【対抗試験】試験勉強!
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■シリーズシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月12日〜07月19日
リプレイ公開日:2005年07月17日
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●オープニング
学生の本分と言うのは、お勉強をする事である。とは言え、ただ部屋にこもって熟考をしているだけでは、頭も体も凝ってしまう。そんなわけで、教師達は試験勉強に一計を案じていた。
「対抗試験?」
「ええ。お互いのチームの生徒達を競わせるの。面白そうでしょ?」
職員室‥‥正確には、教員相談所と言うのだが‥‥で、パープル女史が、同じく教師である小次郎先生にそう持ちかけていた。
「そう言えば、生徒も俺とアンタを競わせたいって言ってたなぁ。前‥‥」
唐突な申し出ではあったが、お互い面白そうなイベントは大好きな御仁である。すぐにノッて来てくれた。
「わかった。受けて立とう。方法、どうする?」
「そうね。こんなのはどうかしら。お互いに問題を出し合って、4回違ったら、アウトって方式」
パープル女史が言うには、7人で車座になり、お互いに問題を出し合って、その回答が合っているか間違っているかを当てると言う方式らしい。指名が4回間違えたら、失格だそうだ。
「何だか良く分からんが、面白そうだな。まずは、問題でもそろえさせっか」
「そうね。この方法だと、答え知ってても、問題ないでしょうし。それで、こんなもの考えてみたのよ」
しかし、クイズ形式で試験をやるにしても、問題は必要である。それを、パープル女史は、生徒にレポート提出と称して、報告させるようにしたようだ。
「レポート作成? ヒノミ・メノッサ展‥‥?」
「まぁ、これだけじゃないけどね。色んな所回って、生徒達に問題を作らせるのよ。それで、お互いに出し合って、試験をやるの」
彼女が例題として提示したのは、一部生徒の要望により開催されているヒノミ・メノッサ展のレポートや、総合研究塔で、研究員達の話をまとめてくると言った、極々普通のレポート作成方式である。
「うーん、意味がよくわかんねーんだが‥‥」
「まずは普通に予想問題を作ってもらうだけよ。これを、あたし達が、きちんと編集して、問題文章にするの。その為の試験勉強をしてもらうだけ」
例えば‥‥と、彼女は言葉を切り、メモ代わりにしている木の板を出した。そして。そこにカリカリとこう記している。
レポート提出者名:ミス・パープル
調べた場所:図書館
ジャンル:イギリス王国の歴史
問い:現在の国王は、アーサー・ペンドラゴン様ですが、イギリスを統一したとされる、彼の父親の名前を答えよ。
回答:ウーゼル・ペンドラゴン
「こんな感じで、問題を作ってもらうの。ちゃんと、出所を調べてもらいながらね」
図書館とか、研究塔、修理商会から話を聞く、街中のハーブティ馬車や、迷宮庭園のマーシア婦人、貸本屋のコレック卿など、ケンブリッジには、それなりの知識人が、大勢いる。問題作成には、事欠かないだろうと。
「何だかよくわかんねぇが、生徒に問題を作らせりゃいいんだな」
「そう言う事。まずは、こっちでやってみるわ」
やってみないと、わからないから。と、彼女は早速、生徒達に向けての、レギュレーションの作成に取りかかるのだった。
そして。
「と言うわけで、小次郎先生のクラスと対抗戦をやることになったんで、問題をしこたまつくんなさい」
出来上がったそれを持ち、パープル女史は早速公示していた。
「そう言うの、先生がやるんじゃないのー?」
「こう言うのは、問題をしこたま作って、どれが出るかわからない方が、盛り上がるものよ☆ まぁ、難問珍問オンパレードにして、言いくるめ技能を高めるって言うのも、立派な授業だと思いなさいね」
そのセリフに、生徒達は多少納得行かない表情をしながらも、試験勉強に出て行く。
こうして、対抗試験は幕を開けるのだった。
●リプレイ本文
そんなわけで、テストを受ける事になった生徒+αの面々は、試験に先立ち、文献を調べる為、こぞって図書館を訪れていた。
