●リプレイ本文
●いざ、最終決戦へ〜一人たりないっすよ?〜
──決戦の地というかなんというか
そこは小さな湖の畔。
いくつもの小屋が建てられ、そこからは様々な食材の香りが漂ってくる。
自宅の入り口に張付けられた挑戦状を携えて、エグゼ・クエーサー(ea7191)と愉快な仲間たちはついに到着。
「アイヤ、私達愉快ナ仲間タチアルカ?」
そんな事を呟いているのは操群雷(ea7553)。
「さぁー。兎に角、今日こそ銀鷹至高厨師連と決着をつけないとねー」
燕桂花(ea3501)が静かに肯きつつ、そう呟いている。
そして決戦後である特設キッチンにたどり着いた一行。
「カーーーーーーーーーーッカッカッカッカッカッ。待っていたぞ」
純白の衣裳に身を包み、そう叫ぶのは銀鷹至高厨師連総帥らしい『炎鍋のジャーン 』。
「さて、人質を取り、さらに一方的に挑戦してくるとはいい度胸だ・・・・」
そう叫ぶと、戦う料理人エグゼがジャーンに向かって拳を見せる。
「まずは人質を解放しろ!! 話しはそれからだっ!!」
一方的に叫ぶエグゼに、ジャーンは静かに頷く。
と、フェブリエがロープで縛られたサンディを連れてやってくる。
「すいませんエグゼさん!!」
涙でクシャクシャになった顏でそう叫ぶサンディ。
「くっくっくっ。さて、解放は勝負が終ってからだ。決着の是非に関らず、全てが終わったら人質は解放しよう・・・・」
そう告げると、ジャーンは振り向いてキッチンに向かって歩きだす。
「ちょっと待て!! こっちは一人人数が足りないんだ・・・・俺が代わりに二つの料理を作ってもいいか? 判定が総合評価なら、人数に拘る必要も無いと思うけど?」
そう告げるエグゼに、ジャーンは高らかに笑う。
「かーっかっかっかっ。お前は馬鹿か? 挑戦状には『一人一品』と書いてあっただろう。人数が一人足りないから俺が作ってもいいかだと・・・・」
ゴクッと息を呑む一行。
「なら問いたい。例えば3人チームによる総当たりトーナメントの戦いがあったとしよう。メンバーが足りないから俺一人が総て戦うといって<それでトーナメント出場が認め割られるとでも? 優勝する事が目的の戦いで、それが許されるというのか?」
その言葉には反論の余地も許されない。
「戦わずして勝負ありだな・・・・石碑を全て置いていけ・・・・さもないと」
──ガチャッ
サンディの首筋にナイフが突きつけられる。
「このお嬢ちゃんでフルコースを作る!!」
まさに一触触発。
と、その時。
──ドワワワワワワワワワワワワワワワワワワン
高らかに鳴り響く銅鑼の音。
「その勝負まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そう叫ぶと、馬に跨った一人の貴族が姿を表わす。
「ん、誰だあのおっさん?」
カンター・フスク(ea5283)がそう呟く。
「伝説の美食貴族・・・・アジヴォー・ガイヴァー卿・・・・」
マグダレン・ヴィルルノワ(ea5803)がそう呟く。
と、ガイヴァー卿はツカツカと一行の横を通り過ぎる。
そしてお付きの従者がテーブルセッティングを行うと、そこにどっかりと座り込む。
「さて、この勝負私が見届け人となろう。それでは勝負をはじめて貰う」
一方的にそう告げるガイヴァー。
「この勝負は無効だっ。メンバーが足りないんだぜっ」
「ほほう。足りないセクションを補うのも、プロの料理人としての務めではないのかね?」
そう告げると、ガイヴァーは冒険者達に穏やかな表情を見せる。
「勝負はフルコース。各料理での審査と全ての料理を一つと化すフルコースとしての総合力、それを合わせた総合評価を行う!!」
──ドワワワワーーーーーーーーーン
かくして美食家の一言で、なんとか戦いは始まった模様。
ふぅ・・・・冷や汗がでてきますわ。
●前菜対決
──インドゥーラ出身アイリス参る
「・・・・」
いつものアイリス・ビントゥ(ea7378)ではない。
そこにいるのはフンフフーーンと穏やかに、リラックスして料理を作るアイリスではない。
アイリスの対戦相手は銀鷹至高厨師連四天王の一人『神田・リバー・トシロー』。
鮮やかな手捌きで、四季折折の食材を捌いていく。
ただひたすらに無言。
職人気質の神田は、ただ真剣に目の前の皿に料理を盛り付けていった。
「が・・・・がんばらないと・・・・」
さて。
アイリスの料理はというと、実に家庭料理。
牛乳で臭みを消し、香草で香りをつけて軽くスモークした生肉。
それにぽくぽくした塩ゆで豆を盛り付けて、完成。
シンプルイズベスト。
インドーラの家庭料理をこのノルマンで再現した!!
