【優駿・春】ノルマン・グランドジャンプ

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:7人

サポート参加人数:3人

冒険期間:05月31日〜06月09日

リプレイ公開日:2005年06月06日

●オープニング

──事件の冒頭
 それはとある日の午後。
「はっはっはっ」
 楽しそうに昔話をしているのは前回の桜花賞を勝ち取ったオロッパス卿。
「あれはいい馬ですねぇ。どうですか、今度うちの馬と交配など‥‥」
 そう話を持ち掛けてくる馬屋が後を断たないらしいが、いつも答えはNoであったらしい。
「さて、今回はノルマン・グランドジャンプですか‥‥」
 そう呟きつつ、オロッパス卿が羊皮紙に記された特設コースをじっと見る。
 一周2200m。そのコースの直線に合計4つの障害が置かれている。
 それぞれが結構高い。
 箒を逆さに突き刺した、高さは160cm、幅200cmの障害。
 スピードとタイミングが勝負のこのレース、ライディングホースにとって必要な柔軟性が問われるレースとなりそうである。

──ということで
「あ、これはいらっしゃいませ」
 ペコリと挨拶をするのは御存知薄幸の受付嬢ニア・ウィンズ。
「今月のレースの依頼です。レース名は『ノルマン・グランドジャンプ』。4500m障害、ドレスタットでも行われなかった初の障害レースです。今回も、乗馬に精通している実力のある冒険者をお願いします」

──と言うことで
 依頼書を作りあげると、新人受付嬢は掲示板に依頼書を張付けた。
「障害レースねぇ。一体どんな事するんだろう・・・・」


●出走場情報(前人気)
1:オロッパス卿所属『風のグルーヴ』
2:ディービー卿所属『旋風のクリスエス』
3:プロスト卿   『漆黒のシップ』
4:マイリー卿所属 『全能なるブロイ』
5:アロマ卿所属  『怒りのトップロード』
6:オークサー卿所属『帝王・トゥーカイ』
7:カイゼル卿所属 『絹のジャスティス』

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2128 ミルク・カルーア(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea3073 アルアルア・マイセン(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

サラ・ミスト(ea2504)/ フェリーナ・フェタ(ea5066)/ 十野間 空(eb2456

●リプレイ本文

●始まりましたよ!!
──春G1・第2戦
 ノルマン南方シャルトル地方・プロスト領特設コース。
 今は大勢の人たちが集る『一大娯楽スポット』として、領民だけでなく様々な方面から人が集ってきている。
 今回は第ニ戦・ノルマン・グランドジャンプ。
 コースは全て楕円形コース均一だが、距離はその都度違う。
 大きさの異なる楕円によって構成されている競馬村の特設コース。
 今回は距離4500m。
 そして過酷なまでの障害が配置されている。
 走るのは、前回に引き続き選ばれし7頭。
 はたして、『風のグルーヴ』の2連覇を阻止することができるのか!!

──アロマ厩舎
「いえ、こんな障害レースなんて始めてですし、一体どういう事になるか見当もつきませんですはい‥‥」
 そう告げているのはアロマ厩舎の厩務員達。
 カルナック・イクス(ea0144)は今回の調整を障害を越える方向で行った。
 そして長距離を走れる足と持久力の鍛練。
「ポジション取りが最大の難関か‥‥」
 『怒りのトップロード』の背中にまたがりつつ、本戦と同じコースでの調整を行ったカルナック。
 果たして結果は。


