●リプレイ本文
●という事で〜いきなり合流失敗かい!!〜
──パリ冒険者酒場シャンゼリゼ
「‥‥つまり、マスカレードは現在、シルバーホークによって包囲されているッていう事か‥‥」
静かにそう告げると、男は傍らに置いてあった武器を手に取ると、そのままゆっくりと立上がろうとして‥‥。
「シャーリィの依頼を受けている以上、余計なことをしている隙は無いんじゃない? それにあっちは、歌劇団が動くでしょうから‥‥」
冷静にそう告げつつ、荷物を背負っているのは逃亡者・アルジャーン。
「まあ、そうなんだけれどー。話では、あそこにも紋章剣があるんだよねー。それをあっちのメンバーにも教えないといけないカナーって‥‥ということだから‥‥そこんところ宜しくねー」
そう、横の通路を急ぎ足で歩いているカタリナ・ブルームハルト(ea5817)に話し掛ける男。
「ちょっと待ってよ、さきにそれを言ってよ!!」
マスカレードにて情報交換をシようとしていたカタリナ。
だが、そんな娘ととなっている以上、すぐにでも向かう必要はある。
既に奥の席では、サラサ・フローライト(ea3026)が他の仲間たちに連絡を取り、出撃の準備をしようとしていたのである。
「サラサちゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
そう叫びつつ、素早く抱きつくリスター・ストーム(ea6536)。
「マスカレードが襲撃された。シスターとリチャードが傷を受け、今危険な状態だ‥‥」
真剣な表情でそうリスターに告げるサラサ。
「ふぅーん。俺の大切なマイハニーに手を出すとは、シルバーホークも判っていないねえ‥‥」
抱きつくのを止め、リスターが入り口に向かって歩いていく。
と、正面から入ってきたカップルがリスターの顔を見て、表情を凍り付かせた。
やばい、今回はかなりマジになっている。
そんな中、入り口近くで仲間と最後の打ち合わせをしていたカタリナの姉。
横を通り過ぎていく妹を確認すると、ニコリと笑みを浮かべている。
「カタリナも頑張ってねー」
「おっし、姉貴もね〜☆」
そんなこんなでシャンゼリゼは兎に角忙しい。
その後、ワルプルギスの剣士関係者ご一行様も走りまわっているところを見ると、最近は色々と忙しいんだなーと、一人考えているチェルシー・カイウェル(ea3590)であった。
「まあ、あたしは剣になんて興味がないしねぇ‥‥」
あ、あんたもそっすか。
「何たる事じゃ! 大至急、援護に向かわねば!」
サラサから連絡を受けたフォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)。
やはり新メニューとワインでのどかな時間を過ごしていたところであったが。
そんな事をしている状態ではない模様。
●これは強力すぎまっせ〜ブラックウィング騎士団〜
──ニライ宅
「成る程‥‥」
静かに窓の外を見つめつつ、そう呟いているのはニライ・カナイ。
チェルシーは、サラサからのテレパシーを受けた後、更なる戦力としてニライ査察官の元を訪れていた。
「光組独力でも作戦遂行は不可能ではないですが、確実な任務達成には人手が欲しいんです。エクスキューショナーズの確保はもちろん、光組と言う私設騎士団の実力を間近で見る事も王国に取って益なはず。利害は一致するはずです」
そう力説するチェルシー。
「貴方は私をのせるのが巧い。まあ、こちらとしても『利』はありますか。良いでしょう。ブラックウィング隊にマスカレードの周辺を固めるよう手配しましょう。現地に隊長を派遣しておきます。あとは、そちらで詳しい打ち合わせを行うようにしてください」
「感謝します、ニライ査察官」
丁寧に礼を告げるチェルシー。