「あ、あの、い、言っても無駄かもしれないですけど、お、お料理って食べる人を驚かせるだけじゃなくて、つ、作る人も食べる人も幸せになるのがいいと思うんですけど・・・・」
そう告げるアイリスだが、目の前の神田の丁寧な仕事に、途中から心を奪われつつあった。
──そして審査。
「うむ。どちらの料理も甲乙つけがたし・・・・だが!!」
カッと瞳を見開き、ガイヴァー卿が叫ぶ。
「この勝負、神田・リバー・トシローの勝ちとする!!」
●スープ対決
──華国代表・燕桂花参る
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドト
次々と繰り出される華麗なる包丁捌き。
桂花とその対戦相手である四天王の一人、華仙教大国厨士・陳氏。
二人は神速の如き手数で様々な料理を刻みこんでいた。
「刀工は対したものアルね・・・・」
「しふしふー。貴方こそ。その腕、銀鷹至高厨師連にしておくには 惜しいわよっ!!」
さらに両者鍋を手に、火工に入る。
次々と炒められる多彩な食材、そして華麗なる味付けに、一行は瞳が釘付けになる。
ただ一人、群雷を除いて。
「アノフタリ、何を遊ンデイルあるか?」
そしていよいよ料理は最後の仕上げにいる。
素早く熱々の料理をさらに盛り込むと、二人がほぼ同時にテーブルを離れる。
「そこまでっ!! 両者料理を持って参れっ!!」
そのガイヴァー卿の言葉と同時に二人とも会場の隅っこに置かれていた蒸し器から封をしてある壷を持ってくる。
そしてそこから澄み切ったスープを取り出すと、ガイヴァー卿の前に差し出した。
「アイヤ、同じ料理アッタカ」
「まさか、銀鷹至高厨師連でもこの『仏跳牆』を作れる人がいるとはねぇー」
それはまさに至高のスープ。
その香りの良さに、華国では『仏も壁を乗り越えてかけつけた』という名前が付けられている。
「それでは・・・・」
ズズズと味見をするガイヴァー。
──そして審査結果
「この勝負、引分けとするっ!!」
おっとぉ、ここでドローだぁ!!
『ちょっと待った!!』
ここでエグゼとジャーンが物言い。
そしてそれぞれが陳氏と桂花に訪ねる。
『さっき炒めていたこの料理はなんだっ!!』
そう同時に叫ぶ二人に、陳氏と桂花は一言。
「昼飯だが?」
「御昼ご飯☆」
おーーーーーーーーーーーい。
●肉料理
──華仙教大国特級厨士・操群雷推参
「ジビエ(狩猟動物の肉)ヲ味あワズして肉料理を語るナカレ。私ハ柔らかヴェニソン(鹿肉)のローストパイ包み、黒すぐりのソース添えアル」
「ほほう。いいチョイスですね。私は『鴨のロースト、洋なし添え』です」
銀鷹至高厨師連四天王の一人である『板井』が、まずは群雷にそう告げる。
「うんうん、お互いいい選択アルネ。最高の料理を作るアルヨ」
「ええ。それでは始めましょうか」
そこにいるのは二人の料理人。、
戦いの目的を忘れ(おいおい)、最高の料理を作る事に全身全霊を駆けている。
群雷はまず、コトレット(骨付きの背肉)を取り出すと、骨を丁寧に外し食べ易い大きさに切リ、塩、コショウと乾燥タイムとローズマリーの粉を少しすりこんだ。
「火ノ扱いハ、華仙教大国ガ一番アルヨ」
表面に一度強火で焼き色をつける。
口に入れた刹那広がる肉汁を楽しむために。
そして取り外した骨は香味野菜にヒタヒタの水を加え、香りと旨みを抽出し出し汁作り。
さらに煮詰め生クリームと共にソースに。
どんどんと料理が作られていく。