──カイゼル厩舎
「‥‥ここも‥‥すこし張っている‥‥」
 静かに『絹のジャスティス』の足を撫でつつそう告げているのはウリエル・セグンド(ea1662)。
「まあ、少し回復に時間が掛かっていますけれど、その程度の張りでしたらもうすぐ取れますよ」
 入厩して早速『絹のジャスティス』の体調を確認していたウリエル。
「力を出し切ってやれなくて‥‥すまないな‥‥共に‥‥確実に強くなっていこう」
 そう告げつつ、必死にマッサージをするウリエル。
 そして調教は始まった。
 厩務員の話によると、『絹のジャスティス』は非常におとなしい馬。
 悪く言えば『闘争心』のない、レースには向いていない馬ともいえる。
 そんな相手に、ウリエルはパートナーシップを高める方向で調教を開始した。
 実際の走りでは、障害の克服に重点を置いた。
 低くから高く。
 時間を掛けてゆっくりと。
 その結果が、どこまで反映されるか。


──オロッパス厩舎
「‥‥といっても、私が体験したわけではないので何とも言いがたいところですがね」
 そう苦笑しつつカタリナ・ブルームハルト(ea5817)に話をしているのはカイ・ミスト(ea1911)。
 『奇跡の領域』についてカイに訪ねる為にオロッパス厩舎を訪れたカタリナ。
 だが、そのカイでさえ、噂程度でしか聞いたことはない。
 ドレスタット競馬では、一緒に依頼を受けていたシフールがその領域を垣間見たらしいがねそれがどのようなものなのかまで明確に聞いてはいなかった。
「直接、聞いてみないと判らないかもしれませんね‥‥」
 そうカイはカタリナにアドバイス。
 さて、実際の調教についてはかなり楽なものである。
 『風のグルーヴ』はカイを信頼し全てを任せている。
 そしてカイもまた、今回は障害の克服をメインにゆっくりとならしていく。
 余暇を作ると、別厩舎で奮闘しているクレアの手伝いと、レース当日までは多忙な毎日が続いていた。


──ディービー厩舎
「ふむ。適正距離ですか?」
 厩舎の中にある厩務員室で、ディービー卿は腕をくんでそう呟いていた。
「はい、私の調べた所によりますと、今回のレースは『旋風のクリスエス』の適正距離の倍以上あります。せめて2000mから2400mの中なら、真価を発揮するのですが‥‥」
 そう意見を述べるミルク・カルーア(ea2128)。
「そうですか。まあ、貴方にすべてを任せていますから、貴方の判断でお願いしますよ。長丁場の春レースです。時にはゆっくりとね」
 そう告げて、ディービー卿は其の場をあとにした。
 今回の調教は兎に角忙しい。
 スタートの練習、スタミナの強化の為の走り込み。
 そしてそれらを熟しつつ、実戦さながらの障害の突破。
 『旋風のクリスエス』に負荷の掛からないようにと、別の馬で自身も訓練。
 どこまでいけるか勝負は本戦。


──マイリー厩舎
 タッタッとギャロツプで駆抜ける『全能なるプロイ』。
 その背中では、必死に馬から振り落とされないようにとしがみついているクレア・エルスハイマー(ea2884)の姿があった。
 今回のレース、クレアはマイリー卿の元を訪れて丁寧に挨拶。
 マイリー卿もそのまま静かに挨拶を返すと、ただ一言『しっかりと頑張ってください。勝敗よりも楽しむことです』と告げてくれた。
 その気持ちに答える為にも、クレアは走っていた。
 途中、カタリナとカイの二人が訓練を手伝ってくれる。
 そしてどうにか本戦にたどり着いた。


──オークサー厩舎
 厩務員全てに挨拶終え、そして愛馬である『帝王・トゥーカイ』にも挨拶をすると、早速アルアルア・マイセン(ea3073)は調教を開始した。
 障害を突破するために重点を置いた調教。
──タッ!!
 華麗に障害を越えていく『帝王・トゥーカイ』。 
 その背中で、アルアルアは次の障害のポイントを捕らえ、かつ、最短で決まるコースを選択。
「その調子で‥‥いきますわっ!!」
 タッ‥‥ガシャッ
 後ろ足が引っ掛かりバランスを崩す『帝王・トゥーカイ』。
 だが、決して倒れることはない。
 そのままコースを半周すると、アルアルアは引っ掛けた足の確認。
「思ったよりも難解ですね‥‥それに」
 ジャンプ直後の全身の浮遊感。
 今まで味わったことのない感覚と恐怖。
 それがアルアルアの克服する課題であった。
「まだいけるかしら?」
 そう問い掛けるアルアルア。
 そして『帝王・トゥーカイ』はなにも告げず、まっすぐコースを見た。
 

