●リプレイ本文
●はーいはいはい、いらっしゃいませー
──冒険者酒場『マスカード』
面接も全てクリアし、いよいよ王国歌劇団・闇組が本格的に始動。
普段はマスカレードでのアルバイトを行なうらしく、光組と闇組が別々のシフトで店内に常駐しているようであるが‥‥。
「あらーん。お触りは禁止よっ!!」
色っぽい声をあげつつ、巧みに酔狂客を裁いているのはガブリエル・プリメーラ(ea1671)。
君が接客するだけで、客はここが酒場で無く別の店に誤解しているようであるが‥‥。
「マダム。本日は上等なお酒がございますが‥‥いかがでしょうか?」
120%の笑みを浮かべ、ラシュディア・バルトン(ea4107)は年配女性客相手に売り込み続行中。
「あら‥‥貴方は新人さん?」
「はい。サービス担当のラシュディアと申します」
丁寧な口調でそう返答を返すラシュディア。
「そうねぇ‥‥じゃあ、貴方の入店祝いに一本いれましょうね」
意外といい男っぷりを発揮するラシュディアに、気を良くした奥様である。
「ありがとうございます。店長『銘酒・ヘタレンジャー』入りました!!」
あ。江戸村の酒だ。
──店の裏
カンカンカンカン
ハンマー片手にオラース・カノーヴァ(ea3486)は、壊れた椅子の補修作業。
「全く。この店では、物を大切に使うという心がないのかねぇ‥‥あーあ。もったいないじゃん‥‥」
時間の空いていたオラースは、そのまま裏方作業へとシフトを移動。
店内備品等の補修作業を行なっている。
やがてその作業が終了すると、裏口から店内に戻り、今度は接客へとシフト。
マダムキラーのラシュディアと並ぶ、レディキラーのスマイル。
愛想笑いのあまりない表情はやがて、張り付いたクォータースマイルへと変化。
澄ました振る舞いにぶっきらぼうな言い回し。
そんなワイルドさが結構評判?
その対極にいるのが、男性用の衣服を身につけたスニア・ロランド(ea5929)。
その外見はすでに女性ではなく『麗人』。
「お待たせしました。兎のシチューです」
ニコリと微笑むスニア。
決して媚びる事無く、自然に客をあしらう。
そしてバックでは、リュシエンヌ・アルビレオ(ea6320)が静かに歌を奏でる。
その美声に観客は心地好い時間を約束された。
──パンパン
手を叩きつつ、ランディ・マクファーレン(ea1702)が店内に戻ってくる。
「ご苦労様です‥‥」
カウンターからは、マスターであるマスカレードがランディにそう声をかけた。
「まあ、酔っぱらい客というのはあんなものだろう?」
酔っ払った挙げ句に別の客と喧嘩を始めた不良客を、ランディが『腕ずく』で店外に放り出したのである。
流石にそれには客も腹を立ててランディに食って掛かったらしいが、ランディはそんな事気にもせず、さらに酔っぱらいを手玉に取って楽しんできた模様。
光組シフトと、闇組シフトでは客層が全く異なっている。
若く生き生きとした女性が中心の光組では、やはり男性客が多い。
だが、闇組シフトでは、落ち着いた雰囲気を求めてくる女性客や、年長の客が圧倒的に多かった。
●闇組行動開始〜ヴォルフ自治区〜
──道中
ガブリエルとオラースの二人は冒険商人に扮してグレイファントム領へと向う。
