●リプレイ本文
●これが最後〜その割には呑気〜
──移動中
パクパクパクパク
腹が減っては戦はできない。
エル・カムラス(ea1559)は馬車に積んである食糧を、次から次へと食べている最中であった。
「それにしても食べますねぇ・・・・。お腹を壊さないようにしてくださいね」
ウィル・ウィム(ea1924)がそうエルに話し掛ける。
「ムグムグムグムグ・・・・うふぅあぅ」
「あーー。食べている最中には話をしないで。まったく、いくら食糧を持ってくるのを忘れたからって・・・・市場でこんなに買い込んでくることはないのに・・・・」
リュリュ・アルビレオ(ea4167)のその言葉に、ようやくパンを呑み込んだエルが反撃。
「だって・・・・一杯おまけしてもらったし。ご飯を一杯食べておかないと、この戦い、勝てないかも知れないから・・・・」
何時に無く真剣な表情のエル。
「そうそう・・・・でも、この大量の小麦粉は一体どうするの?」
ノリア・カサンドラ(ea1558)が傍らに置いてある小麦粉の袋を指差す。
「目くらましに使うんだよ。それよりも、リスターさんは今回の戦い、頑張らないといけないからねぇ!!」
そう側で風景を眺めているリスター・ストーム(ea6536)に呟く。
「ん・・・・ああ。そうだな・・・・これが最後ならな・・・・」
そのリスターの言葉が、後でとんでもない事件に発展するとは、この時点では誰も思ってもいませんでした・・・・。
●早速作戦開始〜囮は元気に〜
──敵アジト前
ドッゴォォォォォォン
ライトニング蝙蝠男の放ったヘブンリィライトニングが屋敷を直撃。
それを合図に、仮面貴族リチャードとその相棒シスター・オニワバン、そして大勢の出番の無かった怪人達が襲撃を開始した。
「イーーーーーッ(これはまた、随分といますね)っと、イーーーーツ」
真っ赤に塗られた巨大なエイプの着ぐるみを着て、サクラ・クランシィ(ea0728)は囮部隊の中に紛れて戦いつづける。
(しかし・・・・この着ぐるみの名札・・・・前の怪人『ムックリ』って、何者なんでしょうかねぇ・・・・まあいいけれど)
あー、突っ込まない突っ込まない。
そして囮部隊の中に紛れているリスターも、こっそりとシスターのガードをしつつ建物に潜入。
──ガギィィィィン
そこに飛び出してきた敵幹部の一人がシスターに向かって襲いかかる。
だが、その剣をリスターが腰に差していたシルバーダガーで受止める。
「ここはまかせるんだ!! シスター、俺のことはいいから先に行け!!」
「リスター。貴方も無事で・・・・」
まるで恋愛劇の如く臭い別れ方をするシスターとリスター。
そしてシスターが廊下を走っていくのを、リスターは必死に攻撃を受止めつつ見守っていた。
(絶対に死ぬなよ・・・・)
──ドシュッ
心の中の呟きと同時に、腹部を襲う激しい激痛。
正面から命懸けで飛込んできた敵幹部の剣が、リスターの腹部を貫いていた。
その刃は背中まで貫通している。
「・・・・これで終わりだ・・・・」
そう口許に笑みを浮かべる幹部。
だが。
──ドゴォォォォッ
まるでなにも無かったかのように幹部を拳で殴り飛ばすリスター。
そして倒れた幹部には、戦闘員たちの集中攻撃が待っていた。
「・・・・終り・・・・なんのことだ?」
そう呟きつつ、腹部に手を当てるリスター。
──ヌルッ
とした感触が手に付く。
そしてふと両手を見ると、自分の体液で真っ赤になっていた。
「な・・・・なんじゃこりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
──ガクッ
一気に力が抜けていくリスター。
そのまま大地に倒れていくと、何かを呟いている。
「死にたくないぜ・・・・こんな所でくたばっちまうのかよ・・・・シスター・・・・」
ガクッ
──一方、別のエリアでは
「そーーーれいっ」
背中に背負った大量の小麦粉袋。
それを天井に向かってばらまいたり、室内に向かって捲き散らしたりと、エル君大活躍中。
結果、敵ガードは完全に分断され、ノーヴァンリッターのメンバー達は、いきなり襲われるという事はなかったようである。
「あとはこちらで何とかします。エルさんはアルジャーンを頼みます!!」
ニュイ・ブランシュ(ea5947)がそう有るに話し掛ける。
「了解。ではここはまかせたーーーー」
ヒューーンと廊下を抜けてエルは建物の外へ。
そしてそこでぶつぶつと魔法詠唱開始。
──キィィィィィン
輝く矢『ムーンアロー』がエルの側に生み出される。
「ターゲット・・・・この御屋敷にいるアルジャーン!! うてーーーーっ」
──ドシュッ
そのままムーンアローは屋敷に向かって飛んでいった・・・・。
──さて、エリアを変えてみよう
ゴォォォォォッ
アジト中央にて、ノーヴァンリッター一行は最後の戦いを行なっている。
「悪いな・・・・お前たちには動いて欲しくない・・・・そのままそこでじっとしてもらおう・・・・」
フーリ・クインテット(ea2681)の唱えたトルネードにより、護衛の騎士たちは天井に向かって巻き上げられ、激しく叩きつけられる。
そして落下。
なんとか体勢を整えたと思ったらさらにトルネードが発動。
フーリの最悪なるチェインコンボに巻き込まれて護衛の騎士は全く行動不能となった。
「おのれ貴様達・・・・一体どこから入ってきた!!」
そう呟くのは、部屋の奥においこまれたアルジャーン。
『裏口からだ!! 私達はアースダイブできない!!』
まるで打ち合わせしたかのようにハモったおちょくり口調。
「ふふ・・・・ふははははは・・・・いて!!」
と、突然天井を通過してアルジャーンに突き刺さるムーンアロー。
「ま、まさか・・・・この私をも切り捨てるのですか?」
天空に向かってそう呟くアルジャーン。
それはエルのムーンアローです。
処刑部隊ではありませんて。
「今までの貴方の悪事、とうとう税金の納め時ね」
「お笑い結社シルバーホーク幹部アルジャーン。貴方もここお終いです・・・・」
グッと拳を構えてそう叫ぶリュリュ・アルビレオ(ea4167)と、その彼女に続くフーリ。
「・・・・それはどうかな・・・・」
そう呟くと、アルジャーンは素早く印を組み韻を紡ぐ。
──トシュッ!!