──プロスト厩舎
「‥‥その領域は危険だ。踏込んじゃいけねぇ‥‥」
 調教途中のカタリナの前に現われた一人の馬乗り。
「君は誰? どうしてその事を?」
 そう問い返すカタリナに、男は話を続けた。
「あんたには見えているんだろう? 何もかも停止している空間が。あれは『無限の領域』。あんたたちのいう『奇跡の領域』だ。あれは騎手の身体に負担をかける。いいか、俺はあれを会得して潰れた騎手をしっている。判ったな‥‥」
 そう告げると、男は走り去っていった。
「おや? グリードが来ていましたか?」
 そう話し掛けるのは厩務主任。
「グリードって誰ですか?」
「彼はグリード・ハガ。以前はこの南ノルマンでもトップクラスの騎手でした。ですが、身体を故障してしまい、今はただの早馬屋としてこの辺りを走っています‥‥」
 ふぅんと肯いてから、カタリナは再び調教を開始した。
 スタートと障害のジャンプとかのタイミング調整。そして大切な調教後のケア。
「今回はガンバろうね!!」
 そして調教の合間に出張でクレアの手伝いと、スケジュールは忙しいが、それでもやりがいはあるとカタリナは思っていた。


●今回もいきます〜エモン・プジョーの俺に乗れっ!!〜
──スタート地点
 レース当日。
「お待たせしました。パリ開催第2戦。今の所一番人気は『風のグルーヴ』だぁ。ノルマン競馬にして初めての『2冠馬』を見たくはないか? そして二番手は『旋風のクリスエス』。賭けの受付はそちらの帽子の男性の所へ。オッズは右の掲示板をご覧くださいだっ!! それではっ」
 おや? 冒険者騎手が何か勝馬投票札を買っているが。
 頼まれたのね?

──パパラパーララーー
 各馬一斉にスタートラインに到着。
 そして今回のレースの主催者である7貴族から、まずはサツキ卿が代表として前に出て挨拶。
 そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

 各馬一斉にスタートしました。
 先頭を走るのは『帝王・トゥーカイ』。続く二番手は『漆黒のシップ』。
 さらに1馬身差で『風のグルーヴ』『怒りのトップロード』『絹のジャスティス』『旋風のクリスエス』と続きます。
 トップを駆けている『帝王・トゥーカイ』以外はゆっくりとしたペースのレース展開となりそうです。

「皆はペース温存なの!!」
 トップを走るアルアルアがそう叫ぶ。
 すでに2番手である『漆黒のシップ』との差は4馬身。まもなく最初の障害である。
 そして障害が見え始めたとき、全ての馬が横に並ぶ。
 縦に並んで万が一、前方の馬が転んだりした場合、巻き込まれないようにとの処置であろう。
「‥‥あせらなくても大丈夫‥‥今回は長丁場ですからね‥‥」
 カイもそう呟きつつ、『風のグルーヴ』を静かに走らせていた。

 残り4000m
 順位に変動なし

 そのまま一行は最初の一周目まではなにもしかけてこなかった。
 だが、問題は2週目。
 各馬のペースがやや早まりつつある。
 だが、トップを走る『帝王・トゥーカイ』との差はすでに7馬身。
「‥‥あんなペースを維持できる筈がないよっ!!」
「スタミナで、この『怒りのトップロード』に叶う筈はない‥‥」
 カタリナとカルナックの二人がそう叫ぶ。
「完全に出遅れたけれど。でも、十分スタミナは温存できているわよね?」
 そう『旋風のクリスエス』に語りかけるミルク。
 その声に反応したのか、『旋風のクリスエス』は前に出たがっていた。

