【魂の慟哭】シルバーホーク卿捕獲作戦

■シリーズシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:9〜15lv

難易度:難しい

成功報酬:8 G 10 C

参加人数:10人

サポート参加人数:6人

冒険期間:07月23日〜08月02日

リプレイ公開日:2005年07月30日

●オープニング

──事件の冒頭
「では、無事に帰還するであろうブラックウィング騎士団と、カーマイン騎士団の編成部隊でいくのですね」
「ええ。今回の件は、国王からの要請もありますので‥‥」
 王宮のとある一室。
 ブランシュ騎士団長ヨシュアスと、ブラックウィング騎士団責任者でもあるニライ・カナイ査察官がなにやら打ちあわせをしていた。
 そして、その打ち合わせが終ると、ニライは真っ直ぐに冒険者酒場『マスカレード』へと向かったのである。


●最後の戦いの為に
「‥‥ここがアジトと思われる村。簡単な調査では、村人は30名程、出入りすることのできる街道は一つ。村の中には小さな川が流れていますが、小さい舟でも行き来は不可能かと‥‥」
 地図を広げつつ、ニライがマスカレード達に説明をしている。
「正面からですか。それで、騎士団の協力体制は?」
「軽装騎士20、重装騎士20。これに間もなく帰還するであろうブラックウィング騎士団と、そして‥‥もっとも隠密作戦に優れたチーム、闇組です」
 その言葉に、マスカレードはゆっくりと肯く。
「敵戦力の予測は立っているのですか?」
 ミストルでスンの問い掛けに、ニライは静かに肯くと、ゆっくりと説明を行う。
「レイアー嬢、そしてセーヌ・ダンファンの件、ブランシュ殲滅隊などの動きから察するに、敵戦力は‥‥」

・シルバーホーク卿
・悪鬼
・ヘルメス(まだ生存未確認)
・ジェラール
・ダース・ブラウザー
・アサシンガールズ残党
・処刑部隊残党
・ホワイトトルーパー&ホークガード

「‥‥つまり、闇組に死んでこいと?」
 そう端的に告げるリチャード。
「正面から戦うのが得策かどうか。今回も、騎士団の編成、その他のイニシアティテヴは闇組にお渡しします。それでは、シルバーホーク卿の捕獲作戦、どうぞよろしく‥‥」
 そう告げると、ニライは其の場を静かに立ち去った。

「‥‥これで全てが終ると‥‥」
 マスカレードがそう告げたとき、リチャード、そしてシスターも戦闘準備を開始した。 

●今回の参加者

 ea0351 夜 黒妖(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1565 アレクシアス・フェザント(39歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1671 ガブリエル・プリメーラ(27歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea2816 オイフェミア・シルバーブルーメ(42歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea4107 ラシュディア・バルトン(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea5929 スニア・ロランド(35歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6320 リュシエンヌ・アルビレオ(38歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

ディーネ・ノート(ea1542)/ クリス・ラインハルト(ea2004)/ フェリーナ・フェタ(ea5066)/ フィーナ・ライト(ea8017)/ デニム・シュタインバーグ(eb0346)/ 佐倉 美春(eb0772

●リプレイ本文

●最後の戦い〜生還?〜
──サン・ドニ修道院
「偉大なるセーラよ。大切な仲間たちが無事にパリに戻ってきますように‥‥」
 礼拝堂で神に祈を捧げているのはフェリーナ・フェタ。
 フェリーナはシスター・アンジェラスに許可を貰い、皆が無事に戻ってこられるよう、神に祈を捧げていた‥‥。
「神よ‥‥どうか、私の願いを聞き届けてください‥‥」

──パリ・冒険者酒場・マスカレード
 全ての作戦はここから始まる。
 王国歌劇団・闇組と、今回の作戦に参加する騎士団のメンバー、そしてそのお手伝いチームが一堂に集っている。
 お手伝いのクリス・ラインハルトの差し入れであるワイン。
 それを小さな木製マグに注ぎ、全員に渡す。
「‥‥王国の陰に巣食う巨悪を白日の下に曝け出す為、各員が死力を尽くす事を切に願う。‥‥勝って帰ろう」
 ランディ・マクファーレン(ea1702)が、全員に聞こえるようにそう告げると、全員が勝ちどきのような声を上げて乾杯!!
 ぐっとワインを飲み干す。
 そして全員が荷物を手に、外で待機している馬車に乗り込むと、いよいよ作戦開始となった!!


