●リプレイ本文
●さて〜下準備はOK?〜
──パリ・ニライ宅
「ふぅん。なかなか面白い事を考えますねぇ‥‥」
そう告げつつ、ニライ・カナイは自分の前の椅子に座って真剣な眼差しで一部始終を語ったリスター・ストーム(ea6536)にそう告げていた。
彼は、今回のセーヌ・ダンファン攻略の為、ニライ査察官の元を訪れていたのである。
「ああ、もし可能なら、植物系、それも解毒剤もペアで頼む‥‥」
その言葉に、ニライはしばし考える。
そして一枚の羊皮紙を手に取ると、それにサラサラと何かを記す。
「これを、そこに書かれている店まで持っていってください。ご要望の薬は手に入ると思いますが‥‥」
「助かる」
そう告げると、リスターはすぐさま手紙を手に一路冒険者街へとシュタタタターーーッ。
──冒険者街・薬師ラビィ
「即効性遅効性、パラライズにデットリー、まあ、いろんな薬がありますが、効果は保障できますよ」
入り口すぐにある小さなカウンターで、一人の老婆と話をしているリスター。
手紙を見せた後、すぐさま老婆は奥から小さな薬の入ったツボを持ってくると、色々と並べていった。
「これ‥‥なんですか?」
「それ、超強力媚薬です。お使いになりますか?」
「まさか‥‥ハッハッハッ。お値段はいかほどで?」
などどいう怪しい会話をしていた後、リスターは目的の『遅効性麻痺毒』をゲット!!
早速出発準備を終えて待機しているメンバーの元へと戻っていった。
●という事で〜さっそくですが作戦です〜
──セーヌ・ダンファン手前5km地点
ブラックウィング・ライトウィング隊と冒険者の面々は、ベースキャンプの中で最後の打ち合わせを行なっていた。
「‥‥兎に角、今回の作戦で重要なのは、敵アサシンガール殲滅ではなく、無事に全員が生還することです‥‥」
そう作戦メンバー全員に告げているのはチェルシー・カイウェル(ea3590)。
今回の部隊編成その他を突貫作業で行った『光組作戦参謀』というところであろう。
「作戦については、先程説明したとおりです」
そう告げると、リスターが各チームに配ったセーヌ・ダンファン見取り図についての説明を開始。
「建物の配置は地図の通り。一つはアサシンガールズ達の宿舎、その隣の建物が訓練教官。離れにあるのが食糧庫などの倉庫と、奥方とかいう女性の屋敷だ‥‥」
「武器庫はどこぢゃ?」
そう問い掛けるフォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)。
「武器庫は二つ。一つはアサシンガールズの宿舎に、もう一つは離れの倉庫だな」
「敵の戦力はどうなっていますか?」
今度はウィル・ウィム(ea1924)。
後方支援の為、ある程度敵戦力も把握しておく必要がある。
「詳しいデータまでは揃っていない。見取り図を作るのに精一杯だったから。それでも、少女らしきものは全員で12人ほど。教官はその半分ぐらいはいたかな?」
そう告げると、リスターは静かに立上がる。
「それじゃあ、アルバトロス・フェザーは作戦開始。あとは任せたぜ」
そう告げると、リスターは静かに其の場を立ち去る。
「作戦開始は明日早朝。それまで各チームは体勢を整え、いつでも戦えるようスタンバイして下さい」
そう告げると、チェルシーは会議を終了。
各チームごとに分かれて、最終打ちあわせを開始した。
●アルバトロスの夜〜その毒は危険です〜
──セーヌ・ダンファン
日が暮れる直前。
リスターは、セーヌ・ダンファン近くまで移動。
そのまま時間が来るまでじっと待機し、リスターは時間を確認すると、スクロールを取りだしてインビジブルを自身にかける。
(さて‥‥あとは野となれ山となれ‥‥)
そのまま効果時間が切れるギリギリまで、セーヌ・ダンファンに向かって移動、効果時間が切れそうになると一旦茂みに隠れ、再びインビジブルを発動させる。
そしてとある建物に向かうと、その裏口からそっと侵入。
そこは厨房と繋がっているらしく、リスターは今まさに戦場となっている厨房に侵入。
(さて‥‥効果時間が‥‥だから‥‥)
ゆっくりと懐に隠し持った麻痺毒の効果を今一度確認すると、それを人知れず大量のスープの入っている鍋にこっそりと注ぐ。
──ガチャッ
と、二人の少女が厨房に入ってくる。
「食事当番です。夕食を取りに来ました」
「ましたー」
そう元気よくつげる少女達。
「ああ、そこに置いてある鍋を順番に運んでくれ。あと一つで終るから」
「了解しました。では失礼します」
「ますー」
そのまま少女達は、静かに鍋を手に厨房を出ていく。
