●リプレイ本文
●それではいってみよう!!
──酒場・マスカレード
ポロロローーン
静かな夜。
酒場には、一日の疲れを癒す為に大勢の客が集っている。
その舞台では、リュシエンヌ・アルビレオ(ea6320)とガブリエル・プリメーラ(ea1671)の二人が、竪琴を奏でつつ静かに曲を奏でていた。
♪〜
酒場の片隅 助けを求める少女が二人
どうしたの そんなことさえ聞けず通りすぎて
どうしたの その一言を言えば良かった
どうしたの 何があったの
知らぬ事が 棘のように心に引っかかる
貴女は何を求めているの…
♪〜
それはある少女達のための歌。
(ふぅ。どうやら騒がしくなることはないか‥‥)
黒服に身を包んだランディ・マクファーレン(ea1702)が、店内をぐるりと見渡している。
歌が奏でられている間、ランディは店内が喧騒に包まれないようにお客に対してアドバイスを行なっていたらしい。
その甲斐もあり、舞台で何かが催される時は、客の方も自然とそちらに視線を向けているようになった。
このような冒険者達相手の酒場にしては、面白い趣向である。
「その少女は本当に人を殺したのか? その罪を大司教は許したのですか?」
「ええ。大司教様は慈悲深きセーラの使いです。子供とは神が与えた至宝‥‥罪は償う為にあるのですから‥‥」
そんな客の呟きにも、ラシュディア・バルトン(ea4107)は静かに説明をする。
そして店の外では、スニア・ロランド(ea5929)が通りすがりの少女に頼まれて、似顔絵を書いている。
「‥‥はい。これで完成よ‥‥」
そう告げつつ、目の前の少女に出来たばかりの似顔絵を手渡すスニア。
「がぁがぁ‥‥ありがとう」
懐に抱いているボロボロのぬいぐるみを抱しめつつ、その少女は似顔絵を受け取ると其の場を立ちさって行った。
「クスッ。よっぽど大切なんですね‥‥」
そう軽く笑うスニアだが。
──ドドドドドドドトッ
店内からけたたましく走ってくる音が聞こえる。
「ス、スニアさん、今ここに女の子がいませんでしたか?」
そう叫んでいるのはクリス・ラインハルト。
「ええ。ボロボロのアヒルのぬいぐるみを持った女の子が‥‥ガァガァって、鳴き声を真似して‥‥あら?」
その刹那、クリスは走った!!
「アンリ‥‥やっと見つけたよっ!!」
夜の酒場付近。
人通りが激しく、ちっちゃい娘がそんな所に紛れ込んだら、発見するのは困難だった‥‥。
一時間程走りまわったが、クリスは完全にその少女‥‥アンリエットを見失ってしまった。
焦燥に包まれたまま戻ってくるクリス。
また‥‥すれちがい。
●セカンドアタック〜手掛りを探せ〜
──元シルバーホーク邱廃墟
旧シルバホーク自治区・ヴィエルジュ。
一連の手掛りを求めて、ランディとラシュディアの二人は、二度この地を訪れていた。
今は使われていない先代シルバーホークの邸宅。
そこの入り口に立った二人は、周囲から自分達に向けられている殺気に気が付いた。
「‥‥数は‥‥3」
「ああ。明らかに敵だな‥‥」
──ガサササササッ
突然姿を表わしたのは、巨大なメイスを両手に握り締めているゴブリン達。
「ウガァァァァァ」
──ガギィィィィン
力一杯振回してきたメイスを、ランディは左手の楯で受け流す。そしていきなりカウンターでナイフを深々と突き刺した!!
絶叫を上げつつ後に下がるゴブリン。
ラシュディアは今のうちにランディの後方へと走りこむと、素早く印を組み韻を紡ぐ。
ゴブリン達も、後に下がりつつ咆哮を上げる。
そのままゆっくりと、ランディ達の動きを確認するように間合を取り始めていた。
「こいつら‥‥訓練されているっ‥‥」
相手が普通のゴブリンではないと判った以上、迂闊な手を使えない。
──ブゥゥゥゥン
ラシュディアの魔法が完成。
一瞬だけみえた三日月の刃。
それは前方にいたゴブリンの胴部を切り裂いた!!
