優駿・春〜今度はパリで大迷走〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜13lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:7人

サポート参加人数:2人

冒険期間:05月04日〜05月13日

リプレイ公開日:2005年05月10日

●オープニング

 さて。
 巷では怪盗やらシルバーホークやら色々と騒がしい状況が続いていましたが。
 そんな忙しい日々がちょっと落ち着いたある日の事。

「ふうむ。これはこれは・・・・」
 とある貴族の古城・・・・ってプロスト城だろ。
 そこでの御茶会の席。
 ドレスタットでは顔馴染みの5人の貴族達に向かって、アロマ卿がそう呟いた。
「どうですか? これほどのコレクションはそうそうお目にかかることはないかと思われますが・・・・まあそんなことはどうでもいいとして、ついに完成しましたよ・・・・」
 お茶会の主催者である『プロスト卿』が、もったいつけてそう話を振る。
「完成しましたか!! それでは時期を決定する必要がありますね・・・・それと、レースの最初の名前も付ける必要があるのでは・・・・」
 サツキ卿がノリノリの口調でそう叫ぶ。
「では、こちらに私達の為の厩舎も用意してあるのですか?」
「はい。今は使われていない廃村。そこを開拓して小さな村を作りなおしました。ちょっと離れたところには『変わり者の種族』も住んでいますが、話はしてありますので大丈夫です・・・・」

 プロスト卿、伊達に領主をやっている訳ではない。
 っていうかアンタ好事家の領域越えているし。

「私どもはいつでも大丈夫です。まあ、全ての馬という訳にはいきませんし、冬季G1から選別された馬と、特別にG1に昇格した馬によるレースという事ですね」
 オロッパス卿もにこやかにそう告げた。
 その会話に、他の貴族達も興味深そうな顔をしてみせた。
「今回はコースは固定ですよね?」
 カイゼル卿の問いに、プロスト卿が肯く。
「脚にはあまり負荷の掛からないよう配慮してありますが、保障はできませんとだけ付け加えておきましょう」

 ──ということで冒険者ギルド
「はぁ、御無沙汰していますねプロスト卿と・・・・初めまして貴族のみなさん」
 丁寧に挨拶をする新人受付嬢エムイ。
「では、今回の依頼を説明しましょう。私達の主催する定期レースの騎手を募集します。全部で7名、契約はレース参戦と、レース期間の調教です。調教助手もつきますが、やはり乗馬に精通している実力のある冒険者をお願いします」

──と言うことで
 依頼書を作りあげると、新人受付嬢は掲示板に依頼書を張付けた。
「競馬ねぇ・・・・一体どんな事するんだろう・・・・」
 ドレスタットでは名物の競馬。
 でも、パリ開催は初めての出来事。
 地方から中央へやってきたこの依頼の運命は如何に!!


●開催スケジュール
第1戦:『桜花記念(1600m)』
第2戦:『ノルマン・グランドジャンプ(4500m障害)』
第3戦:『サツキ賞(2000m)』
第4戦:『ノルマン・ディービー(2400m)』
第5戦:『マーシーズカップ(1200m)』
第6戦:『ノルマンオークス(2400m)』
最終戦:『カイゼルカップ・春(3200m)』

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2128 ミルク・カルーア(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea3073 アルアルア・マイセン(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

朝霧 桔梗(ea1169)/ シャルロッテ・ブルームハルト(ea5180

●リプレイ本文

●始まりましたよ!!
──春G1
 ノルマン南方シャルトル地方・プロスト領特設コース。
 かつては大勢の村人で賑わっていた村。
 今そこには、オーガが住みつき、人の法を護るよう努力しながら静かに生活している。
 そんな村からちょっと離れた場所に作られた『競馬村』。
 いよいよパリで初めての競馬が始まるのであった。
 今回は第一戦・桜花記念。
 コースは全て楕円形コース均一だが、距離はその都度違う。
 大きさの異なる楕円によって構成されている競馬村の特設コース。
 今回は距離1600m。
 そして走るのは、選ばれし7頭。
 999年冬G1最優秀馬として選ばれた『風のグルーヴ』の2冠なるか!!