「賢者を目指す者として、問題はしっかり考えないとね」
ミカエル・クライム(ea4675)の両腕には、羊皮紙に記された活動記録や、文献などが山と抱えられている。机の上に、それをどさりと置く彼女。元々短い袖を、さらに捲り上げている。
「なんかミカエルちゃん、やる気満々ってカンジィ。これは負けてらんないね。透☆」
その様子をみて、大宗院亞莉子(ea8484)がそう言った。そんな彼女に、形式上の夫である大宗院透(ea0050)は、「互いが競い合い、修練する事は、早く上達する常套手段です‥‥」と、答えている。
「そう言えば、お二人はジャパン出身でしたよね。異国の事を学ぶ良い機会だと思いますので、色々と教えていただけませんか?」
一方的にじゃれ付いている亞莉子に、困っている様子の透を見て、メイシア・ラウ(ea8255)が助け舟を出した。ミカエルも、「私も聞きたい」と頷いている。その申し出に、透はこんな事を言い出した。
「そうですね‥‥。太閤様は対抗試合が好きでした‥‥」
ナチュラルに駄洒落を織り交ぜつつ、彼は自分が過ごしていた江戸での事を話す。もっとも、仕事が仕事なので、酒場の看板娘の事や、そこで知り合った冒険者達の事など、当たり障りのない内容だったが。
「ふむ、なるほど‥‥。酒場1つとっても、違うんだね」
「そりゃあ、ケンブリッジとキャメロットでさえ違うんだから、当然ですよ」
納得するミカエルに、メイシアがそう言っている。確かに、同じ国内でも、訪れる客も違えば、メニューも違う。その辺りを問題にすれば、何か妙案が浮かびそうだ。
「そうだな。教養を深める事は、レディになる為にも良い事だ。そう言うわけだから、分からない事があれば、聞くといい」
エルンスト・ヴェディゲン(ea8785)がそう言いながら、隣でゲルマン語の本を広げていたハーフエルフの少年に、色々と指導をしている。いつのまにか、とても仲良くなっているようだ。
「このまま、エルンスト先生の所にお嫁に行ったりして」
「きゃーっ。それっていわゆる、禁断の仲って奴ぅ?」
恋する乙女2名と、腐れた乙女1名は、その様子に興味深々である。
「って、お前ら。図書館では静かにしろと、何度言ったら‥‥」
「あ、私ちょっと、司書の先生に話聞いてきますっ」
エルンストに睨まれたメイシア。慌てて図書司書のブリジット女史に、ラテン語の臨時講義を受けに行ってしまう。ミカエルも異国の文化に興味があるらしく、ついて行っていた。
「私達は他で調べものしてようってカンジ。ね? 透☆」
「くっつかないで下さい‥‥。うっとおしい‥‥」
その一方で、その場に残って文献を調べる透は、亞莉子にべたべたとくっつかれて、迷惑そうな表情を浮かべている。
「まったく‥‥。緊張感と言うものが欠けている‥‥。お前はああなるんじゃないぞ」
「でも、何だか楽しそう‥‥」
相変わらず図書館で騒ぎまくる生徒達。呆れるエルンストの側で、少年は少々うらやましそうにそう言った。気付いた彼、その頭に手を乗せて、こう言ってくれる。
「そうだな‥‥。ゲルマン語の読み書きが終わったら、市場にでも連れて行ってやるから、そんな顔をするな」
学ぶ事と遊ぶ事、メリハリが必要なのは、どこの世界、どこの国でも同じだ。
「そう言えば、まだお前の名前を聞いていなかったな。なんて言うんだ?」
その彼のセリフに、哀しそうな表情を浮かべる少年。なんでも、ずっと、『あの子』とか、『ハーフエルフのアレ』等と呼ばれていたらしい。ケンブリッジや冒険者街では、比較的まともに扱われているが、世間では風当たりがまだまだ冷たいのだ。
「あの‥‥。もし良かったら‥‥。僕に名前をつけてくれませんか‥‥?」
「俺が?」
その少年の申し出に、驚くエルンスト。
「今すぐ‥‥じゃなくても良いです。今度‥‥会う時に‥‥、僕に似合う、素敵な名前をつけて欲しいんです‥‥」
「考えておこう」
思い付かないかもしれないが、と前置きして、頷く彼。
「やっぱりなんか良いカンジーー」
「まぁ、エルンスト先生にしてみれば、同族だからほっとけないってだけなんでしょうけど‥‥」
その様子を、こっそりと覗いているミカエルとメイシア。と、今まで透にじゃれついていた亞莉子が、うらやましそうにこう言った。