●偵察〜自信のあらわれ〜
──とある村
 こっそりと村に近づいてい行くのは、夜黒妖(ea0351)率いる援護部隊。
 予め合図を決めておき、それ専用に染め上げた布を大量に用意してきたらしい。
「願わくば、このポーションが一本も減りませんように‥‥」
 つまり、全員が無事に生還できるようにということ。
 そしてまずは偵察部隊。
 襲撃前夜、ゼルス・ウィンディ(ea1661)はインビジブルを使って村の内部の偵察を行なっていた。
 効果時間が限られている為、ゼルスは時折物陰に隠れては、再びインビジブルのスクロールを発動させる。
 発動光が発生してしまう為、兎に角物陰にかくれ、周囲に人がいないことを確認してのスクロール使用である。
(‥‥建物は全部で15。あの一番大きい別荘がシルバーホークのアジトというところですか‥‥)
 そう心の中で告げつつ、ゼルスはあちこちの建物の近くに向かい、中の様子を確認する。
(普通の村人らしき人たちは全部で30人ぐらいか‥‥その外に、監視らしき奴が5、それと‥‥)
 別荘の方を見たとき、ゼルスは入り口から巨大な人影が一つ姿を表わしたことに気が付いた。
(噂の悪鬼と、護衛の騎士か?)
 そのまま悪鬼は、護衛と共に村の中を歩いてまわる。
 その様子を遠くで確認すると、ゼルスはゆっくりと別荘に近付く。
(正面入り口が1、裏口が1‥‥)
 とりあえず、そろそろインビジブルの効果が切れそうな為、ゼルスは再び村外れまで避難。
 そこで再度効果が途切れてからインビジブルを発動させようとした時。
──ドン
「いい情報は手に入ったかい?」
 近くの樹に拳を叩きつけつつ、そう告げるジャイアント。
「悪鬼ですか‥‥」
 そう呟きつつも、スクロールからは視線を外さないゼルス。
「ああ、ハウスが冒険者と騎士団によって壊滅したっていう報告は聞いている。それにヘルメスが襲われたこと、ダース卿からの報告もな‥‥となると、そろそろここに来る頃だろうとは思っていたが‥‥」
──ゴキゴギコキゴキッ
 拳を鳴らしつつゼルスに近付く悪鬼。
「ここで私を殺しますか?」
「そうだなぁ‥‥捕まえて洗いざらい吐かせるっていう方法もあるが?」
 そう悪鬼が告げた瞬間、ゼルスの姿がフッと消える。
「それは出来ない相談ですね‥‥」
 そのままゼルスは退散しようとした。
 だが、その刹那、悪鬼はゼルスのいた方角に向かって拳を力一杯振った!!
──ドゴォォォォォォォッ
 扇状に広がる衝撃波。
 その一撃はゼルスの腕を掠める。
(痛っ!!)
 その痛みに耐えつつも、ゼルスは急いで仲間の元に走っていく。
「いつ襲撃に来るのか判らないが、愉しみに待っているからな‥‥」

