【花嫁修業】早蕨の段
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■シリーズシナリオ
担当:幸護
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:03月16日〜03月21日
リプレイ公開日:2006年03月28日
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●オープニング
「ぐぬぬぬぬ‥‥‥‥」
「何だか物の怪の唸り声のような音が聞こえますが‥‥」
はて、何でしょうね――緩慢に首を巡らせ、然し言葉とは裏腹に視線を彷徨わせる事無く重低音発する物体へと差し向けて望霄は僅かに秀眉を崩した。
「物の怪小町殿、如何致した? 物の怪度が増しに増しておるようだが」
「これってあれかな? 物の怪の居所が悪いって言うんだよねっ?」
「(あわわわ)レベッカさん、物の怪ではなくて虫ですよそれは‥‥でも、それ程違いはないのかな‥‥寧ろそちらの方が‥‥いえ、ごほっ」
曇りの無い一途な眸子据えるニライ、同じく邪気とは無縁のレベッカに挟まれ、わたわたと慌てる由良は本日もキリキリと胃が痛むご様子。
「きえぃ! 主等っ!」
鋭い眼光ぎらりと向けて、小町さんの物の怪度は更に上昇――妖力だって倍率ドン。
「誰の所為じゃと思うておるのじゃ〜っ!」
猛牛ならぬ、猛馬(?)ならぬ、ついでに猛犬でもない――猛物の怪だとて暴れ出したら止まらないのは同じ事。たぶん。
「小町さんお元気なのは何よりですが〜痛いです〜」
打ち据えられた頭をさする愛の瞳が潤んで揺れる。
「何じゃ、あの『ばてれん鯛』とか言う怪しげな物はっ!」
「うむ。意中の相手にばてれん鯛を贈るのがジャパンの風習だと聞いたゆえ‥‥痛い‥‥」
「魚の臓物を贈るような怪しげな風習など有る筈がなかろうにっ!」
ぴしり手の甲を扇で打たれ、ニライは瞳をしばたたく。
舞い上がっていたのだろうか本人はまったくもって記憶に無いようだが、その『ばてれん鯛(臓物)』を近畿小僧に渡そうとしたのは誰あろう小町さん本人である。
ナントモ理不尽な。
「やあね、物の怪小町さん以上に怪しげなものなんてないわよ。臓物くらい何でもないじゃない平気、平気!」
「そうですよ、小町ちゃん! 近畿小僧とカッキーには会えたですし、前進、前進★」
瑞紀と雪紫の励まし(?)に婆はやっと気を鎮め――る筈もなく、二人仲良く拳固を喰らう。
「けれど、忘れられない出会いにはなったと思いますよ。レベッカさんの踊りも鬼気迫って素晴らしかったですし」
セレンにっこり。
つーか、鬼気迫らせてどうする。
*
「こうなったら仕切り直しじゃ!」
近畿小僧と柿沢は舞台『虎馬』の上演中。芝居小屋へ行けば会えるという訳で婆は未だ諦めてはおらぬ模様。
「で、虎馬ってどんな芝居なの?」
「聞いた話では〜カッキー演じる一柱の神が近畿小僧演じる二人の共を連れて〜大妖怪を退治するお話だとか〜」
「面白そうですね」
「妖怪退治‥‥(何か嫌な予感というか寧ろ悪寒)」
「ふふふふふふふふ」
撫子達も何やらそれぞれに思いを巡らせているが(多分、愉快な方向に)――さて、今回の騒動は如何に?
●リプレイ本文
●花嫁修業は伝統を大切にしております(そんな訳で師匠への挨拶からいってみよー!)
