【ノルマン一番】太った鶏

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:4〜8lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月15日〜10月22日

リプレイ公開日:2005年10月23日

●オープニング

──事件の冒頭
「‥‥駄目だ‥‥どうしても、上質な胆が作れない‥‥」
 ノルマン南方、とある村。
 その地方の領主は大層美食家で、月に1度、領内の腕利きの料理人達を集めてはその腕を競わせていた。
 その勝負に勝つと得られる報酬は、かれら農民にとっては一年間の生活を保障されるほど。
 たった1度の勝利が生活を豊かにするのである。
 そのため、どの家でも料理の腕を鍛え、なんとかその勝負に勝とうとしていた。
 そしてそのような料理人とは別に、もう一つの勝負があった。
 
 領主は鳥料理が好き。
 そのため、勝負に使われる食材も、よりよいものを求められていた。

 彼女の家は、代々鳥をあつかっている。
 ニワトリ、ガチョウ、キジなどなど。
 自宅の柵の中で飼育しているものもあれば、森に狩りに出かける事もある。
 そしてそこで育てられたガチョウの胆、即ち良質の『フォアグラ』は、毎月領主を満足させるほどのものであったのだが。
 先日、彼女の父が流行病で死亡した。
 母は彼女が生まれてまもなくこの世を去った。
 だが、独りぽっちになった彼女は、哀しんでいる暇は無かった。
 次の料理対決に使われる食材、フォアグラが作れないのである。

「どうしよう‥‥このままだと、今月の料理対決にまにあわない‥‥」
 庭で餌を突いている太ったニワトリをじっと眺めつつ、彼女はボソッと呟いていた。

●今回の参加者

 ea3501 燕 桂花(28歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea5066 フェリーナ・フェタ(24歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ロシア王国)
 ea5741 ハルカ・ヴォルティール(19歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea7191 エグゼ・クエーサー(36歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea7378 アイリス・ビントゥ(34歳・♀・ファイター・ジャイアント・インドゥーラ国)
 ea7553 操 群雷(58歳・♂・ファイター・ドワーフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

●鳥酉禽、とにかく鶏っ〜けたたましい村〜
──とある村
 グローリアスロードの手掛りを求めて、やってきました冒険者一行。
 ちなみに到着したのは夕方というか夜。
 一行はそのままサンディの用意してくれたテントで一晩明かしたのだが‥‥。
──コケーーーーーーーーーーーーーッ
 朝一番のニワトリの鳴き声に、一行は問答無用で叩き起こされてしまった。
「ふわわわわわ‥‥おはようございますー。ムニャムニャ」
「しふしふ‥‥とり‥‥とり‥‥わたしの鶏‥‥どこ‥‥」
 寝惚け眼をこすりつつ、井戸まで顔を洗いに向かうのはフェリーナ・フェタ(ea5066)。
 その横を半分眠りつつフラフラと飛んで行く燕桂花(ea3501)。
「うはぁ‥‥もう朝か‥‥ゆっくりと寝た気分がしないなぁ‥‥」
 テントの外で、グィッと身体を延ばすエグゼ・クエーサー(ea7191)に、焚火の前でお茶を入れていた操群雷(ea7553)がマグを差し出す。
「朝一ノ仕込み、料理人ノ基本アル‥‥目ガ覚めるアルヨ?」
 エグゼはそのマグから漂ってくる香りに頭を捻る。
「ハーブティー? いや、違うな‥‥ハーブティーならもっと、こう、パーットいう香りが‥‥」
 そのままゆっくりと口を付けると、そのまま咽の奥に流し込む。
 そして飲み干したマグの中に、花が咲いているのに気が付いた。
「華国ノ花茶アルヨ。サンディ小姐の店の倉庫ニ在った奴、少しだけ譲ってもらったアルヨ」
 ズズズと飲み干すと、エグゼはようやく眠気から解放された。
 そして同じく、顔を洗ってさっぱりした桂花とフェリーナも合流。
「えっと‥‥あの‥‥おはようございます‥‥」
 そう呟きつつ、アイリス・ビントゥ(ea7378)はようやく起床。 
 とててててーっと走って井戸に向かう。
「‥‥いい場所ねー。森と川が近くて」
──コケッ
「ああ。まったくいい所だな。パリの喧騒からはなれているからなぁ」
──コケコケコケッ
「こんな朝早くニ起キタのも久しぶりリアルカ?」
──コケツンツンツンツンツンツンツンツンツンツン
 いつの間にやら、一行の周囲には丸々と太ったニワトリが徘徊し始めた。
「‥‥あ、ごめんなさいねー。うちのニワトリの遊び場なのよー」
 そう話しつつ姿を表わしたのは一人の女性。
「いえ、わたしたちこそすいません。すぐに移りますね?」
「あ、構いませんわよ」
 フェリーナがそう告げるが、女性はにこやかにそう返してくる。
「それにしても‥‥随分と太ったニワトリだなぁ?」
 むんずと一羽捕まえると、エグゼがその重さに目を丸くしている。
「ガチョウの餌と一緒だから、太っちゃったのよねぇ‥‥」
 そう告げると、女性はハァ‥‥と溜め息一つ。
「ガチョウ、小姐ハフォアグラ作っているアルカ?」
「ええ。代々うちの家系はね‥‥それで困ったことになっちゃったのよ‥‥」
 そう呟く女性。
「良かったら、話を効かせてくれないか? 俺たちで良かったら‥‥」