「そろそろシルバーホークというヘボ役者には、このノルマンという舞台から降りて頂かないといけませんからねぇ‥‥」
クックッと笑いつつ、そう告げるニライ。
そしてチェルシーは、待合せ場所に戻ると、それをサラサに連絡した。
●それけでは調査〜動物大集合ですな〜
──リュリュ&龍華
「あの建物の蔭に3人‥‥あっちにも2人‥‥それと‥‥」
マスカレードの近くをゆっくりと歩きつつ、リュリュ・アルビレオ(ea4167)はブレスセンサーで人の気配を感知。
青龍華(ea3665)はというと、そのリュリュのボディーガード。
時折リュリュをぎゅーーーっと抱しめ、魔法発動野際の輝きを少しでも外に見えないようにしているらしい。
(リュリュちゃん、軟らかい‥‥ギューーーッ)
あ、目的を間違えていそう。
「龍華さん‥‥く、苦しい‥‥」
(リュリュちゃん‥‥いい香り‥‥ギューーーーッ)
ああ、ここで『ほのぼの分』を補っているのですね、ならよし。
──ガクッ
と、いつのまにかオチてしまったリュリュ。
「きゃあ〜リュリュちゃん、しっかり‥‥そうだ、呼吸は‥‥息を‥‥」
ドキドキしつつ、人口呼吸を始めようとする龍華だが。
「キス‥‥ミー。プリーーヅ、じゅってぇぇぇぇぇむ☆」
いつのまにかリュリュと入れ代わったリスター。
唇をニューーーンと突き出し、龍華に迫る。
──ガシッ
そのままいきなりリスターの顔面を鷲づかみにする龍華。
そして、体内の気を一気に高めると、その掌からオーラショットを叩き込んだ!!
武道家の極意に『寸撃』というのが存在する。
ほんのわずかの魔さえあれば、焚いてに対して致命的な打撃を叩き込むことができる。
まあ、これはそんな感じだな。
──ドゴォォォォッ
射程0でのオーラショット。
その衝撃に、龍華の掌もざっくりと裂けるが、リスターの顔面もぐちゃりと‥‥。
「★△×■!!」
あ、何か叫んでいるようですが、よくわかりませーん。
「ハァハァ‥‥いつのまに‥‥そうだ、リュリュちゃんは」
周囲を見渡す龍華。
幸いなことに、近くの家の軒下にリュリュは横たわっていた。
そしてゆっくりと意識を取り戻すと、そのまま龍華達の元に戻った。
「さてー、何かあったようですが、兎に角作戦ぞっこーです」
そんなこんなで、暫くは周辺の調査を開始する二人。
リスターもどうにか息を吹き返すと(死んでない死んでない)、エックスレイビジョンを駆使しつつ、建物の内部調査を開始した。
──サラサ
『あの建物に二人』(ウィルの愛犬アーク談)
『アノ建物に3人』(チェルシーの愛猫レモン談)
『あっちに二人』(サラサの愛猫フラット談)
『あっちにはいない』(龍華の愛猫クラウディ談)
『あっちに子供が3人』(リュリュの愛犬ラファール談)
次々と集ってくる動物達にテレパシーを発動させると、サラサは皆の大切なペットから情報を得ていた模様。
一つ一つ聞いたことを羊皮紙に書き記していくと、今度はそれをフラットの首に巻き付ける。
『飼い主さんの所にお戻りなさい』
そうテレパシーで伝えると、フラットは首に伝言をぶら下げて、リュリュの元へと走っていった。
──そして
「うーんと‥‥リスター、この地図、何処がどうか説明して欲しいんだけれど?」
とある酒場で待機中のフォルテシモとカタリナ、キサラの前衛3人娘たち。
その近くでは、応急手当道具のチェックをしているウィル・ウィム(ea1924)の姿もある。
そこに、チェルシーとリュリュ達が合流。
リスターが周辺の詳細な地図を作りあげると、リュリュとサラサのもたらした情報を元に、次々と地図に書き込みを入れていく。
「このポイントには全部で4名。ここは空家だった筈だな‥‥こっちには2名、酒場の窓辺で楽しそうに話をしている人たちがいるが、ずっとその席から動かない‥‥」
龍華がまず一つ一つを埋めていく。
