ミハイルリポート〜ただ一つの杖〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:5 G 58 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月15日〜12月28日

リプレイ公開日:2004年12月20日

●オープニング

──事件の冒頭
 いつものような穏やかな朝。
 これまたいつものミハイル・ジョーンズ教授が、さらにまたいつものように受付カウンターで依頼書を作成している。
「ゴホッゴホッ‥‥うーむ。風邪かのう?」
「まあ、この時期は体調を崩しやすいので、気を付けてくださいね‥‥それで、今回の依頼は何を捜しに?」
 薄幸の受付嬢が、静かにミハイル教授に問い掛ける。
「うむ。精霊武具6種は全て揃った。残りは『時の額冠』と『ただ一つの杖』のみ。儂からはこの二つの調査を依頼する。『時の額冠』の調査はワシが、そして『ただ一つの杖』の方はシャーリィが同行する。西と東に別れるが、まあ大丈夫じゃろうて」
 そのままミハイル目教授は、依頼書をさらさらと書き上げた。
 そして横では、ようやく歩けるまでに回復したシャーリィが、もう一つの依頼書を完成させている。
「教授の方は古い廃墟ですね。シャーリィ女史の方は、沼地に沈んだ小さい古城‥‥内部は歩けるようですね?」
「ええ。先発として向かった調査員達の報告ですと、中の方もそこに向かえば沈んでいますけれど、私が調べる部分は大丈夫のようですので」
 その言葉に納得すると、薄幸の受付嬢は依頼書を掲示板へと張付けた。

●今回の参加者

 ea0073 無天 焔威(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea1703 フィル・フラット(30歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2705 パロム・ペン(45歳・♂・レンジャー・パラ・イスパニア王国)
 ea3173 ティルコット・ジーベンランセ(30歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ea5753 イワノフ・クリームリン(38歳・♂・ナイト・ジャイアント・ロシア王国)
 ea5765 アミ・バ(31歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

●まずはギルド〜下準備〜
──冒険者ギルド
「前回の襲撃してきた連中について、何か情報入ってる? 入ったら教えてね」
 カウンター越しに受付嬢にそう話し掛けているのは無天焔威(ea0073)。
 アサシンガールについての情報を得る為に冒険者ギルドにやってくると、『薄幸の受付嬢』にそう問い掛けていた。
「真に申し訳ございませんが、そのようなサービスは行なっておりません。情報でしたら、『その筋』に問い合わせてみてはいかがでしょうか?」
 にっこりと微笑みながら、受付嬢がほーちゃんにそう返答。
「あ、ああ‥‥そうなんだぁ‥‥」
 がっくりと肩を落とし、ほーちゃん退場。

