ギュンターくんと遊ぼう〜うちへかえろう〜

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 40 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月30日〜02月05日

リプレイ公開日:2005年02月06日

●オープニング

──事件の冒頭
「随分とお粗末だな・・・・アザートゥス自警団長」
 とある領主の執務室にて、自警団長であるアザートゥスが領主よりそう告げられている。
「御安心くださいヨグ様。あのオーガについては、たとえ冒険者達がどんな手を使ってでも始末してみせます。この地に魔物が住まうというだけで、生きた心地がしませんから・・・・」
 口許に笑みを浮かべつつ、アザートゥスが眼の前に座っている領主・ヨグにそう告げる。
 だが、領主は静かに立上がると、アザートゥスに向かって、手もとに合った書類の把を投げ付ける。

──バサッ!!

「オーガ風情の始末などどうでも良い。異端審問なり何なりを私の権限で行なえば、冒険者風情がどんなことをしても全て無効だ。それよりも私が腹を立てているのは貴様のやり方だ。トール氏殺害の調査、報告書を読む限りはどうしても貴様に落ち度があるのは事実。査察官の助けがなければ、あの場所で貴様は冒険者に切り捨てられていた筈だ・・・・違うか?」
 窓辺に立っている査察官の女性シフール『ニライ・カナイ』が、口許にニヤニヤと笑みを浮かべている。
 あの場を巧く纏めることが出来たのは、確かに査察官の助言があったからこそ。
 もしあのまま戦っていたら、流石の自警団長でも無事では済まなかったであろう。
「領主様。おっしゃる通りです・・・・」
 返す言葉もないアザートゥス。
「それに、今回の糞オーガの処分。査察官であるニライの助けを借りなければ出来ないとはな・・・・。貴様が神聖ローマ出身であり、デミヒューマン全てを嫌悪していようと、この私のすまう領地に置いては全て平等だ。オーガは又別格として扱うが、既にあの村の村人達からも嘆願書が届いているのも事実。これを見ても、まだ貴様は自分の感情だけでオーガを抹殺するというのか?」
 バシッと別の書類の把をアザートゥスに叩きつけると、領主が窓の外を向く。
「では、領主様はあのオーガに人権を認めるのですか?」
 恐る恐るアザートゥスが口を開く。
「オーガ如きには人権は認めない。これは絶対不変だ。但し、冒険者たちが集めている存命嘆願書については話は別。あれは『人権を与える為』のものではない、『生かして欲しい』というだけのものだ。私としても全て揃い、テストさえ合格すれば生かしてやっても構わないと思う」
 そう告げると、領主はアザートゥスに向き直る。
「貴様の調査不十分で招いた今回の一連の失態。それも含めて、糞オーガに受けさせるテストを貴様も受けてもらう。幸いなことに、貴様は村人達からの人望は厚い。嘆願書は必要なしとしておくが、テストは受けてもらう。既に冒険者ギルドには、私の使いが到着している。見届け人として査察官のニライ、それにギルドには記録係を付けさせるように話を通しておく。せいぜい頑張るのだな・・・・」

──冒険者ギルド
「つまり、村から伸びている旧街道に出没するオーガの駆逐ですね?」
 薄幸の受付嬢が、領主の使いである執事にそう問い掛けている。
「ええ。ここ数日、あの街道に流れのオーガが住み着いてしまい、いくつもの商人が襲われているのです。オーガの中には賢い者も存在し、1度追い払った程度ではまた戻ってくる事も考えられます。駆逐というより『殲滅』でお願いします」
 ふんふんと依頼書を作っていく受付嬢。
「うちの冒険者はベテラン揃いですよ。オーガの殲滅なんて楽勝モードですね。あと何か捕捉はございますか?」
「ええ。今回のこの依頼、依頼主からは二人の人員を派遣します。この二人を中心としてオーガの殲滅をお願いします。一人は私共の領地にある村において自警団長を務めるアザートゥス、そしてもう一人はギュンター成るオーガです」
 その名前が出た瞬間、受付嬢は絶句する。
「参加の際には、存命嘆願書を持ってきて頂くようお願いします。先程酒場を覗いてきましたら、それなりに署名は集っているように見受けられますが、こちらで審査した結果、200名に満たない場合は其の場で直にギュンターなるオーガの首は跳ねますので・・・・では」
 そう告げると、執事は静かにギルドを後にした。


