THE・埋蔵金

■シリーズシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:6 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月29日〜07月04日

リプレイ公開日:2007年07月07日

●オープニング

――まあ、よく見れば物騒な事もあるもので




 源徳が伊達の軍勢に敗北し、江戸城に伊達笹の紋が飾られ独眼流と知られる伊達政宗の支配下に下った江戸。源徳勢は撤退し反撃の為に力を蓄えているのだが、現地に残って活動している者もいたりする。この三人もそうなのだが‥‥‥
「――ついに! ついに見つけたわ!」
 山道を抜けて伊達の足軽達が出入りする洞窟を伺える崖に立つ女性は大きく胸を張った。
 元源徳軍蓮山大隊大隊長、笹山玲香である。かつてとは違って浪人風ないでだちだ。
「近所に子供達のわらべ歌を聞いて解読する事約三日。傘貼りの内職を徹夜で仕上げてようやく辿り着いたわ! 是が非でも埋蔵金手に入れるわ!」
 徹夜明けのハイテンション。やる気があるのは結構だが、何か妙にカクカクしているのは気のせいだろうか。
「意気込むのは結構ですが、大隊長、そう叫んでは伊達兵に気付かれますが」
 そう突っ込むのは部下である笹山中隊中隊長笹山式子だ。
「気付かれたら叩き潰せばオールオッケー! その為に冒険者に来てもらってるんだし!」
「いや、そういう訳には‥‥‥」
「そういうものなの!」
 蓮山大隊長は言い切った。
「源徳公が返り咲く為、私達はその足がかりとして江戸にて各種工作活動しなければいけない。オーケー?」
「はあ」
 いつもどこかおかしいというか、脳の大事な部分が抜け落ちてそうな玲香。今回は徹夜明けのせいかいつも以上にどこか(脳が)おかしい。
「そういう訳で! いつか起きる筈の反攻作戦を前に! 私は軍資金調達しようと思った訳なのよ!」
「それは判ってますが、どうして埋蔵金なんですか。普通に伊達に仕官して、情報を流すという手もありますが‥‥‥」
「冗談じゃないわ! 昔っからニ君を持たずと言うし、侍的に鞍替えするのは如何なものかと思わない?」
「まあそれは」
 何というか、玲香としてはもの凄く珍しい言い分である。いつもいつもアホな事しかせずにむしろ仕事そっちのけで遊んでばっかでその尻拭いをよくさせられたものだ。先日の戦で心を入れ替えたかもしれない――式子は彼女の普段からの言動はともかくとして、真面目になったんだな、と感心した。
「そこで小耳に挟みました埋蔵金。これを手に入れれば軍資金の足しにもなると思うわ」
 情報源が子供のわらべ歌という時点で胡散臭いのだが――逆にそういう手段で伝えられたという事も考えられるが――何らかの形で伝えれてきている以上、伝えられるだけのものがあるのかもしれない。
「何より! 埋蔵金を手に入れさえすれば、もう内職なんてしないですむもんね!」
 大隊長は仰った。
「毎日毎日傘を貼って納品先のオヤジから二束三文で買い叩かれて、何がもっと高く買い取って欲しかったら一晩どうだ? よ! あのエロオヤジめ!」
「いや、あの。大隊長?」
「式子ちゃんなんていいわよ! 人が傘張ってるってのに友孝くんといちゃいちゃして! 彼氏いない歴○○年だからってバカにしないでよー!」
「べ、別にいちゃいちゃなんてしてません! 潜伏活動の為、表向きは若夫婦って事にしてるんです!」
「何が表向きよ! 何だかんだいって世話してものっそ幸せそうな顔してるし! それはアレか! いい歳こいて独身な私への当てつけか!」
「違いますよ! 友孝のやつがだらしないから、しょうがないから面倒みているだけです!」
「うわー! ノロケかー! ノロケかー!」
 悶えまくる大隊長。普通に大声で言い合っていれば気付かれる訳で、
「誰だキサマら!」
「やかましい!」
 速攻マッハで異口同音。玲香と式子の正拳突きが伊達の足軽達を昏倒させた。
「どうするんですか! 大隊長のせいで見つかったじゃないですか!」
「式子ちゃんのせいよ! ノロケるから!」
 どっちもどっちだと思う。さすがは大隊を纏めていた大隊長という事で、式子は速攻で伊達の足軽を簀巻きにしてそこら辺に放り込む。
「見つかってしまったし、こうなったら洞窟に突撃するわよ! そして埋蔵金をがっつりゲットするわ!」
「別に構いませんが、冒険者にどう言うんです? 伊達の足軽と戦ってくれ、なんて依頼した訳でないですけど」
 今回冒険者へは埋蔵金の発掘と護衛を依頼していた。式子も逃げようと言わない辺り玲香の性格を見抜いてるものだ。というかこういうパターンで何を言っても無駄だけど。
「ふふふ。式子ちゃんったら何を言っているのかしら」
 玲香は悪巧みを思いついたように含んで笑う。
「これは、護衛じゃない」
 デビルってこんな顔してるんだろうなぁ‥‥‥邪悪極まりない上官を見つつ式子はそう思った。
「いい事? 私達は、埋蔵金を発掘しようと現地に来て、そこで私欲に駆られ襲ってくる山賊達から守ってもらうの? 私の言いたい事判る?」
「‥‥‥いざ危なくなったら速攻で逃げますよ」
「大丈夫よ大丈夫。名が知れている冒険者ばかりを雇った訳だし負ける理由が見つからないわ」
 確かに、振り返るとどこかで聞いた事のある冒険者達ばかりだ。これで敗北する方が難しいかもしれない。
「それに源徳的に伊達兵は敵だし、ここで殺っとくのも後々有利になるかもしれないし、冒険者達には盛大に殺ってもらいましょう♪」
「それは絶対にいけません」
 軍関係者の死亡とかになると、その捜査は通常のそれより何倍も密度が濃くなる。自分達が捕まってしまうのも遠くはないだろう。
「ま、洞窟内にはトラップも沢山あるようだし、気張って行きっましょー!」
 こうして、冒険者を騙くらかして伊達の兵隊と一戦ぶちかます事になった。

