【ゴーレムの眠る地】水晶の輝き

■シリーズシナリオ


担当:刃葉破

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 48 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:05月15日〜05月22日

リプレイ公開日:2009年05月23日

●オープニング

「はぁ‥‥」
 溜め息をついてから、酒を呷るは1人の男。
 男自身もこういう酒の飲み方はあまり好きではない。好きではないのだが‥‥。
「どうしたもんかなぁ、これ」
 酒の入ったコップを持った手とは別の手で弄られるのは、2枚のメダル。
 男の名はジョージ・サカモト。フランク王国出身のファイターだ。
 侍になる為、領主に仕える為にもまずは名声を得る。だから冒険を‥‥という事で、彼はピースヘイヴンに眠る遺跡を攻略した。メダルは、その遺跡の最奥で入手したものだ。
 1つ目の遺跡を守っていたのは溶岩で出来たラヴァゴーレム。2つ目は氷で出来たアイスゴーレム。
 また、同行した冒険者の調べた結果から言って、今後もゴーレムが関わってくる可能性は大いにあった。
 そして何よりも。ジョージを悩ませる一番の理由が―――
「大いなる力、か‥‥」
 とある文献に書かれていた事。その解析が間違っていなければ、ゴーレムが守る遺跡は大いなる力に繋がっているというのだ。
 ただ、その大いなる力というものが何かも分かっていない。
 ジョージの推測では、少なくとも神だのの類が眠っている‥‥というわけではないように思える。
 最近調査が進んでいる南方の遺跡とはまた種類が違う遺跡のようであるし、何より。

『平和を守る為の力とならん事を。そして、この力が望まれるような争いが起こらない事を‥‥切に望む』

 と、発見した文献にこう書かれているからだ。
 少なくとも、こう書かれてる以上は平和利用できる力‥‥制御可能の力である可能性が大きい。
 だからといって、まったく安全なものともいえないからこそ、ジョージは悩んでいたのだ。
 彼は冒険者であり、男だ。
 そのような者が、力に憧れるのはとても自然な事である。だから、ジョージは遺跡攻略を続けたいという気持ちが強い。
 しかし危険なものが出てくる可能性も‥‥こういったジレンマに陥っているのである。

「あぁ‥‥あなたがジョージさん、ですか?」
「ん?」
 女性の声。誰かと思い、顔を上げてみるとそこに居たのは白い長髪に、白い肌、白を基調にした服を身に纏った女性であった。
 白いなー、というのがジョージの第一印象であるのも仕方なし。
「あんたは?」
「あ、申し遅れました‥‥私はセルと言います。同席、よろしいですか?」
 ジョージが座る事を促すと、セルと名乗った女性はジョージの真正面の席に座る。
「んで、俺に何の用で?」
「いえいえ、とんでもない力が眠っている遺跡を攻略する冒険者‥‥そんな人に興味がわくのはおかしい事でしょうか?」
「あ?」
 寝耳に水、というのはこの事だろうか。
「ちょっと待て‥‥。もしかして、俺、そんな風に有名になっちまってるのか?」
「有名‥‥とまではいきませんが。一部の情報通には知られている、といった感じでしょうか」
「あー‥‥」
 面倒な事になった、とジョージは天井を仰ぐ。
 思えば知られる要因はいくつでもある。遺跡攻略の際にギルドに依頼をしたから、報告書が残っている。自分で調べる時の聞き込みで洩らしてしまった情報。
 それらを考えれば、現状が知られていてもおかしくはない。
 そしてそんな情報が出回ってしまえば‥‥他に遺跡を攻略しようと考える輩が出てもおかしくはない。
 幸いな事に、遺跡がどこにあるかを記してある地図は今のところ自分しか持っていない。しかし、もしそれが他で発見されたら‥‥。
「くそ、めんどくせぇな‥‥。んで? あんたはそんな俺にくっついて美味しい蜜でも啜ろうってか?」
 言ってから、ジョージは自分でもそれは無いなと思った。
 セルの見た目の第一印象は白い、というもの。そしてこうして向かい合わせに座っている今でもその印象は変わらない。
 もっと多くの事を話せば変わるかもしれないが‥‥。少なくとも、ここまで白い彼女がそんな目的で近づいてくるようには思えなかった。
「目的‥‥と言われても困りますね?」
 首を傾げるように苦笑するセル。彼女は、本当に困ったような様子で。
「こう‥‥頑張る人がいたら、それを応援したくなるような性分を持つ人って、いません?」
「あー‥‥‥」
 なんとなく、分かる気はする。
 確かに、その人の成長を手伝い見届ける事で、満足する人はいる。育てる楽しみ‥‥というやつだろうか。
 とはいえ、自分はさすがに育てられるガラではないだろう‥‥とジョージは思う。
「というわけで、話しかけてみたわけですけど‥‥どうです?」
「や、どうって聞かれてもなぁ。自分でもどうするべきかと悩んでるとこだし」
「何故です?」
 問われ、ジョージは自分の悩みを話す。
 確かに大いなる力については気になる。しかし、それは探求してよい力なのか‥‥と。
「一応、俺も息子がいる身だし、それで死んじまっ―――」
 死んだら息子がどうなるか―――そう話そうとしていた唇の動きが、セルの人差し指によって止められる。
「――あまり息子さんがいる事は言わない方がいいですよ?」
「‥‥‥あぁ。成る程」
 自分の持つ遺跡の地図やメダル。それを狙う不逞の輩に息子の事が知れたら‥‥そう考えると、セルの忠告は正しい。
 つくづく、大変な事に首を突っ込んじまったと実感するジョージ。
 しかし、だからといってこんな物を放り投げていいわけがない。
「では‥‥やっぱりあなたが手に入れたらいいのでは?」
 セルの言葉。
 確かに、その通りではある。自分が大いなる力とやらまで辿り着き‥‥それを何とかすれば。
 この騒動を終わらせる事ができる。
「そう、だな。‥‥よし、やってみるか!」
「ふふ、頑張ってくださいね?」
 セルの言葉に後押しされ、ジョージは動く決心を固める。