その誉高き香りに、一同はもうお腹の虫がなきっぱなしである。
群雷もまた、最後の付け合わせの野菜を添えて、パイにソースを賭けて出来上がり。
「とどめはコレアルヨ」
カン産シードルをテーブルに置いて、群雷の料理は出来上がり。
そして板井の方も最高の仕上げ。
奇蹟とも言える輝きのキャラメリゼ
程よい香りのワインビネガー
そして鴨から取ったフォン。
仕上げに使われた生クリームとカン産シードルが、実にいいハーモニーを醸し出している。
──そして審査
「旨し!!」
その叫びは1度だけ。
ほんの僅か。
板井氏のキャラメリゼの香りに、違和感があった。
ただそれだけで、勝敗は決まった。
「勝者・群雷!!」
●魚料理
──助っ人その1マグダレン参る
「サポートをお願いしても宜しいでしょうか?」
マグダレンはまず、審査員であるガイヴァー卿にそう申し入れた。
「対戦相手であるジャーン、その方は?」
そう告げると、マグダレンと対戦する炎鍋のジャーンは、静かに肯く。
「ちっ・・・・勝手にしろ」
「うむ、許可する!!」
かくして対決は始まった。
マグダレンの料理は『オマール海老のクロケット』。
ほんのりエストラゴン風味のブリュノワーズ入りドレッシングをかけたエンダイブとコリアンダーが付け合わせ。
かたやジャーンはというと、『新鮮な魚のグラチネ・ノルマン風とウナギのフリッター・赤ワインソース』。
マグダレンは、さっそく下拵えからスタート。
横に着いている群雷が一つ一つサポートに入るが、じっとその光景を見つめつつ手を止めているジャーンの姿が気になる。
「・・・・あの方は、何をしているのかしら?」
そう呟くマグダレン。
厳選された食材を ふんだんに使い、マグダレンは料理を完成。
そしてそれとほぼ同時に、ジャーンは側においてあった籠を投げ棄てると、そこに入っている生きた魚を取り出す。
そして素早く捌くと、じつにシンプル、そして大胆に料理を作りあげていく。
「アイスコフィンで魚を海カラ運ンデキタあるか・・・・」
群雷は瞬時に理解した。
時間が掛かったのは、アイスコフィンが溶けるのを待っていたのである。
「カーッカッカッカッ、その通りだ。生に勝る鮮度は存在しない!! 極限まで生かされたこいつが、俺の切り札だっ!!」
──そして審査結果
「旨し!!」
ここでも旨しは1度のみ。
「勝者、ジャーン・・・・」
その言葉を当然という感じに聞くと、ジャーンはマグダレンのテーブルにやってくると、クロケットを一つ口の中に放り込む。
「ふん。オマールの鮮度と処理がよかったら互角までいけただろうな・・・・」
そう呟くと、落ち込んでいるマグダレンの方をじっと見て、その肩にポン、と手を置く。
「だが、負けは負けだ・・・・カーーーッカッカッカッカッ」
あんた最低。
●サラダ対決
──誰もいない
「・・・・俺の出番だな」
足りないメンバーの代打ちとして登場したのは御存知エグゼ兄い。
「では、銀鷹至高厨師連からは私がお相手します。初めまして、道場六三美(みちば・むつみ)と申します!!」
丁寧に挨拶するジャパンの料理人。
「では、早速相手をしよう!!」
そう告げると、エグゼは次々と食材を集めに走った。
そして大量の食材をテーブルに並べると、それらを一つ一つ吟味していった。
「よし!!」
カチャッと愛刀を片手にかまえると、次々と食材を加工していく。
エグゼの作ろうとしているものはずばり『グローリアスロード改良型サラダ』。
幾多の工夫をかさねて仕上げてこの一品に勝るものはなし!!