「こっちには、子供が3人‥‥多分、アサシンガールかな?」
「いや、男の子だからそれはないな‥‥それと、こっちに二人、この建物の二階に二人‥‥かなりの数が潜伏している‥‥」
リュリュの説明に捕捉を加えつつ、一つ一つ埋めていくリスター。
そして最後に、サラサから届いた『アニマル偵察部隊』からの報告を記入し、おおよそのデータは纏まった。
「これが全てシルバーホーク処刑部隊だとしたら‥‥ざっとこのエリアに30名。一斉にムーンアローが飛んできたら、確実に瞬殺されるってば」
カタリナがそう呟く。
「ニライ査察官の所のブラックウィング騎士団にも増援要請は出しておいたけど、周囲の包囲が目的だからねぇ‥‥」
兎に角、作戦開始まで、少しでも情報を集めておく必要がある。
一行は再び散ると、兎に角周囲を調べまくったらしい。
●作戦決行〜6月15日朝〜
──酒場マスカレード前
静かにマントを纏った人がたたずむ。
「がぁがぁ‥‥おぢさんだれー?」
丁度通りかかった一人の少女が、静かにそう告げる。
「もうすぐここは戦場になるから‥‥ここから離れてね‥‥」
サラサは静かにそう告げると、少女の頭をトン、と撫でる。
「今日はここにおねえちゃんいないんだねー。いくよ、ガァ君。がぁがぁ‥‥」
てくてくと歩いていく少女。
そしてサラサは、ゆっくりと入り口に近付くと、素早く入り口を背中に其の場に座る。
──シュンッ
案の定、一条のムーンアローがサラサを襲うが。
──スッ‥‥パチィィィン
手を差し出し、パトンと指を鳴らす。
その刹那、サラサの横にムーンアローが完成し、とんできたムーンアローを迎撃した!!
「たかがこの程度か‥‥シルバーホークの処刑部隊というのは、たいしたことはないのだな‥‥」
──ザッ
「なら、こういうパターンはどうかな?」
ふいに飛び出したマントの男。
その腕には、先程の少女が捕まっている。
首筋にナイフを当てると、静かにサラサの方を見る。
「卑怯な‥‥」
「こっちをむくな。後ろを向け。魔法は対象が見えないと使えないだろうからな‥‥」
そのまま振り向くサラサ。
だが、静かに意識は集中。
見えなくても打てるのがムーンアロー。
ただ、その後で何処までサラサが反応できるか。
一撃で腕を狙い、その隙にあのぼややんとした少女が逃げきれるか‥‥。
可能性はわずか。
その可能性に、サラサは賭けた!!
──パチン
マントの下の指が弾ける。
そして素早く振り向き、男に向かって走り出す。
──ドシュッ
ムーンアローは男の方に直撃。
だが、少女を掴む手は緩まない。
「グッ。ふざけたまねをっ!!」
すかさずナイフを構えると、少女に向かって振りおろす男。
──バヂバヂバヂバヂッ
瞬間、少女の全身が輝いたかと思うと、男と少女の全身に無数の切り傷が発生する。
「‥‥」
男は何かを叫んでいるが、それが何かは聞こえてこない。
そのまま少女はスタスタと男の手から抜けると、ゆっくりとサラサに歩いてくる。
「何‥‥何が?」
「がぁがぁ。ばきゅーむふぃーるどだよ。おっかないおじさんはそのまま死んじゃうの。がぁ!!」
そう告げると、少女は静かに其の場から立ちさって行く。
そしてそれが始まりの合図。
──カタリナ
どがっ!!
近くの建物に潜伏している処刑部隊の捕獲。
そのために、カタリナは近くの建物に近付くと、合図と同時にいきなり扉をノック!!
──コンコン
「ああ、一体こんな朝っぱらからなんなんだ?」
誰かが近づいてくる音。
そしてドアノブに手をかけた瞬間!!
「か・た・り・な・ボンバーーーーッ外式・ドアアターーーーック」
力一杯扉をぶん殴る。
扉は勢いよく男を吹き飛ばし、後に男を倒した!!
そして素早く走りこむと、カタリナはそのまま窓辺でマスカレードを見ていたもう一人の男に向かって飛び蹴りを叩き込む!!
