ギュンター君と遊ぼう〜遺跡に行こう〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:3〜7lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 66 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月27日〜11月04日

リプレイ公開日:2004年10月31日

●オープニング

──事件の冒頭
 それはとある日の朝。
 冒険者ギルドでは、御存知薄幸の受付嬢が一人の依頼人と話をしていた。
「なるほどねぇ。ギュンター君も、この前の依頼で少し自信が付いたの?」
 彼女の目の前で、スマイルマスクを付けて喜んでいるのは、御存知『チビオーガのギュンター君』である。
 さて、このギュンター君について知らない人も多いと思われるので、今一度彼の里親であるトールさんの手紙をばここで公開。


●手紙
 依頼を御願いしたい。
 依頼内容は『ギュンター君』を冒険者としてデビューさせるための手伝い。
 ギュンター君は、とある氏族から逸れた可哀想な子供。
 私が引き取って育てていたのだが、やはり人間社会にはまだ彼を受け入れてくれる場所は存在しない。
 そこで、彼等の氏族にも邪悪でない者が存在する事を証明したい。
 その方法として手っ取り早いのが、冒険者の道を考えた私は、自分の持てる力を注いでギュンター君を育てた。
 御願いだから、ギュンター君を一人前にして欲しい。
 よろしく御願いします。
 
         トール・グランツール


●ということで
 依頼人のトール氏は、パリ郊外で動物の調教師兼宝石細工師を行なっている、ちょっとだけ有名人。
 余りにも無口で、人前で話をしている所を見た人はまず居ないという。

 今回は、ギュンター君を冒険に誘ってあげて欲しいという依頼。
 そこで、薄幸の受付嬢は今来ている依頼の中から、適当に常連依頼人のものをピックアップすると、その依頼人の元にシフール便でギュンター君の事を説明し、彼の同行を頼んでみた。
 幸いな事に、一人の依頼人がギュンター君に関心を持ってくれた為、その依頼にギュンター君を同行する事になった模様。
 静かに椅子に座ってハチミツを舐めているギュンター君。
 今日は何処にいくのでしょうか?

●今回の参加者

 ea1782 ミリランシェル・ガブリエル(30歳・♀・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3972 ソフィア・ファーリーフ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4335 マリオーネ・カォ(29歳・♂・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 ea4677 ガブリエル・アシュロック(38歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5603 ユーウィン・アグライア(36歳・♀・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)

●リプレイ本文

●まずは恒例の準備から〜いつでもOK〜
──トール宅
 まず一行は、ギュンター君を迎えに行った。
 その途中、トール宅の近くでじっと家を監視している二人の人物を確認した。
「すいません。トールさんの家で何かあったのですか?」
 その二人にルイス・マリスカル(ea3063)が二人に問い掛けた。
「あ、ああ。何かあったら困るから監視を‥‥って君達は、冒険者?」
 二人は、この村の自警団の団員。
 自警団団長の命令で、危険なオーガを監視しているとの事。
「ええ。今回は依頼がありましてトールさん宅を伺いました。それにしても危険ねぇ‥‥その団長さん、随分とオーガを毛嫌いしているみたいですねぇ」
 ミリランシェル・ガブリエル(ea1782)が二人に問い掛ける。
「それはご苦労様です。私は自警団員の『ニャルラ』、こいつは相棒の『テップ』です。ギュンター君ですが、まだチビっこですし、僕達は危険性は無いと思っているのですが‥‥団長は隣の国の出身でして」
 その言葉に、ガブリエル・アシュロック(ea4677)は成る程と納得。
 その二人に静かに問い掛けはじめた。
「自警団規律の中に、オーガを始めとする『モンスターの完全なる駆逐』はあるか? この村の人の中で、団長に毛嫌いされている人はいるのか?」
 ローマ至上主義。
 その行きすぎとも思える徹底的な排他行為が、まさかこのノルマンでも垣間見るとは思っていなかった。
「いえ。毛嫌いされているヒトは特に。ですが、魔物はやはり受け入れがたいようで‥‥」
 チラとトール宅を見るソフィア・ファーリーフ(ea3972)。
 庭では、スマイルマスクで素顔を隠しているギュンター君らしき子供が、近所の子供と楽しそうに遊んでいる姿が見えた。
「まだ、世界は魔物との共存を受け入れてはいないのですか‥‥」
 寂しそうにそう呟くソフィア。
「まあ、そんなに考え込む程のものじゃないだろ? 楽しく生きていければいいんだよ!!」
 常に前向きなマリオーネ・カォ(ea4335)が、ソフィアの肩をポン、と叩いてからギュンター君の方に飛んでいく。
「つかぬ事をお尋ねします。もし、ギュンター君が何か起こした場合は、どのような命令を受けているのですか?」
 ユーウィン・アグライア(ea5603)が自警団の二人にそう問い掛けた。
「抹殺‥‥如何なる理由であれ、人に危害を与えた魔物を行かしておくわけには行かない‥‥って。まあ、その時は私達二人がギュンター君を捕まえて、団長に問答無用で殺される前に牢にぶちこみますけれどね。その方がまだ安全ですから」
 二人は、まだギュンター君を人として扱ってくれるようであるが、団長命令が発令されたときはどうしようもないのであろう。
 そのまま一行は、二人に別れを告げてトール宅へと向かっていった。