だが、その腕に銀色に輝く十字勲章が突き刺さる。
「アルジャーン。もう無駄な抵抗はおよしなさい。『あの御方』は、貴方とこの組織を処分するよう私に命じました・・・・まあ、私がここで行うよりも、ノーヴァンリッターがどうにかしてくれるようですけれどねぇ・・・・」
クスクスッと反対側の窓辺から聞こえてくる謎の声。
「貴様は・・・・まさか・・・・イテッ・・・・シルバーホークの『エクスキュージョナーズ』・・・・そうか・・・・そういう事かぁぁぁぁ・・・・イテテテッ」
一定の間隔で飛んでくるムーンアローが、少女の言葉に真実味を与える。
そして、勝手に盛り上がっているアルジャーンを放置したまま、窓辺に立っている少女チェルシー・カイウェル(ea3590)はいそいそと懐から銀色のマスクを取り出して、後ろ向きでこっそりと被る。
──ブゥゥゥゥン
アルジャーンの高速詠唱により、其の手の中に巨大な炎の球が生み出される。
「お終いならば・・・・貴様達も道連れに・・・・イテッ!!」
はい、ファイアーボム詠唱失敗。
その時!!
──ドッゴォォォォォン
激しい爆発音が響き渡り、アルジャーンの背後の壁が崩れていく。
轟々と沸き上がる炎と、その向うで炎をコントロールしているアニュイの姿があった。
──ブゥゥゥゥン
真っ黒に燃え尽きそうなアニュイに必死にリカバーを唱えているのはウィル。
「・・・・何かわかりませんが・・・・突然室内が爆発して・・・・」
ちなみにその部屋、エルが『小麦粉をひたすらばらまいた部屋』。そしてアニュイは屋敷を破壊する為に火を付けたらしいのですが、その瞬間爆発したそうです。
いやぁ、何が起こったは判りませが、偶然というのは恐ろしいものですねぇ・・・・うんうん。
そのまま爆発に後押しされ、アルジャーンはノーヴァンリッター御一行様の正面に。
「き、貴様ら・・・・」
──さて、それでは最後のお約束‥‥
「‥‥いよいよこれが最後の戦い!! シルバーホークよ、とっととお家に帰りなさーーい!!」
深紅のガーダーかキラリと輝く。
拳をギュッと握り締め、目の前のアルジャーンに突き出す。
「灼熱のレッド!!」
「正義の風が俺を呼ぶ‥‥少女を救えと輝き叫ぶっ!」
その場で力強く構える。
もうボロボロのスーツを着込んだパワーファイター。
「‥‥これで全て終らせる!!力のイエロー!!」
「正義の名のもとに参上。全ての罪を懺悔し、これからの人生を送るのです。紙は、迷えるものの味方です・・・・悔い改めなさい!!」
静かに立ち、組んでいだ右腕を敵に伸ばし、指先をビシッと向ける。
声から察するとウィル。
「天啓のホワイト!!」
「天呼ぶ、地呼ぶ、俺を呼ぶ、美女を愛せと俺を呼ぶ!!」
いつのまにか戻ってきた、ノーヴァンリッターの欲望戦士。
クネクネと体をよじらせ、新たなるガードによりカバーされた前モッコリのスーツでそう叫ぶリスター。
「歪愛のピンク!!」
あーー。
スーツの腹部が血で真っ赤。
「争い奏でる謎の奏士は、空より来たりし最後の新星」
この為だけに作られたスーツ。
銀色に輝く光の戦士。
「旋律のプラチナ!」
はて?