──捕捉
 依頼場所:ノルマン郊外よりさらに奥。旧街道を片道2日のオーガキャンプ
 調査期間:現地2日
 必要経費:自分持ち、宿泊施設なし(自費)
 食糧  :自費
 その他 :ギュンター君の会話能力『ゲルマン語:不思議な部分は理解』
      アザートゥスも強制同行、強さはベテラン冒険者クラス
      ギュンター君の為に『他の地域』へと単独移動して行動する場合、報酬にペナルティ加算

●今回の参加者

 ea1782 ミリランシェル・ガブリエル(30歳・♀・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3972 ソフィア・ファーリーフ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4335 マリオーネ・カォ(29歳・♂・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 ea4677 ガブリエル・アシュロック(38歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5603 ユーウィン・アグライア(36歳・♀・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea6561 リョウ・アスカ(32歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●時間がない!!
「神よ、決着は『人』の手でつけます。どうか手を・・・・お貸しにならないでください」
 天を扇ぎ、そう呟くのはミリランシェル・ガブリエル(ea1782)。
 依頼出発当日。
 自警団長アザートゥスと査察官ニライの待つ村へと向かう準備を終えた一行は、プロスト領へと出向くユーウィンに別れを告げて出発した。
 小雨の降る中、一行は村へとたどり着く。
 そして自警団詰め所へと向かうと、正装して待っていたニライ・カナイとアザートゥス、そして手に鎖を付けられているギュンター君に対面する。
「ギュンター君!!」
 その姿を見立て、薊鬼十郎(ea4004)はギュンターの元へと駆け寄ると、その顔をそっと撫でる。
「うぁ、きじゅろ。こにちは」
 ニコニコと笑っているギュンター君。
「もう大丈夫だからね。恐かったでしょ?」
「にゃるらやさしい。ごはんつくってくれた」
 ニコニコとそう告げるギュンター。
「約束通りに嘆願書は持ってきました。ですからギュンター君の鎖を外してください!!」
 ソフィア・ファーリーフ(ea3972)がアザートゥスにそう告げる。
「ああ。約束は約束だからな・・・・」
 そう呟くものの、鍵を管理しているのはニライである。静かにギュンターの元に近付くと、ニライはその手にはめられている枷を取り外す。
「にらい、ありがど」
「ここからが正念場ですから。では、嘆願書を提出してください。私が直接チェックさせて頂きます。それまでの間、アザートゥスは出発の準備を、冒険者の皆さんはギュンターの装備や、これからの説明をお願いします・・・・」
 そう告げて、ニライは静かに嘆願書を見つめる。
「これ、つかってね・・・・寒くなかった?」
 ミドルシールドと防寒着をギュンターに渡し、鬼十郎がそう問い掛ける。
「だいぢょぶ。たて、ぎゅんたーつかう・・・・きじゅろ、どうしたの?」
 そう鬼十郎に問い掛けるギュンター。
「え? どうして?」
「だって・・・・きじゅろ、ないてる・・・・だれなかした?」
 慌てて頬を伝っている涙を拭う鬼十郎。
「大丈夫だよ。それよりもテスト、頑張らないとね?」
「てすと?」
「ああ。ギュンター君は人殺した・・・・それ償うには悪いオーガを倒すだけ。出来なければギュンター君が殺させる・・・・」
 そうミリランシェルが説明するが、ギュンターは頭を捻る。
「だいじょぶ。ぎゅんた、ひところしてない」
 ニコリと笑うギュンター。
「ギュンター。トールさんの宝石を盗んだ人たちから宝石を取返しただろ? あの時の戦いで、二人は死んだんだ。だから、ギュンターはそれを償う為に、悪いオーガを殺さないといけないんだ」
「つぐなうのにたおす? だいじょぶ。はなしする」
 ギュンター君は本質を理解していない。
 いつものような無邪気な声で、そう告げている。