──閑話休題

「で、その料理対決が明日なのか‥‥」
 どっかりと椅子に座り、腕を組んでそう呟くエグゼ。って、話早ーっ。
「ふむ。トリアエズ、その領主ガ何か私達ノ知りたい情報モッテイル可能性大アルネ」
「なら、やるしかないだろう?」
 もっともらしい事を告げる群雷と、ポンと手を叩いてそう叫ぶエグゼであった。


●そして当日〜フォアーーーーーーーーッ、グラ?〜
──フォアグラ対決会場
 ザワザワザワザワ
 対決の場所は領主の舘の庭。
 大勢のギャラリーが詰め寄せ、今か今かと対決を愉しみに待っている。
 飛び入り参加の冒険者チームは、隅っこに追いやられてしまい、小さくなって開始の合図を待っていた。
──カツカツカツカツ
 やがて、会場の中央に作られた審査員席に、4名の貴族が静かに座った。
「しふしふーーーーーー。えー、ごほん。それでは今回の対決に辺り、審査員を紹介しましょう」
 司会のシフールが声たからかに叫ぶ。
 そして一人ずつ紹介されたのだが、どの貴族もみたことのない人物ばかりであった。
 ただ一人、最後に紹介された貴族を除いて。
「私がアジヴォー・ガイヴァーである!!」
──ガタッ
 その怒涛の叫びに、冒険者一同は椅子から崩れ落ちた。
「あ‥‥またガイヴァー卿だ‥‥」
「しふしふー。またあの人の派手なリアクション見るのかー」
 アイリスと桂花が同時に溜め息。
 と、どうやらガイヴァー卿も一向確認した姿を模様。
「おお、エグゼ殿ではないか‥‥まさか貴公達も参加していたとはな‥‥愉しみにしているぞ!!」
 その声に、参加者達が一斉にエグゼ達の方を注目する。
「エグゼって言ったよなぁ‥‥」
「おい、ひょっとしてあのシフール、『鉄観音の桂花』じゃないか? どんなモンスターも一瞬で食材にしてしまうという‥‥」
「あれは群雷? あの伝説の華仙教大国でも屈指の実力を持つという‥‥伝説の厨士だろ!!」
「そのよこのエプロンっ子は? 噂ではかなりの腕を持つ‥‥ああ、確かフェリーナとかいう‥‥えっと‥‥エグゼの愛人だったな?」
「愛人だ」
「ほほう、あれが‥‥と、その横の異国の少女は‥‥まさか!!」
「噂のアイリスか?」
「ああ‥‥アイリスだな」
「ほほう‥‥あの子がアイリス殿か‥‥」
「確か兄上が破壊僧だとかで‥‥」
「ほほう‥‥」