●今回の参加者

 ea0276 鷹城 空魔(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3094 夜十字 信人(29歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea4734 西園寺 更紗(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5936 アンドリュー・カールセン(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8714 トマス・ウェスト(43歳・♂・僧侶・人間・イギリス王国)
 ea9885 レイナス・フォルスティン(34歳・♂・侍・人間・エジプト)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 鬼のような速攻の早さで伊達の陣を制圧した冒険者一行は、洞窟へ入る為の準備と伊達兵達の後始末をしていた。数は多かったとはいえ所詮は足軽。歴戦を潜り抜けた冒険者達の敵にならないものである。
 冒険者達は探索準備と伊達兵達の後始末の二つに別れそれぞれ動いていた。アンドリュー・カールセン(ea5936)。彼は適度に痛めた伊達兵が動けないよう一通り拘束すると薄闇の続く洞窟の入り口を覗いた。
「いわゆる源徳埋蔵金というやつか? 胡散臭くもあるがな‥‥‥」
 学び続けた戦場での工作知識からくる罠知識から予想されるトラップを連想する。洞窟内という状況は戦場と勝手が違うとはいえ、達人と呼ばれるほどの知識を身に付けていれば――この表現もどうかと思うが――応用も利くものである。しかし、情報源となるわらべ歌を再解読してみると、胡散臭いどころか検討違いの気が断然しているのだが――
「埋蔵金探しとその護衛でこの依頼を受けたんだが」
 声の聞こえた方へ向いた。式子と夜十字信人(ea3094)だ。彼女は灯りを持っていて、どうやら伊達兵の陣から失敬してきたようだ。
「俺はこちらから楯突く気は無いぞ? 自衛程度ならするが伊達の兵隊とやり合う気はなかったんだがな」
「すみません‥‥‥」
 普通に怒られるよりこうやってソフトに言われる方がよっぽどキツい。信人がどういう意味で言ったのかはともかく、式子は胃が鬼のように痛まんばかりに痛々しい顔で頭を下げていた。
「ふははははーーー!!! 伊達兵如き私の敵じゃなし! 源徳公が返り咲いた際は、奥州の侵攻を是非提案してみせるわ!」
 簀巻きにして横に転がされている伊達兵を足蹴にふんぞり返る玲香。小さなお子様が胸を張っているようである。いい加減に落ち着きを持たなければいけない年齢だけど。
「依頼人の嬢。気持ちは分かるが、今ココで伊達とイザコザを起こしても警戒を呼び込むだけだぞ‥‥‥って、聞いてないな」
 この大隊長、自分に都合の悪い台詞は脳が判断する訳がない。部下が苦労しまくる上司の典型である。
 洞窟はそれなりに奥が深いようだがこんなに大声でわめき散らしていたらさすがに気付くものだ。引き返してきた数人の伊達兵達は外の惨状を見て、冒険者達に槍の穂先を向ける。
「こ、これは一体――。キサマらがやったのか!?」
「何だ。俺は手荒な事はしたくないのでな。大人しく――って待て! 何やってるか!」
「ジェーノサーイド!」
 刀を抜いて襲い掛かる大隊長。普段から脳の大事な部分が抜け落ちてそうな彼女はいつもの三倍増しでハイテンション。服用者に害しか与えない薬を決め込んだような勢いだ。