(やべ、そろそろだな‥‥)
そう心の中で呟くと、リスターはそのまま人気の無い場所まで移動、そして再度、周囲を確認してからインビジブルを発動させる。
(そろそろ魔力の限界かもな‥‥)
そう心の中で呟きつつ、リスターはそのまま帰還。
そして後方で待機していた各部隊に伝令を送り、いよいよ作戦開始までのカウントダウンが始まった。
●先制攻撃〜奇襲作戦〜
──セーヌ・ダンファン
倉庫が突然燃え上がる。
リスター率いる『アルバトロス・フェザー』による先制攻撃が開始されたのである。
ちなみにメンバーはリスター一人。
「ふぅ‥‥。今日は動きっぱなしで疲れるぜ‥‥まったく」
そう告げつつも、ヒートハンドを発動させて可燃物に火を付けてまわるリスター。
やがて、その騒ぎを見付けてか、建物から教官やアサシンガール達が飛び出してきた‥‥。
──クロウ・フェザー到着!!
指揮官チェルシーとその護衛フォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)。
弓兵10と盾を装備した重装騎士6、そして伝令も兼ねる騎兵3。回復要員1の構成で第一陣が駆け始めた。
「シールド展開!! 弓兵スタンバイ!!」
──ドガドガドガドガッ
チェルシーの声で重装騎兵が巨大な盾を大地に突き刺す!!
その後ろでは、弓兵が次々と矢を番え、建物に向かって一気に矢を打ち込む!!
──ザワザワザワッ
外からの奇襲など予測もしていなかったのであろう。
いきなりの攻撃に、建物から飛び出して火事を消す為に奔走していた少女達は、次々と矢の前に崩れていく。
「やっぱり動きが鈍い‥‥」
やがて、建物の中から4名の少女が飛び出し、印も綴る事無く一気に魔法を発動した!!
──ドゴォォォォォッ
4人で並んで発動させたグラビティキャノン!!
それは盾を構えた騎士に向かって直撃するが‥‥。
──ズズズズズッ
その威力を真面に盾に受ける重装騎士。
だが、そのまま倒れることなく、重装騎士たちは其の場に踏みとどまった!!
「こ‥‥これが本当の騎士。実に頼もしいのう‥‥」
そう告げると、早速フォルテシモが楯の前方から走ってきた別のアサシンガールの攻撃をクルスラン・アルスターシールドで受止める!!
──ガシッ!!
そして手にしたロングスピアの柄の部分でそのまま少女を薙ぐと、再び間合を取る。
「投降しろ!! わしとて、望まずアサシンガールとなった者達を無慈悲に切り捨てる真似はしたくないのぢゃ!!」
そう叫ぶフォルテシモ。
「ここが最後の場所なのよ‥‥あの人たちは、捨てられた私を受け入れてくれたわ‥‥もう嫌なの‥‥あんな思いはしたくないのよっ!!」
再び攻撃に出るアサシンガール。
だが、そのままフォルテシモは再び少女を突き放し、間合を取った。
──ヒヒヒヒーーーーーーーーーン
後方から馬のいななきが聞こえてくる。
そして、イーグルフェザーの真横を駆抜けていく、突撃騎士団の姿があった。
──ファルコン・フェザー
騎士団から借用した軍馬『クリムゾン』に騎乗しているのはカタリナ・ブルームハルト(ea5817)。その後には、リュリュ・アルビレオ(ea4167)も乗り、しっかりと振り落とされないように掴まっていた。
突撃騎馬隊は7、そのうちの一頭には回復要員も1名同乗している。
「このまま突っ切るっ。ターゲットは『奥方』と教官責任者っ!!」
そのカタリナの声と同時に、騎馬隊がさらに進軍。
ターゲットの建物から飛び出したアサシンガールと教官を発見。
「ふっふっふ、騎乗達人の腕前見せてくれる!!」
素早く回りこみ、次々と教官達を撃破していくカタリナ。
その手綱捌きと的確な指示で、クリムゾンは教官を次々と蹴り飛ばし、身動きできないようにする。
──ブゥゥゥゥン
さらに敵教官に対して、リュリュがサイレンスを発動。
慣れない騎乗発動+高速詠唱ということもあり、その発動率はかなり低下していた。
それでもなんとか教官から言葉を奪う。
「ふぅ‥‥これでよし。迂闊なことを話されて、アサシンガール達が狂化したら大変だからねっ!!」
そして他の騎士団は、毒の影響により何の抵抗もできないまま其の場に崩れていくアサシンガール達を捉えていった。
──イーグル・フェザー
ファルコンフェザーの突入後、さらにキサラ・ブレンファード(ea5796)と青龍華(ea3665)率いる主力部隊『イーグルフェザー』が突撃開始。
ファルコンが向かった建物とは別の場所から飛び出してきたアサシンガール達に向かって突撃を開始する!!