「あ、それはそれとして。ちょっとお金貸してくれません?」
「あんたそっちが本当の目的だろ!?」
 どうやら彼女、いつの間にか自分の所持金以上の飲み食いをしてたらしい。




 後日、キャメロットギルドに顔を出すジョージ。
 遺跡攻略の手伝いをする冒険者を求めてだ。
「まぁ、一応事前に下見は済ませておいたんだが‥‥」
 今回探索する遺跡は、遺跡というよりも自然の洞窟という趣が強いらしい。広さ的には前回と大して変わらないのだが、自然の洞窟故、色々と不安は残る。
「その分罠は前回以上に神経質にならなくてはいいと思うが‥‥」
 そしてやはり守護者はいた。
 水晶でできたと思われるゴーレムが数体。前回の情報を参照して考えると、クリスタルゴーレムか。
「いや、多分面倒なのはこっちじゃねぇな」
 どうせ水晶で出来てるなら脆いだろうし、とジョージが言う厄介な敵。
 それは岩のような物体、であるらしい。
「最初はただの岩の塊だと思ったんだが‥‥こっちに向かってしつこく転がってきやがる」
 恐らくは、何らかのコンストラクトの一種。
「あまりにも鬱陶しいから蹴り飛ばした結果が、これだ」
 と、ジョージは体中に出来ている火傷と痣を受付係に見せる。
 そう、ジョージがその岩を蹴り飛ばすと、爆発したのだ。爆発、といっても爆破の威力より石礫のダメージがメインに近い。
「敢えて言うならラヴァボムってところか? とにかく、そっちの方が色々と面倒そうだ」

 こうして、クリスタルゴーレムとラヴァボムが待つ洞窟遺跡の攻略に向けての依頼が出される事になる。





「さて‥‥。ここまで情報が広がった事によって、俺が動いても不自然さはないわけだが‥‥」

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea0640 グラディ・アトール(28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea5635 アデリーナ・ホワイト(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb7208 陰守 森写歩朗(28歳・♂・レンジャー・人間・ジャパン)
 eb8106 レイア・アローネ(29歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)

