【ブライトンのカマ】何か起きちゃってる

■シリーズシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:1 G 1 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月02日〜10月10日

リプレイ公開日:2007年10月10日

●オープニング

 闇に包まれたその世界。
 何があるのか、誰がいるのか。それは外から見る限り分からない事。中の者にとっては鮮明な事。そんな世界。
 それは物理的な事だけでなく‥‥。
「んっふふふふ。今週の勧誘の結果はいかがなものかしら?」
「はっ。1人こちらに引き込める事ができました。‥‥それ以外の方々にも我々流の会話で勧誘してみたのですが分かっていただけなかったようで」
「1人ねぇ‥‥。ま、小さな事からコツコツとっていうから構わないわん」
「はっ‥‥! 我々が‥‥イギリス全土に進出する日も近いですな!」
「その前にまずはキャメロット、だけどねぇん」
「はっ! 素晴らしきカマの世界の為にも!」
「うっふっふっふん。それじゃ、ご褒美として可愛がって――――」
 精神的にも外の者にとって一切関わらなくて良い話。というか関わったら色んな意味で駄目になりそうな話。



「うう〜‥‥」
 とある屋敷の一室。そこには多くの本などがあり所謂執務室の形をとっていながら、それでいて高価な調度品が置かれている。つまりはよっぽどの身分の者が使う部屋だ。そんな部屋の机に向かって頭を抱えている1人の女性。彼女の名はライカ・アムテリア。ブライトン領主である。
 彼女が頭を抱えている原因というのは机に置かれている数枚の羊皮紙、正確にはそれに書かれている事だろうか。
「なんだ、問題でも起きたのか?」
「起きてるから困ってるんでしょう」
 そんな彼女に声をかけるのは護衛の騎士であるクウェル・ナーリシェン。主に対しての言葉遣いはなってないものだが、主であるライカも気にしたものではない。ライカは言葉で説明するのも嫌だといった様子で羊皮紙をクウェルに渡す。
「領主が軽々しく文書を人に見せていいのかよ‥‥」
 呆れながらも一応羊皮紙に目を通すクウェル。そんな彼の表情は次第に青いものとなっていく。
「ねぇ、クウェル。あなた、それの調査してくれない?」
「絶対に断る」
 ライカの提案に即座に拒否するクウェル。尤もライカとしてもクウェルが拒否するのは分かっていた事のようで。
 ライカの頭を抱えさせ、クウェルの顔を青くした羊皮紙に書かれている事とは――。

 最近、ブライトン領内・周辺にて男性が襲われる事件が発生。
 襲われた男性は何故か服を剥がれており、精神的にも傷を負っている様子。
 家にも引き篭もりがちになり、特にキャメロットには絶対でかけたくないと言い張っている。

「これって‥‥やっぱりアレよねぇ」
「‥‥あぁ。俺がキャメロットにいた時に小耳に挟んだ被害の状況と非常に酷似してる」
 クウェルは以前、キャメロットにて騎士として滞在していた。故にキャメロットで似たような事件が起きた事も知っている。
 ―――カマを筆頭とした変態の起こす事件だ。
「ねぇ、キャメロットではこういうのって誰が解決してたのかしら?」
「騎士が出張る事もあったが‥‥やっぱり冒険者が解決してたな」
 クウェルの話を聞いて、冒険者って便利だなと実感するライカであった。

