●リプレイ本文
●直訴〜というか交渉〜
──ニライ宅
出発前。
無天焔威(ea0073)とリスター・ストーム(ea6536)の二人は、ニライ査察官との交渉の為に、彼女の自宅を訪れていた。
まずは焔威が、応接間からニライの執務室に入っていった。
「ブランシュ達の事で相談したいことがあるんだ‥‥」
そう話を切り出したのは焔威。
「盗みだされた遺体のことですね?」
「ああ。そこで提案‥‥サン・ドニのを囮にして探り入れられない? 俺も遺体を取り戻したいし、査察官も大聖堂から遺体奪い何か企む連中放置できない、利害一致?」
にぃっと笑いつつそう告げる焔威。
「ふぅ。そういう絡め手できますか‥‥」
やれやれという表情で告げるニライ。
「確かに、死体を盗みだすなんて、真面な精神を持っているものの行いではありませんね‥‥。生贄に使える訳でもなく、かといって、確実に甦生が為されるとも思えない‥‥このノルマンでも、死者の甦生を確実に行える高位のクレリックなど限られています。シャルトル・ノートルダム大聖堂の大司教でさえ、確実といえるかどうか‥‥。それなのに盗みだす‥‥」
ふと、ニライは何かに気が付いた。
「死体として、そのまま使う‥‥アンデット化? いや、メリットはないですね‥‥」
そう告げたとき、焔威がさらに話を続ける。
「‥‥復活は『報告がなされてない』の理屈ならミスミ妹復活は問題ない? で、署名に問題なら試練を与えるのは?」
是が非でも、双子のアルジャーン、そしてブランシュの遺体を甦生したいらしい焔威。
「試練ですか?」
「ええ。姉達の減罪のため妹に教会とかから試練を与えるっていうのは? 冒険者数名手伝い可で、但し無報酬」
「以前、ギュンターの罪を減免するときのようにですね?」
キラーンとニライの瞳が輝く。
「妹が問題起こしたら保護者の俺が腹を切る。これなら貴族でもそう実行できないし、低額で仕事やってもらいラッキーとか」
パンと手を叩く焔威。
「‥‥ブランシュの遺体を囮として使い、犯人を捉えることには異存はありません。ですが。二人が甦生された場合のメリットは? 特にブランシュは甦生は無理でしょう。彼女の手によって流された血は少なくありません。ミスミもまた然り。犯罪者の甦生など、神はそれを許すとは思いませんが‥‥」
そう告げられると、焔威は言葉を失う。
ニライが感情で動く筈が無いことは焔威も十分理解していた。
そして国益を第一に考えて行動するというのも。
「犯人探しについては、後日こちらでも手を考えてみましょう。甦生については、もう少し説得力のある部分を見せてください‥‥」
そう告げると、焔威は静かに席を立つ。
そして入れ代わりにリスターが室内に入ってきた。今度はリスターとの話がはじまる。
「査察官。実は頼みがあるんだ‥‥」
そう告げると、リスターは今回の拘束対象貴族の中に、リスターに協力的であった未亡人貴族『マダム・ロランス』の名前が入っていた為、彼女の罪を軽く出来ないか相談にやってきていたのである。
「彼女はこちらに必要な情報を色々と流してくれた。もしかしたら俺の正体についても薄々気付いてながら‥‥貴女からすれば愛で盲目になっている馬鹿な女と笑うかも知れないが‥‥せめて他の貴族達とは違う寛容な対応をお願いできないだろうか?」
そう説得にはいるリスター。
「ですが、貴族としての執務を惰り、趣味の為に怠惰な生活を行なっていたのは事実。彼女を始めとする貴族達はすべて、『神明裁判』を受けて頂くことになっていますので」
カラッと明るくそう告げるニライ査察官。
貴族としての称号剥奪、領地より放逐は真逃れず。
最悪、処刑すらありえてしまう。
「地下遺跡の事やアサシンガールの社会復帰等まだまだ事後処理が山積みだろ? 彼女がこちら側についてくれれば一挙に解決の糸口が見えそうだが‥‥。それに今回の作戦で一躍買った酒場マスカレードの一員も元銀鷹関係者だろ? 彼女は俺の愛の力で更正させるから‥‥なっ、なっ!」
「シスターとリチャードですか。私はその二人については関与していませんし。事後処理ねぇ‥‥」
そう告げると、ニライは静かに窓の外を見つめる。
「アサシンガールの受入れ口を探してみませんか?」
ふと、ニライがそうリスターに提案した。
「受入れ口?」
