【ブライトンのカマ】スーパー兄貴

■シリーズシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 94 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月08日〜11月15日

リプレイ公開日:2007年11月16日

●オープニング

「ここか‥‥」
 1人の騎士の男が足を踏み入れる。
 そこはただののどかな村である―――何か拭いきれない違和感が存在しているが。
 ただ、その村は彼にとっては‥‥地獄である為、仕方ない事かもしれない。
「あ、あんた‥‥!」
 そんな騎士を見かけた1人のおばちゃんが慌てた様子で彼に駆け寄り声をかける。
「どうしたんです? そんなに慌てて」
「どうかしてるのはあんたの方さ! 何で男が外に―――」
 その様子に疑問を覚えた騎士はおばちゃんに質問をするが、おばちゃんの返答は中々要領を得ない。だが、そんなおばちゃんの答えを代弁するかのような声が唐突に響き渡る!

「ムーハッハッハッハ!」
「ハーハッハッハッハ!」

「な、何だ!?」
 それは野太い男による高笑いの声であり。騎士が声のした方向を振り向けば、そこに立っていたのは2人のやはり男。
 男達は丸く剃った頭を光らせ、逞しい筋肉を誇り、体中をテカテカと照らし、褌をたなびかせていた。‥‥そう、やはり褌以外は全て脱いでいるのだ。
「俺の名はサドン!」
「俺の名はアムソン!」
 名乗りと同時に己の筋肉を誇示するかのようなポーズを取る2人の男達! 見た目的にはあまり違いは無いが、敢えて言うなら黒い褌がサドンで赤い褌がアムソンだ。
 この瞬間、騎士の違和感はすぐに氷解する。あぁ、何故こんな事に簡単に気づかなかったんだろう―――この村で男が出歩いていない、という事に。
「くそっ、だから嫌だったんだ! 怪しい組織の調査なんて!」
「ふむ、我々が属するブラッディペインはそんな怪しい組織というわけではないんだがな? なぁ、アムソン」
「そうだな、サドンよ」
 半ば本能的に無駄だと悟りつつも、やはり本能の警鐘のままに腰にぶらさげられている剣を引き抜きサドンとアムソンに向ける騎士。
 だが、剣を向けられた2人は相変わらずの余裕綽々といった態度を崩そうとはしない。
「お前らみたいな怪しい人物が属してるってだけで怪しい組織には十分だ!」
 口では強がりを言いながらも、騎士はじりじりと少しずつ後ずさる。
「ほほう、ではアムソンよ。彼に我々の事を理解してもらおうか」
「そうだな、サドン。我々流の会話でな」
「なっ‥‥!?」
 それと同時に動き始めるサドンとアムソン。その筋骨逞しい姿から肉体派と狙いをつけて構える騎士―――しかし。
「食らうがいい、メンズシュート!」
「ぶちかませ、メンズボム!」
 男達が取った行動は距離を取る事。そして‥‥魔法の発動!
 サドンから放たれる雷が! アムソンから放たれる火球が騎士を襲う!
「その筋肉は何なんだよ―――!?」
 騎士は思わずツッコミをしてしまうが‥‥それが致命的だった。2種類の攻撃に対してまったく構える事なく身を晒してしまい―――
「ぬがぁぁぁ!?」
 直撃。しかも何だか男にとって微妙な感じでヒットするから困る。
「ふっふっふ、これが我々のやり方!」
「さぁ、大人しく会話と行こうか!」
「それは会話じゃねえええええええ!!!」
 いつの間にか倒れた騎士の傍に寄っていたのだろうか。サドンとアムソンは騎士にのしかかりながら鎧をどんどんはいでいき‥‥‥。
 ―――――まぁ、おばちゃんが攻撃に巻き込まれなかったのは良しとしよう。



「調査に向かわせた騎士が‥‥‥‥ふむ」
「ふむって何だ、おい!?」
 場所は変わってブライトン領主館の執務室。そこでは領主のライカ・アムテリアと彼女の護衛であるクウェル・ナーリシェンが、先日怪しい人物が取り出した地図に書いてあった村への調査の報告を見ていた。
「‥‥まぁ、やっぱり今回も冒険者任せかしらね」
「‥‥‥‥今回は俺、ここから動かないからな」
「それはそれでつまらないのよねー」
「護衛を何だと思ってる!?」
 というわけで、ギルドにてとある村への調査が依頼されるのであった。

●今回の参加者

 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea5866 チョコ・フォンス(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea6159 サクラ・キドウ(25歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 eb0529 シュヴァルツ・ヴァルト(21歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb1476 本多 空矢(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb2874 アレナサーラ・クレオポリス(27歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 eb9943 ロッド・エルメロイ(23歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec3793 オグマ・リゴネメティス(32歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