──ミハイル研究所
 冒険者達は馬車に荷物を積み込むと、他のメンバーが集ってくるのをじっと待っていた。
「古の竜信仰の遺跡、シルバーホーク、ドラゴン襲来、まさかな‥‥」
 いぶかしそうな表情でそう呟いているのは風烈(ea1587)。
「可能性は十分に考えられる。まさかとは思うが、ドラゴンの探しているものが、教授の発掘したアーティファクト絡みという可能性はあるのか?」
 ランディ・マクファーレン(ea1702)が横で座って写本を見ているシャーリィ・テンプルにそう問い掛けた。
「古代魔法王国絡みの調査で、竜信仰のあった遺跡を回ったことはあります。ですが、それと繋がるのかどうかは‥‥」
 ここ暫く、ドレスタットで起きている一連のドラゴン騒動に教授の発掘したアーティファクトが関与していないとは言い切れないが、もしそうであれば、パリがドラゴンに襲撃されている可能性のほうが高い。
「話は戻るがシャーリィ、『ただ一つの杖』についての情報は? 肝心の探し物が何処にあるのか、見当は付いているのか?」
 そのランディの問い掛けに、シャーリィは写本をパラパラとめくった。
「手掛りがあの城に残っているということ以外は‥‥『ただ一つの杖』は、6大精霊すべての力が封じてあるという優れものだそうでして‥‥」
 それ以上、シャーリィの言葉は続かない。
「なら、古城に関する情報は?」
「かなり昔の遺跡としか。その城は今の沼地が湖だった時代に天空より落下したとかいう物語を聞いたことがあります」
「天空からだって? なんだそれは?」
 フィル・フラット(ea1703)が驚いた表情でそう問い返す。
「解析の終った石版には、その城が雲に乗ってふわふわと飛んでいるような姿も刻まれていましたから」
 流石のシャーリィでも難解不能。
「何はともあれ、実際に現地で調べたほうが判ると思うにゅ!!」
 元気にそう叫ぶパロム・ペン(ea2705)。
「小父さまの言うとおりですね。古代の遺跡というのは、実際に見て、触れてみないと解らない部分が多いのですわ」
 にっこりと微笑むシャーリィ。
──グイッ
 その溶けだしたパロムを押しのけて、これまた御存知ティルコット・ジーベンランセ(ea3173)が登場、シャーリィに問い掛ける。
「シャーリィ久しぶり〜元気って‥‥辛うじて歩ける程度かぁ」
「御無沙汰していました。今回も色々とお願いしますわ」
 そう話し掛けるティルコットに、静かに挨拶を返すシャーリィ。
「ああ。そうそう、シャーリィに無理させないよう今精霊碑文学勉強中なんだ。行きがけにでも色々教えてくれねぇか?」
 ニィッと笑いながらそう頼み込むティルコット。
「私でよろしければ構いませんわよ」
 その言葉にティルコットは満足、パロムは不満足。
(この若造めぇぇぇえ。おいちゃんとシャーリィちゃんの恋路を邪魔するなにゅ〜)
(エロ中年めぇ。シャーリィちゃんは俺が守るじゃん!!)
 そんなやり取りを聞きつつ、イワノフ・クリームリン(ea5753)とアミ・バ(ea5765)の二人は護衛に関する打ち合わせを行なっている模様。
「遺跡内部の調査はパロム達レンジャーに任せておけば問題はない筈だが」
「問題はアサシンガールよね‥‥今までの彼女達、シルバーホークの動きから察するに‥‥」
 そのままアミはイワノフに耳打ち。
『内通者が居ると考えたほうがいいわよ。調査前半はおそらく仕掛けてこないでしょうけれど、ただ一つの杖が手に入った時には、必ず来ると考えておいたほうが無難ね』
 そのアミの言葉に、イワノフの同意。
『内通者の件については、シャーリィ以外の冒険者には伝えておく。現地ですでに調査している研究員が居るはずだから、内通者が居るとすれば恐らくはそこだな』
 静かに肯くアミ。
 そのまま細かい打ち合わせを行うと、シャーリィが席を外した隙に一行にその事を伝えた。


●という事で〜すでに城内突入〜
──斜めに傾いた城内・正面ホール
 沼地の直径は100m程。
 その中心部分に、城が斜めに突き刺さっている。正面から見て、左側1/3が沼の中に埋没、残りはベランダのように中空に浮かんでいる感じである。
 城の底面には巨大な岩が張り付いており、長い時を経て風化し始めていた。
 沼には巨大なワニがうようよとしていたが、それらを蹴散らしつつ一行は城内に潜入することが出来た。
「暗いにゅ〜。灯り灯りと‥‥」
 パロムが松明を取り出し、火を付ける。
「さて、ここからが正念場ね。ダンジョン化した古城、何が起るか解らないわ‥‥」
 アミがそう一行に聞こえるように告げる。
 即ち、アサシンガールを始めとするシルバーホークにたいしての警戒宣言。
 シャーリィにはその言葉の意味しか伝わっていないため、余計な心配をかけることはなかった。
──一階・右側エリア
「建物としての作りは、特に変わったところはないにゅ?」
 石畳の継ぎ目に器用にナイフとダガーを突きたてて、傾斜している床を這いあがっていくパロム。
 そのまま周囲の状況を一つ一つ確認しつつ、ゆっくりと右側へと昇っていく。
 そのはるか後方では、一行が斜めになった床を下へ落ちないようにとロープであちこち支えている状況である。
「水平な部分がまったくないというのは問題があるわね‥‥」
 アミが後方でそう呟く。
「ああ。だが、この状況ではモンスターも襲っては来ないだろうし‥‥」
 イワノフも静かにそう告げて、周囲をざっと見渡した。
 閉じられた扉、二階部分へと昇っていく階段の踊り場。
 その踊り場なら足場になると見て、イワノフはティルコットに話し掛ける。
「あの場所なら負担にならない。いけるか?」
「当然じゃん。この俺を誰だと思っているんだい?」
 イワノフから借りたロープを身体に固定し、その反対を手近の柱に結わえる。
「そーーーれいっ!!」
──ヒュュュュュッ‥‥ザッバァァァァン
 勢いよく踊り場にジャンプしたが‥‥失敗!!
 正面左エリア、すなわち沼の部分に華麗なるダイビング!!
「うっわぁぁぁぁぁ‥‥ひっでぇじゃん!!」
 さらに同じタイミングで、パロムが右通路奥の扉を調べていたのだからさらに堪らない。
「ここが‥‥こうで‥‥」
──カチッ
「にゅ★△×■?」
 突然開く扉。
 そして流れ落ちてくる大量のスカルウォリアー達。
 それを躱わし、ボディアタックを避けるパロムと冒険者達だが。
──ザバザバァっ
 スカルウォリアーは次々と沼地に落下、ティルコットは直撃を受けて沈黙。
──ギリギリギリ
 ロープを引き上げて、ティルコットを救出するランディと烈、ほーちゃん。
「ありゃりゃ、済まないにゅ〜」
「死ぬ。今度やられたら間違いなく死ぬじゃん!!」
 そんなこんなで、埒があかなくなってしまった為、一行は1度城外へと移動、ベースキャンプで対策を煉ることとなった。