──トール宅
「ギュンター君、はじめまして。シフールの、マリオーネだよ。マリオ、ま・り・お。よろしくね☆」
 庭でギュンターに挨拶しているマリオーネ。
「ボグ、ギュンダー、マリオー、ヨロジグ」
 何とか挨拶するギュンター。
 やっぱり発音がおかしいが、オーガなので仕方の無い事であろう。
 流暢にゲルマン語など話されたら、冒険者酒場で落ち込む冒険者が後を立たないだろうし‥‥。
 ギュンターとマリオーネが話をしている所に、ようやく一行は到着。
「初めまして。私はミリランシェル・ガブリエルだよ。気軽にミリーって呼んでね」
 そっと手を差し出しながら、ミリランシェルがにっこりと微笑みながらそう話し掛けた。
「ミリー、ボグギュンタ、ヨロヂグ」
 差し出された手を握り、ギュンターも挨拶。
「ア、ルイスールイスー」
 てくてくとルイスの方に駆け寄っていくと、そのままルイスに飛び付くギュンター。
「こんにちは。元気でしたか?」
「ギュンタ。ゲンキ。ルイス、ゲンキ?」
「ええ。私は元気ですよ。それよりも、まだ皆さんとの挨拶が終っていないでしょう?」
 そのルイスの言葉に、ギュンターは他の仲間たちの元に駆け寄っていった。
 ルイスとは初めてではない。
 以前の依頼で、ルイスたちと共に過ごした時間が、ギュンターの心の中に残っているようである。
「こんにちはギュンター君。お姉さんはソフィアっていうの。宜しくね」
 優しく話し掛けるソフィア。
「ヴァ。ソフィア。ギュンター、アソブ」
 楽しそうに呟くギュンター。
「君がギュンター君か、初めまして。そうだなぁ、私のことはガブと呼んでもらおうかな」
 ガブリエルも挨拶を交わし、ギュンター君と握手を求める。
 其の手をしっかりと握りかえし、ギュンターは力一杯肯く。
「ガブ、ガブ、ヨロシク」
「こんにちは。あたしはユーウィン・アグライア。お歌を歌ったり、いろんな事をして遊ぼうね?」
 ユーウィンも楽しそうにギュンターに話し掛けた。
「ウーインモ、オウタウタウヒト。ギュンタ、サラサニウタオシエテモラタ」
 そう話すと、ギュンターは静かに歌を歌う。
 あちこちで音程が崩れているものの、本当に楽しそうに歌っていた。
 そして、家の方からトールが顔を出すと、一行に会釈をする。
(トール『ギュンターを、御願いします』のパントマイム)
 一行はそのままトールに挨拶を行う。
 ギュンターはこの前の冒険の時に使っていた道具を引っ張り出す為に、家の中に入っていった。
 そしてルイスはトールの元に歩いて行くと、静かに話を始めた。
 以前、ノルマン江戸村での道場破りの事件があったとき、ギュンターが手を貸していた事についての注意。
 それについてはギュンターやトールさえも騙されていた為、依頼を受けるときは細心の注意をすることにしているらしい。
 そしてもう一つ。
「今後の依頼にてギュンターさんの『同族』と遭遇した際にどうするのでしょうか」
 オーガであるギュンターは、同族と戦う事が出来るのか‥‥。
 トールには、まだ答えは出せなかった。
 いや、本当は出ているのかもしれない。
 事の重要さに、其の場ですぐの解答をルイス達は得られなかった。