そして自治区への出入り許可を得る為に領内の商人ギルドに向かい、許可証を受け取ると、そのまま街道沿いにのんびりと自治区へと向う。
幸いなことに、二人とも商人ギルドの会員証を持っていた為、事はスムーズに進んだ。
「随分と森が深いわね‥‥」
「領中央とは、全然大違いじゃんか‥‥確かに」
魔獣兵団を隠すにはいい感じであると、オラースは呟くように言葉を吐いた。
確かに、領中央とは違い、ここは森がかなり深い。
さらに未探索地域とも接合しているエリアもあり、二人はのんびりと自治区へと向かっていった。
──自治区潜入
とりあえず酒場兼宿屋に泊まることにした二人は、そのまま酒場で早めの食事を取る。
明日には商人ギルドに赴いて、色々と話を聞いてこなくてはならない。
酒場の一角で二人は、静かに周囲の客の話し声に耳を傾けていた。
『で、訓練状況は‥‥』
『まあまあだな。出荷までまだ時間はある。どのみち、限界まで強くしないと、あの冒険者を確実に殺せないだろう?』
そんなひそひそ話が聞こえてくる。
その声に、二人は意識を集中する。
『ああ。でも、暫くは人間相手のトーナメントだろう? こっちの荷物はまだ先の筈なのにな‥‥』
『クライアント側の意向だからなぁ‥‥と、そろそろ夜回りに戻るぜ』
『そうだな。また何時、森の奥から魔物が出てくるか判らないしなぁ‥‥』
そのまま勘定を済ませると、二人はそのまま酒場を後にした。
「親父、今出て行った二人は自警団かい?」
オラースがそう問い掛ける。
「ああ。でもどうしてだい?」
頭を捻りつつそう問い返す酒場の親父に、オラースは商人ギルドの会員証と自治区への通行許可証を見せる。
「まあ、そこそこな装備を身につけていたからな。この辺りでは、あのクラスの武具が売れるのか?」
そう告げると、親父は近くに置いてあったらしい木のマグを手に取ると、そのまま中に入っていたらしいエールをぐいっと飲み干す。
「ははあ、武具の売り込みかい。だったら諦めな。この先には『鍛冶屋ばかり集っている村』があるんだ。この辺りの武具は全てそこで作られているからねぇ‥‥」
「その村まではどれぐらいだ?」
「半日って所だな。朝一番で出たら夕方までには付くだろうさ‥‥」
その二人のやり取りをガブリエルはじっと聞いていた。
──翌日
二人は商人ギルドに顔を出した。
昨日の酒場での親父の話を元に、ヴォルフ卿の兵や時地区内の自警団に装備を卸したであろう武器屋、工房についての話を聞いていた。
「ああ、鍛冶屋の村だな。この辺りの武具は全てあそこから卸ろされているからねぇ‥‥。この剣も、こっちもそうだぜ」
ギルド員が近くに置いてあった剣を手にそう告げる。
「ちょっと見せて頂いて宜しいかしら?」
「ああ。どうぞどうぞ」
そのままガブリエルは剣を引き抜く。
鮮やかな仕上がり、輝きも良い。
だが、オラースはそれが『二級品程度』の仕上がりであることを見抜いた。
「俺にも見せて欲しいじゃん」
カチャッと剣を手にするオラース。
(外見はいいが、あまり良い素材を使ってはいないな。打ち合った時に先に壊れるのはこっちだな‥‥しかし‥‥どうしてこんな粗悪品を?)