──そして
「作戦は早朝。これには問題はないか」
 腕を組んでそう呟くオラース・カノーヴァ(ea3486)。
 そしてゼルスの報告を聞きつつ、最後の打ち合わせをする一行。
「悪鬼がすでに襲撃を知っている。向うとしても、全戦力を持って待っているのは確実。だが、こちらの作戦も、すでに動いている‥‥」
 アレクシアス・フェザント(ea1565)も、大地に描かれた地図を眺めつつ、そう告げていた。
「ここでタイミングをずらすと、おそらくはシルバーホークは逃げ延びてしまうでしょう。今すぐにといきたいところですが、それも危険過ぎますね‥‥」
 幸いなことに、村からの脱出ルートはここの街道のみ。
 村の方角は、常に黒妖率いる騎士団員達が常に瞳を光らせている為、夜中に逃走ということはない。
 となると、あとは全力での戦闘が待っているだけである。
「なら、なにも迷うことはないわ‥‥当たって砕けろですわ」
 リュシエンヌ・アルビレオ(ea6320)のその呟きに、オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)がボソッと『本当に砕けたりして』といったのは内緒である。


●死と隣り合わせの〜敵戦力、甚大につき〜
──とある村
 チュンチュン
 早朝。
 いよいよ作戦開始。
 各部隊ごとに分かれて綿密なフォーメーションを打ち合わせすると、いよいよ突入開始。
──ブゥゥゥゥン
 先制でラシュディア・バルトン(ea4107)がブレスセンサーを使用、敵戦力の把握に務めるが。
「‥‥なんてこった‥‥敵総数100ってところか。大きさは人間程度だから、オーグラとかの類はいないが‥‥」
 村人全てを含めての数。
 もし昨日の情報が正しければ、敵戦力だけだと純粋に70。
 こちらの戦力と数でこそ互角であろうが、問題はその質。
 それでも怯むことなく、一行は村の入り口まで突入した!!


●悪鬼〜想定外のパワー〜
──ガシィィィィッ
 入り口奥で待っていたのは、10名の騎士を連れた『悪鬼』。
「ここは私達が押さえます!! 皆さんはシルバーホークを!!」
 ガブリエル・プリメーラ(ea1671)がそう叫ぶ。
 一行はそのまま悪鬼の姿に怯むことなく、そのままさらに前に進む。
──ガシッ
 ガブリエルの部隊では、重軽装騎士会わせて10名が武器を構えた。
 そしてリュシエンヌは素早く魔法を発動!!──キィィィィン
「命が惜しくないのか‥‥」
 そう呟きつつも、悪鬼は突然あちこちを見渡す。
(掛かったわね‥‥)
 リュシエンヌのイリュージヨン。
 高速詠唱によるファーストアタックは、悪鬼に『周囲から棒で殴り続けられ、身動きが取れなくなる』という幻覚を見せているのであろう。
「おのれ‥‥怯むな、敵騎士を叩きつぶせッ!!」
  悪鬼の命令で騎士たちは一気にリュシエンヌ達の護衛騎士に向かって攻撃開始!!
 激しい剣戟が響き始めた。
 さらに
──キィィィィン
 ガブリエルの魔法発動。
 悪鬼の影を縛り上げ、身動きを取れなくする。
 が、それにはレジストしたらしく、周囲をひたすら見渡していた。
「もう少し時間を!!」
 さらにシャドウバインディングを発動させようとしたガブリエルだが。
──ニィッ
 突然悪鬼が口許に笑みを浮かべ、ガブリエルに向かって走り出す。
──ガシッ
 そのまま素早く喉を掴むと、グイッとガブリエルの身体を持ち上げた。
──ミシミシミシミシッ
 骨が軋む音。
「残念だな。ジェラールから、魔法のレクチャーは受けているんでな。どんな相手か、自分達の戦力は? それを分析することが出来ると、あとは他愛ないものだ‥‥」
「イリシュージョンを打ち破ったのですかっ!!」
 絶句するリュシエンヌ。
 だが、悪鬼はニヤニヤとしながら一言。
「発動光が判れば、相手がどんなタイプの魔法使いか判る。あとは、奇襲として使える魔法を絞ればいいだけだ‥‥『掛かっているフリ』というのは面倒くさいものだがな‥‥」
 そんな中でも、ガブリエルは意識を集中する。
(影さえ‥‥縛りあげれば‥‥)
 意識を集中するガブリエル。
──ゴギッ
 と、突然首から断末魔の音。
 その瞬間、ガブリエルの全身から力が抜け、だらりと四肢が垂れ下がる。
──ドサッ
 そのままガブリエルを放り投げると、悪鬼は全力でリュシエンヌに走っていった!!
「させないわっ!!」
 瞬時にムーンアローを発動させると、それを悪鬼に向かって放つリュシエンヌ。
──ドシュッ
 それは胸部に突き刺さる。
 だが、その程度では、悪鬼は止まらない。
 イリュージョンなどを使っての足留めも瞬時に脳裏を走ったが、確率は低かった。
──ドゴッ
「グフッ‥‥」
 そのままリュシエンヌに向かってボディーブローを叩き込む悪鬼。
「魔法ってぇのはな。集中力を失うと発動しないものだ。理屈で発動させるものだからな‥‥本能で動いている戦士とは、そこに大きな差が出た‥‥」
──ドガッ
 さらに丸まった体勢のリュシエンヌの背中に、両手を組んで力一杯拳を叩き込む。
──ゴギッ
 そのまま大地に崩れるリュシエンヌ。
「一言言っておく。あんた達、作戦ミスだ。俺の足を止めるのなら、戦士を大量にぶつければよかったのにな‥‥それで時間は稼げる」
 視界がぼんやりとしているリュシエンヌ。
 そのむこうでは、全身を痙攣させているガブリエルの姿があった。
「ガブ‥‥リ‥‥エ‥‥」
──ドッゴォォォォン
 その必死に手を延ばしてそう呟くリュシエンヌ。
 その背中に向かって、悪鬼は止めの正拳を叩き込んだ!!
──ゴギッ
 そして、リュシエンヌもまた、意識を失った。