●今回の参加者

 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea5866 チョコ・フォンス(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea6159 サクラ・キドウ(25歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 eb0529 シュヴァルツ・ヴァルト(21歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb1476 本多 空矢(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb5817 木下 茜(24歳・♀・忍者・河童・ジャパン)
 eb9943 ロッド・エルメロイ(23歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec3138 マロース・フィリオネル(34歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●騎士のお仕事
 キャメロットから南に3日いったところにある都市、ブライトン。
 今、冒険者達は依頼主でもあるブライトン領主、ライカ・アムテリアの館へと訪れ、ライカと護衛の騎士クウェル・ナーリシェンと面会していた。
「初めまして、チョコ・フォンスよ」
「僕はシュヴァルツ・ヴァルト。よろしく!」
 まずは冒険者側から挨拶するのはチョコ・フォンス(ea5866)とシュヴァルツ・ヴァルト(eb0529)の2人だ。2人は友達同士でありシュヴァルツは思うところがあったようだが、チョコの元気そうな様子に一安心といったところか。
 その後、木下茜(eb5817)、ロッド・エルメロイ(eb9943)と挨拶をしていき、挨拶を受ける側のライカとクウェルの目は1人の男に移った。男の名はレイジュ・カザミ(ea0448)。
「僕はキャメロットからやってきた、世界の英雄(自称)葉っぱ男ことレイジュだよ! 僕が来たからにはもう安心さ!」
 誇らしげに胸を張って言うレイジュを見て、ライカは軽く引きつつ他の者に聞こえないようにクウェルに言う。
「葉っぱ男って‥‥色んな意味で凄い人がやってきたんだけど」
「‥‥毒をもって毒を制す、という言葉もある」
 ひそひそと答えるクウェル。その認識で良いのだろうか。良い事にしておこう。
「それにしても‥‥クウェルよ、マトモな騎士として過ごしていると思ったがこんな馬鹿な仕事をしているとは思わなかったな」
「馬鹿な仕事というか‥‥ついにブライトンまで進出してきましたか‥‥。まあ、対処法はいつも通りでいいようですけど」
「‥‥誰もこんな仕事望んじゃいねーよ」
 やれやれと軽く呆れながら言うのは本多空矢(eb1476)。彼に続くように言ったのはマロース・フィリオネル(ec3138)だ。2人とも過去にブライトンに訪れており、クウェルが騎士として復帰するのを手伝った者だ。
 馬鹿な仕事。今回は盗賊を倒したりといった類のものではない。
「ジャパンに噂に名高い、カマ。この目にする時が来るとは思いませんでしたが、モラルを揺るがす敵を討つ絶好の機会、世に潜む悪を正します」
「カマ・変態、キャメロット、いや人類の天敵です。2度程対峙した事が有りますが、恐怖を刻まれました。この様な恐怖を町の人々が味わうなど見過せません。英国紳士として、必ずやこの恐怖を払ってみせる」
 今回対峙するだろう存在に対して、必ずや討ち取ってみせるという正義の炎を燃やす茜とロッド。‥‥そう今回の相手は事前の情報から判断して十中八九カマなどの変態なのだ。それにしても茜、カマがジャパンの噂に名高いというのは一体どういう事だ。
「クウェルよ、ここは責任をとって囮の一人としてしっかりと務めを果たしてくれ。勿論、騎士が尻込みして逃げるなどという事は言わぬな」
「何の責任!? ってかお前がやれよ!」
「俺はその様な気持ちの悪い輩の相手をする気は毛頭無い」
 カマを誘いこむには男が囮をするのが最適ということで、クウェルに囮を任せると言う空矢。勿論クウェルとしては拒否の意を表すのだが空矢は聞く気は毛頭無いようだ。
 クウェルは助けを求めるように辺りを見るのだが‥‥誰も彼もライカ含む皆がどこか生暖かい視線でクウェルの事を見ていたのだった。

●傷を抉る様に?
 囮捜査の前に冒険者達は街中にて情報を集めていた。
 被害者男性のうち1人をつきとめ、彼から話を聞きだそうとする。勿論男としては悪夢ような出来事を思い出すのも嫌なので首をただ横に振るばかりだ。
「思い出したくないかもしれないけど、一生外歩けないなんて嫌でしょ?」
 そう諭すように言うチョコの言葉を聞き、少し口を開きかけた男。これなら何とか聞きだせそうだ。
「剥がれた服は変態に取られたの?」
 今が機会とばかりに少し気になっていた事を聞くチョコ。だがそう言われて男が思いだしたのは一体何だったのだろうか。男はガクガクと震え始める。
「‥‥チョコお姉さん、何でそんな事を楽しそうに聞くの?」
 同行していたシュヴァルツはチョコの様子から一体何を察したのだろうか。2人が男から話を聞き出せたのはもう少し後のことである。

「落ち着いて、落ち着いて下さい」
 焦ったように、しかし相手を落ち着かせる為に冷静を努めて呼びかけるのはロッド。呼びかけの相手はこれまた被害男性の1人である。話を聞こうとしたらどうにも様子がおかしくなってきたのである。
 なんだか小声で『俺もう‥‥男でも‥‥いいかな』とか口走ってる辺りかなり危ないだろう。
「ふっ――御免!」
 そんな危ない様子の男の背後に密かに忍び寄り、首へと手刀を叩き込み一瞬で気絶させる茜。このままでは被害者から加害者になる事も考えられた為だ。
「教会か自警団に連れていき、目を覚ませましょう」
 茜の言葉に従い、2人は男を教会へと連れていったのだった。

「そちらはどうでしたか?」
「1人になった所を襲う‥‥というのは共通しているが、な」
 各々で聞き込みした内容を話し合うのはマロースと空矢だ。犯行手口や場所などを聞き込みしていたのだが‥‥。
「こちらもですね。場所や時間帯などはバラバラです」
「やはり‥‥複数の人物がいると考えた方が自然か」
 その結論に2人とも自然に溜め息を吐く。そりゃそうだろう、変態が複数いるなんていう現実は認めがたいものなのだから。