●ベースキャンプの騒動〜情報のねつ造〜
──ベースキャンプ
 戻ったベースキャンプでは異変が発生。
 先行でやってきていた筈の研究員達の姿がどこにも見えなかった。
「内部が歩けるというのはどこの誰が送ってきた情報なんだ?」
 ランディのその問い掛けに、シャーリィが静かに口を開く。
「ここに来ていた筈の調査員ですね。昔から教授の依頼関係には必ず同行して、ベースキャンプを作ったり石版の解析作業を手伝っていた方です。彼がここの状況を早馬で届けてくれたので、私と教授もここに『ただ一つの杖』が眠っていると確信できたのですから」
 その『彼』と呼ばれている研究員の姿も、どこにも見当たらない。
 その異変が、おそらく『結社』の手によるものであろうと、シャーリィを除く一行には直感で理解できた。
 遺跡の存在自体は確かにある。
 シャーリィ達を罠にはめる為に、遺跡自体をねつ造したのではない事は、写本との照らし合わせをシャーリィが行ない、確認したということからありえない。
 ただ、場所的に『襲撃に適している』というだけの話であろうか。
「残っている荷物にも、研究員達の私物は全く存在しないか‥‥これは、いよいよアレだな‥‥」
 烈のその呟きが、シャーリィの耳に届いた。
「アレって? 何か心当りでもあるのでしょうか?」
『あっちゃぁ‥‥ばれた‥‥』
 誰と無くそう思うのも無理はない。
 そして視線が烈の元に集ると、諦め顔で烈が口を開く。
「実はな‥‥」

〜そして

「そうでしたか。なら、もう少し周囲に気を付ける必要がありますね‥‥」
 顔色が悪くなり言葉が少なくなるシャーリィ。
 ミハイル教授とは違い、自分が狙われているのにいつものような気分で調査を続けられるほど、心が強く出来てはいなかった。
「大丈夫。その為に、俺達がいるんだよ〜」
 ほーちゃんが楽しそうにシャーリィに告げる。
 そして一行は、さらなる周辺警戒行ないつつ、翌日からの調査に全力を傾ける事となった。
 翌日からはいよいよ内部調査が再開。
 幸いなことに、調査期間には敵の襲撃は全くなかったが、目的であった杖の代わりに手掛りを示す石版の回収も終了。
 そして最終日、一行は荷物を纏めると、プロスト領へと帰還していく。


●帰路〜雑魚は黙っていろ〜
──プロスト領手前・旧街道
 ガラガラと走るシャーリィ達の馬車の後方から、一台の馬車が接近してくる。
 それはやがてシャーリィ達の馬車の横を追い抜いていくと、行く手を塞ぐ形で停車した。
──ガバッ!!
 そして扉が開くと、覆面をつけた男達が飛び出し、襲いかかってくる。
「甘い!! 鳥爪撃っ!!」
 迎撃の為に馬車から飛び出した烈が、目前の敵に向かって必殺の一撃を叩き込む。
 さらに烈の後ろからは、戦闘班が飛び出していく。
「雑魚に用はないってば!! 二天一流・焔狼式【獲追い】っ」
 すばやくて樹の攻撃タイミングを見切ると、ほーちゃんが必殺の一撃を叩き込む。
 さらに追い撃ちを叩き込むように、フィルが武器を捨てて体当たり。そのまま押し倒して腕を取る。
「君達はシルバーホークの手の者だな。今回の襲撃、アサシンガール達はどこに隠れている!!」
 そう問い掛けるフィルだが、敵はなにも語ろうとしない。