「いいなぁ、すぐ思いついてぇ。あたしにもちょっと知恵を分けて欲しいってカンジ」
どうやら彼女、先ほどから、ちょっかいをかけているのも、その辺りが思いつかないためのようだ。
「難しい事を考える必要はありませんよ‥‥。亞莉子さんの得意な事を、問題にすればいいだけです‥‥。下手に工夫すると、作れる問題も、作れなくなります‥‥」
そんな亞莉子に、透がさりげなくアドバイス。
「そっか。そうだよね。深く考える事ないよねぇ」
ぽんっと手を打つ亞莉子嬢。周囲を見回し、なにたら思いついた様子。「ありがとう、透」と言いながら、彼女は彼の頬に軽くキスをして、感謝の意を伝える。
「顔がベタベタになるので、止めて欲しいんですがね‥‥」
相変わらず、透の方は迷惑そうだったが。
「よし。じゃあ早速調べに行ってこようっと」
亞莉子が思いついた問題は、図書館ではわからない事。早速、部屋を飛び出して行く彼女に、ミカエルとメイシア、問題の種になればと、ついていくのだった。
生徒達が向かったのは、市内で貸本業を営む、コレック・ターズ卿の家だ。
「すみません。コレック卿、いらっしゃいますか?」
「あら、いらっしゃい。私はここよ」
メイシアが声をかけると、自慢のローズ・ガーデンの奥で、花々の世話をしていたらしい卿が、低木の間から姿を見せる。
「イギリス王国の伝説や、宗教に関する本が読みたいんですけど、何かお勧めのってあります?」
「んー。そうねぇ。確かこのあたりに、ウーゼル王時代の文献が‥‥」
彼女がそう尋ねると、コレック卿は、奥の本棚から、古びた羊皮紙の束を取ってきてくれる。
「ちょうど、アーサー王に政権が渡る頃に書かれた物語ですね。ちょっと読ませてもらって良いですか?」
「どうぞどうぞ。あ、家に持って帰る時は言ってね」
木陰に設置されたベンチで、読み始めるメイシアに、コレック卿はそう言ってくれた。
「クイズ! ヘプタゴン‥‥か。あいつも色々考えているようだな‥‥っと、確かこの辺りか‥‥」
その頃、市場の方では、東雲辰巳(ea8110)がパープル女史から用事を頼まれ、酒場の集まる辺りへとやってきていた。
「んもー。教えてくれたって良いじゃないのー! ケチー」
彼の『頼まれた用事』は、市場で色々と聞き込んでいるはずの、ミカエル達の様子を、見てきてくれと言うもの。
「やってるな。レディに様子見てきてくれって言われて来たんだが」
「あ、東雲さん。聞いてよー。こいつらったら、てんで相手にしてくれないのよー」
ミカエルが話を聞きだそうとしているのは、日の高いうちから、酔っ払った状態で、カードゲームに興じているような面々だ。
「昼間っから飲んだくれている様な相手に、何をムキになってるんだ‥‥」
「これも試験勉強のためよ! あーもー、燃やしちゃおうかしら‥‥」
舐められているのか、てんで話をきいちゃくれねぇ彼らに、ミカエルはイライラしたようにそう言った。
「まぁ待て、何を聞きたいんだ?」
「キャメロットのイロモノについて‥‥」
なだめる東雲。と、彼女は声を顰めて、中身を告げる。眉を顰める東雲。
「ああ、いたいた。調査の方、進んでるってカンジ?」
そこへ、ちょうどアクセサリー関係を調べにきた亞莉子が、駆け寄ってくる。
「うーん。ちょっと思わしくないかなぁ。そっちは?」
「ダメっぽいってカンジ〜」
彼女が、ハーブティ馬車を回って聞いてきたところ、ティアラ、リング、それにペンダントと種類はあるものの、どれが一番売れていると言う事まではわからないそうだ。彫金の職人達も、皆、自分の品を売り込む事に必死で、統計なんぞ取っていないらしく、同じ様な答えだったそうである。
「そう言うのは、レディに任せたらどうだ? 妙なコネ持ってるから、試験までには調べてきてくれるぞ」
「そう? なら、任せちゃえってカンジ」
パープル女史なら、亞莉子が知らない事も、用意してくれるだろう。その方が、面白いかもしれないと思った彼女、あっさりと丸投げしてみせる。
「そう言えば、メイシアは?」
「さっき、修理屋さんの方に行くって言ってたから、まだそっちじゃないのかな」
東雲の問いに、人差し指を顎の辺りに当て、小首を傾げてみせるミカエル。
