、皆様とお知り合いの方がおられるかもしれません。
 そこで、冒険者の皆様に結婚式の準備とお祝いをお願いしたいのです♪
 そうすれば、新婦さんにも喜んでいただけると思うのです。
 私もいろいろお世話になりましたので、このような形で2人を祝福したいのです。
 皆様のご協力をお願いします☆

 ――エンフィルド家・ミリエーヌ

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea4267 ショコラ・フォンス(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea6159 サクラ・キドウ(25歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6226 ミリート・アーティア(25歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea9957 ワケギ・ハルハラ(24歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb3878 紅谷 浅葱(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

桜葉 紫苑(eb2282)/ レオナルド・アランジ(eb2434

●リプレイ本文

●A world for you & me #2:永遠

 指定された会場には、朝早くから設営の為に冒険者達が集まっていた。
「ミリートと久しぶりの依頼‥‥ちょっと嬉しいです‥‥」
「そうだね、サクラちゃん。今日は楽しく盛り上げていこうね♪」
 サクラ・キドウ(ea6159)は会場にはいると、親友のミリート・アーティア(ea6226)に抱きつく。
 会場は飾り付けが始まっていた。聖夜祭が近いということで、会場は明るい色の造花やリボン、リースで華やかに彩られていく。
「カシムさん、少し上の方にこの造花を飾って欲しいのですが」
 紅谷浅葱(eb3878)は会場に飾る造花を作り、式場を華やかに演出していた。
「はい、この辺りでいいですか?」
 浅葱の指示でカシム・ヴォルフィード(ea0424)はリトルフライで宙に浮き、会場を満遍なく飾り付けしていく。
 丁度、その頃。会場にこの結婚式の企画者であるミリエーヌが到着した。彼女は足が不自由な為、杖を突き、恋人であるリュミナスに支えられながら式場に入ってくる。
「あ、ミリエーヌちゃん♪ お久しぶりだね!」
「お久しぶり♪ 元気だった?」
 ミリートは大切な親友であるミリエーヌと再会を喜び合う。
「あ、そうだ。これ、ジャパンのお土産だよ」
 ミリートは黒漆の櫛を取り出すと、それをミリエーヌに手渡した。
「わぁ、ありがとう☆ ジャパンの事とかいろいろ聞きたいけど、今日の主役はブリジットさんとジーンさんだから‥‥また今度ね」
 ミリエーヌはミリートに優しく微笑んだ。
「こんにちは。以前、妹がお世話になりました。今回、お手伝いさせて頂けて光栄です」
 ミリートが式場の準備に戻ると、ショコラ・フォンス(ea4267)が仕事の手を休めてミリエーヌに話しかける。
「妹が『今度会えたら、お友達になって欲しかったのに』と、言っておりました」
「そうでしたの‥‥」
 ショコラがそう伝えると、ミリエーヌは少し悲しそうな表情をした。
「それでは、料理も手伝わなくてはいけませんので、これで失礼します」
「は〜い」
 厨房に戻るショコラを見送ったミリエーヌは式場を見渡した。
「素敵な飾り付けだわ‥‥さすが、冒険者の女ってみんな器用なのね」
 ミリエーヌが漏らした一言に‥‥
「‥‥男ですから。僕は」
 飾り付けをしていたカシムは平然と、
「あの‥‥僕は男なんですが‥‥」
 造花を作っていた浅葱は困惑した様子で言った。
「あ〜ん! ごめんなさ〜い!」
 2人を女だと勘違いしていたミリエーヌは深く頭を下げて謝った。
「やぁ、元気だったかい?」
「あ、リ・ルさん♪」
 大きなテーブルを運んでいたリ・ル(ea3888)が手を休めて話しかけてくると、ミリエーヌは彼にダーツを投げるポーズを見せる。
「あれから、随分練習したのかな? なかなかいい感じになっているよ」
「えへへ☆」
(「これなら大丈夫そうだな。必ず2人は‥‥」)
 以前よりも明るい表情のミリエーヌに、リ・ルは安堵感を覚えた。
「初めまして。ボクはワケギ・ハルハラです」
 ワケギ・ハルハラ(ea9957)はミリエーヌとリュミナスの2人と挨拶を交わす。
「今回、ボクが歌を考えてきたのですが‥‥」
「よかったら、リュミナスお兄さんにも演奏をしてもらいたいの」
 ミリートがリュミナスへ演奏して欲しいと頼むと‥‥
「今日は特別な日です。是非とも参加したいですね」
 リュミナスは冒険者から譲り受けたリュートベイルを取り出すと、軽く音色を響かせる。
「それでは、本番に向けて練習しましょう」
 ワケギとミリートが歌の準備に取り掛かる。
「あの‥‥歌は初めてなので‥‥指導お願いしますっ!」
 サクラも一緒に唄う予定だが、今までこのような経験は無い為、戸惑いを見せていた。