顔には出さないが、オラースはそう思いつつ剣を鞘にしまい込む。
「なかなかじゃんか。ヴォルフ卿付きの騎士団とかも、この武具を使っているのかい?」
「ああ。訓練もそれでね」
「見たいな。話を付けて貰えるか?」
そう話を振るオラース。
だが、ギルド員は頭を左右に振った。
「訓練とかは一般公開されていないんだよ。ヴォルフ卿の所の騎士団は、卿の舘のなか、ほら、あの巨大な城門の向うなんだ。城門といっても、高い壁で仕切られているだけなんだけれどね」
そう街道の先に広がる門を指差すギルド員。
「あれは? なにか古い建物の跡を使っているのですか?」
ガブリエルがそう問い掛ける。
「ねーちゃん鋭いねぇ。遺跡とまではいかないけれど、昔の建物をそのまま使っているらしいんだ。このあたりはよく魔物が襲って来るから、有事の際には、村人はあの中に避難して巨大な門を閉じるっていうしくみさ‥‥」
そのまま暫くは他愛もない話を続ける二人。
そしてある程度時間がたったら、二人は『鍛冶屋の村』へと向かった。
●バルタザール自治区〜これが正式名称です〜
──バルタザール自治区
この地を納めているバルタザール卿の紋章が『黒薔薇』の為、この地区は正式名称ではなく『ブラックローズ自治区』と呼ばれているらしい。
スニアとリュシエンヌの二人は、『お気楽極楽騎士とそれに振回されている通訳』という設定で自治区内を歩いている。
その目的はチャイルドファーム『セーヌ・ダンファン』の発見。
自治区内にある森を彷徨い、ふらふらと調査を続ける二人。
と、その途中で、一本の街道とそれに繋がる村、さらにその向うに小さな湖畔が広がっている所にたどり着いた。
「はあぁ‥‥水だぁ‥‥」
ふらふらと演技しつつスニアが村へと足を進める。
「ちょ、ちょっと待ってくださいってばっ!!」
同じく演技しつつスニアを追いかけるリュシエンヌ。
そのまま村に入ろうとしたのだが。
──ドカッ
入り口のところに二人の男が姿を出した。
「ここから先には『通行許可証』が必要だが、お嬢さん達、それをお持ちかね?」
丁寧な口調でそう告げる男。
「はぁ‥‥つーこーきょかちょー? それはなんですかぁ‥‥」
ゲルマン語を理解していないフリを続けるスニア。
その横では、リュシエンヌがラテン語でその事を告げる。
どうやら漢達にはラテン語は理解できていないらしい。
『この先が噂のセーヌ・ダンファンね。けれど、警戒は厳重だし、どうするかしら?』
『強行突破‥‥したら確実に殺されるわよね。一旦引いて、別ルートから行きましょう?』
そう告げたあと、スニアはポン、と手を叩く。
「きゅかちょー、もっていませーん」
「私達は『植物研究家』なのです。この辺りに珍しい植物が自生していないか見にやってきたのですが、なんとか通して頂けないか?」
だが、答えはNo。
「なら残念だが、ここからは通すことは出来ない」
「あのー、どうしてきょかちょーがいるのですかぁ?」
スニアがキョトンとした表情でそう問い掛ける。
「ここから先はバルタザール卿の私有地である。いまは奥方様が病気療養の為静養している。見知らぬ者は通すことまかりならぬ」
そう告げられると、なにも言えない。
二人はふらふらと其の場を後にした。
●旧シルバーホーク領〜現プロスト領辺境自治区〜
──でもプロスト城
「今は全て私が治めています。このプロスト領は元々、別の貴族が治めていた土地でした。先代はシルバーホークの血の流れ。ですが病気の為に解任となり、彼の息子であるシルバーホークと私のどちらかが、この地を治めるようにという事になったのです‥‥」
静かに言葉を綴っているのはレナード・プロスト卿。
彼の執務室には、ランディとラシュディアの二人が椅子に座り、プロスト卿と色々と話を行なっている模様。
「シフール便で送ったが、手紙に書いておいた件について説明をして頂きたいのだが」
ランディは静かにそう問い掛けた。
「元シルバーホーク自治区の事ですね。私と彼は、元々はこの領地の中で、それぞれ自治区を預かっていました。彼が受け持っていた地域は、プロスト領の外れ、グレイファントム領との密接地域です。小さな村が二つ、それに繋がる小さな街が一つ。昔から争い事もなにもない、平和な地域でした‥‥」
なにかを思い出すようにそう告げるプロスト卿。
「でした‥‥って事は、今はそうではないということなのか?」
ラシュディアがそう問い掛ける。
「その街と村は‥‥今はもう存在していないのです。あの街と村は、彼の手によって‥‥今はただ、誰もすんでいない廃村と、人の住まう気配のない街が存在しているだけです‥‥。あの土地は、忌まわしい記憶とともに、過去に封印されてしまっているのです‥‥」
一体なにがあったのか、その真意を問いただしたいラシュディアとランディ。
「教えて欲しい!! 全てを」
「そのために、俺達はここに来たんだ。王国歌劇団は、シルバホークと戦う為に作られた組織。俺たち闇組は諜報部隊として活動している。頼む!!」
ラシュディアに続きランディが熱弁を振るう。
「‥‥実際に村にいくといいでしょう。私からは、伝えたくない‥‥あの土地を思い出すと、シルバーホークの行った非道な行動、それに対する怒りがさらに蘇る‥‥もし私に若さがあったなら、今一度、私は彼を追いかけていたかもしれない‥‥だが、この土地を治める立場となってしまった以上、私はもう動けない‥‥」
悲痛な心の叫び。
──!!