●ダース・ブラウザー〜騎士としての誇りはどこに〜
──ブゥゥゥゥン
 悪鬼を突破した一行。
 その前方では、ホワイトトルーパーとホークガードを従えたダース・ブラウザー卿の姿があった。
「ここは俺の出番だな‥‥先に行け!!」
 アレクシアスがそうつげて、ダース卿と対峙。
 盾を投げ棄て、ゆっくりと日本刀に意識を集中するアレクシアス。
──ブゥゥゥゥン
 日本刀にオーラが付与される。
 そして、アレクシアス率いる部隊の面々も、其の手の武器にオーラを流し込んだ!!
「オーラ使いか‥‥なら、ここは一騎打ちと行かせて貰おう‥‥他の者は手を出すな!!」
 そう告げて、間合をゆっくりととるダース。
 そしてアレクシアスもまた、間合をゆっくりと取り始めると、両者一気に間合を詰めた!!
──ギン、ガギン、バジィィィッーー
 激しく撃ち鳴る剣戟。
 その実力、まさに均衡。
──バジッバジッバジジジジジッ
 まさに一進一退の打ち込みが続いていたさ中。
──ドシュッ
 突然ダースの背中に激痛が走る。
「何だと‥‥」
──ドスドスッ
 さらに左右からも。
 アレクシアス率いる騎士は、その腕のハルバードにオーラを纏ってダース卿を攻撃したのである!!
「貴様‥‥一騎打ちと言った筈だ‥‥騎士と騎士の戦い、何故他の者を‥‥」
「剣士としての俺は、アンタとの戦いが楽しくて仕方ない。だが‥‥騎士としての俺は、作戦を遂行しなくてはならなかった‥‥」
 そう告げると、アレクシアスがダース卿の腹部に日本刀を突きたてた!!
──ドシュュュッ
 全身から血を吹き出すース卿。
「一騎打ちと言った筈だ‥‥なのに‥‥」
 そのままオーラセイバーをツインソードモードにするダース卿。
 刹那、ダース卿の全身が輝いた!!
──ドシュドシュッ
 素早くダース卿に向かって攻撃を続ける騎士たちの動きを即座に躱わし、アレクシアスとの間合を取るダース卿。
「貴様に騎士を語る資格はない。この卑怯者め‥‥」
 そう告げた瞬間、ダース卿はアレクシアスに向かって5連撃を叩き込んだ!!
 その攻撃を真面に受け、アレクシアスは其の場に崩れ落ちる。
「卑怯でも構わない‥‥シルバーホークを捕らえなくては、このノルマンに未来はないからな‥‥」
 大量の血が流れるアレクシアス。
 そして意識が遠くなっていくさ中、目の前ではダース卿を始めとする騎士たちとの乱戦が始まった‥‥。


