イツマデ −いつまでも、−

■シリーズシナリオ


担当:初瀬川梟

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月26日〜01月02日

リプレイ公開日:2006年01月05日

●オープニング

「いつまで‥‥」

 それはもう何度繰り返したか分からない言葉。
 村の外に追いやられ、物置小屋のような家に暮らし、食べるものも着るものも満足になくて‥‥それでも家族と一緒にいられれば、満足だった。
 その家族が全員いなくなってしまった時には、もういっそ自分も死んでしまおうと思った。
 鬼の子と呼ばれ嫌われた自分を助けてくれた人がいた。もう二度と得られないと思っていた優しさや温もりも与えてもらった。
 同胞にも会えたし、自分は決して特異ではないのだと教えてくれた人もいた。
 さらには生まれて初めて友達というものにも会えた。
 けれども‥‥また、失わなければならないのか。
 一体、いつまでこんなことを繰り返せばいいのだろう?
 この悲しみはいつまで続く?

 イ ツ マ デ ‥‥

 * * *

 ギルドに駆け込んできた子供を見て、係員は驚いた。
 随分と急いで走ってきたのか、体じゅう汗だく。さらに途中で転んだらしく、服は泥だらけで、足には擦り傷もある。
「どうしたんだい?」
「依頼をしたいんだよ! 冒険者は困ってる人を助けてくれるんだろ?!」
 その必死な様子に、係員も真剣に話を聞いてやることにした。

 * * *

 彼――圭助は仲間たちと共に、親や村人に内緒で頻繁に銀のところへ遊びに行っていた。
 驚いたことに銀は遊びというものを全然知らなくて、圭助たちは銀に色々な遊びを教えることに夢中になった。弟でもできた気分になっていたのかもしれない。
 ところが、ついにそのことが村人にバレてしまった。
「やっぱりあいつは鬼だ!」
「子供たちを唆して、何をするつもりだ?!」
 激怒する大人たち。
 唆されたわけじゃない、自分たちのほうから銀のところへ行くようになったのだと、いくら言っても聞いてもらえない。
 そして、ついに村人たちは強硬手段に出た。
 昴のいない隙を狙って家に押し掛け、銀を強制的に追い出そうとしたのだ。
 当然、銀は恐慌状態に陥った。
 そして‥‥

 * * *

「銀、いなくなっちゃったんだ‥‥昴兄ちゃんがずっと探してる‥‥」
 悔しげに俯く圭助。
 彼は、自分が子供であることを心から呪っていた。
 子供が何を言ったって大人たちは聞いてくれないし、自分1人の力では何もできない。
「比呂は外に出るなって親にきつく言われて、家ん中に閉じ込められてる‥‥寛太も、親に見張られてるし‥‥俺だけどうにか抜け出してきたんだ」
「その村からここまで、1人で来たのか」
「うん‥‥」
 大人でも1日以上かかる道のりを、子供の足で走り続けるのはさぞかしつらかったろう。でも彼にとってはそれ以上に、友達を無理やり取り上げられることのほうが耐えられなかった。だからこそ、こうしてここまでやって来たのだ。
「なあ、銀は何も悪いことしてないんだから、助けてくれよ! 俺、これしかお金持ってないんだけど‥‥これじゃ足りないかな‥‥」
 そう言って差し出された手には、わずかばかりの小銭。もちろん、依頼料としては足りないどころの話ではない。
 それでも係員は、その必死な頼みを無下に断ることはできなかった。
「‥‥分かった。じゃあ、冒険者に頼んでみよう」

●今回の参加者

 ea1181 アキ・ルーンワース(27歳・♂・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea5011 天藤 月乃(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0161 コバルト・ランスフォールド(34歳・♂・クレリック・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb1098 所所楽 石榴(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb1833 小野 麻鳥(37歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●サポート参加者

所所楽 柳(eb2918

●リプレイ本文

 コバルト・ランスフォールド(eb0161)は、まず最初に圭助に治癒魔法を施してやった。
「この術は明日にならなければ効果を発揮しないが、今はこれで我慢してくれ」
「ありがとう、兄ちゃん」
 圭助は疲れや痛みなどおくびにも出さず、にっと笑った。
 体じゅうの泥や傷と、嘘偽りのない笑顔。それは銀への想いの証だ。今もどこかで彷徨っているであろう銀に、できるだけ早くそのことを伝えてやらねばならない。
 小野麻鳥(eb1833)、天藤月乃(ea5011)、アキ・ルーンワース(ea1181)の3人は一先ず昴の家へと急いだ。
 村人が押し掛けてきたのは昴が留守の間の出来事なので、昴はそれを圭助から教えられて初めて知った。
 銀を連れ出そうとしたが逆に襲われ、そのまま逃げられてしまった‥‥圭助は、大人たちがこう話しているのを盗み聞きしていた。それで、大慌てでそのことを昴に報せ、自らもギルドへと走ったのだ。だから昴は銀がいなくなった時の状況については詳しく知らなかった。
「銀が村人を襲ったなんて、できれば信じたくはないが‥‥」
 無理やり家から連れ出されそうになったのなら、銀が恐怖のあまり狂化してしまうというのは充分に考えられる。そうなってしまえば、暴れて村人を傷付けてしまった可能性も高い。
「自業自得なんだけど‥‥あの偏屈な連中にそんな理屈が通用するとも思えないしね」
 やれやれと溜め息を零す月乃。こう次から次へと厄介事を起こされたのでは、呆れたくもなるというものだ。それでも、何だかんだ言いつつこうしてここに足を運んでいるのだから、彼女なりに銀のことを心配しているのだろう。
 昴が既に探し終えている場所を除外して、3人はすぐさま捜索を開始した。


