そして優駿〜速きこと疾風の如く〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:7人

サポート参加人数:2人

冒険期間:02月18日〜02月27日

リプレイ公開日:2007年02月25日

●オープニング

──事件の冒頭
 タカタッタカタッタカタッタカタッ
 ノルマン南方、シャルトルにある競馬村。
 そこのコースを一頭の馬が駆け抜けていく。
「おや。ヨグ殿はすでに断念ですか‥‥」
「ええ。先日のレースが行なわれなかった事もありますが、それよりも最近、この競馬村あたりも危険な感じがしますから‥‥」
 それはマイリー卿とヨグ卿の話。
 第二回レースであるノルマン・グランドジャンプのスケジュール調整が終り、そろそろ開催されようというときに、残念な話である。
「では、またいつもの枠順になるのですか」
 カイゼル卿もその話に加わると、残念そうな表情をみせる。
「まあ、今の騒動が収まったら、私も参戦させて頂きますよ。それでは‥‥」
 そう告げて、ヨグ卿は馬車へと戻っていった。


──ということで冒険者ギルド
「あっれー? 今回からまた7名枠になっていますよ?」
 そう呟いているのは永遠の新人受付嬢エムイ。
「ええ。ヨグ卿は残念ながら棄権です。では、募集する騎手は全部で7名、契約はレース参戦と、レース期間の調教です。調教助手もつきますが、やはり乗馬に精通している実力のある冒険者をお願いします」

──と言うことで
 依頼書を作りあげると、新人受付嬢は掲示板に依頼書を張付けた。
「障害レース。しかも長距離。これを逃すと‥‥よし、『深きインパクト』は外しだ!!」
 って、あんた本命外してまた負けるのかい。


●残り開催スケジュール
第3戦:『サツキ賞(2000m)』
第4戦:『ノルマン・ディービー(2400m)』
第5戦:『マーシーズカップ(1200m)』
第6戦:『ノルマンオークス(2400m)』
最終戦:『カイゼルカップ・春(3200m)』

●今回の参加者

 ea0828 ヘルヴォール・ルディア(31歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3338 アストレア・ユラン(28歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea6282 クレー・ブラト(33歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea8078 羽鳥 助(24歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8216 シルフィーナ・ベルンシュタイン(27歳・♀・ナイト・エルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

テルミナ・ヤヴァ(ea7351)/ ファル・ディア(ea7933

●リプレイ本文

●はじまりますよってばよっ!!
──シャルトル南方・ノルマン競馬村
 ノルマン春G1・ノルマン・グランド・ジャンプ。
 今回のレースは、プロスト領にあるノルマン競馬村特設コース。
 楕円形の草原コースで、距離は4500mの超長距離。
 馬のスタミナと騎手のテクニックが要求されるこのレース。
 果たしてどうなることやら、それは神のみぞ知る‥‥

●ディビー厩舎
「‥‥」
 一通りのリズム訓練や負荷訓練を終えて、ヘルヴォール・ルディア(ea0828)はちょっとコースから離れて遠乗りをしていた。
 『斬新・ユニバース』との連帯感を深める為らしく、『斬新・ユニバース』も気持ちよさそうにかけている。
 ただ、ヘルヴォールは気分が優れない。
 すぐ近くに見える漆黒の空間『破滅の魔法陣』が、思ったよりもこのレース会場に近かったからである。
「あそこは、旧シルバーホーク邱。そこの破滅の魔法陣が、さらに活性化しているというのか‥‥」
 そう呟き、巻き込まれない範囲で遠乗りをしているヘルヴォール。
「‥‥まさか‥‥な‥‥」
 その漆黒の球体の近くを、蝙蝠の翼を持った女性が飛んでいるのを、ヘルヴォールは見た。
 それこそが全ての元凶である。
 が、今はなにも装備はない。
 それに今戦ったら、この『斬新・ユニバース』まて巻き込んでしまう。
 そう考えて、ヘルヴォールはそのまま競馬村へと戻っていった。