●死神の系図〜四天王最強の策士〜
──ガキガキィィィィン
 こちらも激しい剣戟が始まる。
 別荘手前で待ち受けていたのはジェラール率いる『処刑部隊』。
 それに対して、スニア・ロランド(ea5929)率いる1部隊が対処、その他のメンバーはいよいよ別荘に突入した!!
──シュンッ
 先制でジェラールに向かって鉄弓より一撃を放つスニア。
──バジィィィッ
 だが、その一撃は直撃することなく、ジェラールの足元に突然生み出されたストーンウォールによって阻まれてしまう。
「魔法の届かない距離からの攻撃とは。いい作戦ですね」
 そう告げるジェラール。
 と、そのさなかにもスニアは一気に間合を詰めると、そのまま手にした鉄弓でジェラールを殴りつける!!
──ブゥン
 だが、その攻撃は直撃しない!!
 突然スニアの全身がなにかに縛り付けられたような感覚に陥る。
 其の場に崩れ、身動きが取れなくなる。
「な‥‥何をした‥‥」
「ちっょとね‥‥そんなに重装甲なら、身動き取りづらいでしょう? それでね‥‥」
 アグラベイション。
 ジェラールは重装であるスニアに向かって、行動抑制の魔法を発動させたのである。
「そういう事ですか‥‥」
 頭上でそう告げるジェラール。
 と、突然、スニアは握っていた鉄弓を離し、動きを軽くすると跳起きざまにジェラールに向かって鉄拳を叩き込む!!
──ドゴッ
 そのまま後方にフラフラと下がるジェラール。
 さらに間合を詰めて殴りかかるスニアと、さらなる魔法を高速詠唱するジェラール。
 発動は失敗、スニアの拳の連撃を真面に受けてしまう!!
──ドゴドゴッ
「魔法なんて、発動しなかったらそれまでね‥‥」
「ええ、まったくです‥‥」
 すかさず後方に下がると、ジェラールは素早く印を組み韻を紡ぐ。
「させないわよッ」
 そのままさらに殴りかかるスニア。
 だが、詠唱が終る前に、いきなり魔法が発動した!!
──ドッゴォォォォォォォォォォッ
 至近距離からのグラビティキャノン。
 それを真面に胴部に受けて、スニアは後方に吹き飛ばされる。
──ヒョイ
 と、ジェラールは口の中に何かの実を放り込むと、そのまま倒れているスニアをじっと見つめる。
「ここまで殴られたのは久しぶりですから‥‥貴方は石化なんていう生易しい最後では済まされませんね‥‥」
 さらにグラビティーキャノン発動。
 体勢の整っていないスニアがさらに後方に吹き飛ばされる。
 行動抑制の魔法効果はいまだ持続している。
「身体さえ動けば‥‥」
 スニアは一か八か、オーラを高め始める。
 そしてジェラールが口の中に再び実を放り込んでいる最中に、全身にオーラをみなぎらせた!!
──ドゴォォォォッ
 さらにグラビティキャノン炸裂。
 だが、今度はそれを正面から受止めても倒れる事は無い。
 オーラの高まり、そして魔法に対する抵抗。
「ほう‥‥凄い凄い」
 そう拍手するジェラール。
 そしてスニアはすかさず、ヒーリングポーションを取り出して飲み干そうとするが!!
──ガシィィィィィィィ
 その足元から石化が始まった。
「石化はしないと先程っ!!」
「チッチッチッ。それを信じる貴方が間抜けなだけですよ‥‥」
 そう告げると、ジェラールは其の手に水晶の剣を生み出すと、それをスニアの腹部に深々と突き刺した!!
──ドシュッ
「キャァァァァァァァァァァァァァァッ」
 絶叫を上げるスニア。だが、傷が石化すると、その痛みも消える。
「今度は肩口です‥‥」
──ザシュッ
 さらに右肩にざっくりと突き刺すジェラール。
 それも痛みはやがて消える。
「さて、それじゃあこれでおしまいですね」
 そう告げると、ジェラールはまだ石化していないスニアの首に向かって水晶剣を力一杯叩き込んだ!!
──ガキィィィィッ
 間一髪。
 首が石化し、スニアは全身が石となってしまった。
「それじゃあとどめの‥‥」
──シュンシュンシュン
 印を組み韻を紡ぐジェラールに向かって、処刑部隊を突破した重軽装騎士が一斉に弓を放つ。
「今度は多勢に無勢ですか‥‥やれやれ」
 そう告げると、ジェラールは‥‥。