「ご無沙汰しておりました。討伐されずご健勝のようで何よりです」
静月千歳(ea0063)、恭しく腰を折って綻びる花の咲みで宣い、仄桜色の愛らしい花唇を容好く曲ぐ。
夢見月の柔らかなる陽光は奕々たりて、地中に名残りの春の面影を刻み込む。天照の気吹を、月読の雫を、乳呑児の無垢と相しいとけなく吸い上げた木末にはらはらと花匂いし久堅の都――要するに春も終わりの長閑で平凡な日――に一陣の風。名を春嵐といふ。
姦しく吹き立てるは――ご想像に違わず花も嵐の撫子達。別名『物の怪一座』とか『物の怪海賊団』とか。何れにせよ花嫁からはうんと離れた感じ。
「千歳や、其方こそ変わりなく‥胸もちぃとも成長しておらんようじゃのぅ」
「ぐっ、痛いところを‥‥」
相変わらず物の怪の居所悪いらしいお師匠の刺撃にクッと唇を噛み崩折れた千歳の傷は深く、まるで我が事のように痛み共有する林雪紫(ea6393)が涙に濡れた手拭いを投げる。
「千歳さんもういいですっ。それ以上はもう‥‥」
かんかんかんかーーーん!
『ちいさなおむねでもかんじるかなしみはりっぱにおーきいんだい』←ぺたんこ同盟の主張
「小町さんやっぱり物の怪の居所が悪いんだねー」
物の怪の良い居所ってどこだろ? レベッカ・オルガノン(eb0451)小首傾げて細石に生した翠苔のように瑞々しく輝く眸子を細めて思考に泳ぐ、が答えは出ず。
「先日の件ならば物の怪小町殿の存在を深く彼らの魂に刻み込んだ点は‥‥成功だと思うのだが?」
むしろその点が失敗だったのだろう――と他の者達は薄々気付いちゃいるがニライ・カナイ(ea2775)は素で思っているわけ。
「済んだ事はどうしようも無いじゃないの」
佐上瑞紀(ea2001)の言うのは尤もなれど、直訳すると「物の怪小町さんだから今更どうしようも無い」となるからどうしましょう?←聞かれても
「前回の汚名は挽回して今回頑張ればまだまだ大丈夫ですよ〜‥たぶん‥‥だといいですね〜」
愛猫懐に抱いた槙原愛(ea6158)、ゆったりまったりにっこり。いや、汚名挽回しちゃ駄目でしょ。
「ええと、確認させてくださいね? 先日はモノノケ師匠が近畿小僧さんとカッキーさんにモノノケだと思われてしまった――んですよね? 何が問題なのでしょう?(にこ)」
「こ、ここここ(明け告げ鳥の鳴き声に非ず)小町さんは物の怪じゃないです、よ? 最近めっきり自信が薄らいできましたけど俺の記憶が確かなら‥‥ええ」
セレン・フロレンティン(ea9776)にっこりほっこり笑む傍らで橘由良(ea1883)は本日も胃痛に耐える。この際、素直に認めたほうが楽になれる気がするなぁ。
「物の怪とは‥また珍しい苗字だな。役人はどういう意図で名付けたんだか‥‥『まるごともののけ』を着ているからか?」
備前響耶、漆黒のもののふ眼前の胡乱な生物に視線射込んで精神衛生上の現実逃避。
「とにかく、舞台の準備を致しましょう」
じりじりと刻むように高みへと昇る日輪を遠い異国の海神色の明眸に捉えたシルフィリア・カノスは残された一縷の良心。
●餅搗きと言えば? そうだね、狂化だね! ン〜ン〜ン〜!
「いっ‥たぁ」
「ぎゃふっ!!」
どんがらがっしゃーーん。
めりめりめり。
ばきっ! どすっ! ごきっ!