「グギャッ!!」
慌てて後方に下がるゴブリン達。そして後方の茂みに何かが近づいてきたかと思うと、そのまま左右に散っていった!!
──ガザザザザサッ
茂みを割って出てきたのは、全身を包む鎧と、巨大な長槍のような武具。
長い柄の先端に、幅広の剣が固定されているそれを、目の前のオーガは身構えた。
──ダッ!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
いきなりナイフを構えると、ランディは楯を前方に突き出して全速力で走り出した。
ナイフは腰溜めに構え、体当たりを仕掛けるような勢いで。
──ガギィィィン
そのままオーガの構えた武器『スクラマサクス』を楯で弾き飛ばし、ランディはチャージを叩き込む。
──ドゴォォォォッ
深々と突き刺さるナイフ。
そのまま素早くナイフをぬくと、ランディは後に下がった。
──ブゥゥゥゥン
さらにラシュディアのウィンドスラッシュが直撃。
そのまま傷を押さえつつ、オーガは其の場から逃げ出した。
「‥‥確か、オラースの報告にあった武器だな‥‥」
スクラマサクス。
古くは、その先に付けられている刃の由来。
それを長い柄に固定した、ハルバードの原形とも言える武器。
ヴォルフ自治区では、これを大量に作っている。
それを静かに手に取ると、ランディはゆっくりと振回した。
ずっしりとくる重量感、安定していない重心、扱うのに相当の熟練が必要だなと、ランデイはそう思った。
「さて‥‥それじゃあはじめるか」
そう告げて、ラシュディアは改めてブレスセンサーを発動。
周囲に怪しげな存在が無いことを確認すると、そのまま建物の中に突入した。
●子供達の隠れ家〜アサシンよりも格上の存在?〜
──セーヌ・ダンファン
前回と同じルートを通り、スニアとリュシエンヌの二人はバルタザール自治区に到着。
途中、一台の馬車が通り過ぎたとき、スニアは予め酒場・マスカレードに保護されていた子供達から、『館』で見たことのある大人の人相を尋ね、それを記していった。
調度その一人と人相が一致する人物が馬車に乗っていたのを、スニアは見逃さなかった。
「グレイファントム領の貴族か‥‥」
「向かっている方角から察するに、買い付けという所かしら?」
そう捕捉するリュシエンヌ。
もっとも、今回は二人、別の場所が目的。
光組の救出した子供達から得た情報を便りに、『舘』で子供達を買い付けていた貴族の親族に会うためである。
そこで先にシフール便で先方に事情を説明し、これから向かうところであった。
──という事で貴族の家
まずは丁寧に挨拶を行う二人。
そしてしばしの雑談の後、本題に切り込んだ。
「シフール便で渡した書面に記されている事ですが‥‥」
そう告げると、スニアは数枚の資料を取り出して、それに目を通す。
そして似顔絵の一枚を取り出すと、それを貴族の夫婦に見せた。
「この方は、貴方たちの親族である事に間違いはないですね? 名前は‥‥」
そのまま親族でしか知らない所まで話を続けるスニア。
見る見るうちに、貴族達の顔色が青くなっていく。
「‥‥あいつは一族の面汚しだ‥‥」
頭を抱えてそう告げる主人と、その腕をギュッと掴んでいる夫人。
「今回、この方の不名誉な行為が明るみに出そうです。それを防ぐために協力したいのです」
そして本題は始まった。
内容は、実にシンプル。
・幼児好き親族の切り捨てや被害者に対する口止めに協力します。そのかわりバルタザール卿妻に関する詳細情報をお願いします。
ただそれだけであった。
当然、貴族としても、自分達の身内の恥を晒すことは出来ない。それが公になった場合、自分達の身も危うくなってしまう。