●サポート参加者

クル・リリン(ea8121)/ ヴィタリー・チャイカ(ec5023

●リプレイ本文

●洞窟に挑む者
 ピースヘイヴンにあるは1つの洞窟。
 その入り口は木々で隠され、道は地下へと続いていた。近くに崖などがあるわけではないので、完全に地下洞窟なのだろう。
 その洞窟の入り口周辺で何かを待つようにしている今回の依頼に参加した冒険者達。
 と、入り口にある木々が揺らめき、中から2人の男性が出てくる。
「あー、やっぱり相当深いな‥‥。全然奥が見えん」
 1人は冒険者であるマナウス・ドラッケン(ea0021)、もう1人はジョージだ。
 マナウスはジョージの記憶を頼りに、安全だと思われる場所まで潜って、洞窟の深さなどを確認していたのだ。
 しかし、持ち込んだランタンの明かりは決して奥を照らさず、反響して聞こえてくる音からも相当な深さが窺えた。
 また、事前に誰かが入った様子があるか調べてみたが、ジョージが侵入した時のものぐらいであった。
「なんだかよく分からんが、大いなる力なんてご大層なものに関わってる洞窟なんだ。そう簡単に攻略はできんさ」
「大いなる力、か‥‥それが何か俺には分からないが、もし危険な物であるのならそれを悪用しようと考えるようなヤツがでてきても不思議じゃない」
 ジョージの言葉を受け、事態の重さを深く考えるグラディ・アトール(ea0640)。
「これからは、この依頼の情報については取り扱いに注意を払っていたがいいだろうな」
「報告書の公開は一般にはしない方がいいって事か?」
「できたらそうした方がいい」
「他にも気をつけるべき事がありますね」
 グラディの提案に加え、陰守森写歩朗(eb7208)も更に注意を促す。
「ここに来る前に、ピースヘイヴンに寄ってみましたが‥‥冒険者らしき姿がありましたので」
 以前までのピースヘイヴンには冒険者などは殆ど訪れなかった。理由としては、特に探索するべきものもなく、何か大きな争いも無かったからである。
 そんなのどかな地方であるピースヘイヴンに現れた冒険者達‥‥十中八九、大いなる力を狙っている者達だろう。
 森写歩朗が出発時に偽情報を流すなどをした為、今のところ尾行してきている者達はいないが、やはり情報の取り扱いは重要だろう。
「サカモト様‥‥気になる事がございます」
「ん?」
 と、ジョージに問うはアデリーナ・ホワイト(ea5635)だ。
「情報の取り扱い‥‥ということですが、前回から今回までの間に、誰かにお会いしたりお話を聞かれましたか?」
 アデリーナが危惧するのは、今のように事態を重く見てなかったジョージが直接何かを話してしまったのではないか‥‥ということである。
「あー‥‥それなんだがな」
 気まずそうに首筋をぽりぽりと掻きながら、話し始めるジョージ。
「酒場でセルって女に会ってな‥‥」
 セルとの会話の内容、セルがどのような人物かの印象を、ついでに奢らされた事を包み隠さず話す。
「ジョージ」
「なんだ」
 話し終えたジョージを真剣な眼差しで見ながら、声をかけるマナウス。
「―――女に惚れて情報洩らしまくるってのは勘弁だぞ?」
「何故そうなる!?」
 抗議の声を上げるジョージを爽やか(風に)いなすマナウス。ハッハッハッという笑いに裏しか見えない。
「‥‥というか、ジョージは息子いるんじゃないのか」
 そんな2人を見て、やれやれといった風に溜め息をつくレイア・アローネ(eb8106)。
「ともかく! 他の奴らに見つかったら面倒なんだから、さっさといくぞ!」
 と、入り口の木々を掻き分けるジョージ。
 そうして見つかる洞窟の入り口を見ながら、ゼルス・ウィンディ(ea1661)はぽつりと呟く。
「古の時代の研究者が、平和を願って作った何か‥‥ですか。私も学者の端くれですから、自分の積み重ねた知識を人の役に立てたい気持ちは良く分かります。出来ればその願い、聞き届けてあげたいですね」
 果たして、研究者が作ったというものは‥‥平和を願う力とは、何なのだろうか。