一方の六三美もまた、温野菜をベースにしたサラダを作っていくが・・・・。
──審査結果
「ふむ。イイ感じに仕上がっている。飾り包丁も文句無し・・・・勝者、エグゼ!!」
ここは妥当な戦でした。
●デザート対決
──助っ人その2・カンター参る
「さて・・・・」
大量の食材の納められている倉庫を一つ一つ回り、カンターは腰に手を当てて考えていた。
「さて・・・・彼女の困った顔を見たくはなかったからなぁ・・・・」
卵、小麦粉・・・・紅茶の葉・・・・
一つ一つを吟味しつつ、カンターは最後にそこに置いてある果物を殆ど持って外に出ていった。
「さて・・・・それでは、勝負を始めましょうかぁ♪〜」
カンターの対戦相手は、銀鷹至高厨師連フルーツ担当『イッシーナー・ヴェー』。
銀色のショートカットが良く似合うエルフの少女。
その吸い込まれそうな青い瞳、プリティなそばかすに、カンターの顎が外れそうになる。
(ば、馬鹿な・・・・そっくりだぞ・・・・)
一瞬動揺したらしく、カンターの鼓動が高まる。
「はわわーーーーーー。それでは始めましょうかーー」
呑気にそう告げると、イッシーナは卵をボールに割りいれていく。
(落ち着け・・・・落ち着け僕・・・・アイツは敵なんだ。似ているだけで彼女じゃない・・・・)
なんとか心の動揺を沈めると、カンターはさっそく料理開始!!
一心不乱にデザートを作っていくその姿はまさに鬼神の如し。
なんとか二つのデザートを仕上げたとき・・・・。
──ドンガラガッシャーーーーーン
イッシーナが暑い鍋を掴んでしまったらしく、それをひっくり返してしまう。
「ぐすっ・・・・失敗しちゃった・・・・」
涙を必死に堪えるイッシーナ。
「だ、大丈夫か?」
さすがに対戦相手とはいえ、相手は少女。
カンターは静かに声を掛けると、そのままイッシーナの火傷した右手を急いで水瓶の中に入れる。
「ぐすっ・・・・もう無理ですぅ〜。この勝負辞退しますぅ〜ぐすっぐすっ・・・・」
そう泣きじゃくる少女に、カンターは優しく声をかける。
「勝負はやってみないと判らないだろう? さぁ、出来るどころまで頑張るんだ」
そう励ますカンターに、イッシーナは抱きつく。
「ありがとうですぅ〜」
──フニフニッ
カンターの身体に、イッシーナの軟らかい二つの胸が・・・・いやいや。
そして試合は再開となったが。
「えーっと。ああ、確か・・・・」
おっと、カンターの動きが突然鈍くなる。
(おちつけー。落ち着け僕)
必死に自分にそう叫ぶカンターだが、とうとう最後の一品は完成しなかった模様。
──そして審査結果
「ふむ、両者共に二つのデザート・・・・味は互角。双方引分けとする!!」
カンター、料理ではなく心理戦に負ける。
そしてとりあえず合掌。
●ドリンク対決
──御存知フェリーナ参る
とぼとぼと戻ってきたカンターに力一杯説教? をしてから、いよいよフェリーナ・フェタ(ea5066)出撃。
きりりと絞めたエチゴヤエプロン。
丁寧に手を洗い、静かにテーブルにつく。
銀鷹至高厨師連からは、アイマスクを付けた男が登場。
(外見に惑わされてはだめね。カンターみたいに、料理以外の方法で邪魔してくる可能性もあるから・・・・)
そう心の中で喝を入れると、フェリーナは早速料理開始!!
まずはお湯を沸かす為の井戸水を調達すると、その組んできた水を布巾で漉す。
それを木製の温められたマグに注ぐと、さらに新鮮なハチミツをトローリと垂らして出来上がり。
「ガイヴァー卿。このドリンクは温かいうちでなくては駄目なんですッ」
そう叫ぶと、そのままいきなり試飲をしてもらうフェリーナ。
「ふむ。どれどれ・・・・」
──グイッ
静かにそれを一口。
そしてもう一口。
「なかなかだな。次の奴も愉しみにしているぞ・・・・」
そう告げられると、フェリーナはそのままテーブルに戻る。
と、それと入れ違いに、マスクの男がドリンクを手にガイヴァー卿の元にやっていく。
「私のもお願いします。これ一品以外は作りませんので、すぐに・・・・」
そう告げられると、ガイヴァー卿はそれを一口。
──ゴクッ
「旨し!! これは一体・・・・」
いきなり旨しキターーーーーーーーーーーー。
「グローリアスロード。私達の手に入れている石碑には、この『奇蹟の水』の作り方が記されていました。その方法を忠実に再現してみただけですから・・・・」