「この‥‥ノルマンの犬っ!!」
そう叫びつつ突撃していく、アサシンガールのエリーゼ。
「動きが鈍い‥‥悪いな‥‥」
──ガシ、シュパーーーーーッ
その直線的な動きに、アサシンガール特有の『切れ』を感じなかったキサラ。
素早くブラインドアタックで切りかかり、エリーゼに向かって最強のシュライクを叩き込んだ。
──フラフラ‥‥
その一撃でエリーゼは戦意喪失。
そのまま、大地に崩れ落ちると、意識を失っていった。
「麻痺毒に対しての抵抗は、アサシンガールでもできないか‥‥リスター、流石だな」
そう告げると、キサラは急いで相棒である龍華の元に走り出した。
──その頃の龍華
「‥‥偉大なる慈愛神セーラよ。この者が、神の御許に赴くことをお許しください」
静かにそう告げつつ、胸の前で十字を切るアサシンガール。
そして静かに龍華に向かって身構えると、そのまま一気に間合を詰めていった!!
──ガシガシガシッ
素早く繰り出される拳。
それをギリギリのところで受止める龍華。
「こ、これが‥‥」
驚愕しつつも、龍華はゆっくりと構えを取り直す。
今、彼女周囲には、ほんの数撃で意識を失っていった騎士団員2名が倒れている。
そして、目の前のアサシンガールは、まるで天使のような笑みを浮かべている。
「話にあった『エンジェルモード』‥‥。それでもっ!!」
素早く龍華は間合を取る。
そして一気に差その間合を詰めると、アサシンガールの正面で思いっきりジャンプ、右上段蹴りを叩き込む!!
──スカッ
それはなんなく躱わされたが、着地と同時にさらに回転、左での回転回し蹴りを一気に叩き込んだ!!
──ドガッ
それをぎりぎりの所で受止めるアサシンガール。
だが、そこから体勢を整えているさ中、さらに龍華は左脚を軸に、右側頭部蹴りをアサシンガールに向かって叩き込む!!
──ドゴォッ
その直撃を受けて、アサシンガールは後方に吹っ飛んでいく。
「ふぅ‥‥竜撃3連脚‥‥実戦で使うのは初めてだけれど、なんとか様になっているわね‥‥」
そう告げる龍華。
そして一気に間合を詰めていくと、さらに横からキサラが参戦!!
──シュンッ
素早くブラインドアタックとシュライクを合成したキサラ必殺剣『セトの華麗なる疾風』。
それを素早くアサシンガールに向かって叩き込んだのだが。
それを体勢の整わない状況で、左腕で受止めるアサシンガール。
その左腕は肘から切断されるが、そのまま転がって其の場から離れ、素早く体勢を整える。
──シュンッ!!