●ボムロック
 こうして冒険者達は洞窟の中へと入っていく。
 洞窟内は特に侵入を阻むような作りは見受けられず‥‥せいぜい光が無い為にとにかく暗いという事ぐらいだろうか。
 尤も、それもマナウスのランタン、ゼルスや森写歩朗の連れたミスラのライト、またアデリーナの連れたメイフェの灯りのお陰で気にするようなものではなかった。
「これは‥‥やはり人の手が入っていますね」
 罠の有無を調べる為、壁や床を触って調べる森写歩朗。人の手が入っているといっても、せいぜい通りやすいように削られている程度だという。
「罠は心配しなくてもよいでしょうが‥‥そうなると大きな衝撃が怖いですね」
 崩落の危険性がある、と。
 そしてこの洞窟で大きな衝撃を発するもの‥‥それはジョージが事前に潜入した時に遭遇したラヴァボムだ。
「となると‥‥なるべく壁際で爆発させないように対処する必要があるな」
 ジョージの話だと、爆発よりも石礫のダメージがメインだというが、それでも壁際で爆発した際は何が起こるか分からない。
 グラディの言葉に全員は頷く。
「‥‥と、おでましのようですね」
 全員の耳に、何かが転がる音が聞こえてくる。
 そして音が近づくと同時、彼らが照らす視界に入ってくるは‥‥赤熱した岩の塊。
 そう、ラヴァボム‥‥それが3体だ。
 どうやって侵入者を認識しているかは分からないが、ボムはこちらに向かって真っ直ぐ転がってくる。
 また、転がる速度は大した事無いのだが、3つが並んで向かってくるので、戦闘を完全に回避する事は難しいだろう。
「どれ‥‥まずはどの程度の衝撃なら大丈夫か、確かめておこうか」
 と弓をかかえ、矢を放つマナウス。しかし、狙いはラヴァボムではない、ボムの進行方向の床だ。
 バーストシューティングで放たれたその矢は、床に着弾すると小さな穴をつくる。
 その穴に引っかかる1体のラヴァボム‥‥だが、大して進行方向を変える事なくそのまま進んでくる。
 元が洞窟である事を考えると、ある程度の凹凸は対応できるのだろう。
「ならばこれはどうです?」
 と魔法を発動させるゼルス。その魔法はウォールホール。1mの穴を作る魔法だ。
 発動させたと同時、仲間と共に後ろに下がるゼルス。その結果は‥‥見事なまでに穴に入るラヴァボムであった。
 落下の衝撃で爆発するのではないかという危惧もあったが、そんな事はなくすっぽりと埋まったまま身動きが取れないでいる。
「爆発の威力も連鎖爆発も怖いから、まずは穴に落としちまうか」
 というジョージの言葉にゼルスは頷いて、次々と穴を作り、全てそこに落としてしまう。
「このままスルーしてもよいのですが‥‥少し試しておきましょう」
 魔法の詠唱を始め、発動するアデリーナ。その魔法はウォーターボムだ。
 穴に嵌っているボムに向けて水弾が飛んでいく。
 爆発を予想して、爆発音やらへと対して構える冒険者達だが‥‥いつまでたっても爆発が起きた様子は無い。
 不思議に思ってレイアがそこを覗いてみると‥‥ボムの動きが完全に停止していた。
「しかも熱を持っている様子は無い‥‥?」
 冷やされた為、だろうか。
 そんなラヴァボムの様子を見て、森写歩朗はある事に気づく。
「ラヴァゴーレムと同じ‥‥?」
 ジョージ達が過去に戦闘した溶岩石で作られたゴーレム。
 それはどういう特質なのか、水の精霊魔法に一切抵抗する事ができないゴーレムであった。
「つまり、こいつも水が弱点‥‥って事か。分かりやすい事だ」
 完全に動きを止めたボムに対して遠くから矢を放ってみるマナウスだが、一度冷やされた為か爆発する様子はない。
「ってことは‥‥ボム対処は任せたぞ」
 と、ジョージに肩をポンと叩かれるアデリーナ。
 それからの彼女が発動したウォーターボムは結構な回数になるのであった。

●水晶と溶岩
 こうしてボムはアデリーナのウォーターボムと、森写歩朗のスクロール・アイスブリザードによってあっさりと対処されていた。
 また途中で何体かクリスタルゴーレムと戦闘したものの、ストーンゴーレムのような丈夫さを持っているわけでもなく、動きが秀でているわけでもなく、簡単に破壊されていた。
 特徴があるとすれば、ゴーレムにしては珍しく再生能力を持っている事であったが‥‥それも冒険者達の攻撃力の前には無力であった。
「ゴーレムメインの遺跡の筈なのに、ゴーレムよりボムの方が厄介ってどういう事だ」
 とは誰の言葉だろうか。