●蜜に誘われる虫のように
「うわぁ、海が近くてのどかな町だなぁ。キャメロットには海はないからね」
 といった感じで海沿いの道を歩くのはレイジュだ。彼は今、囮という事で1人で歩いている。尤もしばらく離れた所に数人の冒険者が見張っているのだが。
「素敵な町だ。こんな場所を散歩するのは何て気持ちが良いのだろう」
 武器などは隠しており、まるで観光客が辺りを散策するかのように歩いている。

「こんな目に合いたくないからギルドに依頼したのに‥‥」
 こちらはうってかわってクウェル。彼もまた武器などを隠して、騎士ではなく一般人に見えるように街中を歩いている。レイジュが顔を上げて楽しそうに歩いているのに対して、こちらは顔を伏せてとぼとぼ歩いている感じだ。こちらも数人の冒険者が離れたところで見張っている。


「おぉっと、いい男」
「兄貴、いい事しないかい?」
 そんな別々の場所にいる2人のもとに、同じタイミングで現れるは筋骨隆々の男! 頭は見事なまでに剃っており、褌一丁という中々の男らしい姿だ。これからの季節を考えると寒そうなものだが。

「な、君は一体‥‥!?」
 いきなり目の前に現われた男に怯んだ様子で一歩下がるレイジュ。男はその様子を気にする事無くじりじりと距離を詰めてくる。
「そんな事はどうだっていいじゃないか?」
「問答無用、というわけか」
「ん?」
 男は間合いを計り、飛びかかる態勢を取ろうとしたその瞬間。レイジュの雰囲気がどことなく変わったのを察して動きを止める。
 レイジュは自分の服に手をかけると、目にも止まらぬ素早さでそれを脱ぎ捨てる!
「この僕に手を出そうなんて100年早いねっ! 僕はキャメロットの変態達を成敗してきたんだ! 数々の戦いを繰り返してきた僕の前で、まだ人を襲おうってのかい!?」
 そう高らかに言うレイジュの姿はどう見ても全裸に葉っぱを一枚股間につけただけでした。だから寒くないのかお前ら。
 それと同時に待機していた冒険者達がレイジュの元へと駆け寄ってくる。

 レイジュ同様、クウェルの方にも冒険者達が駆け寄っていた。クウェルは完全に腰が引けていたが。
「世に潜む悪、闇には闇の、影には影の掟が有ります。カマの道は、人外の道、決して許しません」
「貴方方は、何故この様な惨い事を、貴方達の目的は何ですか」
 茜はクウェルを守るように彼の前に立つと男に向かって啖呵を切る。そう、外道の存在である男に対して何故こんな事をするのかと問い詰めるロッド。
「これじゃちょっと1人じゃ分が悪いかね」
「いいから答えろ」
 笑顔を絶やさずとぼけたように言う男に対して、空矢は白刃を煌かせて答えを強要する。
「怖い人。だが、それがいい」
 男は怯む事なく自分の褌の中に手をつっこんだかと思うと一枚の羊皮紙を取り出す。
「とりあえず名乗りはしておこう。‥‥我々はブラッディペイン」
 男はその羊皮紙を投げ捨てるようにすると、一目散に背中を向けて走り出す。簡単に言うと逃げ出したのだ。
「なっ‥‥!?」
 冒険者達が驚いてる隙にどんどん小さくなっていく男の影。何も着ていないからかその動きはとても素早いものだった。

「ブラッディペイン‥‥?」
 レイジュの方に現れた男もやはりその名を口に出していた。違うのはすぐに逃げ出していないという事だろうか。
 この機を幸いとばかりに筆記用具などを取り出して筋肉デッサンなどをしているチョコは‥‥とりあえず置いておこう。
「君たちは男性を襲って何しようって言うんだい? 人に酷い事をしてはいけないんだよ!」
「そうだな、それが知りたかったら‥‥」
 レイジュの問いに答えるようにやはり男は褌の中から一枚の羊皮紙を取り出し、それを放り出す。
「ここに書いてある場所に来るがいい。その時こそ、我々ブラッディペイン‥‥そして偉大なカマール様の考えを教えてあげよう!」
 呆気に取られる冒険者達を尻目にやはり背中を向けて全速力で逃げていく男。日の光を受けて輝く汗はどこか美しい‥‥と誰かが思ったかどうかは定かではない。
「カマール‥‥ですか」
 男の言った事を反芻するように呟くマロース。あんな男に偉大とか言われてる時点で恐らくまともな人物でない事は推測できる。
「それが‥‥僕達の敵、か」
 どこか遠い目をしながらいつの間にか沈みつつある夕日を見るレイジュ。
 そう、冒険者達の戦いはこれから始まるのだ。


「ねぇ‥‥ところで、その紙、誰が拾うの?」
 シュヴァルツの一言。変態の褌に入ってた羊皮紙なんて誰が拾いたがるのだろうか。