「ええ。セーヌダンファンから保護したアサシンガールのうち、犯罪にはまだ手を染めていない子供達が10人程います。実働班として動いていた子供達についてはすでに処分は終了していますが、その子供達はどこかに集めて監視しておく必要があります。いずれは普通の女性として生活できるでしょうけれど‥‥今はまだ無理。それに、王国としても、いつまでも彼女達の為に余計な予算を組むことはしたくない。かといって、ポイッと放り出すのも、彼女達が犯罪に走る原因の一つとなってしまいます。実際、実働班として動いていた子供達と、戦闘能力は大差ないという‥‥手練れの騎士でなくては、あの子達を押さえこめないのですから、犯罪集団になった日には‥‥ねぇ‥‥」
そう告げると、リスターにニコリと笑みを浮かべる。
「出来るだけ早く、彼女達の身を受け入れてくれる場所を探してください。ちなみに『冒険者が自宅で』というのは無しですよ‥‥」
その話を聞いて、リスターは静かに其の場を後にした。
●最終決戦というか〜これで大方?〜
──シャルトル・ノートルダム大聖堂
「ふぅむ‥‥確かにいい資質を持っているかも知れぬ‥‥」
大聖堂の中庭でそう呟いているのは、ワルプルギスの剣士マスター・オズ。
「私も、この者の心の奥に眠っている力には何かを感じます‥‥いかがでしょう、マスター・オズ」
同じく引退した剣士メイス・ウィングがオズに対してそう告げる。
シン・ウィンドフェザー(ea1819)は、ワルプルギスの剣士となるべく、マスター・オズの元に弟子入りにやってきていた。
「‥‥あの時‥‥オーラをまともに使えないくせに、紋章剣さえあれば何とかなると思ったのは俺の浅知恵だった。だが、『旋風』に誓った決意に嘘は無い。どうか、一から鍛え直してもらえないだろうか」
そう告げるシン。
「ふぅむ。よりによって『旋風』とは。メイス、お主はそれを知って、其の場にいたのか?」
そう渋い表情で問い掛けるオズ。
「はい」
静かに告げるメイスに、やれやれといった表情を見せるオズ。
「『旋風』には何かあるのか?」
「魔法武具としては、どのオーラセイバーも同じ力を発揮する。オーラの理を学ぶことができるなら、さらに高みを目指す事も可能。じゃが、『旋風』と『業火』は癖が強いのじゃよ‥‥」
そう告げると、オズはメイスから『旋風』を受け取ると、静かにオーラセイバーを発動させる。
──ブゥゥゥゥン
シンの時よりも激しい。
メイスの時よりも、力強い。
だが、そのオーラの刀身は安定しない。
オズは静かに意識を集中することで、その刀身を安定させていた。
──シュンッ
「他の剣よりもコントロールするにはかなりの精神を必要としておる‥‥それでも、修行を行うか?」
その問いに、シンは静かに肯いた。
「では、後日、改めて『修行』に訪れるとよい‥‥。私は、まもなく『剣士の居留地』に戻るから、そこを訪ねてきなさい。それでは『オーラと共にあらんことを』」
そう告げると、オズは静かに其の場を立ち去った。
「ありがとうございます‥‥オーラと共にあらんことを」
そしてシンは、仲間と合流、目的地であるマクシミリアン自治区へと向かっていった。
●下準備〜すでに潜入作戦開始〜
──地下闘技場
一般客のいない会場。
それでも戦いは続いている。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
目の前には、血まみれになって崩れ落ちているオーグラの死体。
そして駆けつけたクレリックに怪我の手当を施してもらいつつ、ファットマン・グレート(ea3587)は眼の前に歩いてきたパトロンのカミュオン卿にニィッと笑みを浮かべる。
かなり派手な戦い。
仲間たちが騎士団を内部に引きいれる為の時間を稼ぐ。
それがファットマンの仕事である。
「オーグラ程度は、貴方の相手も勤まりませんか‥‥わざと時間を掛けて戦いを楽しんでいましたね?」
そう告げるカミュオン卿に、ファットマンは静かに頭を下げる。
「ああ‥‥」
「確かに、貴方がトーナメントで戦った相手、アサシンガールはオーグラ程度は『無傷』で倒せるぐらいですからねぇ‥‥それでも、次のトーナメントまではコンディションを整えておく必要もありますか‥‥、さて、そろそろ会議が始まりますよ‥‥護衛の方をお願いしますね」