「判りました。幸い、バルタザール夫人とは何度も面識があります。私達の知る限でしたら‥‥それで、今回の事‥‥被害者に対しての口止めをお願いしたいのです‥‥」
横で静かに話を聞いているリュシエンヌは『掛かった』とほくそえんでいる。
そしていくつもの貴族の元を訪れて、得た情報は次のとおり。
・元々バルタザール夫人は体が弱く、病気になりやすかった
・子供に恵まれず、いつもその事を期に病んでいた。そのためか、あちこちから身寄りのない子供達を引き取っては、自分の子供のように可愛がっている
・主人であるバルタザールは執務に忙しく、あまり会っていない
・時折町に戻ってきては、子供達を連れて買い物をしている。その姿は実に微笑ましく、本当の親子のようにも見えている
・ここ数カ月、体調が優れないらしく町にも姿を表わしていない。あの別荘に出入りしている商人の話では、湖の畔で一緒に遊んでいる子供達の姿も見ているから、体調は戻ったのであろう‥‥。
ここまでは、どの貴族も同じ意見であった。
ただ一人、最後に訪れた『夫人付き元執事』の証言以外は。
・夫人は、必要のなくなった子供達を別の場所に連れていっていた。そしてあの別荘を出た少女達のうち、その大半は戻ってきていない‥‥。
そして、リュシエンヌは一つの確信を得た。
娘であるリュリュ・アルビレオが光組で得た人身売買組織の情報。
セーヌ・ダンファンを出た子供達のうち、その『半分だけ』が人身売買組織に連れ去られ、貴族に売り飛ばされている。
「そろそろ、確信に近づいたわね‥‥」
●魔獣兵団〜大量の白骨〜
──ヴォルフ自治区・ヴォルフ邱
前回に引き続き、やってきましたヴォルフ自治区。
数日かけてあちこちで情報を仕入れ、使用人達の元に様々な物品を売買してきた結果、ついにはお舘様であるヴォルフ卿の元での謁見が許された。
正門横にある護衛の詰め所に、使用人から受け取った書面を提出。
そのまま邸内には執事が案内、一行は応接室へと通された。
「おやおや、何方かと思いましたが‥‥改めて自己紹介しておきますか。私がこの自治区を治めていますヴォルフと申します」
端正な顔立ち。
ゆったりとした衣服を見に纏っているが、オラース・カノーヴァ(ea3486)はその雰囲気から、かなりの手練れであろうと確信している。
「先日は鍛冶屋さんたちの村で色々とお世話になりました」
そう挨拶をするガブリエル。
「こちらに務めている方たちから色々とお話は聞きまして。卿は『めずらしい武具、変わった武具』に興味があるとききまして。私達も武器商人の端くれ、もしできればお話をと思いましてやってまいりました」
丁寧な口調でそう告げるガブリエル。
「もしどうしても欲しい武器とかがあったら、都合のつくものならば仕入れてきて構わないしな」
オラースはそう話を始めた。
と、ヴォルフ卿は興味津々な表情で、様々な話を始めた。
異国の様々な文化と、それに根付いた武器。
そしてヴォルフ卿の持つコレクションの数々。
それらを一通り見させて貰い、そして帰り際にヴォルフ卿は、二人に対して次のような注文を行った。
「どうしても欲しい武器があるのです‥‥一つは『デビルスレイヤー』、そしてもう一つ、これは伝説でしかないのですが『紋章剣ワルプルギス』。これを是非コレクションに加えたいのです‥‥それではお願いしますね」
そう告げて、ヴォルフ卿も馬車に飛び乗ると急いで出かけていった。
「しかし‥‥いい武器持っているなぁ‥‥」
オラースにも、彼のコレクションは咽から出るほど欲しい。
「ソースン・パタにカタール‥‥エストックにフォチャード‥‥」
ブツブツと言いつつ歩いているオラース。
「芸術的というよりも、実戦向きに武器なのね‥‥」