●祝福
「えっと、初めまして。アシュレー・ウォルサムといいます。今回はご結婚おめでとうございます。一生の思い出になるように盛り上げるので、楽しみにしていて下さい」
「ううぅ‥‥こんなに緊張するなんて‥‥ある意味、バグベアの時よりも緊張するぅ‥‥」
 控え室でアシュレー・ウォルサム(ea0244)は、礼服に羽根付き帽子、ナイトレッドに染め上げられたマントを羽織り、気品ある正装で結婚する二人、ブリジット・キャミル(ez1004)とジーンへ接していた。ブリジットは純白のドレスにかなり違和感を感じているようだった。
「こんなの着るなんて夢にも思わなかったわよっ!」
「お美しいではないですか。さぁ、これを‥‥」
 アシュレーはマリア・ヴェールをブリジットに渡した。
「‥‥準備万端ってコトね‥‥覚悟決めたわよ‥‥」
「それじゃぁ、花婿の方も準備しないとね」
 理美容用品と香油を取り出したアシュレーは、ジーンを椅子に座らせて身だしなみを整える。
「さって、最高の結婚式になるようにばっちり決めてあげるからね」
 新郎新婦側の準備は万全となった。
「結婚式かあ‥‥俺も恋人と挙げたいなぁ」
 ぼんやりと呟くアシュレー。
 一方、ブリジットの化粧はサクラが担当。
「‥‥お化粧‥‥自分ではしたことないのが難」
「‥‥ぇ?」
 ‥‥まぁ、大丈夫だろう。
 後は‥‥本番に向けて気持ちを落ち着ける事。ブリジットもジーンも面映いといった表情で、無言のまま時を待つのであった。

●永遠の誓い
 結婚式が始まった。
 二人は準備された会場へと足を踏み入れる。
 会場は造花や装飾で華やかに飾り付けられ、二人を祝福する為に冒険者達が集まっていた。
 皆、婚礼の場ということで礼服や制服に着替えている。会場の奥ではミリエーヌとリュミナスが二人を見守っていた。
「ううぅ‥‥足が震えるぅ‥‥」
 会場の中に入るブリジットは、純白のドレスと同じ色のヴェールから覗く表情に緊張と恥ずかしさを浮かべていた。
 そんなブリジットをリードするかのように、ジーンは彼女の手を取って進んでいく。
(「あんな性格のジーンが‥‥」)
 ブリジットはますます顔を紅潮させた。
 二人は祭壇で永遠の愛を誓う。そして、ジーンはブリジットへゆっくりと顔を近づける。マリア・ヴェールではフェイスアップが出来ないのだが‥‥特に気にする事は無い。そっと、唇を重ねあい、お互いの愛を確かめ合う。

 祝福の唄が流れる。
 リュート「バリウス」で演奏するアシュレー。リュミナスもリュートベイルで即興。
 歌うのはサクラ、ミリート、ワケギ。
 心地良い音色と共に声を合わせる。