「ぴぎーーっ」
以上、撫子達の準備の様子。野良猫の集会じゃありません。それはあまりにも野良猫に失れ‥‥(以下略)
「ちょっと賑やかだけど、いつもの事だから気にしなくて良いわよ」
(「ちょっと?」)
血潮の衣纏いし瑞紀の双眸の先、大道具こさえる響耶はそうそうと響く騒音轟音に驚愕の色を隠せない。
花嫁修業って何なのさ? つーか“製作”が“破壊”になってるし。これは仕様なのだろうか。→ぴんぽーん♪
流血騒動にまで発展しつつも彼女等(彼女じゃない人も若干二名居るけど)が製作(表向き)しているのは白装束である。
「異国では弥生の月に『白い日』という祭りがあるそうで‥‥白い日はえげれす語で「ホワイ? トゥディ」今日はなぜこんな事が起きてしまったの? ――というような驚きを演出する祭りだそうです」
そんな訳で白い日に事寄せてやり逃げろ‥‥じゃなかった、行動を起こしてしらばっくれろ(同じです)――とは由良は言っちゃいないけど仲間はそう理解しちゃいました、マル。
裏の裏を読むのが忍者なら、裏の裏のそのまた裏の斜め向かいの三件隣り辺りの献立なんかを読むのが花嫁見習いの心意気です。今決めました。
さて、既に馴染んだ準れぎゅらー(どぅどぅびぃどぅびぃどぅばぁ)京菓子の人ナガレ・アルカーシャ額に玉の汗滲ませ餅搗き中。
「搗いても搗いてもかなりの量‥‥ってか物の怪婆さんも太っ腹だな。しかし、こんな大量の餅どうすんだ?」
「この餅はカッキーと近畿小僧の舞台を盛り上げる為のものだ。全てをうやむやにするという最終奥義に使用する重要アイテムとなる」
介添え務めるニライは至って大真面目。やり逃げる気満々だし。
「カッキーと近畿小僧? ‥‥(ぐるぐる色んな妄想駆け巡り中)そんなん、またヤバイじゃんか!!」
うをををををををー! 雄叫び上げたナガレの妄想がどんな脇道に逸れたかは噴出した鼻血が物語っている。
「だ、大丈夫でしょうか‥‥」
「いつもの事だから気にしなくて良いわよ」
晴れ空の瞳を曇らすシルフィリアの肩を叩いて瑞紀姐さんは、いけしゃあしゃあ。
「そ、そうですか‥‥」
でもなんか様子が変だし。明らかに狂化してないか? いいのか? ‥――いいんだろうな、花嫁修業だし。
ナガレさんは凄まじい速度でぺったんぺったん。ぺこたんぺこたん。本日のお元気予報→ぺったん、所により鼻血。
「む。また狂化したような‥‥餅つきは捗るが」
介添えの作業を黙々とこなすニライに気にする様子はない。
その後、揃って餅を丸めながらの打ち合わせ。
「私は物の怪小町さんと客席で待機ね。レベッカさんが友の会で入手した桟敷席だし小町さんも文句ないでしょ?」
「なにっ?! 桟敷席とな? ベッキーお主やるのぅ」
「うん、雪紫さんと交代で並んで頑張ったよっ!」
「頑張りましたですよぅ。宿無しくノ一の真の力を見せ付けちゃいました、ニンニン☆」
「あ、入場札の料金は小町さんにつけといたからヨロシクねー!」
うわ。
●何事も最初が肝心。だって助走は多くとった方が遠くへ飛べるんだい
「私は穏健派ですから、事を荒げるのは好みません」
用意周到に不意を撃つ千歳、穏健派と言い張る。事前に用意した重を抱えて見世物小屋の裏口から平然と侵入せしめると、
「興行主さんからの差し入れです。手の空いている方は今のうちにどうぞ召し上がってください」
虫も殺さぬ笑顔でにっこし。
「こ、こんにちはー。ご、ご注文の餅届けにあがりました」
落ち着き無く視線彷徨わせる由良は冷や汗ダラダラ笑顔も引き攣り、
ばたっ!
ついでにコケた。激しく挙動不審。
「お弁当はどちらへ運べば良いかしら?」
鷹神紫由莉も同じく裏方へ話しかけ、その隙に小町流一門は侵入成功。ぱからぱからっぱからぱからっ。なんか馬もいたけど。
「こっちです、こっちでーす♪ 舞台案内は雪紫にお任せ☆ 数日前から舞台下で暮らしてましたので皆を案内する経路はバッチリです☆」
さすが伊賀忍。
「むむむ、カッキーの匂いです! そろそろ舞台に上がるようです☆」
‥――さ、さすが伊賀忍。んー、でもこれって忍び関係あるのかな?