 手分けして銀を探す冒険者たち。
 そんな中、アキはある推測を立てていた。
(「銀くんにとっては、家族と過ごした思い出の場所だし‥‥凶化したままでも、本能的に足が向いてもおかしくない」)
 川沿いに上流を目指して歩きながら、魔法で何度か気配を探してみるが、銀らしき反応は見つからない。しかし崩れ落ちそうな廃屋が見えてきた時、アキの中には何か予感めいたものが燻っていた。
 試しに窓からそっと屋内を覗いてみると、その予感は見事的中していた。
 薄暗い部屋の隅にうずくまる銀。当然、防寒着などは着ておらず、それどころか素足のままだ。剥き出しの小さな足が見るからに寒そうで、痛々しい。すぐにでも助けてやりたい思いに駆られるが、今ここで銀が暴れたり逃げ出したりしてしまっては元も子もない。
 できるだけ早く仲間と合流するため、アキは急いで元来た道を引き返した。


「ここが銀の家、か‥‥」
 初めてこの場所を訪れた月乃は、わずかに顔を歪めた。
 放置されていた遺体は弔ったが、未だに周囲には負の空気が蔓延しているように感じられる。それでも行き場をなくした銀には、ここしか帰る場所がなかったのだ。
「‥‥行こう」
 小野が廃屋へと踏み入り、月乃とアキもそれに続く。
 軋んだ音を立てて扉が開くと、銀は即座に顔を上げ、ゆらりと立ち上がった。そして不気味なほどに感情の欠落した顔で、彼は小さな体にありったけの力を込めて突進してきた。
「銀!」
 月乃がその前に立ち塞がり、銀の体をしっかりと受け止める。
「また僕を追い出しに来たの‥‥? ここが駄目なら、どこへ行けば許してもらえるの‥‥?」
 銀は月乃を突き飛ばしてその反動で後ろに跳び退り、赤い瞳で月乃をじっと見つめた。
「どこだって好きな場所に居ればいいじゃないか。誰かに咎められたとしても、銀は何も間違ったことはしちゃいないんだから」
「そんなの、嘘だ‥‥」
 再び月乃に飛びかかろうとする銀の足を、床に落ちた影が縫い止めた。小野が魔法で足止めしたのだ。銀は動こうとしてもがくが、やはりその表情は微塵も変わらない。しかし無表情な顔からも、抑揚のない声からも、何故か痛いほどに悲しみや絶望の感情が伝わってくる。
「‥‥僕が悪くないのなら、どうしてみんな僕を追い出そうとするの‥‥?」
「みんな、ではないだろう」
 小野は圭助から預かってきた木の実の駒を掌に乗せ、銀に見えるよう差し出した。そして再び詠唱を始める。
 傷付いた銀を救い、家に住まわせてくれた昴。
 銀の容姿を気味悪がったりせず、友達になってくれた圭助たち。
 ――小野の詠唱が終わると同時に、彼らの姿が鮮明に脳裏に浮かび上がり、銀は大きく目を見開いた。
「身の回りの人間はすべて敵か? ‥‥そうではないだろう。追い出そうとする者ばかりではない、受け入れてくれた者たちもいたはずだ。そのことから目を逸らすな」
「‥‥う‥‥」
 無表情だった銀の顔が、歪んだ。
「‥‥逃げるな、銀」
 小野の言葉に応えるようにして溢れ出す涙。それを流す瞳は、もはや赤い色はしていない。
 銀はぷつりと糸が切れたように膝をつき、そのまま意識を失ってしまった。
「ずっと彷徨っていて疲れただろ。昴のところに戻ろう」
 眠る銀に、月乃が優しく声を掛ける。小野も自らの防寒着を銀に掛けてやり、その小さな体を抱き上げ、再び昴の家へと向かった。