「ええい、落ち着け! 破剣圧!」
「はぶし!」
 轟き唸る衝撃波。信人の必殺のソニックブームが玲香をかっ飛ばす。
 信人は白目を向いて倒れた玲香を、また暴れないよう縄で縛りに縛る。我ながら何だかなぁ‥‥‥とついつい思ってしまう。
「その赤髪に黒眼。そして白い肌‥‥‥。まさか‥‥‥」
「――む?」
 伊達兵達は信人を前に急にうろたえ始めた。勇ましく構えた槍は震え始め、歴戦かどうかはともかく強持ての表情には恐怖の色が塗り込められる。
「まさか、お前は――」
 一人の伊達兵は勇気を振り絞る。眼の前に立つ浪人は、まさしく天下にその名を轟かす――
「ろりきゅあ信人!」
「誰がろりきゅあだ!」
 速攻マッハで言い返す。
 世界に知れ渡る英雄、夜十字信人。彼は数多の修羅場を潜り抜けた末にそう呼ばれるまでに至った。
 剣客として生きている彼にとってそれは栄誉以外の何ものでもないだろう。実際に人斬り夢幻斎とか屍山血河等の物騒な称号を持っている。とはいえ、いくらそんな物騒極まりない称号を持っていようが不名誉な事柄の方がよく知れ渡る訳で、どういう意味かはともかく、ろりきゅあの二つ名を知れ渡っていたりするのだ。
「な、何故ろりきゅあがこんな所にいるんだ!?」
「俺が知るか! それより早く中の仲間に知らせるぞ!」
「ああ。そうしないときゅあされる!」
「待て! きゅあされるって何だ!」
 我先に洞窟内に引き返していく伊達兵達。信人は伸ばした手の行き先を失って取り合えず式子を見やったが――
「近寄るな‥‥‥」
 ゆっくりと、刀を抜いて身構える式子。よく見ると小刻みに震えていて、まるで暴漢を前にした少女のようだ。
「とりあえず刀を納めろ。まずそれからだ」
 何となく嫌な予感がして式子を促す。
 彼の足元には白目を向いて簀巻きにされた大隊長。そしてろりきゅあ。つまり、
「うわぁぁぁぁ!!!」
 乾坤一擲に大上段。式子はろりきゅあから何を連想したんだろう?




 同時刻。拘束した伊達兵達の前に白衣を着た男がいた。トマス・ウェスト(ea8714)。自らをドクターと称する僧侶である。
 彼は独自にある研究を行っていて毒草の知識については神がかっている程の識者だ。道中、目にした毒草や苔を用いある薬の調合に成功した。
 すり鉢の中の緑の液体‥‥‥というか固形物に近いようなそれは、アメーバのようにうねうねして意思をもっているかのようだ。さすが毒草知識の超越者だ。どんな材料と調合法を使ったのだろうというか知りたくもない気もするが。
「けひゃひゃひゃ。ではこれを飲んでもらおうかね〜」
 眼の前でうねうねする薬? 伊達兵達はいやいやするもドクターは止める筈もない。そんでもって伊達兵達は、縛られている上にコアギュレイトで動けない!
 口を無理矢理開かれて流し込む。固形じみた粘着物はあっさりと流れ込まずナメクジのように喉を這いずる。何とか嚥下するもすぐその効果が現れる。
「お通じがよくなるから、早めに陣に帰るなりしてゆっくりすることだね〜けひゃひゃひゃ」
 そう下剤なのだ。あれをどこからどう見て下剤と言うのかはなただ疑問であるが、作った本人はそう言うのだから違いないのだろう。‥‥‥何をどう使えばああなるんだろう。
 腹に電撃大地震。嵐の如く荒れ狂う腹部はというかこれは本当に腹痛なのか! その上コアギュレイトだから動けない!
 刹那の瞬きで伊達兵達の表情が変わっていく。そして‥‥‥
 ちーん。