「査察官。こっちの嘆願書は駄目なのか?」
 ニライの横でチェックを見守っているのはマリオーネ・カォ(ea4335)とリョウ・アスカ(ea6561)。
 横に分けられた書類を指差しつつ、マリオーネがそう問い掛けた。
「パリの冒険者ではないですからねぇ・・・・」
「でも、実力はある筈。最低条件である掛けだし以上ではある筈だ」
「英国の嘆願書を見てくれよ。パリでも名の知れ渡った冒険者だ。最近は色々と移動してるようだけど、彼女位の冒険者が動いたって事は評価して欲しい。そして、その彼女に・・・・ギュンター君の命の為に賛同してくれた冒険者がこれだけいるという事を」
 熱弁を振るうマリオーネ。
「確かに・・・・私の知る名前もありますねぇ。ドレスタットは同じノルマンとして・・・・まあ、冒険者は一つ所に定住しないのが世の常ですからねぇ・・・・」
 有効票の方に無効票を移しなおすニライ。
「査察官殿も話が判るじゃないか」
「それはまあ。王宮からの派遣でやってきていますからねぇ・・・・理に叶ってさええすればねぇ・・・・」
 その言葉に、リョウが問いなおす。
「王宮って・・・・貴方はここの領主に雇われているのではないのですか?」
「違いますねぇ。私達は王宮付査察官でして。国内の領地を回っては、無事に納められているか調べていましてねぇ・・・・と、チェック完了ですね」
 ドサッと書類を纏め上げると、それをバックにしまい込むニライ。
「これは証拠として王宮に持っていきます。署名の有効票は全て集まっていますので、早速テストを始めましょう」
 そして一行は出発した。

「よいオーガは、悪いオーガ倒す
 ギュンター君、悪いオーガ倒す
 ギュンター君、よいオーガ」
 道中、ソフィア・ファーリーフ(ea3972)がギュンターにそう話し掛けていた。
「ぎゅんたー、よいおーが?」
「そう。ギュンター君は良いオーガ」
 優しく諭すように説明するソフィア。
「ギュンター君、私達仲間。アザートゥスさんも、仲間。ギュンター君は戦えるって、信じる」
「あざとす、なかま? ぎゅんたいじめるのに?」
「そう。意地悪しても、仲間なんだよ・・・・だから、がんばってね」
「うぁ!!」
 そのままトコトコと歩いていくギュンター。
 と、マリオーネはその近くにやってくると、歩きながらギュンターにあることを耳打ちしていた。


●プロスト卿〜流石好事家〜
──プロスト領
 パリを出発して馬で2日。
 なんとか急いで話を付けたいユーウィン・アグライア(ea5603)は、ガブリエルとルイスの署名の入った手紙を領主であるレナード・プロストに差し出した。
 そしてそれを受け取ると、プロスト卿は静かに目を通し始める。
「彼は貴方の求める『珍しい動物』では無く・・・何処にでもいるただの子供、私の大切な友人で、護ると誓った我が子の様なものです。どうか、どうか力を貸してください」
 テーブルに伏してそう告げるユーウィン。
「さて。困りましたねぇ。いくら知人であるガブリエル卿とルイス卿の署名も入っているはいえ・・・・オーガを私の元で保護というのは・・・・」
 そう告げると、プロスト卿は執事に告げて、馬車の準備をさせる。
「どうしても駄目でしょうか?」
「私も国から預かっているこの地を円滑に治める必要があるのです。去年の暮れにも、査察官殿が査察を行なっていったばかりです。領民に害のあるものならば、私は受け入れる事は出来ません。ですが・・・・」
 ゴクッと域を飲むユーウィン。
「私の使っている男に『松五郎』なる動物の世話役がいます。確か彼の所は人手不足でしたしねぇ・・・・木の葉を隠すのは森の中という所ですか? ギュンターの話はパリの息子からも聞いています。多少ではありますがお力をお貸ししましょう。ヨグ卿とも旧知の中ですので」
 そして、ユーウィンとプロスト卿は馬車にて合流すべく領地を後にした。
 