 そしてギュンター君が登場。
 レザーアーマーにハンマー。
 そして背中にバックパック。
 胸許にはキラリと輝く怪しいバッチ。
 冒険者としての最低限の装備は整えている。
「それでは、ギュンター君は御預かりします」
 ルイスの言葉に、一行はさっそく旅に出た。


●道中〜愉しい一時〜
──街道〜遺跡
「オゥッオッゥナッポノックリノキー♪〜」
「うんうん。上手だね〜」
 道中、一行はギュンターに色々なことを教えてあげた。
 ユーウィンとマリオーネは歌をギュンターに教えていた。

「ギュンター君、こっちに来てテント張るのを手伝ってくれ。」
「ヴェイ!!」
 野営の準備の為、ちっちゃな手で、鉄のハンマーを叩くギュンター。
 そしてテントが完成した後は、夜ご飯の調達。
 ルイスとユーウィン、そして一休みしたギュンターの3名で狩りに出かける。
 ユーウィンに教えてもらった弓で、必死にちいさなウサギを追いかけるギュンター。
「そのまま、そうう。ゆっくりゆっくり‥‥」
 ルイスが獲物を探し出し、ユーウィンが技術サポート。そしてソフィアは常にギュンターに話掛けて、コミュニケーションを取っていた。
──ヒュウン
 矢は大きな弧を描いて茂みへ。
 そしてウサギもそのまま逃走。
「んー、おしかったねー。ほら、またあっちからも兎さんがでてきたよ!!」
 ソフィアが次の獲物を教える。
 そしてユーウィンが再度、弓の扱いのレクチャー。
──ヒュッ!!
 今度は足を掠めた。
 が、それでも十分上達してきた。
 今回の旅の間の食糧も調達し、一行はキャンプへと戻っていく。

 愉しい食事の一時。
 そして食後の勉強。
 ミリランシェルとマリオーネの二人で、ギュンター君とガブリエルの二人の生徒相手にゲルマン語の講習会が始まった。
「ありがとう!! 感謝の言葉ね。いい? ありかとう」
「アリガトゥ!!」
「ありがとう」
 ミリランシェルに続き、ギュンターとガブリエルもそう発音。
 もっともガブリエルは基本は出来ている為、難しい言い回しの時のみ参加だったが、ギュンター君が安心できるようにと最初から参加。
「わー。いい感じだよギュンター君」
 ソフィアがギュンターの頭を撫でつつ誉める。
 そして勉強も終り、野営の見張りを交代で行ないつつ、一行はゆっくりと疲れた身体を休めることにした。


●遺跡〜トラップと謎解きでしたか〜
──遺跡入り口
 二日後、一行は依頼のあった遺跡の入り口にやってきた。
 丘陵地帯の中ほどに在る、地下へと開いた竪穴。
 その奥には、石造りの床が見えていた。
 ルイスが依頼人である考古学者から聞いた話では、遺跡は古代の墳墓であり、かなりの宝物や歴史的価値の高い装飾品などが安置されている可能性があると告げられた。
 必要な作業はトラップの解除と守護者の駆逐の2点。
 遺跡近くにベースキャンプを作って待機している為、全ての作業が終わったら報告に来て欲しいとの事。
「さて、竪穴のほうは‥‥」
 まずは身軽なマリオーネが、静かに竪穴を降りていく。
 深さは2m、そこが地下通路の天井の高さ。
 通路床までの深さは4mといったところである。
 松明を借りてマリオーネが静かに降りていく。
「こっちを前に設定して‥‥後ろは行き止まり、前方に続いている回廊。丁度この上に入り口があったみたいだな‥‥」
 床に散乱している砕けた扉と土砂を確認し、そして周囲の安全を確認すると、マリオーネは皆に下に降りてくるように告げた。
 で、御待たせしました隊列です。

〜〜〜図解〜〜〜
・上が先頭になります
・遺跡内部での灯はギュンターとガブリエルが担当
 マッパーはソフィアが担当
 トラップ関係は専門家無し‥‥残念!!
 マリオーネは二列目上空

  ルイス  ギュンター ミリランシェル
   ソフィア 記録係 マリオーネ
   ユーウィン ガブリエル

〜ここまで
「いい、あまり変な所動かしちゃ駄目だよ?」
 ソフィアがギュンター君にそう話し掛けた。
「ヴェイ!!」
 松明に火を灯し、ギュンター君が元気に挨拶。
「さて、それでは行きましょうか」
 ミリランシェルの言葉に、一行は静かに道を行く。