「宝探しってなんだか子供の頃を思い出すわね♪」
 式子が提灯を手に先頭に立ち、それに続く形で冒険者達は歩いている。伊達兵が出るだろうから、との事で信人は彼女に並ぶよう歩いているのだが微妙に距離が空いている。何故だかとっても泣きたくなる信人だ。
 まあそんな事はどうでもいい。童心に返ったのか歩調はどこかうきうきと、御陰桜(eb4757)は軽やかに歩む。何より彼女は全ての荷物を信人に持たせている。ちなみに信人は身も心も重い。
「そうそう。式子ちゃんもついに素直になったのねぇ?」
「何の事です?」
 思い当たる節もなく式子は問い返す。
「トボけちゃって♪ 愛しのカレと一緒に暮らしてるんだって? らぶらぶするのはいいけど毎晩毎晩ご近所さんに迷惑かけちゃダメよぉ?」
「ら、らぶらぶ!? というか毎晩って何を変な事言っているんだ!」
「だって一緒に住んでるんでしょ?」
「表向きは若夫婦という事にしているだけ!」
 そ、そうなのだ。私は潜伏活動の為にそうしているのであって、男女が潜むなら夫婦の方が誤魔化しやすい。夫婦なら夫婦らしい事もしないだろうといけないし、十代後半で、夜中ともなるとそれはもうタイヘンで仕方ないだろうが別に私達はそういうのではなくて、友孝は何やらひどく落ち着きのないし身の危険を感じるけど、それは自分を異性として見ているのならほんの少しは‥‥‥って何を考えているのだ!
「それでも巧い具合に浅生はんと夫婦を演じてるんやろ? この際告白してもてほんまの夫婦になったらええのに」
 狙い済ましてスマッシュEXな台詞を決め込む西園寺更紗(ea4734)。
「自分からなんてはしたないじゃないか! それに、私はそう簡単に身を許す気はないぞ!?」
「成る程。自分からは駄目で言わせるなら構へんのねぇ‥‥‥」
「はっ!」
 にやにや勝ち誇った笑みで式子を舐め回す様に見つめる更紗。先刻からいい感じにテンパっていた式子はどうしたらいいか判らずに取り合えず刀を抜こうとしたが、更紗に先手を打たれた。質問を変えられて出鼻を挫く。
「それはそうと、蓮山はんてまだ一人身になん?」
「玲香さんの方は相変わらずみたいね‥‥‥」
 男連中にクダを巻く大隊長。どこかにいい男いないかというか家老とまで言わないが、イケメンで大商人と同等の年収の男を紹介してくれと真顔でのたまっている。いい加減に危機感抱いているのだろうが高望みしすぎである。
「式子ちゃんと友孝くんは人の気も知らずにいちゃいちゃするし! 羨ましいのよ! 妬ましいのよ! 贅沢言わないから一生遊んで暮らせるだけのお金を稼ぐ男を紹介して!」
 鷹城空魔(ea0276)の胸倉を掴んでというか締め上げて、行き遅れの女侍は泣き縋る。血涙を出さんばかりの勢いで本当に焦っているのだろうが、適当な所で手を打てばいいと思うのに。
「とりあえず落ち着くさ! 式子と友孝のいちゃつきっぷりは放っておいて、自分でも見つければいいさ。 な?」
「連れ合いのいるアンタに判る訳ないわ! そんな可愛い妖精さん連れているし!」
 空魔のすぐ隣、ふわふわ浮いてるエレメンタルフェアリー。緑髪緑眼ひらひらの、羽の生えたとっても可愛らしい女の子だ。
「摩利の事か? こいつは俺のペットで‥‥‥」
「ペット? 女の子をペットって? この変態!」
 まあ聞くだけならそう聞こえなくともない。
「ちょっと待て! それは違う!」
「違わないわよ! ていうか、何でアンタはそうも私に絡んでくるの!?」
 感じた身の危険。玲香は腰の刀に手をかける。
「あ、いや。誰も相手にしないなら俺が面倒を見ようかと‥‥‥」
 それは、今回誰もやりたがらないから玲香の暴走を抑えようとの意味である。
 しかしそんな事情を知らない玲香は勘違い摺る訳で、
「折角だけどノーセンキュー! 好みじゃないしそもそも変態は論外よ!」
 いくら何でもあんまりだ。




