発展途上英雄!!〜シスター奪回作戦〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:5〜9lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 30 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月20日〜01月30日

リプレイ公開日:2005年01月26日

●オープニング

──事件の冒頭
 騒がしい酒場。
 ここは南ノルマンプロスト領。
 とある理由で里帰りしているマスカレードは、城下街の酒場『蒼き湖畔亭』にて静かな晩餐を楽しんでいた。
「・・・・マスカレード、頼みが有る」
 彼の真後ろに座っていた『仮面貴族』が、仮面の司令官マスカレードにそう話し掛けている。
「貴様の頼みなどに耳を傾ける必要はない。今直に自警団に突き出してやるから覚悟しろ」
 スッと立上がるマスカレード。
 だが、仮面貴族リチャードは其の場を動くことは無かった。
「シスターが攫われた。さらったのは秘密結社シルバーホーク、目的は我々下部組織の壊滅、体よく言えば口封じだ・・・・命を助けて欲しかったら、速やかに姿を表わせとの勅名が下った・・・・場所は説明する、俺も同行する、頼む、シスターを助けて欲しい・・・・」
 えーっと、『お笑い結社シルバーホーク』の幹部であるシスター・オニワバンが、『秘密結社シルバーホーク』に拉致され、今まさに処刑されようとしているようである。
「貴様達の仲間割れに付き合っているヒマはない!! いいか、今まで貴様達のしたことを思い出してみろ!! 罪なき民をどれだけ傷つけたと思っている!! 今更命乞いか!!」
 リチャードの襟首を掴み、そう叫ぶマスカレード。
「全てが終わったら、自警団なり騎士団に突き出せはよい。だから、今回はシスターを助けて欲しい。巧くやれば、結社についての情報も得られると思うが・・・・」
 そのまま椅子にリチャードを座らせると、マスカレードは腕を組んで考えた。
 やがて彼はシフール郵便を呼ぶと、八通の手紙を託したのである‥‥

●今回の参加者

 ea0728 サクラ・クランシィ(20歳・♂・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1559 エル・カムラス(19歳・♂・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea1924 ウィル・ウィム(29歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea2681 フーリ・クインテット(20歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4167 リュリュ・アルビレオ(16歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5947 ニュイ・ブランシュ(18歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea6536 リスター・ストーム(40歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●シスター奪回〜潜入捜査は基本〜
──いきなり貴族の別荘
(構造は二階建、ここが貴族の寝室の上で・・・・こっちが食堂で)
 天井裏で見取り図を作成しているのは、御存知リスター・ストーム(ea6536)。
 現地に到着早々、リスターはこっそりと天井裏に侵入し、舘の内部調査を行ない見取り図を書き上げていた。
 もっとも、直接調査していたのはこの人。
──ガチャッ
(リスター、食堂でパンを発見しました!!)
 と下から姿を表わすのはエル・カムラス(ea1559)。
 現地移動中にリスターの手によって巨大ズタ袋に積めこまれ、ここまで同行。
 もっぱら調査は身軽なエルの仕事である。
(でかした!! それで内部の様子は?)
 そう問い掛けるリスター。
「貴族の執務室周辺には鍵が掛かっているからなぁ・・・・そこ以外の場所も、別荘管理人とメイドが常に見回っているから、地下室の場所までは確認したが・・・・」
 エルの入ってきた入り口から上半身をのぞかせて、ニュイ・ブランシュ(ea5947)がそう告げる。
 他の仲間たちと共に、既にメイドに扮して潜入。
 リスター達の動きやすいように、色々と画策している模様。
(成る程ねぇ・・・・モグモグ)
(あのおばさん、どこに捕まっているんでしょうねぇ〜モグモグ)
 簡単なお食事タイムのリスターとエル。
「一緒に潜入したノリアが、管理人と話をしている最中だから、その結果しだいだろう・・・・と、全部食べるなよ、ノリアとか、帰りの食事を忘れた奴等の飯も入っているんだからな」
 あらら、それはそれは。