イシリシク・ローレミファ(eb4772

●リプレイ本文

●依頼の意義
 ブライトン周辺にある村に現れた2人の変態。彼らを倒す為に立ち上がる冒険者達は今、ブライトン領主のライカ・アムテリアの屋敷へと訪れていた。
「というわけだ、クウェル。ついてこい」
「どういうわけだよ!?」
 屋敷の執務室にてライカと共にいる護衛の騎士であるクウェルに声をかける本多空矢(eb1476)。ついてこいというのは今回の変態討伐にである。尤も、クウェルは行く気はさらさら無いようだが。
「でも囮の方はできれば多い方が‥‥」
 そんな様子を苦笑しつつ見るのはアレナサーラ・クレオポリス(eb2874)だ。確かに彼女の言う通り、囮となる男性は多い方が良いだろう。
「―――囮ならあなた達がやればいいんじゃないの?」
「え?」
 と冷や水を浴びせるようにかけられる声。声の主はクウェルの主であるライカだ。てっきり彼女ならクウェルが囮になる事に賛成するのだろうと冒険者達は思っていたのだが。
「僕も囮をするけどね、やっぱり1人じゃ心細いし」
「だからってクウェルを連れていく必要は無いでしょ? 男なら、ほら」
 今回囮を務めるレイジュ・カザミ(ea0448)がクウェルに囮になってもらう理由を説明するが、ライカはその理由に納得せず、冒険者の男性陣‥‥空矢を始め、シュヴァルツ・ヴァルト(eb0529)やロッド・エルメロイ(eb9943)を指差していく。
「ブライトンでは今、面倒な事が起きているわ。騎士を動かさなければならない事件がね。だからこそ、私に近しいクウェルにやってもらわないといけない事が多くある。‥‥分かるかしら? あなた達に依頼をした理由が。手が足りないからあなた達に依頼をしたのに、あなた達が私達に手を借りようとする事が本末転倒という事に。確かに面白い状況になるクウェルを見たいとは思うけどね。それとこれとは話が別」
 冒険者達に依頼をする。その意味をしっかり理解していればクウェルを連れていくという考えは出なかった筈だ。
「クウェルは動かさない、と予め依頼する時に言っている筈よね?」
「確かに、そうです」
 オグマ・リゴネメティス(ec3793)が答える。依頼された時の備考の欄にクウェルが動かない事は明記されていた。そこにクウェルを動かしてもよいと書かれていたのなら、クウェルを囮にする事も許可したのだろうが。
「というわけで、今回はあなた達だけで頑張ってね」

●兄貴と私達
 そしてクウェルの協力を得る事ができなかった冒険者達は変態がいるという村へと向かっていた。
「平和な村の筈が、一転して人が近寄れない危険地帯になるとは‥‥これが変態。キャメロットを蹂躙したと言う、恐るべき力ですか。この力、放置する訳には行きません」
「変態が大量に所属する組織‥‥何か想像もしたくないですね‥‥。変態が一同に介する会合とかあるのでしょうか‥‥」
 向かっている先の村の事を考え、ロッドが村を変えた原因の変態達を討伐する為に誓いを立て、サクラ・キドウ(ea6159)がその変態が所属しているという組織について考えてみる。
「まぁ、それを知る為にも頑張らなくちゃね」
「‥‥チョコお姉さん、何見てるの?」
 そう言うチョコ・フォンス(ea5866)が歩きながら見ているのは以前変態達に会った時に描いたデッサンだ。それを見ながらどこかに思いを馳せているチョコ、シュヴァルツが戸惑った様子なのも無理はないだろう。
「村が見えてきたぞ」
 先頭を歩く空矢が指差す先には村が‥‥変態兄貴が居ついてるという村が見えていた。