「ああ、武器は実戦向きで当たり前じゃん。それよりも‥‥いやに超重武器が多かったなぁ‥‥」
コレクションの大半はポールウェポンと呼ばれる部類の武器であった。
それが何を意味しているのか、オラースには興味があった。
●そして突入〜地下遺跡〜
──シルバーホーク邱
無事にオーガとゴブリンが逃走したことを確認したランディとラシュディアは、そのまま屋敷内部に侵入。
入り口を開いていきなり絶句している。
建物の内部はこげ茶色に塗られ、様々な文字が彼方此方に点在している。
床をスッと触り、その感触を確かめるランディ。
「血だな‥‥かなり古い‥‥」
そう告げるランディと、彼方此方に記されている文字をじっと見つめるラシュディア。
「異国の文字か‥‥何処のだ?」
そう告げると、ラシュディアは素早く印を組み韻を紡ぐ。
──ブゥゥゥン
ラシュディアの身体が淡い緑色に輝く。
そして輝きが収まったとき、ラシュディアは部屋の角に向かって歩きだすと、ある地点で止まった。
「ここか‥‥」
そう呟くと、ラシュディアはランディに頼み込んでそこの床材を剥がすよう指示。
──ガツ‥‥ギィィィィッ
巧妙に隠された扉が開き、竪穴がポッカリと開く。
「さて、それじゃあいくか‥‥」
まずはランディが。
次にラシュディアが、竪穴の壁に付けられた階段状の突起を手掛りに、ゆっくりと下がっていった。
光すら届かない世界。
一番下まで、一体どれぐらいの高さがあるのだろう。
やがて二人は、静かに床の感触を確かめる。
──コツコツ‥‥
かなり広範囲に響く音。
「さて‥‥」
ゴソゴソとバックパックの中からランタンを取り出すラシュディア。
幸いな事に、まだ油が少し残っている。
それに火を灯すと、二人は周囲を見渡した。
「参ったな‥‥」
「ああ、本当に参ったぜ‥‥」
広い空間には、天井、壁、床、全てに文字が刻みこまれていた。
その一つ一つに静かに触れていくラシュディあ。
「古代魔法語の羅列‥‥記されているのは‥‥」
ゆっくりと意識を文字に集中させるラシュディア。
そしてランディは、周囲に何かないか調べ始めて、ふとラシュディアの足を止める。
「何かあったか?」
「ああ、嫌な感じの痕跡が一つな‥‥」
薄暗い前方には、それ程古くない足跡があった。
自分達の歩いてきたところを振り向く二人。
確かに、くっきりと足跡が浮かんでいる。
そして、目の前の足跡の存在。
一体何処から入ってきたのか、広いフロアのほぼ中央に、その足跡は発生していた。
「この文字、何が記されているか分るか?」
そう問い掛けるランディに、ラシュディアは頭を左右に振る。
「半端じゃなく難解だ‥‥まるで」
そう何かを言いかけたとき、ふとラシュディアは室内の全てを見渡した。
「そうか‥‥そういう事か!!」
いきなりラシュディアは部屋の中央、調度足跡のある辺りまでは知りだした。
そして足跡の動きをゆっくりと観察する。
「この場所を中心として、文字を見つめている。この場所が何で、ここに何があるか判っているものでない限り、そんな動きはしない筈。つまり、ここに居たもはの、ここにあるこれを知っていて、それでここにやってきた‥‥まるで空間をネジ曲げてやってきたみたいに‥‥つまり」
ゴクリと喉を鳴らすランディ。
「シルバーホーク側近。悪魔のヘルメス‥‥か」
その言葉にコクリと肯くラシュディア。
「もしそうだとして‥‥ここに記されているものが、時折彼女にとって必要なものであるとしたら‥‥ここに記されているものは一体なんなんだ?」
ランディの問いに、ラシュディアも足跡に倣って壁を見渡す。
「駄目だ‥‥文字が複雑な上に、起点がまるで判らない。これは時間を要するな」
だが、ここであまり時間を使う訳にはいかない。