 一方、コバルトと所所楽石榴(eb1098)は村を訪れていた。
 いなくなった圭助を必死に探していた村人たちは、2人の傍らに圭助の姿を見つけ、血相を変えて駆け寄ってくる。
「あんたらが圭助を見つけてくれたのか? ‥‥それとも‥‥」
 先日の件の影響で、村人たちは冒険者に対して快い感情を持っていないため、石榴たちに向ける視線もどことなく冷ややかだ。しかしそんな態度を見て圭助が怒鳴った。
「兄ちゃんたちは俺をここまで連れてきてくれたんだよ! それに怪我だって治してもらったんだ。そんな目で見るな!」
 そのあまりに真剣な様子に気圧され、大人たちは戸惑いながらも頭を下げた。
「‥‥悪かった。圭助を保護してくれたことには礼を言うよ」
「いや、構わん。とこで、村に怪我人がいるという話を聞いた。そちらにも治療を施そうと思うのだが」
「!」
 途端に、村人たちの顔色が変わる。「どうする?」といった様子でざわつく人々の中から村長が前に進み出て、厳しい目つきでコバルトたちを見据えた。
「失礼だが、ここへ来た本当の目的は何かね? 圭助から何の話を聞いた?」
「‥‥僕たちはギルドを介して、正式に依頼を請けてきたんだよ。圭助くんから、銀くんを助けて欲しいって頼まれてね」
「依頼だって?!」
 村人たちの視線が一斉に圭助に集まる。それにたじろぐ圭助を庇うようにして、石榴は彼の傍らに立った。
「子供の足で、江戸までたった1人で走ってきたんだよ。それがどういうことだか分かる?」
「圭助はあの鬼に唆されてるんだ」
「生半可な気持ちでそこまでできるわけないじゃない。それに唆すにしたって、子供に何が思いつくって言うの‥‥? 銀君だって、圭助君と同じくらいの子供なんだよ?」
 『気持ちを込めれば大丈夫』と励ましてくれた妹の言葉を思い出し、拙いながらも真摯に思いを伝えようとする石榴。しかし村人たちの顔からはなかなか猜疑心が消えない。
「何故そうも銀を厭う? いや‥‥銀だけでなく、彼の家族もだ」
 コバルトの問いに対して返ってきたのは気まずい沈黙。しかしそれを破って、村長が重い口を開く。
「――奴らはこの村に災いをもたらす。飢饉に災害‥‥あの異人の男が村を訪れて以来、村では不幸ばかり続いた。しかし一家を村から追い出してしばらくして、それは治まった」
 その言葉に、今度はコバルトのほうが言葉を失ってしまう。
 冷静に客観的に判断すれば、それは恐らく偶然以外の何物でもない。しかし危機に瀕した村人たちには、その冷静な判断力というものが決定的に欠けていた。言わば、銀の家族は人柱にされたようなものだ。
「‥‥そんなものはただの迷信でしかない」
「それは違う。現に、奴らは祟りを起こしたではないか。それにあの銀とかいう子供も鬼に化ける」
 何も知らない人から見れば、ハーフエルフが狂化する様子は、鬼に変化するように見られても仕方がないかもしれない。真実を知ってもらう必要があると悟り、コバルトは隠していた耳をさらけ出した。
「俺も、銀と同じだ」
 それを聞いた村人たちがどよめくが、コバルトは気にせず続ける。
「極度の怒りや恐怖などを感じた場合、我々ハーフエルフは正気を失ってしまうことがある。逆に言えば、心穏やかに暮らしている限りは無縁の話。‥‥つまり銀は、あなた方が追い詰めたからこそ『鬼』になってしまった」
「‥‥そんな話は信用できない」
「信用できなくとも、事実だ。この国には元々エルフという種族が存在しない故、詳しく知らないのも無理はないが‥‥」
 コバルトとて、今すぐに理解を得られると思っているわけではない。しかし知ってもらう努力をしなければ、彼らは何も知らぬまま、ただ姿が違うという理由だけで銀を迫害し続けるだろう。それが長引けば、銀は今度こそ本当に心までも鬼になってしまうかもしれない。それだけは食い止めなければならなかった。
「狂化した銀君を怖いって思うのは、ある程度仕方のないことだとは思うよ‥‥でも、圭助君たちのことも信じてあげられないの? 頭ごなしに嘘つきって決め付けられたらどれだけ傷付くか、分からないの‥‥?」
 石榴の言葉には、村人に対する憤りと言うよりも、むしろ深い悲しみが込められていた。
 圭助たちは既に偏見から解放されているというのに、大人たちは自分たちの理屈でもって再びがんじがらめにしようとしている。そのために子供たちの言葉を嘘と決めつけ、耳を貸そうともしない。
「銀君はただ、会いにきてくれたみんなと遊ぶのが嬉しかっただけ‥‥。圭助君たちだって同じだよ。キミたちも、子供の頃は友達と遊ぶのが何より楽しかったはずでしょう? どうして自分たちの子供からはそれを取り上げようとするの?」
「‥‥所所楽の言う通りだ。この寒空の中、圭助が江戸までの道を走ったのは、銀のためならばそこまでしても構わないと思っていたからこそだろう。それが友というもの‥‥違うか?」
 2人の言葉に対し、村人たちは反論できず黙り込む。
 要するに彼らは銀を鬼に仕立て上げることによって、自分たちの憂さを晴らしていたに過ぎない。つらいことや気に入らないことをすべて鬼に押し付け、自分たちは悪くない、悪いのは鬼なのだと思い込む。しかしその過程で自分たちの子供まで犠牲にしてしまっていることに、彼らは今まで気付かなかった‥‥いや、気付こうとしなかった。
「‥‥銀君のこと、少しでも『1人の子供』として見てみたことがある‥‥? その努力もしないで、ただ否定するだけなんて‥‥寂しいよ‥‥」
 掠れる声で呟き、俯く石榴。
 隣の圭助も泣き出しそうな顔でうなだれている。
 村長は複雑な表情で2人から視線を逸らし、ただ一言だけ言った。
「‥‥何が本当で、何が間違っているのか‥‥何が一番大切なのか‥‥我々は完全に見失っていたようですな‥‥」