「‥‥本当にいいのかしら?」
意気揚々と奥へ進みゆく背を見送った紫由莉、今更ながら呟いてみたものの「楽しそうだもの、まぁいいわよね」意外とあっさり。
「レベッカさん大きな舞台で踊るのが夢だものね」
頑張ってね、と胸のうちで声援を送り身を翻す。
さーて、一仕事終えたし後は最後まで舞台楽しまなくちゃ♪ 表で待っていたシルフィリア、響耶と合流すると客席へと向かった。
揃いの白装束、これまた揃いの鉢金に蝋燭を立てた撫子達はそれぞれの配置で出番を待つ。
途中、幾人かを呪縛しつつニライとセレンは舞台の奥へ。
「舞台なら負けられません! 楽士の誇りにかけて最高の演奏で芝居を盛上げたいと思います。ニライさん宜しくお願いしますね」
「うむ。私も生業を活かし思う存分おもしろおかしく謡うぞ」
三味線・横笛:セレン
謡:ニライ
提供は冒険者の強い味方・越後屋でお送りします。
良い子の皆さん、『虎馬』を観る時は心を明るくして舞台から離れてみてね★
●虎馬
【一場】
ニライ『東西東西、御覧じなされ。幾千代過ぎたる今は昔の物語〜♪ 空も春のたそがれ時。鬱蒼の森踏みたる一柱が神、傍ら方に控えし二人の供と並びて日沈み入る山睨めつけ曰く』
柿「彼の山に大妖怪が‥‥」
『神の名を柿彦、供それぞれに宇一、善と申す。様々有りて大妖怪退治に思向く事と相成ったが、時間も無いので省略〜♪』
柿・近畿「「「えっ?!」」」
『一行目指すは物の怪山、珍道中のはじまりはじまり〜』
動揺の色を見せつつも、普段通り演じ始めたカッキーと近畿小僧の前に次々と珍‥‥じゃなかった、仲間が集う。
かーん、かーん、かーーん。
舞台中央、大木に向かい白装束で藁人形に釘打つ愛がくるり振り返る。
「見ましたね〜。見られたからにはしょうがないです〜。仲間になりましょう〜」
――なぜ。
疑問を残しつつ再び歩始めた柿彦達を呼び止める声は‥‥。
「待ってください。し、心配でついてきちゃいました。あ、俺は宇一と善の幼馴染です」
客席に説明する由良だったり。
『愉快な供加わりて、漸う深まる草場掻き分け酉の角、遥か聳える物の怪山へ〜』
「魔物の陰謀で引き裂かれた恋人役もドキドキ? いずれにせよ小町ちゃんとは敵同士。涙を拭いて退治しますよぅ〜! お師匠と闘うのは心苦しいですが‥‥はっ、傷ついたカッキーを庇いつつ抱きつく絶好の機会? キャ☆」
今日の雪紫ってばちょっぴり大胆☆ 染めた頬を両手で覆った雪紫いやんいやんと首を振る‥‥どうでもいいが既に舞台の上だし、今の妄想全部声に出てましたが。
「「「‥‥‥‥」」」
「ゆ、愉快な供加わりて、漸う深まる草場掻き分け酉の角、遥か聳える物の怪山へ〜です☆」
無理矢理進行しようとしてるし。
と、どしーーーーん!