「なんだ貴様‥‥おわっ!!」
──バギィィィィッ
鎧戸を突き破り、窓の外に飛び出す男とカタリナ。
「ごめんね。ちょっと失礼するからっ」
二人でオチていくカタリナだが、巧く男を下にすると、そのまま大地に落下。
──グシャッ
受け身を取ったカタリナと、それと入れ違いに飛込んできたブラックウィング隊ご一行。
「あとは任せたよっ☆」
そう告げると、カタリナは次のポイントに向かって走り出した!!
──フォルテシモ
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
楯を構えて特攻するフォルテシモ。
その廃墟の一階には、二人の処刑部隊(エクスキュージョナーズ)と一人の護衛が待機していた。
まず一人のバードに楯を手にしたまま体当たりを叩き込むと、フォルテシモは素早く剣を引き抜く。
──ドシュッ
その腕にもう一人のムーンアローが突き刺さる。
だが、フォルテシモは怯むことなく、バードにターゲットを絞ると、さらに踏込んで切り付けた!!
──ドシャッ
一撃を受けたバードは後方に下がった。
そして入れ違いに護衛がナイフを引き抜くと、そのまま間合を詰めてくる。
──ヒュウンっ‥‥ガキィィィィン
激しく撃ち鳴る剣戟。
その合間にも、バードは急いで詠唱を行なっていた。
だが、激痛の為、思うように詠唱が出来ないらしい。
時折ムーンアローが飛んでくるが、それはたいした威力ではない。
「怪我をしたら、痛みで詠唱は阻害される‥‥そんな基本をを知らずして、なにが処刑部隊じゃ」
──ドシュッ
激しいカウンターアタックを護衛に叩き込むフォルテシモ。
そこで入り口よりブラックウィング隊が到着。
「一気に捕らえよ!!」
そう告げる隊長のもと、このエリアのシルバーホークは一掃された。
「あとは任せた。わしはマスカレードにもどるぞ」
そう告げて、フォルテシモはマスカレードへ。
──キサラ
静かに目的の建物に近寄っていくキサラ・ブレンファード(ea5796)。
般若面の下の瞳は、既に獲物を捉える獣の如く。
ゆっくりと窓の下に立つと、その窓をコン、と叩く。
「?」
中から留め金が外れる音がする。
そして少しだけ窓が開かれたとき、キサラはそのまま手を掛けて窓を一気に全開に。
──シュンッ
素早く窓を開いたターゲットの首元に向かって、ダガーを掠めるように切り付けた!!
──ブシュュュュッ
鮮血を吹き出し、後に倒れるターゲット。
そしてキサラは窓の縁に手を掛けると、一気に室内に飛込む。
そして内部に着地すると、すぐに周囲の状況を確認、詠唱を開始しているバードの方にリュートベイルを身構えつつ、血を流しているバードにさらに追撃を叩き込む。
──ドシュッドシュッ
激しい3連撃で、バードは沈黙。
──シュンッ
そして直後、残ったバードが放ったムーンアローがキサラを襲うが。
──バジィッ
それはリュートベイルに直撃し、消滅した。
その光景を見て、驚愕するバード。
「馬鹿な‥‥魔法の速度に反応しただと?」
常識では不可能なこと。
「そんなこと出来る筈がないだろう? ムーンアローは最短で的に飛んでいく。如何なる通常物質をもすり抜けてな‥‥なら、飛んで来る方向に対して魔法の楯を構えていればよい‥‥それを感知して避けるような魔法ではないからな‥‥多分」
可能性があるのなら、それに賭けるのが戦士。
そして賭けは成立し、キサラは勝利した。
──ドカドカドカッ
やがて ブラックウィング隊が到着すると、其の場に倒れている二人を捉える。
「あとは任せた。次に向かう」
そう告げて、キサラは風のように窓の外へと消えていった。
──リュリュ&龍華
「気を付けたほうがいいわよ‥‥私の爪は龍を呼び、嵐を起こすから‥‥」
龍叱爪を静かに構え、龍華がそう告げる。
その背後では、リュリュがいつでも魔法を詠唱できるようにスタンバイ。
今は使われていない酒場。
その一角に、敵処刑部隊が3名待機していた。
二人はツーマンセルでそこに向かうと、一気に突入、戦闘モードに飛込む。
──シュンッ
いきなり飛んでくるムーンアロー。
だが、リュリュは恐れず怯まず退かずに高速詠唱開始!!