──アロマ厩舎
「待っていましたっ!!」
 ガシッとアロマ卿がそう告げつつ、握手を躱わす。
 カルナック・イクス(ea0144)はドレスタット競馬を終えた後、このパリにやってきていた。
「怒っていないのか‥‥俺は、『怒りのブライアン』で勝つことの出来なかった騎手だ‥‥」
 そう静かに呟くカルナック。
 だが、アロマ卿は頭を左右に振る。
「結果を見れば確かにそうです。ですが、貴方は『怒りのブライアン』と共に最後まで走っていたじゃないですか!! それでいいのですよ!!」
 勝ち負けよりもその姿勢を重んじたアロマ卿。
「では、案内しましょう‥‥」
 そう告げて、カルナックを『怒りのトップロード』の元に案内した。

 精悍な顔つきの牡。
 毛色は栗毛。
 
 その風格だけでもたいした物だと、カルナックは思った。
「同じ『怒りの』という名前があるということは、兄弟なのか?」
 そう問い掛けるカルナックにアロマ卿は頭を左右に振る。
「残念ながら。そうあって欲しいという思いでつけた名前です。ドレスタットでは、『怒りのブライアン』の本当の兄弟が走っていますが、まあそれはおいといてと」
 そう告げると、アロマ卿はカルナックに騎乗するよう薦めた。
「これから、お前に乗ってレースを闘うカルナックだ。よろしくな」
 そう告げて、カルナックは静かに鞍に座る。
 不思議としっくりくる。
「この鞍‥‥冬G1の奴か?」
 元々『怒りのブライアン』の背中に置いてあったカルナックの鞍。
 今度は『怒りのトップロード』の背にそれが据え置かれている。
「ええ。それでは頑張ってください‥‥」
 そう告げると、アロマ卿は静かにそこを立ち去っていった。

 まだ勝手の判らない馬。
 調教は合わせ馬と追い切り、体調の管理も忘れずに。
 兎に角、『怒りのトップロード』の能力は未知数、それを一つ一つ紐解く為に、カルナックは時間をかけていた。


──カイゼル厩舎
「‥‥至らない事も多い‥‥が‥‥これからヨロシクお願いします」
 丁寧に厩務員立ちの詰め所に顔を出すと、ウリエル・セグンド(ea1662)は丁寧に頭を下げていた。
「はっはっはっ。なかなかいい面構えのやつが来たな。まあ、楽しんでくれ!!」
 厩務員の一人が、ウリエルの肩をパーンと叩きつつ豪快にらそう告げる。
「早速で申し訳ない‥‥が‥‥『絹のジャスティス』に会わせて‥‥欲しい」
 そう告げるウリエルを、厩務員が案内する。

 穏やかな表情の牡。
 毛色は栗毛。

「優しい顔‥‥だな‥‥よろしくな‥‥」
 そっと『絹のジャスティス』の鼻面を撫でつつそう告げるウリエル。
 と、『絹のジャスティス』はペロッとウリエルの掌を舐める。
「ふっ‥‥」
 その瞬間、ウリエルの表情が軟らかくなる。
「これから‥‥がんばろうな‥‥」

 体調を考えつつ調教は変化する。
 『絹のジャスティス』の限界を調べ、癖を調べ、そして人馬一体となるべく調教を行なっていくウリエル。
 結果はどうなるか!!


──オロッパス厩舎
「貴方しかいないという事を判っていたようですね‥‥」
 静かに『風のグルーヴ』の背中を撫でているカイ・ミスト(ea1911)にそう告げているのはオロッパス卿。
「そう言って頂けると光栄です‥‥」
 ニコリと笑みを浮かべると、前年度G1チャンプは乗りなれた『風のグルーヴ』の背を跨ぐ。
『イツデモイイヨ‥‥』
 そう『風のグルーヴ』の瞳がカイに向かって告げている。

 穏やかな表情の牝。
 毛色は鹿毛。

 『風のグルーヴ』の毛繕いしつつ、カイは体調を調べる。 
 何処か調子の悪いところはないか?
 疲れは残っていないか‥‥。
 そんな杞憂もなんのその、『風のグルーヴ』は体調万全であった。

 そのまま久しぶりの調教開始。
 ストレス発散、スタミナの調整、色々とやることは多かった。
 それでも、全ての調整を終え、あとは本番を待つのみ。
 

──ディービー厩舎
「‥‥逃げ脚ですか?」
 ディービー厩舎を訪れたミルク・カルーア(ea2128)はまず厩務員と其の場に居合わせたディービー卿に挨拶を行うと、そのまま『旋風のクリスエス』のデータについて問い掛けていた。
 どんな走法、どんな癖、どんな性格。
 一つ一つを聞き出し、頭の中に叩き込んでいるミルク。
「ええ。といっても、あの『静かなるスズカ』程ではありませんがね。短距離よりも中長距離に強いと、前回のG1シリーズで確信しました。2000mから2400mまでは十分いけますよ」
 そう告げる厩務員。
 そうなると、今回の1600mはそれにあわせた調整を必要とする。
 なによりも、ミルク自身が初めての世界。
 まずは『旋風のクリスエス』に挨拶に向かう。