 残り2200m
 順位に変動あり

 派手なジャンプで次々と障害をクリアしていく『帝王・トゥーカイ』。
 だが、ここでスタミナが限界に達した。
 素晴らしいフォーム、軽快な足取り。
 大胆なまでに力強い走り。
 そのどれもが、アルアルアにとっては満足の行くものであっただけに、実に惜しい。
「それでも、まだ限界までは‥‥」
 そしてそのずっと後方では。
「‥‥‥‥」
 あ、言葉を発する余裕もなく、真剣な表情で『落ちないように頑張っている』クレアでした。

 残り1600m
 順位に変動あり

 『絹のジャスティス』と『旋風のクリスエス』、『怒りのトップロード』の3頭が徐々に間合を詰め始める。
 そしてその前方では。
「取ったぁぁぁぁぁ!!」
 スタミナ切れの『怒りのトップロード』を『漆黒のシップ』が差す。
 そして一気に追い抜くと、そこで『漆黒のシップ』はさらにラストスパート。
「ここ仕掛けて‥‥って‥‥いきなり?」
 ウリエルの真横を風邪のように掛けてくる一頭。
「全開で行きます!!」
 ここで『風のグルーヴ』も前に出始めた!!

 残り1000m
 順位に変動あり

 次々と順位を落としていく『帝王・トゥーカイ』。
 すでに頭が上がってしまっているため、これ以上の無理はできない。
「ペース配分の問題。資質が判っただけでもよしというところなのでしょうけれど‥‥残念ですわ‥‥」
 鞭を入れる手を止めて、アルアルアは静かに速度を落とした。
 そしてその後方では、クレアが『全能なるプロイ』に捕まっているのが精一杯。

 残り400m 
 順位に変動あり
 
 『絹のジャスティス』、『旋風のクリスエス』がスパート開始。
 残ったスタミナを全て遣い切ろうというのであろう。
「もう2着はゴメンです‥‥ここで取らないと‥‥」
 カルナックの切実な叫び。
 そしてミルク、ウリエルもさらに鞭を入れる。
 だが、外を抜けるように『風のグルーヴ』が走る!!

 そしてさらに大外から疾風の如く掛けてくる一頭。
 『怒りのトップロード』、ラスト100での大勝負だっ!!

──そして
「ゴォォォォォル。優勝は『漆黒のシップ』。プロスト厩舎、2戦目にして優勝をもぎとったぁぁぁ。続いて2着は『風のグルーヴ』。やはり距離に泣かされたか‥‥」

1着:『漆黒のシップ』
2着:『風のグルーヴ』
3着:『怒りのトップロード』
4着:『旋風のクリスエス』
5着:『絹のジャスティス』
6着:『帝王・トゥーカイ』
7着:『全能なるブロイ』

「一着、とったぞーーー!!」
 ウィニングラン。
 その馬上でガッツポーズを取るカタリナと、その後方で静かに走るカイ。
 残った一行は愛馬を連れて厩舎へと戻る。
 次の依頼の備え、英気を養う為に。

──そして
「賞金だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 大量の銀貨の詰まった袋を受け取って、満足そうな表情のカタリナ。
 ちなみに勝馬投票では、『漆黒のシップ』に賭けたものには2Gが支払われたらしい。
 同じくカイとクレアも銀貨の入った袋を受け取ると、それを手にパリへと帰還することとなった。


●神聖歴1000年春G1・全成績(1着−2着−3着)
『風のグルーヴ』    1−1−0
『漆黒のシップ』    1−0−1
『怒りのトップロード』 0−1−1
『旋風のクリスエス』  0−0−0
『帝王・トゥーカイ』  0−0−0
『全能なるプロイ』   0−0−0
『絹のジャスティス』  0−0−0


〜To be continue