──その頃のノリアさんとウィルさん
「チーフ、あとは何か必要なものはありますか?」
 食堂にて打ち合わせを行なっているのはノリア・カサンドラ(ea1558)。
 チーフと呼ばれている管理人によりメイド達は食堂に集合。今夜のパーティーの打ち合わせを行なっていた。
「そうだな。地下の連中の分は別に作って持っていくから良し。今夜には、幹部がやってくる手筈も整っているから、それ相応の料理を用意しておく必要がある。人数は8名分だが、間に合うか?」
「8名分ですね。かしこまりました。何か好みというのはございますか?」
 コックコートに身を包み、静かにそう問い掛けるのは変装して侵入しているウィル・ウィム(ea1924)。
「本部から視察にやってくる幹部、それと吟遊詩人達は港街での育ちだから、新鮮な魚介類を欲するかもしれんなぁ」
 色々といらっしゃるようだが、ウィルの気になった点は只一つ。
 吟遊詩人。
 これまでに得た情報では、シルーホークはバードによる『処刑部隊』を有している。
 もし姿を見られたり、個人を特定できる情報を知られてしまった場合、確実にその者は処刑の対象として記憶されるであろう。
(夜まではあと6時間・・・・それまでが勝負ですね)
 冷たい汗がウィルの背中を流れていった。
 そのままさらに打ち合わせは続いた。
(うう・・・・急がないとリュリュが来る・・・・地下にあるアジトについての情報を伝えないと)
「あ、そこの『胸』の大きいメイドたちは、もう少し露出の高い服に着替えて。結構そういうのが好きな人もいらっしゃるから・・・・」
 ノリアさん、いきなりピーーンチ。


──その頃のサクラさん
「あらぁん。お戯れを〜♪〜」
 などと呑気な声を上げているのはメイドに変身したサクラ・クランシィ(ea0728)。
 ミミクリーを駆使してまんまと新人メイドと掏り代わったサクラであったが、ミミクリーというのは特定個人に変身することは出来ない。
 うまーーーく変身したつもりでも、やはり何処かが『はっきりと』違うのである。
 そして、地下にあるアジトに潜入すると、何故か、既に到着している幹部の接待を仰せ付かっている模様。
「まあまあ。しかし君は可愛いのう。どうだね? ワシの屋敷に来ないか? 今の賃金の2倍、いや3倍払おう!!」
「御屋敷って・・・・どちらなんですか?」
「それは、お前が頭を縦に振ってくれたら教えてやろう・・・・」
 そう告げつつ、サクラの太股にそって手をツツーと這わす幹部。
──ゾゾゾッ
 鳥肌が立つ思いにじっと絶えるサクラであった。

──その頃のリュリュさん
 コンコン
 貴族の別荘の扉を叩くのは変装したリュリュ・アルビレオ(ea4167)。
 どうやらリュリュは、旅の商人に扮して貴族の別荘にやってきた模様。
(あとは手筈通りにと・・・・。ノリアさん、巧くお願いしますね)
 ここでノリアと接触し、内部情報を得る手筈になっていた。
──ガチャッ
 と、扉を開けたのはノリアではない。
 別のメイドが静かに扉を開いたからさあ大変!!
「あ、えーーと。えーーっと・・・・保存食は如何ですかぁ・・・・」
 いきなりアドリブをかますリュリュ。
「あ、いつものおじいさんではないのですね。遠路はるばるご苦労さまです。頼んでおいた保存食とワイン、持ってきて頂けたのですね?」
 はぁ?
 どうやら食い違うどころかがっちりと一致しているし。
「はーー。はい、そうなんです。うちのじっちゃん、腰を傷めてしまって。で、ワインではなくベルモットを頼まれていた筈なんですけれどー」
 額を流れる汗をものとせず、もうアドリブぶちまかしのリュリュ。
「わかりました。では、荷物は裏手にお願いしますね。料金はいつもの通りに後日まとめてお支払しますので」
「判りました。で、ここに来るのは初めてなので、ちょっと案内して頂けますかぁ?」
 巧く話をあわせ、裏口にまんまと侵入成功。
 そのまま内部を見渡しつつ、雑談話を交えて情報収集に成功。
「ガツガツガツガツ」
 と、裏口の近くにあるメイド達の休憩室で、一心不乱に食事をしているのは『旅の錬金術師』フーリ・クインテット(ea2681)。
 そういう設定で、ここに行き倒れて助けられたらしい。
「すいません。助かりました。何かお礼をしたいのですが」
 そう告げながら立上がろうとするフーリだが、すばやく足元を押さえて悲痛な表情をしてみせる。
「痛っ!!」
「あら、足を怪我してしまったのですね。あまり無理をなさらないほうがいいですわ。痛みが引くまでは、この部屋で休んでいて構いませんから」
 そう呟いた時、メイド達に聞こえるように開いている扉をコンコンと叩く少女の姿が見える。
「あ、クラリス様・・・・」
「地下室のお姫様には食事を持っていったのかしら?」
「それに、勝手に知らない人をここにいれたら、後で貴方たちが怒られるわよ?」
 クラリスと呼ばれた少女と、その背後から現われた少女がそう呟く。
「お舘様は今夜到着しますので、その時にご説明するつもりですわ、ブランシュ様。それよりも、この方、錬金術師だそうですわ。色々とおもしろいお話を聞かせて頂けるかと・・・・」
 そう話しているメイドの横では、リュリュとフーリは心臓が爆発寸前。
(あ・・・・アサシンガールだぁ?)
(イヤ、絶対死ぬ。マヂ勝てる自信ないってば・・・・)
 まあ、そうでしょうねぇ。
「それでは、私はこれで失礼しますので・・・・」
 そう告げて、リュリュが其の場を後にしようとする。
 と、ブランシュがリュリュの近くにカツカツと歩いていく。
「ふぅん・・・・」
 そして耳元に近付くと、静かにこう告げた。
「マスカレードによろしくね。レッドのお嬢さん!!」
 あ・・・・ばれてる。
 そしてリュリュは無事? に仲間の元へと帰還となった。