会議。
今回の集まりは、ここ最近になって襲撃を受けているシルバーホークの関連施設と、本拠地を襲った騎士団などについての対策会議である。
そのまま会場をあとにして、ファットマンはカミュオン卿とVIPルーム、サロンへと向かった。
──その頃、裏口モンスター搬入経路
ドサッ‥‥
二人の護衛が言葉もなく倒れていく。
その側には、レイピアを腰に戻しつつ、地下闘技場の地図を確認しているレイル・ステディア(ea4757)の姿があった。
「全員集ってくれ。ここから先、このポイントにトラップが仕掛けてある。普段は使わない、対侵入者用のトラップだ。填まったら、そのまま地下の遺跡エリアまでまっさかさまに落ちることになるから、今のうちに地図を頭のなかに叩き込んでおいてくれ」
そう告げると、レイルも今一度『リスターの作った地図』を頭の中に叩き込んだ。
そして全員が、各自の配置ポイントに付くと、そのまま時を待った。
──その頃の、とあるVIP席
「さて。ここまで大きな事になっているとは、私自身も思ってはいませんでしたよ‥‥」
そう告げつつ椅子に座って静かにワインをたしなんでいるのは『ヴォルフ卿』。
今回の会議には彼自身も『ヴォルフ領領主』としてやってきたようである。
側には護衛の『フリーデル』と『ギルベルト』、『セグメト(アハメス・パミ(ea3641))』、そして響清十郎(ea4169)の4名が待機していた。
(まさか‥‥ヴォルフ卿までやってくるとは‥‥)
アハメスにとってはうれしい誤算。
だが、ここでヴォルフ卿も捕らえていいものなのか?
ここでの動きが、今後の彼女達の立場を大きく変える。
そしてそれは清十郎もである。
護衛としてヴォルフ卿の元にいる以上、巧く立ち回らなくてはならない。
「さて‥‥そろそろ時間ですね」
そう告げると、ヴォルフ卿は静かに立上がる。
そして側近達を側に、堂々とVIP席に入っていったのである。
●襲撃〜一部予定外〜
──地下闘技場VIP席
(‥‥おいおい。アハメス、話が違うだろう‥‥)
そう心の中で呟きつつ、リスターはVIP席に入っていくアハメスの姿を確認。
すでに先発隊は潜入を終えている。
入り口からは焔威とシンの二人が突入し、入り口の警備員も二人+騎士団によって壊滅状態になっている。
「昔と比べて、俺たち強くなっていないか?」
「そんな感じだな。ここの護衛には勝てないと思ったんだが‥‥」
そんな会話を続けつつ、二人は騎士団を連れて潜入した模様。
「さて、お集まりのみなさんにはすでに報告がなされているかと思われます‥‥」
そう口を開いたのは、マクシミリアン卿。
「現在、ノルマン王国のあちこちで、騎士団が暗躍してる節があります。今回は、その件についての対策と、今までの報告について、みなさんと話し合おうと思いまして‥‥」
そう告げたとき、突然ヴォルフ卿が静かに席を立つ。
「?」
「どうなされましたヴォルフ卿?」
そう問い掛けるカミュオン卿に、ヴォルフ卿は静かに口を開く。
「いや、領地での執務を一つ思い出して。急ぎで片付けないと不味いので、この場は皆さんにお任せします。後日、どのような話しになったかを書面にて報告してください‥‥それでは‥‥」
そう告げると、ヴォルフ卿は静かにサロンを跡にする。
──バタン
「さようなら、愚かなる貴族の諸君‥‥さて、フリーデル、ギルベルト、しっかりと護衛を頼む。響、セクメト。すみませんが、水先案内を頼みますよ‥‥」
その言葉の真意をギルベルトとフリーデルはまだ理解しない。
だが、清十郎とアハメスは、すぐに理解した。
(この場も危険と判断して切り捨てましたか‥‥)
(危険回避能力が高いですね。一筋縄ではいかないのですね)
そう考えている二人。
──ガタガタッ
と、正面から走ってくる騎士団が4名。
「この地下闘技場は完全に包囲されている速やかに降伏するならよし、さもなくば実力行使で」
剣を引抜き、そう叫ぶ軽装騎士。
「やれやれですね。では、お仕事といきましょうか?」
そうアハメスと響に話し掛けるヴォルフ卿。
(‥‥ここは‥‥どうする?)
そう考えていたのも束の間。
「ここは俺たちが引き受ける。お前たちは奥のサロンに向かえっ!!」
シンがそう叫びつつ、ヴォルフ卿の元に向かい走る!!