●ヘルメス〜悪魔との戦い方〜
──別荘一階ホール
「ここは任せて先に行け‥‥」
 そう告げるランディ・マクファーレン(ea1702)。
 その言葉に、一行はいよいよホール右側通路に飛込み、シルバーホークの待つ執務室へと向かった。
「あら、全員で掛かってこないと‥‥」
 そう告げるヘルメスに向かって、ラシュディア先制のウィンドスラッシュ!!
──ドシュッ
 その一撃を真面に受けるヘルメス。
 そして騎士団が一斉にシルバーナイフを手に、ヘルメスに向かって襲いかかっていく!!
「騎士団はそこから動かないで‥‥」
 そう丁寧に告げるヘルメス。
──ビシッ
 と、突撃した騎士のうち、軽装騎士1名を覗く全員の動きが止まった!!
「一体何をした!!」 
 そう叫ぶラシュディアに、ヘルメスは軽装騎士の一撃を軽々と躱わしつつ、にぃっと笑う。
「命令。こんなに大勢の人を相手になんて出来ないわよ‥‥」
 そのままさらに、オーラエリベイションを発動させたランディの攻撃すら見切るヘルメス。
「なんて動きだ‥‥その辺の騎士より滑らかだな」
「あら、最高の誉め言葉ね‥‥」
 そんな会話をしつつ、ひたすら攻撃するランディと躱わしつづけるヘルメス。
 さらにラシュディアもウィンドスラッシュを叩き込むが、今度はヘルメスの全身が輝く。
──ドシュッ
 深々と切り裂かれる皮膚。
 だが、それにもかかわらず、ヘルメスはニコッと笑う。
「余裕かっ!!」
 ランディの斬撃を躱わしつつ、今度はラシュディアのウィンドスラッシュを『無効化』したヘルメス。
(攻撃に出たらカウンターを仕掛けるのに‥‥)
 そのランディの攻撃パターンに気が付いているのか、ヘルメスはただひたすら躱わしつづける。
「ふう。貴方、ネズミね」
 そう告げると同時に、軽装騎士が突然ネズミの姿に変化した。
 そして素早く其の場から逃げていくネズミの先では、一人の少女が待機。
──ドゴォッ
 走っていたネズミの首を手にした大剣で刎ね飛ばした!!
「ヘルメスさん、遅くなりました!!」
「ペーネローペ、そっちの魔法使いさんをお願いねっ!!」
 コクリと肯くと、ペーネローペと呼ばれたアサシンガールは、素早くラシュディアに向かって間合を詰める。
「まて、ハウスはもう陥落した!! 君の妹達は無事だ‥‥もう戦う必要はないんだっ」
 そう叫ぶラシュディアだが。
──ドシュュュュュッ
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 右腕が肩口から切断されるラシュディア。
「私はここにいる。ハウスは関係無いし、見せかけの姉妹もいらないわ‥‥」
 さらにそのまま、間合を離すペーネローペ。
「ラシュディアっ!!」
──ブゥン‥‥ドゴッ
 すかさず振りかざした『桃の木刀』が、ヘルメスに直撃!!
 だが、それが直撃する瞬間、ヘルメスの身体がまたしても輝いた。
「あら、魔法の武器なのね‥‥」
 ニコリと呟くヘルメス。
 と再びランディが力一杯木刀を叩き込むが、その威力は完全に封じ込められた。
「もうその武器は私には通用しないわよ。見たところ、ほかに武器はないみたいだけど、どうやって戦うのかしら?」
 そのまま木刀を納めると、ランディは素早く間合を詰めなおし。
──ブゥン!!
 左手のガディスシールドで殴りつける。
「1度受けた攻撃には耐性が出来る。だが、受けないとまずいんだろ?」
 耐性が出来るたびに武器を返ればよいだけのこと。
 そのまましばし、ガディスシールドで殴りかかっていたランディだが、身動きの取れていない騎士の元に飛込むと、其の手に握られているシルバーナイフと腰に帯剣しているロングソードを素早く取り上げる。
──チャキッ
 まずはロングソード。
 それにオーラを付与すると、さらにランディはヘルメスに向かって乱撃開始!!