「それ以上は馬車に近づけさせません!! ソニック!!」
──ブゥゥゥン
 次々と飛び出すアミのソニックブーム。
 二人の敵はそれを交わす為に馬車の後ろに飛込んでいくが、一人はソニックブームを食らう覚悟でアミの懐に飛込むと、そのまま至近距離でアミの武器を叩き落とす。
「これで、もう衝撃波は飛んでこないな‥‥」
 そう呟く敵に向かって、アミはクスッと笑う。
──ドン!!
 力一杯踏込むアミ。
 と、敵の腹部に向かって拳を打つ。
──グブッ‥‥
 そのままなにも言えずに敵は意識を失った。
「レオンの戦い方を知らない貴方が悪いのよ。ソニックブームは遠距離だけではないのよっ」
 殆ど0距離からの踏込み。
 その僅かの距離でも、ソニックブームは飛ばせる。要は『殴れる距離』であればよい。
 さらにスタンアタックも合成、その衝撃で意識を失ってしまったらしい。
 そしてゆっくりと武器を手に取ると、再びアミは静かに構えた。
「さて‥‥次はどちらさまがお相手かしら?」

──ガギィィィィン
 鋭いイワノフの一撃が、敵の武器を中空に吹き飛ばす。
「貴様達は大きな間違いをしている‥‥」
 そう呟くと、イワノフは敵に向かってメタルロッドを構えた。
「何をっ」
 すばやく殴りかかってくる敵の腕に向かって、カウンター気味にメタルロッドを叩き込むイワノフ。
「判らないか? アサシンガールクラスの手練れで無ければ、俺達にはかなうはずが無い!!」
 そのまま敵が体勢を整える前に追い撃ちを叩き込むイワノフ。
 間もなくして、敵は其の場に崩れ落ちていった‥‥。

──ガギィィィン
 すばやい敵の攻撃を楯で受け流すと、そのまま敵の懐に向かって手にした日本刀を叩き込むランディ。
「殺しはしない‥‥ただ、貴様達シルバーホークが何を企んでいるのか、それを洗いざらい吐いて貰うだけだ!!」
 そのまま敵を殺さない程度に痛めつけるランディ。
 だが、一見するとファィターのような姿をした敵が口から発したものは、高速で紡がれた魔法詠唱。
「爆!!」
──どごぉぉぉぉっ
  ランディが爆発。
 いや、正確には、ランディを中心とした半径15mが、突然爆発したのである。
 至近距離からの、高速詠唱によるファイアーボム。
 自分も傷つくことをためらわず、範囲内にいる仲間たちも巻き込むことを知った上での発動。
 ランディ達は皆レジストに成功したが、衣服や髪があちこち焦げている。
 だが、敵は冒険者達にかなり痛めつけられていた上に、この爆発である。
 生きているものはほんの僅か‥‥。
「グッ‥‥グ‥‥ウハハハハハ」 
 唯一の生き残りである男が、空を見上げてさらに詠唱開始!!
「逃げないと今度はまずいじゃん!!」
 ティルコットの叫びに、一行はすばやく走り出す。
 その後方で、絶叫を上げながら爆発する男の姿があった‥‥。


●プロスト領・ミハイル研究所?
──相変わらず古い建物です
「‥‥とりあえず、あとは教授の報告待ちになりました。私は急ぎ石版の解析に入りますけれど、今回の解析には時間がかかりそうですので」
 シャーリィが静かにそう告げる。
「じゃあ、その間もおいちゃんがシャーリィちゃんの護衛をしてあげるにゅ!!」
 そう話し掛けるパロム。
「パロム小父さま、いつもありがとうございます。ですが、小父さまも冒険者。まだこのパリでは、小父さまの事必要としている方が大勢いらっしゃいますわ。解析が無事に終了した時には、また私と一緒に冒険に出かけてくださいね‥‥」
 
 こうして、最後の石版の解析に入ったシャーリィ。
 古代魔法王国への扉は、徐々に開かれつつあった。

〜Fin