●カイゼル厩舎
「今回も‥‥よろしく御願い‥‥します」
 いつものようにカイゼル厩舎にやってきたウリエル・セグンド(ea1662)は、これまたいつものように厩務員室であいさつをしていた。
「こちらこそよろしく御願いしますよ。カイゼル卿はちょっとプロスト辺境伯の所まで向かっていますけれど、こちらでのことは私達が承っていますから大丈夫です。」
 そう告げる厩務長に、ウリエルは再び頭を下げる。
 そして馬房に向かうと、ウリエルは『深きインパクト』を久しぶりに見た。
 以前よりもしまった体躯。
 しっかりとした脚まわり
 そして闘志に燃える瞳と、以前よりも強さを感じ取った。
「少しやせましたか‥‥」
「しまったんですよ。余計な肉を落として、必要な筋肉に。故障一つもないですよ」
 その言葉に、ウリエルは丁寧に『深きインパクト』の身体を摩りつつ、丁寧にマッサージを開始。
「‥‥よろしくな。頑張るのはさ‥‥毎回だが‥‥今回は‥‥お前のいいとこを存分に出せる距離だけに‥‥楽しもうな‥‥」
 そう告げるウリエルと、ひとなきして答える『深きインパクト』。
 そして其の日から、障害に合わせた調教は開始された。


●オークサー厩舎
「はじめましてー。うちはアストレア・ユランや。どうぞよろしゅうなー」
 厩舎にやってきて、アストレア・ユラン(ea3338)はまず丁寧に挨拶。
 にこやかな笑みでそう告げられると、厩務員達もにっこりと微笑む。
「ええ。よろしく御願いしますよ‥‥。シフールの騎手は勝てないっていうジンクスがありますので、きをつけてくださいねー。」
「なんやーそれ。ならうちが買って、そのジンクス消してみせるわー」
 ごごごと燃え上がるアストレア。
 おお、その気合で頑張るのです。

──所かわって厩舎
「‥‥やるきないんか?」
 『太陽のカーニバル』に対してテレパシーで話し掛けているアストレア。
 併せ馬などをしつつ、一通りの訓練をシてみたが、どうも『太陽のカーニバル』は気合が足りない。
 そのため、テレパシーで意思疎通を試みたのだが。
『がんばる』
「がんばるいうても、さっきの走りはなんや?」
『がんばる』
「いや、その気合は判るんや。けれどな‥‥」
『がんばる』
「はぁ〜。判ったわ。その気合でがんばってや‥‥」
 とまあこの調子。
 調教助手からのアドバイスなどを駆使しても、今ひとつ練習走行ではぱっとしない状況。
 障害練習では高く遠く飛ぶその姿に、とりあえずは一縷の望みを託すしかないようで‥‥南無。


●プロスト厩舎
「うっし、元気にしてたかー!!」
 厩舎での挨拶を終えて、カタリナ・ブルームハルト(ea5817)は『漆黒のシップ』に挨拶をしていた。
「よーし、久々のレースだけど試合感は大丈夫かな? 一緒に頑張ろうね♪」
 そう話し掛けるカタリナに、『漆黒のシップ』は何かを伝えたいようだ。
『‥‥カツカラ』
 そう瞳で合図したような錯覚を、カタリナは感じ取った。
「よっし!!」
 素早くまたがるとね急ぎコースに飛び出すカタリナと『漆黒のシップ』。
 実践さながらの障害、遠くでは『斬新・ユニバース』と『太陽のカーニバル』が軽々と飛び交えていく。
「君の脚なら楽勝だよっ!!」
 そう告げると、カタリナは鞭を入れずに手綱で『漆黒のシップ』をコントロール。
 次々と障害を飛び越え、華麗な走りをみせる『漆黒のシップ』。
 だが、その横を軽々と駆け抜けていく『太陽のカーニバル』。
「なんやぁ、うちはまけへんでー」
「望む所っ!!」
 ああ、本番さながらの練習になっているような‥‥。


●オロッパス厩舎
「ブルルルルッ!!」
 一声いななく『風のグルーヴ』。
 クレー・ブラト(ea6282)は久しぶりに訪れたオロッパス厩舎で、『風のグルーヴ』や厩務員に軽く挨拶していた。
「前回は自分が至らなかったけど、今度こそ頑張るんで宜しくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ」
「それで、実は御願いがあるのです。この前の走りで、何処が悪かったか教えてもらいたいのですよ」
 そう告げるクレーに、厩務員達は肯くと、そのまま別の馬をコースに出した。
 それに調教助手が跨がると、静かに走りはじめる。
「今からクレーさんのこの前の走りを再現します‥‥」
 そう告げる助手のペリーエ。
「御願いします」
 そのまま一日、クレーは自分の走りを自分の目で確認することにした。
 そしてフォームの補正、仕掛けるタイミング、コースの取り方などをペリーエからレクチャーを受ける。
 昼間は障害の訓練、夜は講習と、クレーにとって休まる日はなかったようで‥‥。