 目を覚ました銀は、アキからすべてを聞かされていた。
 圭助がギルドまで冒険者を呼びに行ったこと。昴がろくに睡眠も取らずに銀を探し回っていたこと。
 それを聞いて、銀はとめどなく涙を流した。
「昴さんも、友達も、俺達も、みんな銀くんを失いたくないと思ってる‥‥でなきゃ、ここまで必死に動いたりしないよ。辛く当たられることもあるかもしれないけど、でも、悲しいことばっかりじゃない‥‥分かるよね?」
「‥‥うん‥‥」
「‥‥いつまでも続くのが、悲しみなのか、幸せなのか‥‥それを決めるのは銀くん自身だから。逃げずに向き合えば、きっと君の心も強くなる」
「うん‥‥もう、逃げない‥‥」
 素直に頷いた銀の髪を、アキはくしゃくしゃと撫でてやった。
 やがて、村人たちの説得がどうにか成功したことを確認し、銀は冒険者たちに伴われて村へと向かう。
 村人たちはあからさまに銀を拒むような素振りは見せなかったが、それでもやはり友好的な雰囲気ではない。そんな村人たちに向かって、月乃は鋭く言い放った。
「自分たちが被害者面してるけど、一番の被害者は銀とその家族たちだよ。それを忘れないでもらいたいね」
 いつもは「面倒くさい」と気だるそうにしている彼女だが、今回は珍しく頭にきているようだった。声を荒立てるようなことはしないが、淡々と静かに怒りを燃やしている。
 銀は月乃の服の裾を軽く引っ張って、こう言った。
「‥‥ありがとう。でも僕、もう大丈夫‥‥みんながいるから」
 今まではただ怯えて引っ込んでいるだけだった銀の、力強い言葉。それを聞いて月乃はわずかに微笑んだ。
「陰の感情から怨霊が生まれる。それは自らの内から生まれるものだ。悪鬼とは人の内に住む物‥‥それ故、人の心次第で鬼を生み出すことも封じることも可能」
 こう言って、小野は銀に1枚の護符を渡す。
 実は何の効力もないただの札なのだが、彼はそれを陽の符だと説明した。
「これを持っていれば狂化することもなかろう」
 病は気からという言葉もあるように、人間の思い込みというのは侮れない力を持っている。護符を持つことで銀は心を平穏に保つことができるだろうし、村人たちも多少は安心するはずだ。
 そこへ、ようやく外出を許された比呂と寛太、そして圭助が駆け寄ってきた。
「銀! 良かった、心配したんだぞ!」
「これからはまた銀の所に遊びに行ってもいいってさ! 時々だったら、銀もこっちに遊びに来ていいって!」
 満面の笑顔を浮かべ、銀の手を握ってはしゃぐ子供たち。銀もその手を握り返し、何度も何度も「ありがとう」と告げた。
 その様子を見守っていた小野は、いつになく穏やかな口調で呟く。
「いつまでも、友を得た気持ちを忘れるなよ」


 別れ際、最後にコバルトは銀に告げた。
「俺たちの成長はゆっくりだ‥‥圭助たちと一緒に大人にはなれない。だが、その時間も総てお前の宝であるよう‥‥祈っている」
 銀がその言葉の本当の意味を悟るのは、もっと後になってからだろう。
 しかし信頼で結ばれた相手というのがどれほど得がたく大切な存在であるか、銀はもう分かっているはずだ。
 願わくば喜びに満ちた子供たちの笑顔が、硬く引き攣った大人たちの心を解きほぐしてくれるようにと祈りながら、冒険者たちは村を後にしたのだった――