もし、ヘルメスがこの場に姿を表わしたとして、二人は彼女に有効に対処する術を持ち合わせていないのである。
取り敢えずラシュディアは、覚えられるだけの文字を覚えると、一旦外に出ることにした。
そして、さらに二人はシルバーホーク邱の内部調査を続行。
以下の情報を得ることが出来た。
・つい最近、ここに誰がかやってきた形跡がある。但し、物取りのように色々と物色していた訳ではなく、シルバーホーク卿の執務室らしき部屋に真っ直ぐに向かった模様
・執務室には、一枚の絵が飾られている。それには、若かりし時代のプロスト卿やシルバーホーク、その他の仲間たちの姿があった。
・同じく執務室奥。羊皮紙を保管する戸棚より、様々な地図を発見。地図は全部で11本、だが、それが一体何であるかはわからなかった。
・同じく執務室奥、隠された扉より奥に礼拝堂らしき場所を発見。
・その場所にて、正面の祭壇には黒ヤギの姿を形取った悪魔の像が安置されている。
また、その手前には『生贄の祭壇』らしきものを発見‥‥。まだ渇いていない、生暖かい血がこびりついていた‥‥
そして二人は、一旦其の場を離れることにした。
「危険過ぎる。絶対ここに何かがいたんだ。それも、俺たちが来るちょっと前に‥‥」
「ああ。一旦この場所を離れたほうが得策だな‥‥」
取り敢えず証拠となる羊皮紙の束をバックに詰め込むと、ふたりは一旦其の場を離れることにした。
●自警団として〜いや、それは無理だけど〜
──ヴォルフ自治区
翌日。
ガブリエルとオラースの二人は、自警団と接触し、なんとか彼等と共に行動して色々な情報を引出そうと考えていた。
「武器も、あきらめる気はないんだけど滞在中は何かで金も稼ぎたいしね? どんな危険な仕事もやるわよ、魔物の為の夜回りとかも行くし」
そう酒場で話し掛けているのはガブリエル。
「うーん。まあ、今のところ、他が足りなすぎる訳でもなくあまっている訳でもなく。フリーデル自警団長も闘技場に出るからって出かけているしねぇ‥‥まあ、取り合えずは副団長権限でいいけれど」
そのまま二人は自警団のメンバーと共に行動開始。
途中、オラースがこの町の山師や狩人に聞いた話と組み合わせて、森の内部への調査を提案、そのまま数名の自警団と共に調査を開始していた。
そして以下は、その時の報告。
・森の奥に開けた空間がある。そこにはオーガの集落があった
・その集落の近くには、大量の人骨が散乱している
・人骨は全てかみ砕かれたりしたような歯形が付いている。なお、その大きさから『ゴブリンやオーガではない』事まで確認。サイズは人間の子供ぐらい。
・別の場所ではゴブリンの集落を確認。まるで戦闘教官でもいるかのように、ゴブリン達は集団でチームワークよくトレーニングを行なっている。
・奴等の持っていた武器は、かなり質の良い武器であるらしい。遠目にだが、輝く刀身があちこちで見えていた。
そして、ガブリエルがこっそりと自警団員達に使用したリシーブメモリーよって導きだした言葉は以下の通り。
・地下のオーガ達の訓練も順調。新しい武器に‥‥
・失敗作なんて、所詮奴等の餌程度にしか価値‥‥
・逃げた子供の行方は判って居るし‥‥あとは‥‥
・この前の実験、一つの村が壊滅したからなぁ‥‥
・アサシンガールって凄いよな。たった二人で‥‥
・この前来たギュンターだかっていうオーガの‥‥
──そして村に戻る
一通りの情報を得た二人は、期間ギリギリまで村に留まり情報を得てきた。
そして、次の村に仕事で行かないとという話で其の場を後にすると、急いでパリへと戻っていった。
●出入り商人と共に〜セーヌ・ダンファン潜入〜
──ハウスの存在
「‥‥これはこっちでいいのですかぁ」