 空魔が違う意味で死んでいる中、玲香は二人のイケメンにモーションをかけていた。
 瀬戸喪(ea0443)とレイナス・フォルスティン(ea9885)。タイプは違うがどっちもイケメンな青年だ。
「お金どれだけ持ってますかお二人さん!」
 開口一番現金と、思いっきりストレートに問う女だ。行き遅れるともう手段に構っていられなくなるのだろうか。
「別にひとさまに言う程でも」
「‥‥‥」
 常識を疑う質問をにこやかに受け流す喪と沈黙を持って返すレイナス。彼は思った。こういう手合いにまともに相手をしてはいけないと――。レイナスは空魔にビシっと敬礼。
「謙遜なんてしなくて構わんですよ! 何かこう、二人からお金さまのオーラが見えるから!」
 それはどんなオーラだろう。とりあえず玲香には金色の波動と大判小判の幻影が見えたらしい。
「特に喪さん! いっそ私を貰ってくださいよ!」
 瞳は既に小判。こうもあからさますぎると逆に清々しい‥‥‥気がする。
 レイナスの所持金は喪に届かないものの、何より腰に差した魔法の剣、聖剣アルマス。磨き抜かれ褐色に輝くその刃は、邪悪の化身たるデビルに対し強力な力を発揮する。きっと高値で売れるに違いない。
「いえいえ。自分は女性に興味はないので」
「つれないね! だけどそれがいい!」
 というか喪は本当に異性に興味がないのだけど。




 洞窟深部。情報源を当初から疑い、道中再解読を行っていたアンドリューと更紗は、やっぱりというか予想通りの解を洗い出した。
 これは埋蔵金ではなくて、恐らく何らかの土地神を奉った社と戒めの込められた唄‥‥‥。長い時を経てわらべ歌に姿を変えて行ったのだろう。そう言えば制圧した伊達の陣は、戦闘のそれではなくて調査団の装備だったような‥‥‥。
「けひゃひゃひゃ。玲香君、解読によるとこっちのようだね〜」
 伊達の陣から調達したスクロールにマッピングをしていたトマスが言う。それとは別にちらっと見えた謎の地図とか蘇生薬実験記録と書かれた巻き物があったが、詮索するのは止めておいた。何だが知らない方がいい気がしたのだ。
「裏の裏で真実と言う場合もあるが、今回は外れたようだな」
 洞窟内には多くのトラップがあるだろうと踏んでいたアンドリューは気を張っていたのだが、見るからに人の手で舗装された内部を見て気苦労だったとため息を付いた。情報先の住人がお参りに来たり伊達兵が調査をする際に整備したのだろう。
「アンドリューさん‥‥‥だったな。今回は迷惑をかけて申し訳ない」
 不平をこぼしているのだろう――そう聞こえた式子は頭を下げる。
「いえ、任務は任務なので構いません」
 むっつりと返すアンドリュー。そこで彼はむ? と違和感を感じた。
「中隊長殿。何か雰囲気が変わったような‥‥‥」
 以前、あった時に比べてどことなく物腰が柔らかくなったような‥‥‥そんな気がする。
 まるで夫婦や恋人持ちのような、そんな匂いを感じたが、暴れそうな気がしたので黙っておく事にした。




「金寄越せーーー!!!」
 仲間から報告を受けた伊達兵達は、敵を迎え撃とうと陣形を整えていた。柵代わりに木材を社の間の入り口に建てていたけど金欲に満ちた玲香の前に蹴り飛ばされる。
 もう完全に成り行きだが冒険者達は伊達兵を倒す事にした。殺すとマズイので痛めつけるのみだけど。
 槍を手に身構える伊達兵達は玲香ら一行を睨みすえる。
「来たなろりきゅあめ!」
「ろりきゅあ言うな!」
 エペタムを構える信人。残る冒険者達もそれぞれ武器を抜き構える。
「俺は元徳にも伊達にも思い入れは無い。知っている情報を教えてくれるなら命は――って待て! だからお前ら何をやっている!」
 喪の鞭がレイナスの聖剣が、アンドリューの矢が伊達兵達を嬲りに嬲る。
 閃く霞小太刀。更紗の神速の連斬が戦闘力を奪い取る。トマスはコアギュレイトで動きを縛りまた妙な薬を無理矢理飲ます。空魔は泣きながら拳打の嵐だ。
「ええい。やりすぎだ! 桜も何をしている!」
 身包み這いで懐に。金目の物を全て奪い取って気絶したり痛みつけられた伊達兵達を縛って転がした。
「お金どこーーー!!!???」
 暴れに暴れる大隊長。
 信人はこの場をどう収集付けようか逡巡して、こういった事には慣れている式子はほとぼりが冷めるまで静観を決め込んだ。