●試験〜流石は団長〜
──現場
 眼の前に広がっているのは大量の死体。
 試験を受けているアザートゥスとそのサポートに入ったガブリエル・アシュロック(ea4677)は、オーガの集落に切りかかっていった。
 別の方角からはリョウとミリランシェル、そして鬼十郎が切り込む。
 後方に逃げるオーガに対してはルイス・マリスカル(ea3063)があらかじめ回りこみ、退路を完全に閉ざしている。
 上空ではマリオーネが偵察し、敵の動きを逐一報告。
「うぁ!! みんなやめて・・・・はなせばわかる!! きじゅろ。みりー。がぶ、りょー。やめてー」
 後方で泣きながらそう叫ぶギュンターと、その彼を必死に押さえるソフィア。
「ごめんね・・・・ごめんねギュンター君。つらいよね・・・・仲間だものね・・・・でも・・・・」
 ギュンターをギュッと抱しめる。
「うぇっうぇっ。はなしするわかる・・・・うぇっうぇっ・・・・」
 その泣き声も、やがて収まってくる。
 戦闘が終ったからである。
 血まみれの身体を拭いつつ、ギュンターの元に戻っていく一行。
「さあ、査察官どの。約束通り糞オーガの処刑といこう!!」
 アザトゥスがそう告げて剣を構え、素早く、泣きやんでボーッとしているギュンターに向かって斬りかかった!!
──ガギィィィィン
 その一撃を素早くリョウが受止めると、そのままアザートゥスに向かって切りかかる!!
「決断を下すのは貴方ではない・・・・」
 その一撃を素早く交わすと、アザートゥスとリョウが相対峙する形と成る。
「見たか査察官!! こいつらはオーガを庇う気だ!!」
 と、その叫びに呼応して、冒険者一行もアートゥスに向かって抜刀するが、ニライ査察官がそれを制する。
「・・・・テストは終了です。無事に辛い現実を見続けることが出来ましたね・・・・二人とも合格としておきましょう」
 その言葉に納得の行かないのはアザートゥス。
「ちょっとまて査察官!! そのオーガは戦っていない!! なにもしていないんだぞ?」
「ですが、この場には留まっています。殲滅作戦の中にはね。彼の為に冒険者が戦った・・・・この作戦の中心には、確かにギュンターは存在していたのですよ。今回の依頼、表に公示されているものが全てではないのですから・・・・全ての権限は私に移っています。この私の裁定に何か不服でも? 直接手を下せという話では無かったはずですが?」
「喰わせやがったな!!」
 顔中を紅潮させて、そう叫ぶアザートゥス。
 だが、相手が悪すぎる。王国に仕えている査察官には手を出すわけには行かない。
 そう断念すると、アザートゥスも素直に武器をめた。
 ルイスは静かにギュンターに近付く。そしてその両肩にそっと手をおくと、静かに口を開いた。 

「人を傷つけるもの、倒す。
 人を傷つけたのにも、わけがあると思う。
 けど、人を守るために倒す。
 それが、冒険者の仕事。」

「うぇっ・・・・うぇっ・・・・るいすーーー・・・・」 
 その言葉に、さらにギュンターは涙を流す。
「ぎゅんたー、かえる・・・・むらにかえる・・・・」
 そして涙を拭い、ギュンターは皆と共に村へと戻っていった。