 ともかく、進んでいるとまた3体のクリスタルゴーレムが目に入る。
 矢でも魔法でも簡単に対処できるのだが、彼らはボム対策の為にそれらを節約して近接攻撃で排除していた。
「ん‥‥?」
 ふと1体目のゴーレムを倒してから、壁にある小さな穴に気づくグラディ。
 自然の洞窟を元にしてる以上、そのようなものがあってもおかしくはないのだが、今までのものに比べるといささか大きい。
 そしてそれが壁の至るところにある事に気づいたグラディの背筋に冷たいものが走る。
「皆、下がれ!」
 次の瞬間、それぞれの穴から転がりでてくるは岩の塊‥‥そう、ラヴァボムだ。
 この洞窟の数少ない仕掛けなのだろう。
 即座にアデリーナがウォーターボムを発動させようとするが‥‥それよりも敵の動きが早かった。
「!?」
 クリスタルゴーレムが目の前のラヴァボムを殴ったのである。
 その結果引き起こされるは、爆発、爆発、爆発、連鎖爆発。
「くっ‥‥!?」
 敵による爆破を想定していなかった為か、冒険者達にはダメージよりも驚きが大きい。
 尤も、後衛組にとっては石礫は洒落にならないダメージになるのだが‥‥。
「グラディ様‥‥」
 大したダメージは負っていないアデリーナ。その理由は目の前に立つグラディだ。
 彼が盾を構えて後衛のダメージを減らしたのだ。
「任せてくれよ。仲間を守るのが、俺の役目だ」
 グラディは振り向きながら言う。見たところ、そんなに大きなダメージを負ったものはおらず一安心というところか。
「まったく大した仕掛けを残してくれたもんだ‥‥」
 壁を、そして遥か先に続く洞窟を見据えながらぽつりと呟くマナウス。今のところ敵の気配はない。
「崩落が起きなかったのも救いですね」
 ゼルスが見る壁には罅が入っている。このまま強い衝撃を与えると崩落する可能性もある。
「んじゃさくっと進むとするか」
 全員が大丈夫な事を確認して、ジョージは歩を進めていくのであった。

●眠りしもの
 こうして、それから戦闘をする事なく冒険者達は奥まで辿り着いたのであった。
 最奥の部屋にあったのは‥‥やはり他と同じく、メダルと文献。
 多少の経年劣化はしているものの、紙らしきもので出来ている文献がこの時代まで残っている事を考えると‥‥やはり魔力があるのだろう。
 ジョージはメダルを手におさめると、文献の解読をアデリーナとゼルスに頼む。
 その結果は以下だ。

 クリスタルゴーレム―――想像以上に脆く、性能が低かった。とはいえ、再生能力は面白くあるのでいくつか量産してみて研究してみよう。しかし、再生能力が水晶限定だとしたら、あれに搭載するのは難しいか‥‥。
 ラヴァボム―――ラヴァゴーレムを作った際の余りで作成してみたがこれは面白い。使い方によっては強力な罠になるのではないか。

「ん‥‥やはり、今回ここに眠っていたゴーレムに関する事しか書かれてませんね」
「そうか‥‥大いなる力に繋がる資料があればと思ったが」
 文献の内容をメモしつつ、森写歩朗はひとり心中で呟く。
(「ゴーレムに関する資料と‥‥それ以外の資料は分けられている?」)

 そして冒険者達は探索を終え、地上に向かっていた。
「ん‥‥?」
 ふと何かに気づいた様子のゼルス。
「入り口に人がいる‥‥?」
 彼は尾行者の事を考えて、ブレスセンサーを発動していたのだ。その範囲はかなり広く、ある程度まで戻ると入り口付近まで察知できたのだ。
「本当か?」
「あ‥‥いや、反応が無くなりました。何か人間に近い動物だったのでしょうか‥‥」
 反応が無くなった以上、現時点では分かる事はない。
 冒険者達は入り口に現れたらしい人間の追及を諦め、入り口に戻るのだった。

 こうして、外にでた冒険者達は爽やかな空気を堪能しつつ、周囲にを気を配る。怪しいものは‥‥特にない。
 ゼルスは入り口へと振り返ると、洞窟へと頭を下げ。
「永い間、お疲れ様でした」
 ‥‥‥と。遺跡の守護者を労わるのであった。

 そして‥‥。
「力は時に人を狂わせる。それが、間違いだと分かっていても」
 そのグラディの言葉を理解する者はどれだけいるのだろうか。

●?
「‥‥ま、このまま抑えられっぱなしってのもつまらねぇだろ?」