と、ラシュディアはふと、自分達を監視しているような視線を感じた。
ガバッと後ろを振り向くが、怪しい気配はなにもない。
「どうかしましたか?」
そう問い掛けるプロスト卿。
「いや、別に‥‥」
そう呟いてはみるものの、ラシュディアは嫌な予感がしてならない。
(シルバーホークはこのプロスト領では手を出してこない筈‥‥ということは、もっと別のなにかが動いているのか?)
そう考えたラシュディアは、そのままランディへと目配せを行うと、そのまま挨拶をしてプロスト城から立ちさって行った。
●鍛冶屋の村〜排他的でいい感じ〜
──村入り口
そこは小さな村。
あちこちの建物からは煙が上がり、激しい金属音が響いている。
「ここか噂の村だな‥‥」
オラースはそう告げてからぐるっと村を見渡した。
あちこちに人の気配もあり、荷車に荷物を乗せている人夫や楽しそうに走りまわっている子供達の姿も見え隠れしている。
どこにでもある村の光景。
その中で、一人だけ気になる人物が見えた。
身なりの良い服装、端正な顔立ち。
腰に下げている巨大な剣、どうみても普通の村人ではない。
その人物は一人の鍛冶師と話をしている所である。
「気になるわね?」
「なら行くしかないじゃん!!」
ズンズンと前に向かって歩いていくオラースと、その後ろをついて行くガブリエル。
案の定、向うが二人に気付いて軽く会釈。
「こんな村にお客とは珍しいですね」
そう話をしてきたのは鍛冶師。
「初めまして。武器商人を生業としています『アパタイト』と申します‥‥」
そう告げつつ、ギルドパスを提示するガブリエル。
その横で無言でパスを見せるオラース。
共に、本名の記されている部分は見えないように。
「これはご苦労様です。私はこの地の領主を務めていますヴォルフと申します」
握手を求めつつそう告げてきたのは貴族。
(あらぁ‥‥大物ゲットね)
(気の良い親父という所か‥‥)
「これはこれはヴォルフ殿。ご丁寧にありがとうございます」
わざと口調を丁寧にして、オラースはそう挨拶を返す。
「武器商人という事は買い付けですか?」
「ええ。私どもは『冒険商人』。あちこちの街を訪れては、様々な掘り出し物を探して仕入れております。この街にもそういった理由でやってまいりました」
もっともらしい理由をつけて、ガブリエルはそうにっこりと告げた。
「そうでしたか‥‥ですが、この村で作られる武具は全て領主様がお買い上げの品。残念ですが‥‥」
そう告げたとき、オラースは近くの荷馬車に積まれている武器を見て大袈裟に驚く!!
「これは珍しい!! このような武器は見た事がないじゃん!!」
長い棒の先に幅広の剣が固定されている奇妙な武器。
グレイブやビルといったポールウェポンの類ではあるが、見た事のない形状。
「はっはっはっ。それはスクラマサクスという武器です。ハルバードの作られるもとになった武具で、古くからこの地方に伝わっている武器ですよ‥‥」
ヴォルフ卿がそう解説する。
「手にとって構わないか?」
そのままヴォルフ卿が肯くのを確認して、オラースはその武器を手に取る。
──ブゥン
少し離れて軽く振回すが、その恐ろしいまでの破壊力をオラースは本能で感じ取った。
(振回し系というか、ほぼ万能に使えるか。柄の部分の補強度合、先端の切れ味のよさそうな所、実戦用に作られたものであることは間違いが無い。それにしても、こんな武器を纏めて‥‥一体目的は?)