元気な声を揚げつつ、新鮮な野菜の入った加護を運んでいるのは変装したスニアと、同じく変装したリュシエンヌ。
先日、執事から紹介された出入り商人の元に向かうと、二人は執事からの紹介状を手渡した。
真実は隠されているものの、二人が奥方の姿を一目みたいというような事を書いていたらしく、二人はまんまとセーヌ・ダンファンに潜入する事に成功した。
「ああ、それはそこに。そっちの籠はこっちに‥‥」
次々と指示を飛ばしつつ、馬車から荷物をおろしている商人。
「あ‥‥あはは‥‥ん‥‥てつだおうかぁ‥‥」
ぼや──ーんとした表情の少女が一人近づいてくる。一見したら、寝惚けているような雰囲気にも見えなくはない。
「あら、ありがとうね。でも、これは私達の仕事だから‥‥」
そう告げるスニア。
「あ‥‥は‥‥そうなんだぁ‥‥」
やっぱりぼやーんとしている。
「ブラーンシュ!! そろそろ午後の訓練の時間だって、メギスさんが呼んでいたよ!!」
黒髪の少女がそう少女を呼んでいた。
「あ‥‥は‥‥はぁ‥‥ん‥‥クラリス、今戻るよぁ‥‥」
そのまま少女は千鳥足でクラリスと呼ばれた少女の元に戻っていった。
(‥‥アサシンガール。でも、なんか様子がおかしいわ‥‥)
そう頭を捻りつつ、スニアは荷降ろしを再開。
「それでは奥様。本日の積み荷はこれで全てですので‥‥」
「ありがとう。次に来るときで構わないので、服飾師の方を同行させてきてくださいね。次のパーティー、どうしても出ろと主人が聞かないもので‥‥」
「パーティーですか。今度はどのような?」
「さぁ‥‥なんでも闘技場だかなにかの祝賀会だとかで‥‥まだ優勝していないけれど、間違いないって張り切っていますわ‥‥」
商人がバルタザール夫人に挨拶をしている。
その横で、リュシエンヌも深々と頭を下げる。
スラッとした細身の女性。
風通しの良い白いドレスを身に纏い、ゆったりとした振る舞いで商人と話をしている夫人。
その姿を脳裏に焼き付けて、リュシエンヌはそのまま挨拶だけかわすと、セーヌ・ダンファンを後にした。
以下は、セーヌ・ダンファンで得た情報。
二人が耳を傾けていたり、建物のなかに入ったときに聞こえた噂話などからの推定も含む。
・確認したアサシンガールは以下の通り。
(名前を呼びあっていたので、その名前で確認)
ブランシュ
クラリス
スピカ
ステラ
ゼファー
オーブ・ソワール
・アンリエットは『処理を行い放逐』したとの事
・エムロードの暗示は第三段階に達したらしい。最終覚醒は7月1日前後だとか。
・フロレンスとブランシュはこれから最終調整のち、明後日から任務の事。
・各修道院・寺院に配置していた候補生のうち、サン・ドニ修道院でエムロードに殺された二人の『エクスペリエンス』の補充を考える必要がある
あまりにも衝撃的すぎる情報。
二人が潜入したのを知っての事か?
それともほかに何か?
真実を知るには、まだ情報が足りないようである。
●そしてパリ〜得た情報と作戦会議〜
──冒険者酒場・マスカレード
任務終了。
戻った一行は、マスカレードとミストルディン、そしてその他のメンバーを交えて作戦会議を行なっていた。
あまりにも膨大な情報。
そしてランディ達が発見した地下遺跡。
そこを訪れていた何かの影など、これから考えることはあまりにも多すぎる。
「せめて、あの文字を解読する事が出来れば‥‥」
このノルマンで、あのように古代文字の解析を生業としているものなど、メンバーの殆どが知らない。
ラシュディアでさえ、判って居るのは現在行方不明のミハイル教授と病気で倒れているシャーリィ女史、そして悪魔関係に強いと噂されているロイ教授のみである。
どうにか道を探さなくては。
手掛りは、まだ闇の中。
〜To be continue