──そして
「一つ聞いてもいいだろうか?」
 帰り道、ガブリエルはニライ査察官にそう問い掛けた。
「構いませんが?」
「今回の件、全ては貴方の独断で行われているようだが・・・・何か裏が有るのではないか?」
 なにもせず、ただ泣いていただけのギュンター。
 本来ならば、処刑されていて仕方の無い状況であったにも関らず、ニライは冒険者有利の解釈で判決を下した。
「私もそれについては気になっていたわ。まあ、ギュンター君が無事だったので別にいいけれどね・・・・」
 ミリランシェルもそう告げると、前方をしょんぼりと歩いているギュンターの方を見る。
「全ての事を考慮して。貴方たち冒険者が『依頼であるオーガの殲滅』を無事に果たしてくれたから別に構わないのですよ。もし貴方たちが今回の依頼で敵オーガをそっちのけでギュンターを助けてと懇願してきたら、私が切り捨てています」
 冷たくそう言い放つニライ。
「つまり、敵オーガを駆逐できたからという事?」
 リョウがさらに問い掛ける。
「それもあります。ですが本質は違いますね。今回の件、私達には『危険思想を持つ冒険者の選別』でもありました・・・・」 
 そのニライの言葉に、一行は血の気が引いていく。
「例の嘆願書はギルドに預けようと思っていたらしいけれど・・・・駄目?」
 マリオーネがそう告げるが、ニライは頭を縦に振る。
「まあ、他にも色々とありましてねぇ。今回の依頼ですが、最悪、貴方たちのように実力のある冒険者をいきなり失ってしまうことになります。つまりは国益ではない。私は常に国益となりえるかどうかを考えていますから」
「つまりギュンター君を殺すことは国益ではないと?」
 ルイスの問いにも、ニライは頭を縦に振る。
「正確には『損失の方が大きい』です。彼の存在は不安定すぎますから。もっとも、これからの貴方たちの行動しだいではねぇ・・・・」
 目を細めてそう告げるニライ。
 それ以上の会話は無かった。


●帰る場所もない〜トールのいない家〜
──村
 村に戻った一行はアザートゥスと別れ、静かにトール氏の家へと向かっている。
「とーるー。ぎゅんたーもどった!! とーるー」
 そうつぶやきながら駆け足で走っていくギュンター。
「ぎ、ギュンター君・・・・トールさんはもう・・・・死んじゃっていないのよ・・・・」
 辛い気持ちをぐっと堪え、ソフィアがそう告げる。
 だが。
「だいじょぶ。にんげん、しんでもうごく。だから、とーるもうごく!!」
 にぃっとルイスの方に笑みを浮かべ、ギュンターは走り出した。
「どういう事ですか?」
 リョウがそう問い掛けたとき、ルイスはふとあること思い出し、そして後悔した・・・・。
「そういう事ですか・・・・」
 初めてギュンターと冒険に行った時。
 ギュンターは死体が動いているのに驚いていた。
 まさか、それからずっと『人間は死んでも動く』と思い込んでいるとは思わなかったのである。

──ガチャッ
 家の扉を開き、中に入るギュンター。
「とーる? とーるーー。ぎゅんたーもどった。ごはんーー」
 キョロキョロと室内を見渡すギュンター君。
 そのギュンターをそっと抱しめると、鬼十郎は静かに呟いた。
「トールさんは死んじゃったの、もうお墓の中なんだよ・・・・」
 その言葉に、ギュンターの頬からは静かに涙が流れた。

 今、トールがもういないことに、初めて気が付いたのである。

「とーるー。うぇ・・・・うえぇぇぇぇぇん・・・・うえぇぇぇぇぇぇぇん」
 静かにギュンター君の泣き声が響く。
 それは、皆の心の中にも響いていた。


●翌日〜さようならギュンター〜
──村
 翌朝、ユーウィンとプロスト卿が村にたどり着いた。
 そしてギュンター君は、冒険者道具一式に大切な宝物を詰めると、皆に挨拶をしてプロスト領へと旅立っていった。

「ぎゅんたー。もっとつくよくなる。また・・・・いつかみんなとあそぶ!! それまでばいばい!!」
 これが、ギュンター君との別れだった。



 後日、パリの冒険者酒場に二通の手紙がシフール便で着きました。
 一つはプロスト卿から。
 松五郎さんの元で手伝いをしていたギュンター君ですが、どうやら『ふらりと冒険』に出てしまったらしく、ある日、大切な荷物ごといなくなっていたのです。
 
 そしてもう一つは吟遊詩人のエモン・プジョーから。
 ノルマン南方に向かい、楽しそうにお歌を歌って歩いているギュンター君を見かけたそうです。
 このノルマンの空の下。
 どこまでも続く冒険の旅で、いつかまた、大切な仲間たちとの出会いを愉しみにしながら・・・・。
 その日の為に、皆さんももっと・・・・


〜To be continue いつか空の下で・・・・

●ピンナップ

薊 鬼十郎(ea4004


PCパーティピンナップ
Illusted by はがわ