──ガギィィィィィィン
その手前、素早く日本刀を引き抜いたアハメスが、シンの一撃をギリギリで受止める。
「ヴォルフ卿の護衛かっ。邪魔をするなぁぁぁぁ(と、こんな感じか?)」
演技とばれないようにそう叫ぶシン。
「ここから先は、貴方たちの好きにはさせません‥‥(って、少しは加減してほいしですわ)」
双方互角の剣技。
さらに、奥からは焔威も走ってくる。
「ここから先は、一歩も」
──ブゥゥゥゥン
アハメスのように止めに入る清十郎。
焔威に向かってソニックブーム&スマッシュの大技を叩き込む。
だが、焔威は静かに日本刀構えると、飛んでくる衝撃波に向かってその刃を叩き込んだ!!
──バジッィィィィィ
「ソニックブームを相殺したのですかっ!!」
そう叫びつつ清十郎に向かう焔威。
「そんな事はできるかっ!! 受け流しただけだ、下段から上段に‥‥軌跡が判って居る攻撃の受け流しなど、容易いんですよっ!!」
そのまま焔威と清十郎の激しい剣戟が始まる。
「ここは私達にまかせて、二人はヴォルフ卿をお願いします!!」
セクメトの言葉に、フリーデルとギルベルトの二人はそのままヴォルフ卿を伴って地下闘技場から脱出。
そして二人の姿が見えなくなると、焔威とシンはサロンに向かってダッシュ!!
それを追いかける形で、清十郎とアハメスもサロンに突入した。
●正念場〜ここてあったが一蓮托生〜
──サロン
「くらえっ。『爆炎の魔術師レイ』必殺のマ・グ・ナ・ブロォォォォォォォォォォォォッ」
──ドゴォォォォン
いきなり入り口の護衛を高速詠唱+バーニングトラップで火だるまにするレイ・コルレオーネ(ea4442)。
マグナブローのように見えるのは、その魔法の特性。高速詠唱を併用したファイアートラップは、敵の足元少しの位置に発動させれば、相手が少しでも動いただけでマグナブローのように炎が巻きあがる。
あとは口八丁手八丁のはったり勝負。
「シルバーホークの幹部達よ! 貴様等の悪事は全てお見通しだ!大人しくお縄を頂戴しろ〜!」
サロンに突入したレイが叫ぶ。
そしてその両脇から、騎士団が一気に突入開始、次々と其の場に居合わせた貴族達を捕縛していった。
「ファットマン、ここはひとまず‥‥」
横で武器を構えようとしたカミュオン卿が叫ぶ。
だが、彼の横では、ファットマンが頭を左右に振る。
「カミュオン卿、シルバーホークに加担するのはアンタにとってマイナスだ。俺は『アンタに損はさせない』、これ以上‥‥」
その言葉で、カミュオン卿も全て理解した。
「そうか。ファットマン、全てはこの日の為の計画だったのか‥‥私に近づいたのも‥‥」
そう告げるが、カミュオン卿の表情ははればれしている。
「一つ聞かせて欲しい。ファットマンにとって私は、『操りやすい手駒』の一つでしかなかったのか?」
「それはない。この地下闘技場で色々と貴方と付き合ってきた。それは『依頼』としてではない。真に闘士として、ここの空気が‥‥そしてカミュオン卿、貴方の人柄に引かれていたのも事実だ‥‥」
そう告げたとき、カミュオン卿の両手にも木製の枷がはめられる。
「そうだなぁ‥‥またいつか、二人で静かに酒を交わしたいものだよ‥‥」
そしてカミュオン卿は連行される。
その後ろ姿を見送りつつ、ファットマンは静かに一礼した‥‥。
●待機していたら大物が〜裏口攻防戦〜
──地下闘技場裏
ガギガキガギカギガギカギィィィィン
そこはすでに乱戦模様。
騎士団の突入で混乱した者たちが、裏口から逃走を開始したのである。
だが、そこにはレイル率いる騎士団が待機し、次々と関係者達を追い詰めていっていた。
「‥‥ふぅ。流石は冒険者。実戦さながらのいい動きだな‥‥」
そう告げているのはヴォルフ卿。
護衛の二人は騎士団と戦闘状態。
そのため、ヴォルフ卿は単独で逃げようとしていたが、レイルがそこに回りこむと、武器を引き抜いて戦闘開始。
「ヴォルフ卿。貴様の悪行もここまでだっ。領内で起こっている様々な事件、シルバーホークに関係している貴族として、貴様にはパリで処罰を受けて貰うっ!!」
──ガキガガキィィィィン
激しく撃ち鳴る剣戟の響き。
だが、それを制したのは、ヴォルフ卿であった。