──ドシュドシュッ
 一方のラシュディアはすでに瀕死。
 その目の前には、聖母の笑みを浮かべたペーネローペが立っている。
 全身を切り裂かれ、大量の出血。
 残った左手て懐からポーションを取り出そうとするが、それもままならない。
「エンジェルモードって奴かよっ‥‥畜生、完全に厄日だっ!!」
 そう叫ぶラシュディア。
「大丈夫よ。神は貴方の魂も、天に迎え入れてくれるでしょうから‥‥」
 微笑みつつ、止めの一撃を身動きの取れないラシュディアの胸部に叩き込む。
 これで、ラシュディアは絶命した‥‥。
「ラシュディアッ!!」
 一瞬の動揺。
 それを見逃す悪魔はいない。
──キィィィン
 突然ランディの姿が犬に変化する。
(この野郎っっっっっ)
 最後のあがきでヘルメスに噛付くランディル。
 だが。
──ドゴォォォォォォォッ
 後方から走ってきたペーネローペが、ランディの腰部から左の前足に向かって大剣を叩き込む。
──ギャゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 絶叫を上げて其の場に崩れるランディ。
 大量の血が溢れだし、全身が痙攣する。
「あーっはっはっはっっ。犬ころ頃ね。まさにいぬっころだわ!!」
「とどめさします」
──チャキッ
 そのままペーネローペがランディに近付く。
「いいんじゃない? そのまま放置して。まさに犬死によね‥‥」
 そう告げとき、入り口からジェラールと悪鬼が到着。
「ダースがやられた。ヘルメス、甦生は可能か?」
「無・理☆ それよりもシルバーホーク卿の元にいそがないと‥‥」