その刹那。
「竜・飛・翔っ!!」
キサラがアサシンガールの意識を反らしてくれた為、龍華は大技を叩き込む体勢を得た。
そして一気にアサシンガールに向かってその一撃を叩き込む。
──ドゴォォォォォォッ
それで勝負は付いた。
ぐったりとしたまま倒れるアサシンガール。
「エンジェルモードって、この程度なの?」
「いや‥‥リスターの麻痺毒の影響で、十分に動けなかっただけだろ?」
そう告げるキサラ。
そして後方から回復要員が書けこむと、倒れていた騎士団に治療を開始。
二人はとりあえずアサシンガールに簡単な止血を施すと、そのままロープで身体を固定した。
♪〜
私の声が聞こえますか
貴方の心に届きますか
思い出して
とてもとても平凡な それでも幸せだった日を
思い出して
とてもとても平凡な それでも大切だった人達を
忘れないで
貴方の中の灯火は 決して消える事がない事を
忘れないで
どんなに暗い闇の中でも 私達は貴方を見つけ出すから
長い長い夜だっていつかは明ける
一緒に行こう 手を取り合って 夜明けの道を共に行こう
♪〜
やがて、戦場を一人の女性の歌が包み込む。
ピジョン・フェザー隊に所属しているサラサ・フローライト(ea3026)とウィル・ウィム(ea1924)の二人は、もっともアサシンガール達の集っている戦域に到着すると、そのままメロディーを発動。
──ブゥゥゥゥン
「ホーリーフィールドを展開しました。これで、ある程度アサシンガール達の攻撃を防げるとは思います」
ウィルの発動したホーリーフィールドの周囲で、ヴィジョン・フェザー所属騎士は完全なるガードを開始。
その中、サラサは声が嗄れるまで歌を歌いつづけた。
そして一人、また一人とアサシンガール達は手にした武器を大地に落とす。
戦意を失った少女達を、騎士団は丁寧にその身柄を拘束した。
●顛末〜そしてバルタザール卿〜
──バルタザール自治区
全てのアサシンガール、及び教官達を捕らえた一行。
その中に、病気で療養中であったバルタザール夫人の姿も確認されたが、夫人はアサシンガール達の事を本当の子供のように大切にしていたらしいことが判明。
そしてそこにバルタザール卿本人がいないことを確認した光組のメンバーは、いよいよ最後の砦であるバルタザール邱まで向かった!!
──ドゴッ
激しく扉を蹴り破るフォルテシモ。
そして素早く建物に飛込むと、邸内で待機していたらしい警備員達が駆け寄って行くる。
『王国歌劇団、参上!!』
そして全員が最後のセリフを叫ぶと同時に、一斉に警備員達を纏めてノックアウト。
そして騒ぎを聞きつけたバルタザール卿本人が、奥から姿を現わした!!
「い、一体なにごとだっ!! 警備の者たちはなにを‥‥」
「もう警備員は動けぬのう‥‥」
踏ん反り返ってそう告げるフォルテシモ。
「貴方のやってきたことはすでに明白。その罪を償うときがきました‥‥」
シュタッと腕を組みつつそう告げるウィル。
おお、久しぶりの『天啓のホワイト 』モード発動中。
「どれだけ暗示や魔法をかけようが、人の心は消え去りはしない‥‥」
サラサ、怒りに震える拳を握り締めて告げる。
「貴方の子供達はすでに確保しました。大切な奥方もね‥‥」
勝利を確信し、そう告げたチェルシー。
「シルバーホークに荷担して、か弱い子供達をアサシンに仕立て上げる、貴方の悪行はゆるす分けにはいかないわっ!!」
ゴキッと拳を鳴らす龍華。
「つまり、そういうことよッ!!」
ビシッとバルタザール卿を力一杯指差し、そう叫ぶリュリュ。
セリフが思い付かなかったもよう。
「命を持ってその罪、償って頂くか? 我等が神の御許にて、魂の裁判を受けて頂こう‥‥」
スラァッと日本刀を引き抜くキサラ。
「ここで降参するならよしっ!! 抵抗するなら‥‥」
──ブゥゥゥゥゥゥゥゥン
紋章剣を引き抜くと、カタリナはそれにオーラパワーを付与した。
おお、紋章剣もいつになく共鳴しています。
「アンタの命、ここでお終い‥‥」
右手を握り、親指を立てて首をかっ切るポーズをして見せるリスター。
──ガクッ
そして其の場に崩れ落ちるバルタザール。
──ドヤドヤドヤッ
やがて待機していた騎士団が邸内に突入、そのまま無抵抗のバルタザール卿を捕らえていった。
「それではっ!! 勝利のポーズ」
ボクっ子カタリナが拳をにぎってそう叫ぶ。
そして全員が天に向かって拳を突き上げ、最後に叫ぶ!!