●マイリー厩舎
「初めまして 羽鳥 助(はとり たすけ)でっす。馬に乗るのは好きだけどまだまだへっぽこだしこっちの競馬のやり方もまだ分かってないと思うから、俺も一緒に育つ・育てる気持ちで宜しくお願いしますっ」
 精一杯の笑顔で挨拶をしているのは羽鳥助(ea8078)。
 初めてのレース参戦、緊張を解しつつも、羽鳥はマイリー厩舎を訪れ、自己紹介をしていた。
「ああ、よろしく頼むよ。さて、それじやあさっそく、君の担当の『天国のキッス』を紹介しよう」
 そう告げられて、羽鳥は厩務員に連れられて厩舎に移動。
 そこでのんびのりとしている『天国のキッス』とご対面。
「おう、これからお前のパートナーになる羽鳥助だ。よろしくなっ!!」
 そう『天国のキッス』に告げる羽鳥。
「で、早速だけれど、俺はレースについてなにも知らないから、色々と教えて欲しいんだっ!!」
 厩務員にそうつげると、厩務員達も肯いてにぃっと笑う。
「よっしゃ、お前を一流の騎手に育て上げよう!! このマイリー厩舎から年度最優秀騎手を生み出すんだ!!」
 おお、厩舎が燃えている!!
 そんなこんなで、昼間は『天国のキッス』との特訓、夜は厩務員達と御勉強の羽鳥。
 どうにかレース当日までには仕上がったようですが‥‥さて‥‥。


●アロマ厩舎
「これが‥‥『怒りのトップロード』ですか」
 久しぶりの競馬復帰。
 シルフィーナ・ベルンシュタイン(ea8216)はアロマ厩舎を訪れて、アロマ卿や厩務員達とコミュニケーションを行なった後、いよいよ『怒りのトップロード』の元に案内してもらった。
 シルフィーナが最初に受けたイメージは『暴風』。
「ええ。兎に角気性が荒い馬ですよ。でも、気を許した相手には、とことん服従する馬です‥‥」
 その言葉に、シルフィーナは意を決して『怒りのトップロード』の鞍に跨がる。
──ヒヒーーーーーン!!
 と、突然『怒りのトップロード』が暴れ、シルフィーナが振り落とされそうになった。
「っと!! 落ち着いて『怒りのトップロード』。私はあなたを支配しないから、共に戦いましょう‥‥」
 そう告げつつ、右手で手綱を握り締め、左手で首に抱きつくシルフィーナ。
 しばらくは暴れていたようだが、やがて『怒りのトップロード』はおとなしくなっていく。
「そうそう。このレースは人馬一体でないと勝てないから、力を貸してね‥‥」
 どうやら『怒りのトップロード』もシルフィーナを認めた模様。
 そして一つずつ、ゆっくりと調教を開始していくシルフィーナ。
 仕上がりも上々、あとは本番を待つばかり。


●なんで私が〜ブランシュの私に乗る?〜
──スタート地点
 レース当日。
「えーっと。どうして私がここにいるのかといいますと、こっそり抜け出してきました。ではパリ開催第2戦の説明です。今の所一番人気はやはり『風のグルーヴ』。あの壮快な走りを期待しているのでしょう‥‥続いて二番人気は『深きインパクト』。あの奇跡の走法に期待。賭けの受付はそちらの帽子の男性の所へ。オッズは右の掲示板をご覧くださいだっ!! それではっ」
──スパァァァァァァァン
 突然ハリセンを顔面に叩きつけられ、ズルズルと引きずられていくブランシュ。
 まあ、仕方ないというか、あんたこんなところで遊んでていいのか?


──パパラパーララーー
 各馬一斉にスタートラインに到着。
 そして今回のレースの主催者である7貴族から、まずはサツキ卿が代表として前に出て挨拶。
 そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

 各馬一斉にスタートしました。
 先頭を走るのは『怒りのトップロード』。続く二番手は『天国のキッス』。
 その後ろから2馬身差で『風のグルーヴ』『漆黒のシップ』『太陽のカーニバル』『斬新・ユニバース』と続きます。
 最後尾はなんと『深きインパクト』。予測を裏切って最後尾からのスタートです。