 トラップ等の調査を行なえる専門家不在のダンジョン探索。
 途中でピット(落とし穴)やスローイングアロー(自動矢)など、幾つかのトラップとも遭遇したが、どれも致命傷には至らなかった。
 迷宮を徘徊していたのは『スカルウォリアー』のみ。
 それも前衛の3名による集中攻撃により撃破。
 ミリランシェル指導による、ギュンター君はじめてのスマッシュEXも発動。
 もっとも、何処からが技術で何処までが馬鹿力なのか、その線引きが難しい所であるが。
 
 一行を悩ませたのは、少しだけ迷宮化していた回廊。
 それでも、ソフィアのマッピングにより、迷宮全体の構造まで全て把握。
 最後の扉を突破するだけとなったのだが。

──最後の扉前
「‥‥駄目ですね。私には解析できません」
 ルイスが扉に刻まれている文字の解析を試みる。
 だが、複雑な古代魔法語の組み合わせにより、解析不能であった。
 刻まれている文字が古代魔法語というだけで、ミリランシェルはお手上げの模様。
「すいません、まだ私も勉強不足のようです‥‥」
 ソフィアもギブアップ。
 ちなみにマリオーネはちらっと見ただけですぐに諦めている。
「幾つかの国の言葉を学んではいるが、このような文字は無理だな」
「同じく。あたしも華国語なら多少はね。魔法文字っていうのは苦手かな」
 ガブリエル、ユーウィンも断念。
 そしてギュンター君は‥‥。
「ウガ!!」
 両手で巨大ハンマーを構え、いざ討ち入りの準備完了。
「ギュンター君、それは駄目」
「力ずくは駄目。めっ!!」
 ミリランシェルとソフィアに怒られるギュンター。
 と、ハンマーを降ろすと、頭を横に捻る。
「ウァイ?」
 どうして? という意思表示なのであろう。
「今回の仕事は遺跡の調査なの。ここは壊さないで調べないといけないの」
 真剣な眼差しでギュンターを諭すユーウィン。
「ウェ?」
 まだ、あちこち理解していない模様。
「つまり‥‥」
 ガブリエルが説明しようとした時、ソフィアがギュンターの頭を撫でながら、こう説明する。
「ここ、壊す、駄目。仕事、ここ、調べる。判った?」
「ヴェイ!!」
 あ、理解した模様。
「ソフィア‥‥どうやったらそんなに説明が簡単に出来る?」
 ガブリエルの問い掛けは、其の場の皆の問いでもある。
「単語を一つ一つ、オーガの判る範囲で組み立てただけです。マリオーネさんにオーガの生態を教えてもらいましたから」
 その通り。
 今回の依頼の為、マリオーネはオーガについて勉強してきた模様。
 その中で、オーガの生活まで踏込み、ギリギリではあるが少しずつ理解したらしい。
「それで、ここの文字はどうしますか?」
 最後の扉を突破しなければ、遺跡の安全が保障できない。
 だが、古代魔法語による完全な謎解きが待っていた為、ここより先は突破不可能。
 止むを得ず、ソフィアがその文字全てを羊皮紙に書き記し、一行はベースキャンプへと帰還していった。


●依頼完了〜おつかれさまでした〜
──ベースキャンプ
 書き記した文字の解析は、ベースキャンプにて待機していた考古学者により完了。
「最後の扉の奥ですけれど、何があるのでしょうか?」
 ソフィアが教授に問い掛けた。
「昔の貴族か何かの棺ですね。それと、一振りの剣が封印されています」
 剣の封印?
「教授、その剣ってどんなものです? 良かったら教えて頂けませんか?」
 剣の封印に興味を示すミリランシェル。
「貴族の愛用していた剣ですね。ただ、この文字の配列がかなり難解でして、『やどり木』か何かの加護がどうとか‥‥解析が完全でないので、なんともいえませんね」
 後日、研究員達で扉の解除を行ない、内部調査を行うことにしたらしい。
 とりあえず安全は保障されたという事で、一行は無事に一つの依頼を完了した。

──パリ郊外の村
 遺跡を後にした一行は、無事にギュンター君を家まで送り届けた。
 今度の依頼も無事に終了。
 ギュンター君も、少しだけ成長したのでしょう。
「ソレヂャ、マタアソブ。アリガド〜」
 皆に手を振るギュンター君。
 その元気な姿を見て、一行はパリへと戻っていった。
 ただ、村を出るときに見掛けた自警団団長の冷たい視線が、一行は脳裏に焼き付いてしまった‥‥。

〜To be continue