──バジィッ
ウィンドスラッシュでムーンアローを相殺した。
「甘い甘い甘いわよっ‥‥どれぐらい甘いかというと、初孫に出会ったおじいちゃん‥‥っと」
力一杯叫んでいるリュリュに向かって、一人のバードがダガーを構えて突撃。
──ガギィィィン
その一撃を難無く受止めると、龍華はすかさず一歩間合を取り、そのまま力一杯踏込む!!
──ダン
震脚。そして両手の掌を相手の腹部に叩き込む。
「ハイッ!!」
後方に吹き飛ぶレンジャー。
さらに龍華は、其の場から全身のバネを生かした驚異の一撃を叩き込む。
「龍拳奥義の壱可変。竜巻龍撃拳っ!!」
激しく叩き込む龍飛翔。
斜めに軌道を描いて叩き込まれたそれは、そのまま後方へと飛んでいく。
そして落下地点では、リュリュのトルネードが発動、大地に落ちることなくレンジャーは天井に叩きつけられた。
「グフゥッ‥‥」
そのまま床に激突し、男は意識を失う。
「畜生‥‥このままではっ済まさんぞっ」
そう捨てセリフを吐きつつ、二人は入り口に向かって走り出したが。
──ドカドカッ
いきなり入り口に立っている人物に殴り飛ばされ、店内に叩き込まれた。
「さて‥‥どいつから血の海に沈みたい?」
そう呟きつつ、シルバーナイフを逆手に構えるリスターと、その横でサーベルを握り締めているニライ・カナイ。
「このノルマンを食い物にしている存在を、私は許すわけには行きませんからねぇ‥‥」
そしてその後方でズラッと並ぶブラックウィング隊。
「こ‥‥この野郎‥‥はめやがったなぁぁぁぁぁ」
そう叫ぶレンジャーだが、既に時遅し。
「捕獲っ!!」
ニライ査察官の言葉に、一斉に突撃するブラックウィング隊。
そんなこんなで、敵の捕獲に成功。
●そして再び〜作戦終了ですが〜
──マスカレード
光組と黒翼騎士団(ブラックウィング)の活躍により、マスカレージ周辺に潜伏していた処刑部隊は全員が捕獲された。
一行は、サラサが入り口で中のマスカレードに連絡を取り、ようやく扉が開かれた。
そして黒翼騎士団の回復要員が瀕死のリチャードと怪我を追っていたシスターの手当を行う。
──ブゥゥゥゥゥゥン
「年ごろの女性なのですから、あまり無茶はしないほうがよろしいですよ‥‥」
ウィルは怪我を負ったフォルテシモにリカバーを唱える。
「判っておる。ちょっと無理しすぎたようじゃな‥‥」
静かにそう告げつつ手当を受けるフォルテシモ。
一方リスターは蛮ちゃんの怪我の具合を確認すると早速別室に移動、ラブラブハリケーン爆走中。
「さて、隊長。これからどうするんじゃ? ここがシルバーホークに嗅ぎつけられたのなら、ここを離れる必要があるのではないじゃろうか?」
ゴキゴキと肩を回しつつ、フォルテシモがマスカレード達の座っている席に近づきつつそう問い掛ける。
「そうですね。ここが知られてしまった以上、近くに住んでいる普通の人たちを巻き込んでしまう可能性もありますね‥‥」
ウィルも他の手当を終えてそう意見を述べる。
「ああ。とりあえず引越し先を‥‥奴等のねらってこない安全な場所で‥‥プロスト領にでも一旦移動する必要があるか‥‥」
そんな会話のさ中、カタリナはマスカレードから『紋章剣』を借り、じっとカウンターに座ったままそれを握っていた。
(あっちゃあ‥‥これ、オーラに反応するんだぁ‥‥やばいなぁ‥‥)
そう思っている理由。
それは簡単。
カタリナがそれを握った時、自身の体内で何かが弾けた。
全身を何かが駆け巡る。
騎士であるカタリナは、それがおそらくは『自身のオーラ』であることを悟ったようである。
そして刀身に記されている文字。
The Aura Will be with you・・・・Always
「やばい‥‥これは危険だよっ!!」
そう告げたとき、ヒョイと横から龍華が顔を出す。
「なにが危険?」
──パス
そのまま龍華に剣を持たせるカタリナ。
と、突然龍華の表情も凍り付く。
「‥‥オーラを増幅する? 違うわね。何かしら、この剣?」
頭を傾ける龍華。
「どう? 何か感じない? こう、ズバーーンって、ドガーーンって身体に流れて、ズババババーーーンって」
カタリナ、あんた、どこぞの『伝説のおっさん』かい?