──で、仲間達はというと
「只今戻ったよ──」
 ちょっと離れた場所にひっそりと立っている簡易アジトと言う名のテント。
 そこには仮面貴族ヘンドリックスが待機している。
「どうだった? 何か掴めたか?」
 そう問い掛けるヘンドリックスに、リュリュは脂汗を流しつつにっこりと笑顔でこう答えた。
「あのーー。私がここに来ること、アサシンガール達にばれているんですけれど」
 その言葉に、ヘンドリックスドも額から脂汗を流す。
「ややや・・・・やばすぎるって。アサシンガールといったら・・・・」
「どどどどどどとど・・・・どうしよう・・・・」
 本当にどうしよう。


●それでも英雄だっしぃ〜ここで下がれば英雄が廃る!!〜
──地下アジト
 必死に最後の砦を守りきったサクラ。
「そ、それでは食事の準備が進んでいるか見てきますわ・・・・」
 乱れた衣服を必死に直しつつ、サクラは一階へと避難。
 そこでノリアと合流、地下室の状況を説明。
(地下には幹部が一人。その奥にある、さらに地下へと続いている階段の下が、シスターの捕まっている場所だ。ヘンドリックスは今宵、ここに招待されている幹部達の元に来る手筈になっているから、最低でもそれまでには行動を起さないとならない・・・・)
(了解。護衛は0、あとは、この屋敷には少女が二人とメイド達しかいないから楽勝ね・・・・)
 ニコリと微笑むノリア。
 と、その近くをアサシンガール達がやってくる。
「あ、ハーブティーを二つ、2階の部屋まで持ってきてね」
 それだけを告げて立ち去って行くアサシンガール達。
「かしこまりました」
 そうニコリと返答するノリアだが、その横ではサクラがやはり硬直。
「・・・・本物のアサシンガールだ・・・・」
 驚きのあまりこわばる表情。
 と、その横ではノリアさんがニィッと笑っている。
──ゴギコキ
「アサシンガール。相手に取って不足なし!!」
 拳を鳴らし、さらに肩をブゥンと回して臨戦体勢を取るノリア。


●作戦決行〜タイマン張りましょ〜
──屋根裏部屋
 一通りの情報はエルがノリア達から集めてきている。
 それらを元に、リスターは静かにタイミングを見計らっている。
「作戦決行は30分後。それまでに各員着替えて待機しているように伝えてくれ。ターゲットは地下エリアの幹部1名、そしてその奥にいるシスターの奪回。ヘンドリックスには正面から囮として突っ込んでこいと伝えてくれ」
 そう告げて、リスターはマスクを装着。
「了解しましたぁ♪〜」
 パタパタと飛んでいくエル。
 そしてこっそりと一人一人に伝令を行うと、最後になんとか外に飛び出し、リュリュ達にも伝令。
 かくして、至上最大の作戦は幕を切って落とされた!!