──ガチャッ
スクラマサクスを元の荷車に納めると、オラースはふぅ、と一息。
「ここの武器を全てお買い上げとおっしゃいましたけれど、領主様はこんなに大量の武器をどうするのですか?」
ガブリエル一歩踏込む。
「この辺りは森が深く、常に魔物の危険を孕んでいます。そんな土地だからこそ、私は彼等領民を護る為の騎士団を増強しなくてはなりませんから‥‥」
ニコリと告げるヴォルフ。
そして買い取れないことを非常に悔しがる演技をして、二人は其の場を離れることにした。
──帰り道
「魔獣兵団は存在するな‥‥」
オラースはガブリエルにそう告げる。
「どうして?」
その言葉に、オラースは自分の両手をじっと見る。
「あのスクラマサクスという武器、重心が『人間サイズ』ではない。パラやドワーフでは無理、エルフでは支えきれない。ジャイアントなら使える可能性はあるが、それでもかなりややこしい武器だ‥‥」
「でも、貴方は使えたでしょう?」
そのガブリエルの言葉に、オラースはニィッと笑う。
「振回すだけだ。実戦であれを渡されたら‥‥あの武器を使って勝てといわれたら、ゴブリン相手でも苦戦しそうだ‥‥そんな難解な武器だぜ‥‥」
もしあれを使える敵がいるとすれば。
オーグラやミノタウロスを始めとする巨大オーガ種であろう。
冷や汗がオラースの背中を流れていった。
●湖畔の屋敷へ〜ぐるっと回って〜
──バルバロッサ自治区
こっちが正式名称。
街道沿いに湖畔へ向かおうとしたリュシエンヌとスニアは、ぐるーーっと回って街道を離れ、道なき道を踏破していた。
「もう少しで‥‥湖畔まで‥‥」
「ふぁいとぉぉぉっ」
そう呟きつつも、どうにか湖畔まで到着した二人。
と、そこからは、先程話に出てきた『バルタザール卿の奥方の療養地』がしっかりとみえる。
小さい村。そして多くの子供達の姿も見え、村の外れでは、子供達が柵の中でなにか訓練らしき事をしている。
「あれが‥‥セーヌ・ダンファン‥‥子供達の訓練施設ですか」
「そのようですね。確かに子供達はなにかを手にしていますから‥‥」
リュシエンヌはそのスニアの言葉に、さらに視線を一点に集中する。
「ナイフコンバットだね。どうやら‥‥」
あんたアレが見えるのかい!!