少し足りませんがよしということで。
──ドッゴォォォォン
そして壁の向うから現われる鉄球。
それがアルジャーンを踏み潰して窓辺でとまると、ブラックに変化。
「・・・・悪いな。これで決着を付けさせて頂く・・・・シャドウブラック推参」
最後に恰好良いところを持ってくるブラック。
「き、貴様達・・・・ロード、エムロードは何処だ!!」
──プス
と、どうやらアサシンガールを呼んでいたらしいアルジャーンだが。
最後のムーンアローが突き刺さり、其の場で絶命。
──パタパタパタパタ
「終った〜?」
窓の外をエルが飛んでくる。
「終った・・・・って・・・・」
あっけにとられるリュリュ。
「これで全ての決着はついたわ!!」
まあ、何はともあれキメポーズの一行。
──またまた別エリア
「・・・・殴りクレリックさんですか・・・・」
目の前の少女は、静かに両手に構えたナイフを腰の鞘に納めると、ゆっくりと拳を握る。
「貴方もアサシンガール? パーフェクトタイプかしら?」
そう告げつつも、ノリアは心の中に脇躍る衝動を押さえられなくなりつつある。
強い奴と戦いたい・・・・。
あのアサシンガールに一糸報いたい。
その思いで、ここに立っているのであろう。
「私はエムロード。まだパーフェクトとしての称号は受けていないです。エクスペリエンスですけれど、今回の任務を無事に終えれば、私もパーフェクトとしての知識と技術を与えられますから・・・・」
にぃっと冷たい表情をしつつ、エムロードはノリアに向かって殴りかかる。
──ビシッビシッ
重々しい一撃が次々とノリアを襲う。
クレリックであるノリアは、戦士としての訓練を本格的に行なったことはない。
全てが自己流。
それゆえの限界を、ノリアは感じつつあった。
「どうしたの? 得意な投げ技はどうしたのかしら? それでも『殴りクレリック』なの?」
──キラーーン
一瞬の隙を見て、ノリアは素早く攻勢に切替える。
片方の手で相手の腕を掴み、もう片方の腕で相手の頭を肩に担ぐようにして抱えると、そこから自ら後方に倒れ込んで、相手の全面を床に叩きつけ・・・・られない!!
またしてもエムロードは体勢を崩すことなく耐えきった。
「殴りクレリックである貴方の攻撃パターンは、全て学んできました。もう何をしても無駄ですわ」
その言葉ののち、エムロードは其の場に膝を付いた。
「あら・・・・一体何が・・・・」
横腹を押さえ、其の場に崩れるエムロード。
「貴方は一つ勘違いをしているわね。私が何故、『殴りクレリック』と呼ばれているか・・・・」
ゴキゴキッと拳を鳴らすノリア。
其の手には、いつしか『アイアンナックル』がはめられていた・・・・。
──そして
激しい戦いであった。
今までの投げ技は全てこの日の為の伏線。
全てはこの一撃の為に・・・・。
偶然、まさにラッキーパンチがアサシンガールに直撃する。
──ガシャーーン
激しく後方に吹き飛ぶエムロード。
と、頭を床に激しく叩きつけ、其の場でぐったりとしている。
「ふう・・・・」
ガギーーーンと拳を打ち鳴らし、勝利のポーズを取るノリア。
「・・・・こ・・・・ここは・・・・私は・・・・」
と、意識を取り戻したエムロードの様子がおかしい。
周囲をきょろきょろと見渡し、そしてなにかに脅えている様子がみえかくれする。
「貴方・・・・まさか」
ゆっくりと近づいていくノリア。
だが、エムロードは近くにあったものをブンブンと投げ付けつつも、悲鳴を上げて泣きつづけた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ。近寄らないでぇぇぇぇぇぇ。殺されるぅぅぅぅぅぅ。ホークが・・・・ホークがぁぁぁぁぁぁ」
●顛末〜全ては終りました〜
──パリ
エムロードはマスカレードによって保護され、サン・ドニ修道院に預けられた。
どうやら『調整』の効果が未完全であったらしく、今でも何かに脅えるような生活を行なっているという。
「・・・・これでお別れです・・・・」
「マスカレード。貴方はこれからどうするのですか?」
ウィルがそう問い掛ける。
「私は、シルバホークと戦います。あのような幼い少女を武器として使うような組織、私は絶対に認めない・・・・」
「もし、何か手伝うことがあったら、いつでも声を掛けてくれ・・・・」
「私も、お手伝いします」
フーリが、リュリュがそう告げる。
「そういえば、リスターは?」
ノリアが酒場の中を見渡す。
と、窓辺でリスターが外を見ていた。
「シスターの事、追いかけなくてよいの?」
チェルシーがそう問い掛けたとき、リスターはにいっと笑みを浮かべる。
「あいつは必ず戻ってくるさ。俺の愛したあの女はな・・・・」
そう告げると、リスターは突然チェルシーに襲いかかった。
「それまでの心の隙間を、お前の肉体で満たさせてくれぇぇぇぇ!!」
そして、リスターに向かってノーヴァンリッター最後の大技炸裂!!
『必殺、アルカンシェルブラストっっっっ』
あわれリスター。
合掌。
〜Fin