「迎えに行った方がいいってカンジ。もう、日が暮れそうだし」
すでに、広場にはオレンジ色の光が投げかけられている。亞莉子の誘いに、一行は彼女が向かった辺りへと、迎えに行ったのだが。
「何調べてたの?」
ちょうど、一軒のお店から出てくるメイシア。ミカエルが問うと、彼女は持っていた小さなプレートを見せた。それは、学生が、必ず受け取る事となる、ケンブリッジ三大学園生徒の証。
「意外と、材料とか作る方法とかって、知られていないと思いまして」
それは、生徒になじみ深いアイテムだが、すぐ側にありすぎて、話題にも登らない。メイシアは、そこを逆につつきたいようだ。
「しかし、問題を作るのも、けっこう大変だったんですね。皆は、どんな問題を作ったのか、楽しみです」
「よし、見に行っちゃえってカンジ」
と、そんな彼女に亞莉子がそう言った。
「どうやって‥‥。テスト期間前は、パープル先生、ぴりぴりしてるし」
怪訝そうなミカエル。テスト前のパープル女史は、神経質になっていて、生徒は机に近付かせて貰えないのだ。
「そこに、入れそうな人がいるじゃん」
彼女が示したのは、女の子の会話に入っていけなかった東雲だ。
「それに、職員室はダメでも、職員寮はダメって言われてないって言うか、興味深々?」
きょとんとした表情の彼に、亞莉子は『狙うはパープル先生の寝室!』と、意気盛んに乗り込むのだった。
んで。
「レディ、いるか? 様子、見てきたんだが」
夜、職員寮のパープルの部屋を訪ねる東雲。
「そう。まぁ、立ち話もなんだし、入りなさいな。お茶くらいは用意してあるわ」
「そ、そうか。じゃあ遠慮なく」
誘われて、上がりこむ東雲。ただし、動きが多少ぎこちない。後ろ頭に冷や汗を浮かべつつ、設えられた椅子に座る東雲に、パープル先生は怪訝そうな表情を浮かべている。
「で、どうだったの?」
「いや、良く頑張ってると思うぞ。うん」
尋ねられて、彼は何度も首を縦に振った。その、普段とは違う姿に、パープル女史は、何かを感じ取ったようだ。
「怪しい。東雲‥‥。あなた、何か隠してるでしょ」
「別にそんな事無いぞっ。生徒から頼まれて、引っ張り出せなんてこれっぽっちも‥‥」
顎の下、首元を掴まれるように持ち上げられて、東雲は思わず本当の事をもらしてしまう。
「へへーぇ‥‥?」
「あ」
声色の変わるパープル女史。ばつの悪そうな表情になる彼。
「東雲さんの馬鹿ぁ。計画が台無しじゃない」
「もうこうなったら、突撃あるのみってカンジ!」
その様子を、部屋の外から見ていたミカエル、亞莉子と共に、こっそり近付く。幸いなことに、パープル女史の意識は、東雲にお仕置きする事に向いている。
「それっ! いまだーーー!」
彼女が気づいた時には既に遅く、掛け声と共に、ミカエルと亞莉子が飛び掛るところだった。
「これも試験勉強のため! 大人しく計られて下さいっ!」
「後学の為だ! 我慢してくれ!」
特に亞莉子は、疾走の術まで使って、彼女に計測用のひもをまきつけようとしている。発動の煙で、周囲の視界が遮られるのを良い事に、東雲もちゃっかり抱きついていたり。
「何するのよ!!」
術で回避の上がった亞莉子を叩き損ねたパープル先生のライトハルバードは、東雲の頭にたんこぶを作っていた。
「痛い‥‥。何で俺だけ‥‥」
「えー。だってー‥‥。ねぇ?」
殴られたら痛いしぃ‥‥と顔を見合わせる女の子2人。
「対抗試験の問題に、パープル先生の服装について出したいなぁって思ったって言うかぁ、スリーサイズだって立派な問題になるって言うかぁ‥‥。やっぱり色んな問題あった方がいいってカンジ?」
特に首謀者の亞莉子、おめめをキラキラとさせて、そう訴える。
「いいじゃない〜。減るモンじゃなし、対抗試験の問題作成のために、教師として教えて欲しいってカンジぃ」
そんなパープル女史の腕に絡みつくようにして、スリーサイズを尋ねる亞莉子嬢。教師なのに、教えてくれないのぉ? と言わんばかりである。
「わかったわよ。しょうがないわね。けど、この事は他言無用よ?」
一応、プライベートな情報なんだからね! と念を押すパープル女史。こうして、パープル先生の手元には、難問珍問奇問その他が、大量に集められたのだった。