 たくましい体躯の牡。
 毛色は黒鹿毛。

「これから宜しくね」
 そう挨拶をすると、ミルクと『旋風のクリスエス』、そして厩務員との連携が始まった。
 随時走りについての説明を行う厩務員、『旋風のクリスエス』はミルクの指示が判るのか、都度色々と変化をしていく。
 そしてミルク自身も、コースの下見を丹念に行うと、イメージトレーニングは欠かせない。
 スタートダッシュの練習、まだまだ課題は多く残っている。
 そしていよいよ本番となる。


──マイリー厩舎
「ここを‥‥こうして‥‥」
 練習コースをトコトコと走っているのはクレア・エルスハイマー(ea2884)。
 実は彼女、このレースが初めての乗馬。
 別厩舎のカイ・ミストとカタリナ・ブルームハルトにコーチをして貰いつつ、必死に騎手として特訓を積んでいる彼女の姿を見て、厩務員達も全力でサポートに入った。
 そんな姿を、マイリー卿は涙を流しつつ静かに見守っている。
(春は絶望的だな‥‥秋に賭けましょう‥‥)
「この『全能なるプロイ』は、結構賢い馬です。ある程度の初期調教は済んでいますので、あとは簡単な手綱裁きで、普通に走らせることは可能ですね」
 クレアが『全能なるプロイ』の身体にブラッシングをしているとき、一人の厩務員がそう告げた。

 精悍な顔つきの牡。
 毛色は黒鹿毛。

「それでも、少しはお役に立てないと‥‥私は依頼を受けた冒険者ですから‥‥」
 責任感の強いクレア。
 さて、その結果は。


──オークサー厩舎
「騎士のアルアルア・マイセンと申します。宜しくお願い致します」
 そう自己紹介をしつつ、目の前の『帝王・トゥーカイ』に頭を下げているのはアルアルア・マイセン(ea3073)。

 静かなる瞳の牡。
 毛色は鹿毛。

 騎士としての走りと騎手としての走り。
 多少の違いはあるものの、目指すゴールは只一つ、勝利。
 その心意気をオークサー卿も気に入ったらしく、全てをアルアルアに任せることにした。
「‥‥まあ、後半は併せも必要になると思いますけれど、今は単走でも構わないでしょう」
 調教助手の意見も取り入れつつ、アルアルアは『帝王・トゥーカイ』と自分のコミュニケーションの向上、そして走りの強さを手に入れる為、日々トレーニングにはげんでいた‥‥。


──プロスト厩舎
「今回乗らせていただくことになりました、カタリナ・ブルームハルトです。よろしく」
 厩舎入り口にて元気よく挨拶しているのはカタリナ・ブルームハルト(ea5817)。
「宜しくお願いしますね。今回が私の初めての参戦、是非とも栄光を勝ち取ってください」
 そう告げると、プロスト卿はカタリナを厩務員の元へと案内する。
 そしてカタリナは、厩務員に案内されて『漆黒のシップ』の元へと向かった。

 しなやかな体躯の牡
 毛色は芦毛。

 以前カタリナが見たときよりも成長し、毛色もさらに艶を増している。
「さてと、まずぱご挨拶がてらにいこっか!!」
 そのままひらりとまたがると、カタリナはそのまま練習用コースへと向かう。
 前よりも軽く、そしてしなやかな走り。
 調教は軽く合わせ程度に、その合間にはクレアの元へと向かいカイと共にクレアの騎手訓練。
 ハードスケジュールを熟し、いよいよ本戦!!


●パリでもやります〜エモン・プジョーの俺に乗れっ!!〜
──スタート地点
 レース当日。
 初めてのパリ開催とあって、今回はかなり大勢の観客が集っていた。
「お待たせしました。パリ開催初めてのレース。今の所一番人気は『全能なるプロイ』だぁ。あの『最強のキングズ』の厩舎の誇る最強馬。。そして二番手は『帝王・トゥーカイ』。賭けの受付はそちらの帽子の男性の所へ。オッズは右の掲示板をご覧くださいだっ!! それではっ」
 ああ、あんたまでいたのね。

 各馬一斉にスタートラインに到着。
 そして今回のレースの主催者である7貴族から、まずはオークサー卿が代表として前に出て挨拶。
 そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