「まあ、私はオーラを体得しているから、すぐに判ったけれど‥‥」
「ボクだって体得しているよっ。それ以上に、何か感じない?」
そんな会話をしている二人。
カタリナは過敏な程それを感じ、龍華は自然に任せて流れを見ている模様。
やがてリスターも戻ってきて、これからさき、何処で活動を行うかの話し合いが始まった。
──ドガァァァァッ
いきなり閉ざされた鎧戸を打ち破って侵入する3人の『少女達』。
手近にいたミストルディンに間合を詰めると、その腹部にいきなりロングソードを突き刺す。
──ドシュッ
背中まで貫通したロングソード。
そしてもう一人の少女は、マスカレードを確認すると一気にそっちに走り出す。
最後の一人もマスカレードに向かって走ったが、それはキサラによって阻まれる。
──ガギィィィィン
キサラ必殺のフェイントアタック。それにシュライクを組み込んだ激しい一撃は、少女に致命傷を叩き込んだ。
だが。
──ガギィッ
怯むことなく殴りかかったアサシンガール。
そのままよろけたキサラに向かって、二本の指で目を潰す。
「貴様ァァァッ」
「視界を奪われたら、それ以上は戦えないでしょ?」
ナイフを引抜き振りかざす少女。
──ガギィィィィン
そこにカタリナが割って入る。
「卑怯だぞっ。戦うなら、もっと正々堂々としたらどうなんだっ」
其の手には、龍華から受け取った紋章剣が握られている。
「私達暗殺者に卑怯もなにもないわ‥‥任務を遂行する為なら、どんなことでも‥‥ね」
そのまま剣を受け流すと、少女はカタリナから間合いを取る。
だが、そこにフォルテシモが怒涛の連撃!!
──ドシュッ
一撃を受けて、少女は身体がよろける。
だが、まだ倒れず、カタリナに向かって激しく突きを叩き込む!!
「もう止めるんだぁぁぁぁぁぁ」
紋章剣を構えたカタリナ。
だが、少女の刃はカタリナまで届かない。
──ブシュュュュュュュュュュッ
気配のみを感じ、キサラがシュライクを叩き込む。
それで、少女はニィッと笑いつつ床に崩れた。
「あは‥‥あはは‥‥これで‥‥解放されるね‥‥お姉ちゃん‥‥」
ガクッ。
静かに息を引き取る少女。
そして残った二人も、その様子を確認すると入ってきた窓から外に飛び出した。
「ウィルさん、いそいで手当を!!」
慌てて少女の元にかけていくウィル。
だが、傷を見て、ウィルは静かに十字を切った。
「キサラさん、傷を‥‥」
幸いなことに眼球損傷ではない。
目蓋を激しく切断し、その血が大量に瞳に流れただけ。
リカバーでそれを手当すると、先に手当を受けていたミストルディンも一行の元にやってくる。
「間に合わなかった‥‥私のメロディ‥‥」
チェルシーはアサシンガール達の襲撃時、素早く印を組み韻を紡いだ。
だが、メロディが発動したのはほんの僅かの時間。
彼女達の魂に問い掛けるには、もう少し長く歌を紡がなくてはならない。
「いたいけな少女に、ここまでの事を‥‥」
拳を握り、そう告げるサラサ。
「許さない‥‥シルバーホーク、私はお前たちを絶対に許さない!!」
サラサの魂の慟哭。
それは店内にいつまでも響き渡っていた。
〜To be continue