まあそんな突っ込みは置いといて、兎に角子供達は訓練教官らしき人物とマンツーマンで戦闘レクチャーを受けているようである。
二人は少しでもその光景を覚えようと、意識をそっちに集中。
そして日がくれる前に、その場を後にした。
●旧シルバーホーク自治区〜ヴィエルジュの惨劇〜
──廃墟だらけの街
そこへ続く街道自体、すっかり忘れ去られている街・ヴィエルジュ。
元の名前はシルバホーク自治区・ヴィエルジュと呼ばれていたらしい。
だが、そこは彼が魔剣を手にした直後、二人の人間によって滅ぼされてしまった街。
ラシュディアとランディの二人は、プロスト卿からこの街に繋がる街道を教えてもらい、どうにか道なき道を乗り越えてやってきた。
「‥‥酷いな‥‥」
「ああ。本当に凄すぎる‥‥」
街に入ったた二人の第一声がそれである。
まるで、つい先日まではそこに人が住んでいたかのように。
ちょっと買い物に‥‥という感じで出かけてしまったように。
そこには、人が住んでいたという形跡がはっきりと残っていた。
そして彼方此方に残る黒い染み。
それは紛れも無く、人の血痕であろう。
──ガサッ
と、二人の正面から、一人の人物が姿を表わす。
「こんな場所に、来客とは珍しいのう‥‥」
そう呟くのは一人の老人。
「それはこっちのセリフと言いたいところだが。確か、ここはうち捨てられた街の筈。老人こそ、こんな所で何をしている?」
そう問い返すのはランディ。
「俺達はここの領主から許可を貰って調査にやってきた。俺はラシュディア、そしてこっちが相棒のランディ。爺さんの名前は?」
ラシュディアは丁寧にそう問い掛ける。
「儂はハンスという。この街で墓守をしている‥‥誰か一人でも、この街の事を忘れないようにとな‥‥」
そう告げて、老人は静かに振り返り、立ちさって行く。
「ちょっと待ってください!! 貴方はこの街の人なのですか?」
ラシュディアの問い掛けに、老人はゆっくりと振り返り、頭を縦に振る。
「ならば教えて欲しい。ここで起こったこと全てを‥‥」
ランディがそう告げて、老人の方へと駆け寄っていく。
と、老人は再び前を向いて歩き始めた。
「フォーチューンブレードという魔剣がある。シルバーホーク殿はその剣の真の力を解放する為、この街の人たち全ての魂を剣に『捧げた』のじゃよ。老若男女区別なく‥‥」
やがて老人は墓地に入る。
綺麗に整地された墓地には、かなりの墓碑が作られている。
その一つ一つを指差しつつ、どんな人だったのかを話してくれる。
「そのとき、シルバーホークに手を貸していたのが、ひとりの悪魔じっゃた。名前は判らぬが、自分のことは『ヘルメス・トリス・メギストス』と名乗っていた。あの男が、シルバーホークに取り入って、この街を彼の手下達によって包囲させ、シルバーホークはその囲いの中で、思う存分惨劇を繰り返していたのじゃよ‥‥」
その言葉を聞いて、ランディは静かに問い掛ける。
「ヘルメスは男なのか? 俺たちの聞いた話では、ヘルメスは女性、かなり上位の悪魔だという噂なんだが‥‥」
だが、ハンス老人は頭を左右に振る。
「精悍な顔つきの男じゃった。彼の一声で、かなりの小悪魔が召喚されたようじゃった‥‥その小悪魔によって街は包囲された‥‥」
そしてハンスは、とある墓碑の前で立ち止まる。
「儂は、ちょうどその時にはこの街を離れていた。そして帰ってきた時には、すでにこの町には生きている人は居なかった‥‥何が起ったのか‥‥それを理解できるようになるまで、儂はとある魔法使いの元で修行をした‥‥そして過去を知る魔法により、その全てを理解したのじゃよ‥‥」
そのまま沈黙が続く。
「頼む‥‥この墓に眠る者たちを助けてやってほしい。魂を奪われてしまった以上、彼等には安らぎは存在しない、永劫の苦しみの中に囚われてしまっているのじゃ‥‥」
そう告げると、老人は静かに墓地を立ちさって行った。
そしてラシュディアとランディが老人の後を追いかけたとき、すでに老人の姿は無かった‥‥。
そして二人は、老人が最後に見ていた墓碑を思い出した。
それには『ハンス』と記されていた‥‥。
●そして報告〜マスカレードは思案〜
──パリ・冒険者酒場マスカレード
無事に調査を終えた一行は、とりあえずはマスカレードにそれぞれが報告を行った。
その後でスカレードは、今後の対策を考えるらしく、そのまま店の奥へと消えていった。
そして一行も、次の仕事までの時間を有意義に過ごすよう、店の中で奮闘していた‥‥。
「まだ謎の部分が多いですか‥‥今のままでは光組を動かすには危険ですから、もう少し確信を突くような証拠を探してきてもらいますか‥‥」
〜To be continue