 そんな喧騒なんのその。
「て、鉄観音って何?」
「アイヤ、ワタシ伝説の厨士アル‥‥否定しないアルケドネ」
「あ、愛人って‥‥婚約者さんに怒られるわ‥‥」
「‥‥あ‥‥えっと‥‥何か‥‥」
 以上、動揺する桂花、群雷、フェリーナ、アイリスでした。
「‥‥で、俺様は‥‥俺様はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 あ、エグゼが切れた。
「‥‥あの横のエプロンの兄さんが‥‥まさかエグゼじゃないよなぁ?」
「俺が聞いた噂では、身の丈3m近い巨人だとか。斬罵刀を包丁のように振りまわすとか‥‥」
「いやいや、ワタシの聞いた話では、ラージドラゴンすら一撃で仕留める事の出来る伝説の包丁をもっているらしいですぞ‥‥」
 そんな噂もなんのその‥‥。
「ちがーーーーーーーーうっ」
 絶叫して前に出るエグゼ。
「パリの冒険者料理人筆頭ことエプロンお兄ちゃん・エグゼ参上っ!」
『おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ』
 会場から感嘆の声があがる。
「彼が噂のボンバーマスター‥‥」
 いや、それは違う。
 そんなこんなで騒ぎも収まり、いよいよフォアグラ料理対決は始まった!!

──ドワワワワーーーーーーーーーン
 まずはエグゼ。
 いきなり籠に入っている太ったニワトリを捌く。
 鮮血が吹きでる中、巧く血抜きをしてニワトリを捌く。
 その横では、群雷が素様しいスピードでエグゼの処理したニワトリの肉を次々と腑分け。
 それを桂花が受け取りさらに仕分け、細かい部位に斬り分けていく。
 そしてアイリスはそれを一人分ずつ丁寧に皿に移し、それぞれのテーブルに持っていく。
 そしてフェリーナは‥‥血の匂いにやられてノックアウト。
「冒険者として、色々なところを歩いてきたけれど‥‥この匂いは駄目っ!!」
 あー、ちなみに今締められたニワトリとガチョウ、軽く見積もっても会場だけで100以上。
 それが一斉にとなると、それはもう‥‥ね。
 
 さて、それでは各テーブルの様子を見ていきましょう。
 まずはリーダー、ボンバーコックことエグゼ。
「誰がボンバーだっ‥‥」
 そんな呟きは放置して。
 太ったニワトリ。
 それをフォアグラの代用品として使う。
 他の参加者達からは嘲笑の声があがるが、ガイヴァー卿だけは、真剣な目つきでじっと見ていた。
 最初に、白く太ったレバーを塩もみする。
 そのあとレバーをフライパンでソテー。
 そのレバーソテーをパイ生地に包んで、会場に作られた巨大オーブンで焼き上げる。
──グツグツグツグツ
 その最中、エグゼは上等のワインを使った濃厚な赤いソースを作成。
「よし‥‥これでいい‥‥」
 エグゼ特製『白レバーのパイ包み焼き』完成!!

──フェリーナ
 そしてその横では。
「よいしょ、よいしょ‥‥」
 エグゼの使い残しの白レバーを串に刺し、炭火でじっくりと焼き上げるフェリーナ。
 ちなみに味付けは、サンディの家に寝かせてあった、ジャパン伝来の甘しょっぱいタレ。
 トローリとしたタレに付けては──、また焙るという、実に素朴な料理を作っていた。
「タレの焦げたいい匂いがしてきて‥‥いい感じだねっ」
 うむ。まったくである。

──鉄観音の桂花
 さて、同時進行ちょっと前。
 まずは小さいウズラを捌く桂花。
「これをこうして‥‥と‥‥」
 そのウズラの腹の中に、米とゆで卵を積めこむ。
 それをさらに、大きめのニワトリの腹の中に詰め込むと、卵白と岩塩の砕いたものを混ぜあわせ、ペタペタとニワトリの周りに張付けていく。
「これで‥‥よし!!」
 そのままオーブンに入れてじっくりと焼き上げていく。
 その間に、桂花はニワトリの白レバーを蒸して裏ごしし、華国の調味料で味を整えてソースを作成。
 桂花特製、『3代鶏岩塩焼』の完成である!!