──日暮れ直前 太陽が地面に接地
 どっごぉぉぉぉん
 激しい破壊音と同時に、正面扉が吹き飛ぶ。
「一体なにが!!」
 メイド達がそう叫んで入り口に向かったとき、煙の向うから仮面貴族ヘンドリックスが姿を表わす。
「私だヘンドリックスだ。勅名により参上した。シスターを返して頂こう」
 そのままヘンドリックスは正面から入り込んでいく。
 その間に、サクラの手引きでリュリュは建物の内部に潜入。
 ウィル達と無事に合流すると、こっそりと地下室へ移動。

─―太陽が五分の一沈む
「貴様達は一体何者だ!!」
 地下室に飛込んでいったノーヴァンリッター達に向かって、敵幹部の一人がそう叫ぶ。
 さて、それでは何とか今回もお約束の・・・・、え? そんな余裕なし?
 そんなこんなで激しい戦闘開始。

 敵幹部は素早くノーマルソードを引き抜くと、ノーヴァンリッター達に向かって構える。
「まさか・・・・貴様達がヘンドリックス達の邪魔をしている未発達英雄か?」
「未発達ちゃうわーーーーー」
 手にしたトレイですばやく殴りかかるのはレッド。
──ガギィィィン
 その一撃はあっさりと受け流し。
──ゴゥゥッ
 と、幹部に向かっていきなり叩き込まれたブラックホーリー。
 いつのまにか姿を現わしたブラックの、高速詠唱による襲撃である。
「高速詠唱だと!!」
 その漆黒の輝きを受けて、幹部は後ろに下がっていく。
「逃がすかっ!!」
──シュンッ!!
 イエローのウィンドカッターが宙を切る。
 幹部の衣服を突き破り、その下の皮膚を切り裂く。
──グファッ
 剣を落としそうになるが、それでもまだ戦う気満々の敵幹部。
──ギィィィッ
 と、地下室からはリスターがシリアスモードで登場。
「シスターは助けた!! あとは任せた」
 そのまま地上へと続いている階段に向かい、手と手を取りあって走り出すリスターとシスターだったが。
──ギイッ
「・・・・ここを通れるとでも?」
「ふぅ。それにしても無様ねぇ・・・・こんなお遊び集団にいいようにあしらわれて」
「今回の失態、本部にはちゃんと報告しておきますからね?」
 クラリスと、ブランシュと、そしてみたことのないアサシンガールが階段の上から降りてくると、そのままリスター達の横をすり抜けてソファーに腰掛けた。
「た、頼む、ここは助けてくれ・・・・こいつら外見だけで判断したら・・・・」
 そう呟く幹部だが、アサシンガール達は頭を左右に振る。
「駄目。そこでとっととやられてくださいね?」
 クラリスが口許に笑みを浮かべてそう呟く。
「行くわよみんな!!」
『必殺!! アルカンシェルブラスト!!』
 って、そこは敵幹部が『止むを得ぬ。貴様達も全て道連れでぇぇぇ』って言ってからだろ?
「そんな余裕はないです・・・・アサシンガール!! 貴方たちの悪行、全てギルドで見せて頂きました。アンリエットとフロレンス、二人の少女は何処なのです!!」
 ああ、セーラの使徒であるウィルに火が付いているし。
「二人はねぇ・・・・秘密」
「私に勝てたら、教えてあげるわ」
 ブランシュがそういいながら、ゆっくりと立上がる。
 そして挑発に乗った方が一名。
「貴方はブランシュ? 相手に取って不足はないわ」
 いきなりそう呟くと、ショートタックルを叩き込むノリア。
「ノリアボンバー5!! 主は来れリ我が拳にっ!!」
 正面から相手の脇の下に入り、相手の片腕を自分の肩にかけるノリア。
 そして相手脇から首を抱えると、相手の足の間に後ろ側から片腕を入れ、相手の腿を抱え、そのまま後方に反って投げ切・・・・れない!!
 脇の下に回りこむ時点で逆に力で押さえこまれるノリア。
「ノリアボンバーねぇ・・・・クスッ」
 そのままノリアの頭を抱えると、ブランシュは自分の頭にノリアの片腕を回す。
 さらに空いている手でノリアの腰の辺りを掴む。そして力任せの震脚!! いっきにノリアを後方に投げ飛ばす。
「こ、この技は・・・・ノリアボンバー2 神々の鉄槌!!」
 バックリと血を吹き出している頭を押さえつつ、ノリアがそう叫ぶ。
 背後ではウィルがリカバー詠唱。
「私達の組織を甘く見ないで欲しいわね。まあ、こんな技なら子供にも真似ができるわ・・・・貴方たち帰っていいわよ、気が変わらないうちにね・・・・」
 にぃっと瞳を細めるブランシュ。
 其の場にそれ以上いると危険と判断した一行は、とりあえず当面の目的であったシスターを連れて一目散に逃亡するのであった。

〜To be continue