●そして〜君達は間違っている〜
──執務室
 ゆっくりと窓辺に立つシルバーホーク。
 突然室内に飛込んできたゼルス達に向かって、シルバーホークは素早くテーブルの引出しを開いた。
「甘いっ!!」
 素早く杖を投げると、高速詠唱でウィンドスラッシュを2連続でシルバーホークに叩き込むゼルス!!
──ドシュドシュッ
 そのままウィンドスラッシュに抵抗できず、シルバーホークは後に下がる。
「まだまだぁっ!! こんな程度じゃすまないじゃんっ!!」
 飛込み様にシルバーホークに向かってジャイアントソードを叩き込むオラース。
 だが、その刃は皮膚を突き破ることは無かった。
「ふむ。魔法でない武器で戦うとは愚かしいにも程がある。それに比べて、そちらのお嬢さんは『悪魔』との戦い方を心得ているようですね‥‥」
 そう告げと。シルバーホークの全身が発動光に輝く。
 そして頭上に、漆黒の球体が浮かび上がった。
「私は男です!! それにブラックボール‥‥どうしてそれを」
「私はレンジャーですからね‥‥」
 そう告げると、シルバーホークは机の引出に手を延ばす。
 そこに納められている、広げられたスクロールを懐に納めると、腰に下げられている『フォーチューンブレード』を静かに引き抜いた。
「戦いは私の本分ではなくて‥‥まあ」
──ガギィィィィン
 激しく打ち込んでくるオラースの一撃を、シルバーホークはどうにか剣で受止める。
「ちいっ‥‥ラシュディアっ‥‥バックアップを頼むっ‥‥」
 
──ガチャッ
 静かに扉が開かれる。 
「来ましたかっ!!」
 笑みを浮かべて振り返るゼルスとオラース。
 だが、それは瞬時に絶望へと切り替わっていく。
「シルバーホークの旦那。そろそろ遊びは終りにしたらどうだい?」
「ええ。悪鬼、貴方はこの剣士を。ジェラールとヘルメス。二人でそのウィザードのお相手をお願いします‥‥私はそろそろ次の準備にはいりましょう」
 そう告げると、シルバーホークはしばし、目の前で起こる惨劇を目の当たりにしていた。


●バックアップ〜いえ、回復要員です〜
 次々と倒されていく仲間たちの回復。
 黒妖を始めとするバックアップチームは、仲間たちの回収、そしてポーションを使った回復と、兎に角大忙しであった。
「オイフェミアさん。そのポーションはガブリエルさんに!!」
 ずっと後方待機していたオイフェミアも、こうなると兎に角走りまわる。
 別荘のほうからは、次々と仲間たちの無残な姿が回収され、黒妖は兎に角回復させていくのが精一杯だった。
──ドッドッドッドッ 
 と、別荘横から一台の馬車が駆抜ける。
「シルバーホークっ!!」
 その中に、今回の依頼のターゲットであるシルバーホークの姿を見付けたとき、オイフェミアは素早く印を組み韻を紡ぐ。
「ここで奴等を刺激しないで‥‥今は仲間たちの命を優先してくださいっ!!」
 そう叫ぶ黒妖。
「命拾いしたわね‥‥」
 そして、別荘の中の仲間たちの回復、同行していたクレリックによる『石化したスニア』の解呪を行うと、ラシュディア以外の傷を全て回復した。
「駄目です。この方は完全に死亡しています!!」
 死亡したラシュディアの甦生。
 だが、それを行えるほど高位のクレリックはここにはいない。
──シュゥゥゥゥゥゥッ
 だが、オイフェミアがラシュディアを石化すると、皆に一言。
「ノートルダム大聖堂の大司教なら甦生は可能な筈よ‥‥急ぎましょう!!」
 仲間を大切に思ったのか、それともこんな危険な所からとっととずらかりたかったのか。
 なにはともあれ、一行は馬車でノートルダム大聖堂に向かうと、ラシュディアの甦生を依頼した。

 ちなみに掛かった予算は100G。
 
 貧乏だったラシュディア、持っている荷物もそれほど高く売れそうに無いと判断したランディが100Gを建て替えた。
「死んでも返せよ」
 と言ったかどうかは定かではない。

 シルバーホークを捉えられなかった‥‥

 作戦は失敗、四天王のうちダース卿のみを殺害したものの、ヘルメス、ジェラール、そして悪鬼の3名とアサシンガールのペーネローペはいまだ健在。
 そしてダース卿の持っていた不死鳥の紋章剣はヘルメスの手に。
 敗北の味を噛み締めつつ、半分以下になってしまった騎士団と共に、一行は静かにパリへと帰還することとなった。


〜Fin