「‥‥いい感じ。思ったよりも軽く走れているわ‥‥」
 シルフィーナが軽やかにコースを駆けていく。
 その後方では、『怒りのトップロード』と距離を詰めず離れずに『天国のキッス』が駆けていく。
「大丈夫。そのペースでいいよ。『天国のキッス』の走りたいように、愉しく走っていこうねー!!」 
 そう誉めつつ走っていく羽鳥と『天国のキッス』。


 残り4000m
 順位に変動なし

 一順目をクリアーし、いよいよ二周目に突入。
 ここまではどの馬も仕掛けるようなことはない。
 そして二周目も、最初はペースが崩れずに今の位置をキープしている一行であったが‥‥。


 残り2000m
 順位に変動あり

 後方からいよいよ上がってくる『深きインパクト』と『風のグルーヴ』。
「スタートの失敗は、ここで取り返す‥‥」
 ウリエル、スタートの失敗で後方におちたようであったが、ここでペースを取り戻し、次々と障害を飛び越えつつも前列の馬達に並んでいく。
 さらに『風のグルーヴ』も上位に食い込み、トップが前代未聞の乱戦模様となった!!
「『風のグルーヴ』。いい感じやな。その調子や」
 クレーの言葉に反応して、さらに『風のグルーヴ』が加速開始。
「『漆黒のシップ』。ここで負けたら女が廃るから‥‥」
 カタリナも手綱を鞭のように振り、『漆黒のシップ』に激を入れる。
「‥‥あわわわわわ。ちょちょちょちょちたょっと、まちいやぁぁぁぁぁぁ」
 さらに横では、『太陽のカーニバル』の手綱にしがみついているアストレアの姿があった。
 突然加速を開始した『太陽のカーニバル』、優勝候補の『深きインパクト』や『漆黒のシップ』に一気に追い抜かれないように間合を詰め、そこから飛ぶような跳躍で障害を次々とクリアー。
 いよいよ残るは直線だけとなった‥‥。、


 残り400m 
 順位に変動あり
 
「どうしたの『斬新・ユニバース』!!」
 『斬新・ユニバース』、突然の失速。
 決して無理な走りはしていない。
 だが、ここで『斬新・ユニバース』が失速し、コースをゆっくりと歩きはじめる。
「‥‥そう‥‥」
 どこか故障したらしい。
 そのまま馬を止めようとした瞬間、『斬新・ユニバース』が走り出す。
 しかも得意の鬼脚が発動!!
 いっきに草原を駆けぬけていく!!
「ちょ、ちょっと止まって‥‥貴方の脚がこわれちゃうから!!」
 そう叫びつつ手綱を絞るが、『斬新・ユニバース』は止まらない。
「ここで抜かれたら終りやわー」
 アストレアも止まらない。
「『漆黒のシップ』!! 最後の直線‥‥いけるよねっ!!」
 カタリナの言葉に『漆黒のシップ』も加速!!
 だが、その横を風のごとく駆け抜ける『深きインパクト』‥‥。
「直線で‥‥『深きインパクト』に勝てる馬はいない‥‥」
 そのウリエルの言葉が勝つか、それとも‥‥。
 

──そして
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉる。結果は最終審議終了までお待ちください!!」
 全ての馬が同体でゴールを越えた。
 競馬史上初めての審議。
 そして真偽を打ち勝ったのは‥‥。
「優勝は『太陽のカーニバル』。なんとか逃げ切ったぁ。二着は『天国のキッス』、騎手の腕かはたまた馬の力かっ!!」

1着:『太陽のカーニバル』
2着:『天国のキッス』
3着:『斬新・ユニバース』
4着:『漆黒のシップ』
5着:『風のグルーヴ』
6着:『深きインパクト』
7着:『怒りのトップロード』

 壮快なウィニングラン。
 アストレア・ユランは心地よさそうにコースを駆けていく。
「ラッキーちゃうで。実力やぁ!!」
 その後方からは羽鳥助がやはり満足そうに走っていた。
「優勝候補のベテランさん達を相手に、ここまで善戦したんだから良し‥‥」
 そして、他の馬達はそれぞれの厩舎へと戻っていく。
 次のレースの為、トップでゴールを駆け抜ける為に‥‥。

●神聖歴1001年秋G1・全成績(1着−2着−3着)
『漆黒のシップ』    1−0−0
『太陽のカーニバル』  1−0−0
『深きインパクト』   0−1−0
『天国のキッス』    0−1−0
『斬新・ユニバース』  0−0−2
『風のグルーヴ』 』  0−0−0
『怒りのトップロード』 0−0−0