 村に到着した一行は、まず近くの物陰に身を隠し、レイジュが1人、村の中を平然と歩いていく。レイジュを囮として変態兄貴が現れるのを待つ為だ。そして変態兄貴は――やはり誘いに乗るかのように華麗にその場に舞い降りる!
「サドン!」
「アムソン!」
 筋肉を誇示するかのようにポーズを取りながら現れたサドンとアムソンが名乗りながら現れる!
「む、早速だが良い男だな!」
「やっちゃうか、サドン!」
 サドンとアムソンはレイジュに狙いを見定めると、レイジュの周りをぐるぐると怪しい腰つきをしながら回り始めると、一気に飛びかかる! 特に抵抗される事無く揉みくちゃにされるレイジュ!
「いやーん、兄貴達ってば凄い〜♪」
 2人を見つめながら笑顔を赤く染めるレイジュ。‥‥彼曰く相手を油断させる為の演技らしいが、どうなんだろう。
「これは‥‥凄いですね」
 その様子を物陰から見ている冒険者の1人、オグマは既にお菓子などを用意して観戦モードになっていた。他の女性陣もそんなものだったが。
「男性陣は囮‥‥もとい変態との会話頑張ってください」
「うわっ、わわっ!?」
 サクラはそう言いながら青い顔をしながら震えているシュヴァルツとロッドを物陰から追い出すように背中を押す。
「おい、アムソン! 更に可愛い男の子2人追加のようだな!」
「今日はいい日だな、サドンよ!」
 勿論兄貴達がそれを見逃す事なく、新しい獲物へと狙いを見定める。ちなみにレイジュは何故か既に股間に葉っぱ1枚の格好となっていた。自分でやったのか、兄貴達に脱がされたのかは分からないが。
「貴方達の招待の通り、やって来ました!」
「僕はシュヴァルツ・ヴァルトです。手を出すと多分危ない13歳!」
 覚悟を決めたのか兄貴達と向かうロッドとシュヴァルツ。紳士のように振舞うロッドだが、足はがくがくと震えており、動揺や恐怖などを隠しきれていない。シュヴァルツはまずは自己紹介をする事で情報を聞き出そうという魂胆のようだ。
「せっかくなので色々とお話を聞いてみたいと思います!」
「おぉ、有名になると大変だなアムソンよ」
「そうだな、サドン。じゃんじゃんと聞いてくれ!」
 シュヴァルツは兄貴達を上目遣いでお願いするように言う。そんなシュヴァルツに気をよくしたのか、兄貴達はノリノリだ。
「歳はいくつ?」
「いっちょ――じゃなかった、37歳という事にしておこうか!」
「どんな男でもいいの?」
「オールオッケー! 筋肉ついてる方が好みだがな!」
「年齢制限は?」
「愛の前に年齢なんて些細な事だと思わないか?」
「あんた達って、変態だー!」
 最後は本当は変態なのかどうか聞こうと思っていたシュヴァルツだが、聞くまでもなく変態というのは分かるのが何とも。
 そんなシュヴァルツの身を紳士的に隠すように兄貴達とシュヴァルツの間に立ちふさがるロッド。今度は彼が質問を投げかけるようだ。
「変態とは言え、兄貴と呼ばれるからには、弟分が居る筈、貴方方の根城は何処ですか」
 その質問は今回、退治する上で聞かなければいけない項目の上位に位置する事柄だ。そして先ほどまでスラスラと質問に答えていた兄貴達は―――。
「残念ながら、それは答えられんなぁ」
「そうだな、知りたければ我々の愛を知らんとな!」
 つまり、知りたかったら襲わせろ、という事であり。それを聞き、後衛職とは思えない素晴らしいバックステップで後退するロッドとシュヴァルツ。
 だが、そんな2人を助けるように、1人の男が立ち上がる。
「兄貴達に突撃された時、感じちゃったねっ♪ 僕も兄貴達の仲間になりたいなっ♪」
 起き上がったのはレイジュだ。その言葉も情報を聞きだすための演技‥‥そう、演技の筈だ。
「むふ、どうやら君はなかなか見所があるようだな!」
「よし、では我々の事を教えてあげよう!」
 レイジュの言葉に調子を良くしたのか、兄貴達は機嫌をよくしていく。

「なんだか、勝手に色々喋ってくれそうですね」
「じゃあしっかり記録しましょう」
 アレナサーラの言う通り、あの様子だと兄貴達はどんどん口を滑らせていくだろう。オグマは耳を傾けながら、記録する為のスクロールを用意する。
「どうせなら、もっとレイジュさんを襲ってほしかったかしら」
「‥‥中々の出来ですね」
 いつの間にかチョコが描いていたのは兄貴達とレイジュが絡んでる絵である。それを見たサクラは良い評価をするが、常識的に考えると‥‥。
「‥‥それ、下手に持ち出さんようにな」
 こういう評価になる。ちなみにこれは空矢の評価だ。

●ブラッディペイン
「我々、ブラッディペインの目的!」
「それはキャメロットへと進出し、行く行くはイギリス全土へと広がる大組織になること!」
「そうすれば入団者もがっぽがっぽ! 色んな仲間達とイーヤッホウなわけだよ、分かるかい?」
「分かりませんよ!」
 つまりは簡単な事で。類は友を呼ぶとかそんなノリで、単純に大きな組織を作る、それ自体がほぼ目的となっているのである。
「‥‥大体、何故まずはキャメロットへ?」
 別にキャメロットに進出しなくても組織は大きくできるのでは、と思うロッドが質問してみるが。
「キャメロットは我々のような存在にとって聖地ともいえる場所だからな!」
 ‥‥確かにキャメロットには何故か変態がよく現れたりするが、そんな認識をしているのは彼ら変態達だけと書いておく。
「これ以上の事が知りたければ入団する事だな!」
「色々と試験を受けてもらうがな!」
 そして話を締めくくる兄貴達。試験というのは多分あんな事やこんな事だろう。

「‥‥それじゃ、これ以上は締め上げて聞くとしましょうか。‥‥お仕置きだべー」
「えぇ、そうですね」
 勿論冒険者達はそんな組織に入るつもりは毛頭ない。ならば―――力ずくで聞き出すまで。いつの間にか兄貴達を包囲するように移動していたサクラが剣を、オグマが弓を構える。
「まぁ、絵も十分描いたしね」
「‥‥どうするつもりだ、その絵」
 同じくチョコ、空矢も構える。
「頑張ってくださいね!」
 アレナサーラは後方で物見のようだ。
「ふ‥‥アムソンよ、これは窮地というものかな?」
「そうだな、サドン。だが、その時こそ我々の筋肉が輝く時ではないか?」

 あぁ‥‥漢たちのメンズ云々の技が聞こえる‥‥。



 後日纏められた情報はライカの元へと渡るわけだが、兄貴達の末路はつまりそういうわけで。