──ガギィィィィン
レイルの剣が打ち飛ばされる。
そしてそのままヴォルフ卿は、レイルに向かってロングソードを向ける。
「ここで私が領地に戻らなかった場合‥‥領民の命は保障しませんが?」
「なんだとっ!!」
「予め、私が他の地域に出向く場合。私から一定期間の連絡が無い場合、『領内に全ての魔獣兵団を放て』と残った者たちには連絡をしてあります。私一人を捕らえる為に、ヴォルフ領の全ての領民の命を引き換えると?」
つとめて冷静に告げるヴォルフ卿。
「だが、パリにはブランシュ騎士団を始めとする精鋭達がいる。貴様のそんな企みなど‥‥」
「パリから私の領地までは2日半。ヴォルフ領中央の民全てを抹殺するには1日も必要としませんが? 下手な動きはしない方がが賢明です。シルバーホーク卿の元では、ジェラールと並んで様々な戦術、戦略を練りこんできました。加えて武人としての嗜みも、悪鬼から学んでいます‥‥いいですか、これは取引きです」
そう告げると、剣を納めるヴォルフ卿。
「ギルベルト、フリーデル。戦いは終りです。他の騎士たちも武器を納めなさい‥‥」
そのヴォルフ卿の言葉に、カーマイン騎士団はレイルの判断を待つ。
「全員、武器を納めろ‥‥」
その屈辱にも似た言葉を発するレイル。
そして、その真横を、ヴォルフ卿は手をパンパンと叩きつつ、歩いていく。
「それでは参りましょう‥‥ああ、今回の件は、中央に報告しても構いませんよ。ですが、あのヨシュアス・レイン率いるブランシュ騎士団が動けない以上、我がヴォルフ領には指一つ触れることは出来ないでしょうから‥‥それでは。ヘルメス殿が待っていますのでこれにて失礼‥‥」
そう告げると、ヴォルフ卿は並み居る騎士団の中央を整然と歩き、其の場を立ちさって行った‥‥。
●そしてパリ〜敵は百戦練磨の武人〜
──ニライ宅〜
一通りの貴族達を捕らえ連行した冒険者達。
当初の約束通り、マクシミリアン卿はパリで簡単な取り調べを受けたが解放、マダム・ロランスもまた、マクシミリアンと同様に解放されたらしい。
そしてレイルの報告。
「今、あの地に手を出すのは危険過ぎる。隠密行動に特化した騎士団か、それに等しい冒険者集団でなくては、あの領地を制圧することは出来ない‥‥」
そう告げるレイル。
「考えましたね。領民はそんな事をなにも知らず、圧制から解放してくれたヴォルフ卿の為に頑張る。そんな領民をヴォルフ卿は表向き護るという。その裏では、全てが人質として領地に縛り付けられているが、そんな事は領民は信用しないでしょうからねぇ‥‥」
かなりの策略家。
しかも、パリからの距離も遠く、繋がっている街道も二つのみ。
まるで『強固な砦』のような領地である。
「取り敢えず、ヴォルフ領については今しばらく様子を見ましょう‥‥ノルマン王国としても、今すぐにどうこうできる力はないですし‥‥」
口許の笑みがないニライ。
その様子に、彼女を知る一同は、『我慢の限界』が近いことを感じさせた。
そして一行は、静かにニライ宅を立ち去る。
貴族達の『神明裁判』は来月。
そこで貴族達の命運は決定する。
●そして〜最悪のケース〜
──酒場マスカレード
「命の恩人でしょう? これからは私が貴方を守ってあげるからね‥‥」
二階二席奥。
椅子に座って硬直しているリスターの横で、服を半分肌けつつマダム・ロランスが甘い声を囁いている。
若くして未亡人となったマダム。
そっとリスターの首筋に吐息を吹き掛けると、そのまま首を甘噛みする。
──ドサドサ
突然階下から何かを運びだす音が聞こえる。
そして切ない一言。
「リスター。私、実家に帰らせて頂きますっ!!」
そう叫ぶと、シスター・オニワバンこと大丹羽蛮ちゃんが荷物を纏めてマスカレードを出ていった。
「ち、ちっょとまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
上半身裸のまま店の外に飛び出すリスター。
だが、すでに蛮ちゃんは通りすがりの『ファルコン号』で遠くへと走っていった。
さて。
シルバーホークに関与した全ての事件。
残るは再大規模の軍勢を誇る『ヴォルフ魔獣兵団』。
だが、今ノルマンは動けない。
そうなると‥‥
〜Fin