『決めっ!!』
●パリにて〜あとの始末が一杯です〜
──マスカレード
「ふぅ‥‥犠牲者0。たいしたものですね‥‥」
静かにテーブルでハーブティーをすすりつつ、ニライ査察官が騎士団より受け取った報告書を眺めつつそう告げている。
この作戦での騎士団の死者は0。
もっとも酷い怪我をしたもので瀕死が5名。
その他の騎士もかなりの怪我を追っているものの、生きているだけよしというところである。
瀕死になった軽装騎士5名は次からの作戦には参加せず、療養するらしい。
「ああ。うちの子達も元気に戻ってきたし‥‥それよりも、アサシンガール達の処分はどうなっている?」
そう問い掛けるマスカレード。
「断罪‥‥なんて告げたら、また『署名だぁ』って叫ぶ輩が出るような気がしますし。取り敢えず、一人ずつ取り調べてから決定します。罪無きアサシンガール達は、その身を何処かに預ける必要もありますが、今のノルマンでアサシンガールを引き取るような酔狂な貴族はいないでしょうからねぇ‥‥」
「それこそ、何処かの領地に、。アサシンガールだけを集めた孤児院みたいなものを作ればいいんだろうけれどな‥‥国からの援助はでないのか?」
「下らない質問を‥‥出る筈がない‥‥」
『はぁ‥‥』
そこでマスカレードとニライ査察官は同時に溜め息を突く。
──ドゴォォォッ
「お客様っ。そんな不埒なことをしたら危険ぞよっ!!」
そう叫びつつ、テーブルに向かって拳を叩き込んでいるのはウェイトレスモードのフォルテシモ。
その一撃で、目の前の酔っぱらいも沈黙する。
「ひっく‥‥おーい、そこのぺったんこのねーちゃん、古ワインのおかわりをたのむっ!!」
──カツカツカツカツカツ
その酔狂客の声に反応して、カタリナとリュリュ、そして龍華の3名が酔っぱらいに向かって走っていく。
「ぺったんこじゃないっ、ボクの胸はコンパクトなだけだっ」
「そうだっ。ちゃんと機能していれば問題はないっ!!」
そう拳を上げて力説するカタリナに、さらに別テーブルからチャチャがはいる。
「私は、ちゃんと胸があるわよっ 竜・撃・掌っ!!」
突然そう叫びつつ、酔狂客に鉄拳を叩き込む龍華。
どうやら龍華のいた方向にカタリナ達がいた為、自分に言われたのだと勘違い。
ああ、とんでも勘違い。
「私の胸はこれからだっ。未発展途上胸なだけで‥‥うっぅっぅっ‥‥」
後半は涙声のリュリュ。
「そうだそうだっ。リュリュちゃんには未来があるっ。カタリナさんには‥‥」
「カ・タ・リ・ナ・ボンバーーーーーッ」
──フベシッ!!
そう突っ込みを入れていた酔狂客に向かって、カタリナ必殺の一撃が叩き込まれる。
「まあまあ‥‥それ以上いいますと、本当に逆鱗にふれますよ‥‥」
そう告げつつ、ウィルは殴り飛ばされた客にリカバーを施す。
「があがあ‥‥こんにちはー。おねーちゃんは?」
入り口では、最近ここの店の常連になりつつある『アンリエット』がキサラに問い掛けている。
「今日は見ていないな‥‥なにかあったか?」
「ちょっと‥‥じゃあね‥‥がぁがぁ‥‥」
そのまま立ち去るアンリエット。
♪〜
私の声が聞こえますか
貴方の心に届きますか
思い出して
とてもとても平凡な それでも幸せだった日を
思い出して
とてもとても平凡な それでも大切だった人達を
忘れないで
貴方の中の灯火は 決して消える事がない事を
忘れないで
どんなに暗い闇の中でも 私達は貴方を見つけ出すから
長い長い夜だっていつかは明ける
一緒に行こう 手を取り合って 夜明けの道を共に行こう
とりあえず日常に戻ってきた一行。
♪〜
店内からは、サラサの優しい声が聞こえてくる。
騒がしかった店内も、やがて静かに彼女の歌声に耳を傾け始めていた。
そしてその片隅で、チェルシーは地図に記されたシルバーホークの戦力と、今の冒険者ギルド、そしてノルマン王国の予測戦力とを慎重に検討していた。
「四天王相手の戦闘‥‥冒険者の勝率は0。騎士団の戦力が加わって勝率30%‥‥シルバーホークの戦闘力は、国家クラスに匹敵する訳ね‥‥」
腕を組んで静かに呟くチェルシー。
そして離れの部屋では、リスターがひさしぶりに大切なシスター・オニワバンの腕に抱かれて眠っていた‥‥。
また、いつもの日常が始まる。
マスカレードからの出撃命令が出るまで、今はしばらく『普通の店員』としての生活が続くのであろう。
そして。
またいつか、あの掛け声が聞こえる日まで‥‥。
王国歌劇団・参上!!
〜Fin