──華国特級厨士? 
「サテ‥‥コノ粒胡椒ヲ使って‥‥」
 無理は承知でサンディに頼み込み、どうにか調達してもらった異国の香辛料。
 それらを次々と合わせていくと、群雷は鶏ガラと玉葱、月桂葉、パセリなどの香草、そして粒胡椒でチキンブイヨンを作成。
 マシュルームを初めとした茸と蕪は食べ易く切り、完成したブイヨンでじっくりと味を含ませていく。
 そしてデブ鶏の肥大した肝臓をフォアグラとして代用、残った血管を丁寧に箸で取り除きザルで裏ごし。
 味を調え生クリームを混ぜる。
 ムースの如く柔らかく滑らかく。
 奥の深い味わいを目指す群雷。

 そして時間をかけてじっくりと仕上げ。
 蒸し器から香りが立ち上がり、いよいよ完成。
 群雷特製『鶏白レバーのロワイヤル(洋風茶碗蒸し)蕪と茸のチキンブイヨンスープかけ』の完成である。

──オチ
「い、インドゥーラの鳥料理は世界い‥‥いや、やっぱりやめます‥‥」
 コトコトと煮込んだ香辛料。
 その横では、腹の中に様々鳴きのみを作ったピラフを詰め込まれ、じっくりと焼かれた丸鶏が置かれている。
「これを‥‥こうして‥‥」
 そしてその丸鶏に仕上がったカリーをソースのように掛けて完成!!
「インドゥーラの家庭料理‥‥えっと、丸鶏カリーです‥‥」
 だそうで。

──そして試食
 正直に告げよう。
 普段からフォアグラを食べて馴れている貴族達。
 その貴族達の口にあうように、参加者達は様々な工夫を凝らしていた。
 だが、それは一定のラインを越える事が出来ず、貴族達の舌を満足させることは出来なかった‥‥。
 だが、冒険者達の料理には、一同感激していた。
 なにせ、ガチョウのフォアグラとは味わいも黒も違う『白レバー』。
 それを、さらに異国の調味料を使い、彼等の食べたことのない料理を作ってみせたのである。
 ちなみにガイヴァー卿も『旨し!!』の連発。
 満場一致で、冒険者チームの勝利が決定した。
 そして彼等に『白レバー』を食材として提供していた女性にも、莫大な賞金と『ふとっちょ鶏』を増やす為の資金援助が決定した。
 そして。


●グローリアスロードの手掛り〜ああっ‥‥マジかよ‥‥〜
 さて。
 翌日冒険者一行は、主催者である領主の元を訪れていた。
 目的はグローリアスロードの手掛り。
 先日のうでまえ、 美味しい料理に魅了されてしまった領主は、そのまま冒険者達を応接間に通すと、群雷の問いに静かに答えた。
「グローリアスロードの石碑。私はそれらが全て揃っている遺跡を知っています‥‥」
「アイヤ!!」
「そ、それは何処なんですか!! それに全て揃っているッて、一体どういう事なんですか!!」
 絶叫する群雷とエグゼ。
「あれは元々、全ての料理をコースで食べるものではありません。ただ、食べた事でそれぞれの料理の作用が働き、まったく新しい作用が発生するそうなのです‥‥」
 そう告げる領主。
「それがグローリアスロード。皇帝の晩餐ですか」
 そう告げるフェリーナに肯く領主。
「ぇっと‥‥それで、その石碑が全てある所は‥‥何処でしょうか‥‥」
 そう問い掛けるアイリス。
「確か、パリの考古学者の倉庫でしたね。私も色々とそっちに興味がありまして、1度その方の研究成果を見せて貰った事があるのですよ。その時に、石版が総べてそこに置いてありましたよ‥‥」
 パリの考古学者。
 そて、そんなものを集めているような酔狂な考古学者とは一体だれか?
 多分ミハイル教授なのか?

 なお。
 今回、サンディは出発前日に風邪をこじらせてしまい、自宅で静かに療養中であったとさ‥‥。

〜To be continue