♪幸せな二人に歌声を贈る
 嬉しい予感が満ちてくる
 空では鳥達がダンスを踊って
 愛の歌声に応えてる

 歌おうよ 歌おうよ 皆で声を合わせ
 祝おうよ祝おうよ 愛し合う二人

 愛する力を皆は持っている
 輝く明日を信じてね♪


 そして、最後にブーケトス。
「えぇと‥‥これを後ろに投げればいいの?」
 ブリジットはブーケを持って後ろ向きになる。その儀式が始まると、一部の冒険者の目が変わった。投げられたブーケを拾った人は、次に幸せになれるという。
「じゃぁ‥‥えぃ!」
 ブリジットはブーケを投げた。
 サクラは平然とした態度だったが、投げられたブーケを本気で狙う。その中に混じって、アシュレーも取ろうとしていたりするのだが‥‥ブーケは力が入りすぎて遠くへ飛んでいってしまう。会場の奥にはミリエーヌがいるのだが‥‥。

●祝宴
 式が終わると、そのまま宴会へ突入。ショコラの作ったお菓子や料理がテーブル並び、お酒や飲み物が運ばれてくる。
「ブリジットさん、ジーンさん、おめでとうございます」
「二人共、おめでとうございます‥‥末永くお幸せに‥‥」
 料理を運び終えたショコラとサクラが二人へ祝福の言葉を贈る。
「はじめまして、紅谷浅葱です。本当にお綺麗ですね」
 浅葱はブリジットのドレス姿を見て微笑んだ。
「ブリジットお姉さん、おめでとう♪ これ、プレゼントだよ」
「ボクからも贈り物です。受け取ってください」
 ミリートとワケギはブリジットにプレゼントを贈る。贈られたものは『ラブ・ノット』と『スターサンドボトル』。結婚式に相応しい贈り物だ。
「うれしいわ、大事にするわね。それと、ワケギ‥‥ありがとうと頑張れって伝えておいて」
 ワケギはそっと頷いた。
「折角なんだから、乾杯しないと。少しくらい大丈夫だろ」
「お酒はダメなんです‥‥」
 リ・ルは早速、お酒を飲んでいた。飲みすぎには注意しているが、一気に手にしたエールを飲み干すと、カシムにも勧める。自分がお酒に弱い事をわかっているカシムだが、押しに弱い事もあって結局、飲まされる事に。
「う〜〜〜〜ん」
 エールを半分くらい飲むと、足がフラフラになり、そのままテーブルに倒れこむような形で寝てしまった。

 宴も盛り上がってくると、リ・ルはリュミナスに演奏を頼み、即興で鞭を使った民族舞踊を披露した。
 巧みな鞭捌きと舞踊で周囲を魅了する。
「ブリジットさんもいかが?」
 リ・ルはブリジットを誘うが、彼女はブンブンと顔を横に振る。
 宴は遅くまで続き、ブリジットとジーンにとっては絶対に忘れる事の出来ない思い出となっただろう。

  *

 宴が盛り上がっている最中、サクラは会場の片隅で落ち込んだ様子を見せていた。
「どうしたのですか?」
「やっぱり‥‥私にはこういうのは合わないのでしょうか‥‥」
 リュミナスがサクラに尋ねると、どうやら唄がうまく出来なかった事で落ち込んでいるようだ。
「酒場で唄ったりするんじゃないのですから、技術なんて必要ありません。このような場で唄うのに必要なのは、気持ちを込める事。サクラさんは一生懸命、気持ちを込めて唄っていたじゃないですか。本当に素敵な唄でしたよ。僕もあれだけ気持ちを伝える事ができたら‥‥」
 リュミナスはサクラに微笑んでみせた。


「どうしたんだい?」
 リ・ルは会場の外にいたミリエーヌに声を掛ける。
「彼との関係‥‥あれから変わっていないんです‥‥」
「そうか‥‥」
 リ・ルは持っていたラッキースターをミリエーヌに手渡しながら言う。
「まだまだ道は険しいかも知れないけれど、とりあえず道はある。ゴールにたどり着きたければ、時に遠回りしてでも歩みを止めるな。そこで積み重ねられる一歩一歩は、必ず糧になるんだ。それに、困った事があったらでも、ピクニックに行きたくなったらでもいい。呼んでくれれば俺たち冒険者もブリジットも、いつでも駆けつけるさ」
「はい!」
 重ねられたリ・ルの手は、あの時の様に優しく、そして、温かかった。