「ぃったーーーー!!」
突然白い物体が落下してきた。
「たたたた‥‥て、天からの使いで案内に来たよっ! 大妖怪が住んでる山まで案内するね。さあ一緒に踊ろう! 会えて嬉しい喜びの踊り〜」
まるごとこっこで登場したレベッカは近畿小僧の手を取ると踊り出した。それに合わせセレンが三味線を奏でる。
【二場】
『春雨のそぼ降るしじまの暗闇に指の震えも蒼ざめし、月読眺むれば心温もり峠越えてゆくるものを〜求むるは苦難の先の一筋の光〜』
「雨ですね‥‥」
ばしゃ。
「「「わっ!」」」
裏方に徹していた千歳はふむ、と舞台上から桶の水をぶちまけた。そぼ降ってないし。
「‥‥そろそろかしらね」
桟敷席でちゃっかり幕の内弁当を食べていた瑞紀はうっかり本来の目的を忘れかけていたりもしたが、むんずと婆の奥衿を掴み舞台へ向かって投げ撃った。
「ぎゃーーーーー」
「さて、それじゃ私もいきましょうか」
ふふふふふ、ふふふふふ。
寧ろ舞台袖へ向かう瑞紀の笑みの方が不気味に響いてます。
んで、舞台はと言えば。
「ぎゃーーーーー」
飛んで(飛ばされて?)舞台に入る春の物の怪。
「み、瑞紀ー! いきなり投げ飛ばすとは‥‥ん? 近畿小僧にカッキー」
首を巡らせた婆はぱちぱちと瞳瞬いて、それでも状況がまだ飲み込めていない様子。
「師匠待ってたよー。」
まるごとこっこ脱ぎ捨てたレベッカは、巫女衣装に鬼面を装着して松明を手にとる。
「さあ覚悟はいいかなー? 柿彦、宇一、善! 地獄の大妖怪・黄泉人の親玉、闇の神と崇められる我らが師匠が登場だよ〜私はここまでの案内を任されてたんだよ」
「で、出ましたね〜大妖怪〜! 野郎供やっちまいな、です〜。ふふ〜、私はこの藁人形の中に小町さんの髪を入れて〜」
「何じゃ愛お主、師匠に対してそのような‥‥」
「小町ちゃん、ごめんなさいっ! えいっ☆」
「小町さん、これも小町さんのため‥‥」
かーん。ざしゅ。ぱしっ。
白装束軍団は言葉とは裏腹に何だか楽しそう。
「主ら覚悟せいっ!」
ざっ。
愛、雪紫、由良は一斉にカッキーと近畿小僧の背後にまわる。雪紫、ちゃっかりカッキーの袖掴んでたり。
(「もう一生手を洗わないですっ☆」)
「うぬぬぬ、カッキーと近畿小僧の背に隠れるとは卑怯な」
『(そろそろ時間もないので)大妖怪死にたり〜』
「「「えっ?!」」」
「ふむ。‥‥では、これで如何でしょう?」
舞台上の千歳、今度は桶を婆目掛けて投げつけた。
ガコッ!
「ふがっ」
見事婆に命中し、小町さんばたりと倒れた。
『大妖怪死にたり〜』
ニライもどんどん強引になってるぞ。
と。
「ふふふふ。裏に居たのはこの私。‥‥さて、私に勝てるかしら?」
やはり最後はこのお方、瑞紀姐さん颯爽と‥‥いや、禍々しく登場。
舞台の上は入り乱れての大立ち回り。敵も味方も白装束で見分けつかないけど。
由良は寧ろ善や宇一の『ぽろり(何処?)』狙ってるし、雪紫はカッキーにしがみついたまま(←おんぶお化けっぽく)、愛はひたすら藁人形を打ち、レベッカは火の踊りに夢中‥‥えーと、大立ち回り?
『こうして柿彦とお供の者達は大妖怪を退治(?)せしめたり〜めでたしめでたし〜』
だからニライさん強引だってば。
「時間、ね‥‥。なかなかやる様だけど、次はこうはいかないわよ。ふふふふ‥‥」
鋭い眼光据えた瑞紀は口端を引き上げて、白目剥いた婆をひょいと抱えて舞台袖へ掻き消えた。
「宇一‥‥俺は‥‥ずっと‥焦がれてたよ‥‥」
愛の言葉を告げて由良絶命。ばたり。
『幾千代過ぎたる今は昔の美しくも悲しい愛の物語〜♪』
え?! そんな話だったのか?!
●最強の武器は笑顔と心得よ。あ、なんか花嫁修業っぽい
「って事で、最後はお餅をまくよー!」
「物の怪は〜外〜! 福は〜内〜!」
「最後は師匠の鬼面ふらっしゅ‥‥じゃなくて笑顔ですね」
つー訳で、にっこり。
ピシャーーン!
会場中が凍りついた隙に撤退だー!
「ところで、これ花嫁修業になったんですかね?」
「しっ、それは言っちゃダメです☆」
「あ、火の始末は忘れずに〜だよっ!」
逃げろや逃げろ〜。
「お主等‥‥ちっともわしの好感度が上がっておらぬではないかー! 虚けが!」
ん。だって、それは無理だよ小町さん。