だが、フェリーナも負けてはいなかった。
二つめのドリンクの作成に入る。
その日の朝に取れたてのミルクをお鍋で温めるフェリーナ。
「慌てない慌てない。向こうで旨しがでたのなら、私はそれを上待った言葉をね・・・・」
動揺するそぶりすらなく、フェリーナはマイペースで料理を作る。
ミルクを温めている最中に、チーズを削り入れて、よく溶かす。
そしてチーズが溶けたら火を止めて、カリカリに焼いたパンを小さく小さく切ったものと、パセリをみじん切りにしたものを浮かべる。
「お待たせしました・・・・」
そのホットミルクを受け取ると、ガイヴァー卿はズズズと一呑み。
──カッ
「うむ、旨し!!」
なんとぉ。
「全体のバランスがよくとれている。うむうむ」
その言葉でフェリーナの負けはなくなった。
そしてさらにもう一品・・・・とおもったが時間切れ。
「双方、引分けとする!!」
旨しのダブルで引分け。
恐るべしドリンク勝負
●パン対決
──オーラス、エグゼ参る
銀鷹至高厨師連の代表はカズゥマ。
まだ若い青年が、エグゼとの対決となったもよう。
まずはエグゼ。
のんびりとシチューに使う食材を切り分けると、まずは大鍋にバターを溶かす。
「・・・・料理は愛情!!」
そのまま一気に時間をかけて、エグゼは『愛のシチュー』を完成させる。
それに付け合わせるオーソドックスなパンを焼くと、それをまずはガイヴァー卿に差し出す。
「さあ、温かいうちに食べてくれ」
うむと肯くと、ガイヴァー今日はまずはパンを一口。
「うーむ。実にオーソドックス、シンプル。それ以上でもそれ以下でも無い。うまくもなくまずくもなく・・・・普通のパンだな」
「ところが、俺のパンはシチューと食べるとさらに旨味がますんだぜ!!」
そう告げられて、ガイヴァー卿はパンを一口。
「うーーーーーーーーむ。シチューに逢うパンだな。それ以上でもそれ以下でもない・・・・シンプルイズベストだな・・・・」
それ以上の評価はない。
そしてカズゥマがガイヴァー卿の元に焼きたてのパンを持ってくる。
その香り高いパンに、エグゼもフラフラと引かれてしまっていた。
「これは・・・・モグッ」
一口ほおばると、そのまま一気に呑み込む。
「長期自然醗酵・・・・ざっと生地を10日ほどかけて醗酵させたな・・・・」
その通り。
「ああ。厳選されたライ麦を刈って焼いた奴じゃ!! どんな料理にもあうように、作ってある。なんなら、うちのメンバーの作った料理と合わせて見てもいいいぞ!!」
その言葉で勝敗は決した。
──審査結果
「うむ、文句無し、勝者カズゥマ!!」
「・・・・納得行かないような・・・・」
そう呟くエグゼに、ガイヴァーが一言。
「もし、この審査が魚料理で、シチューの具材に魚を使っていたらエグゼの勝ちだったな・・・・ということだ」
ああ、成る程。
ジャンルミスね。
ということで、個人別の審査は終了。
そしていよいよ最終審査であった。
●どういうことだっ!!
──審査会場
「それでは最終審査結果を報告する・・・・」
そう告げるガイヴァー卿に、一行は静かに視線を送る。
「総合評価はドロー。この勝負引分けとする!! よって石碑の移動はなし。双方、真の料理人ならば、ここでお互いの健闘を称えて情報の交換を行うがよい!!」
その審査結果に、とりあえず納得する一行。
ただ一人、炎鍋のジャーンだけが帽子を大地に叩きつけて其の場からいなくなってしまったが。
そして無事にサンディも解放され、その場に居合わせた一行は、お互いの料理に舌鼓を打つ。
そして互いの石碑の文字を写し取ると、次の戦い、再戦を約束して其の場から立ちさって行った。
・・・・
「ガイヴァー卿、ヒトツキイテヨイアルカ?」
群雷がそう問い掛ける。
「うむ」
「どうして引分けアル? どう見ても向うの料理とこっちの料理を比較シテモ、こちらノほうかブが悪かたアル。ナノニ何故?」
その問い掛けに、ガイヴァー卿は一言。
「通して食べてみるとよく判る・・・・」
それだけを告げて、立ちさって行った。
──そして
いよいよ全ての石碑(一部写本のみ)が揃った。
いよいよここに記されたものを全て作ることができるのである。
あとは、その為の場所と、それに相応しいシチュエーションだけである。
〜To be continue