 各馬一斉にスタートしました。
 先頭を走るのはやはりこの馬、『全能なるプロイ』。続く二番手は『旋風のクリスエス』。さらに2馬身差で『帝王・トゥーカイ』『風のグルーヴ』『怒りのトップロード』『絹のジャスティス』『漆黒のシップ』と続きます。
 やや早めのペースでのレース展開となりそうです。

「完っ全に出遅れたぁぁぁ!!」
  絶叫を上げつつ、カタリナが最後尾から追い上げる。
「‥‥他の馬のデータがたりないですか‥‥」
 そのすぐ前、『怒りのトップロード』に騎乗しているカルナックも焦りを感じている。
 作戦は立てていた。
 だが、その通りに行かないのは、おそらくそういう理由であろう。
 だが、もっとも納得の行かないのはこの人。
「も、もう少し静かに走ってくださいませんか‥‥」
 トップを走る『全能なるプロイ』に『しがみついている』クレアであった。
 ちなみになにもしていない、本当の意味での『馬なり』の走り。
 それでトップという事は、実力を伴った騎手が乗った場合、どうなっていたことやら‥‥。


 残り1200m
 順位に変動なし
 
 残り800m
 順位に変動あり

「あれ‥‥」
 最後尾を走っていたカタリナに異変発生。
 一瞬視界がぼやけたと思ったら、前方を走っている『怒りのトップロード』の姿がスローモーションに見えた。
「‥‥右‥‥に‥‥うごく?」
 その読みの通り、『怒りのトップロード』は右にずれた。
 その瞬間、『漆黒のシップ』に鞭をいれるカタリナ。
 一気に『怒りのトップロード』を引き抜くと、さらに前方を走っている『絹のジャスティス』をもゴボウ抜き。
「ここで仕掛けますかっ!!」
 さらに『怒りのトップロード』が再加速開始、やはり『絹のジャスティス』を一気に追い抜く!!
「‥‥まだ‥‥実戦には‥‥慣れていないのか‥‥」
 ウリエルが静かにそう呟く。
 『絹のジャスティス』はすでに息が切れ、頭が上がってきている模様。
「気が‥‥弱い訳でもなく‥‥かといって勝ち気で‥‥ない‥‥」
 コントロールの難しい馬だと、ウリエルは思いつつペースダウン。


 残り400m
 さらに変動あり。

「ラストスパートっ」
 ミルクの掛け声一閃、『旋風のクリスエス』が加速開始。
 その加速と同時に、カイもまた『風のグルーヴ』に鞭をいれる!!
「直線で『旋風のクリスエス』に引き離されたらお終いです!!」
 その恐怖は、冬Gで味わっている。
 さらにその後方、大外からはアルアルアの『帝王・トゥーカイ』が加速を開始するが、さらに後方より『漆黒のシップ』が加速、『帝王・トゥーカイ』をいとも簡単に抜きさっていく。
「あんな走り、馬の脚が壊れるわよっ!!」
 アルアルアはそれでも、離されないように鞭をいれる。
「‥‥やっと落ち着いてくれましたわ‥‥」
 手綱を握っていたクレアがそう呟く。
 が、すでに他の馬達は次々と『全能なるプロイ』を追い抜いていく。

 最後の直線、『全能なるプロイ』と『絹のジャスティス』を覗く5頭は、横一直線に並んだ!!

──そして
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉる。やはり第一戦、このコンビが勝利を勝ち取った!! カイ・ミストと『風のグルーヴ』、栄冠を手にゴールを駆抜けたっ!! そして二着はカルナックの『怒りのトップロード』。その差は首一つ!! ドレスタット競馬騎手によるワンツーフィニッシュだぁ!!」

1着:『風のグルーヴ』
2着:『怒りのトップロード』
3着:『漆黒のシップ』
4着:『旋風のクリスエス』
5着:『帝王・トゥーカイ』
6着:『全能なるプロイ』
7着:『絹のジャスティス』

 歓声の中、カイは『風のグルーヴ』の背中を撫でつつウィニングラン。
 そしてカルナックも、『怒りのトップロード』の走りを思い出しつつ、グッと拳を握り締めた。

──とある厩舎で
(一瞬‥‥前を走る馬がスローモーションにみえた ‥‥あれは一体なんだったんだろう‥‥)
 それはカタリナ。
 今まで馬に乗っていたときでも、そんな事は起こらなかった。
 なのに何故。
 そして自分に何が起こったのか‥‥。

〜To be continue