レディオスター1〜喜劇?

■シリーズシナリオ


担当:マレーア3

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 99 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月13日〜07月16日

リプレイ公開日:2006年07月20日

●オープニング

 その日。
 街角に、酒場に。
 一人の男の歌が響いた。
 天界人には久しくも感じる弦楽器の音色が男の声を柔らかく包む。
 ‥‥謡う男の姿は見当たらない。声の元を辿れば、なにやら不思議な形をした箱……?

 数日前。
 とある場所にて、一人の天界人が熱弁を振るっていた。
「これは開発を進めるべきです。あの人型兵器の中では魔法を用いてもままならない会話が、これを使えば敵に悟られる事なく充分に意思疎通を可能にする。しかしただこうやって工房でいじくり回しているだけでは良い所も悪い所も見つかりにくいものです」
 水筒代わりのペットボトルの口を開け、水を一口。
「今のクオリティのもので良いので受信機の数を増やして下さい。軍需品のテストと聞けば人は嫌がるでしょうが、娯楽の品であれば話は全く違う事でしょう」

 歌姫不在の酒場に歌声が響き渡る。興味半分で「箱」を取り囲んでいた人々は、歌の終わったそれから聞こえてくる男の声に一瞬顔をしかめた。
「はいどーも、突然びっくりした方も多いかな? 申し訳ない。これは『風の精霊』の力を借りて声や音を届ける機械。僕と同じ世界から来た方々には『ラジオ』と言った方が通じやすいかもね」
 どうやら箱の中でしゃべっている男は天界から来た者のようだ。
「さて。自己紹介が遅れましたね。先ほどから歌ったり喋くったりしている僕。この度『風信ラジオ』放送のお話担当となりました、『千歳山 春日』と申します。今日から大まかにこの時間帯、送信機の前に座って喋ったり歌ったり馬鹿やったりしていきたいと思います☆」
 彼と同じ世界から来た人々にとっては少々胡散臭げな名前のようである。が、彼らとは別世界に生まれた人々にとっては男よりも「箱」が気になって仕方がないようだ。
 男の声はよどみなく続く。
「この放送では皆様からのお手紙、ここで実際に話したい、演奏したい、歌いたいと言った方々を大募集! 僕と一緒に街の皆様の微笑を創りませんか?」
 ‥‥要するに。
 この放送はデモンストレーションであったと同時に人材募集であるらしい。街の酒場の名前と集合時間を告げ、「お待ちしております」という基本的な締め言葉を紡ぐと、箱はまた新しい曲を歌い始めた。

 数曲歌い終わり、本日の放送は終了。
 千歳山 春日と名乗った男は、ぐびりと液体を喉に流し込むと周囲の人々の耳に入らぬようポツリと呟いた。
「『軍需品テスト』とかテキトーに言っちゃったけど、案外分かってくれるもんだねえ。さ、面白い番組作んなきゃな」

 その頃。
 一人のシフールが、ギルドへ募集の張り出しを依頼していた。
 ギルド職員が「ああ、さっきの」と直ぐに理解した事は言うまでもないだろう。
「僕と一緒に楽しい番組を創りませんか?!   千歳山 春日」

●今回の参加者

 ea0324 ティアイエル・エルトファーム(20歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ノルマン王国)
 ea5684 ファム・イーリー(15歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea6592 アミィ・エル(63歳・♀・ジプシー・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea7579 アルクトゥルス・ハルベルト(27歳・♀・神聖騎士・エルフ・フランク王国)
 eb4117 大曽根 瑞穂(30歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4199 ルエラ・ファールヴァルト(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4410 富島 香織(27歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4538 赤坂 さなえ(35歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●風信機
 コトコトと音を立て馬車は止まる。冒険者ギルドで教えて貰った辻に2頭立ての箱馬車が一台。
「お迎えに上がりました。場所は秘密ですので、窓は開きません」
 目深に帽子を被る御者は、よく見ればパーティー用の仮面を着けている。
 乗り込んだ一行8人は、ご丁寧に目隠し。
「まるで拉致されるみたい」
 大曽根瑞穂(eb4117)が冗談ぽく言うと、
「拉致されたこと有るの?」
 ファム・イーリー(ea5684)が本気にした。
「厳重ですね。軍事機密だからでしょうか?」
 富島香織(eb4410)はクッションの感触を確かめる。
「雲の絨毯に乗ったような感じ」
 とティアイエル・エルトファーム(ea0324)ははしゃぐ。乗り心地は結構快適だ。ただ、後でどの道を辿ったのかは探れないだろう。

 かれこれ1時間ほど走ったであろうか? 馬車は止まり案内される。目隠しを外して良いと言われたのは、一室に通されてからだ。
「目隠しを取って下さい」
 新たな出会いを予感させる甘い声。
「ぼくがプロデューサーの千歳山春日です」
「「「え゛〜!」」」
 声から全く想像も付かない太ったおっさん。まるで関取のようにぷっくらとしたその頬。平たく言えば太りすぎ。
「春日局長! 宜しくお願いしますー☆」
 気を取り直してティアイエルが挨拶。
「おっほっほっほっほ! 詐欺師の誇りをかけて、わたくしの素晴らしい語りで、人々に素晴らしい嘘をついてさしあげますわ」
 春日と対蹠的に、見栄えは可愛らしいお嬢さんだが、お世辞にも美声とは言えないアミィ・エル(ea6592)。やる気満々だが、声に化粧は出来ない。
「‥‥オーディション落選にしてもいいかなあ」
 頭を掻きながら、春日は独り言を言った。そして、近くにいたお堅いイメージのルエラ・ファールヴァルト(eb4199)に
「『詐欺師』ってこっちじゃ当たり前の仕事なの? 自称していいの? あんまいい気しないなあ」
「いや。そんなことは無い‥‥。少なくともウィルではな」
 どんよりと言う擬音が流れる中。アミィの笑い声は響き渡った。

「ねぇねぇ、『らじお』ってなぁに?」
 そんな空気を返上したのはファムの声。
「音を受け取る機械で、受信する機械があれば誰でも放送を聞けるんですよ。ものによっては、英国の放送が日本で聞けたりするそうですよ?」
 赤坂さなえ(eb4538)は軽く解説する。
「キャメロットの声をキョウトで聞けるの? すごいすごい☆ 声の月道だね」
「私も高校受験の勉強中はよく聞きましたね。つい、勉強よりもラジオに集中したりして、後で後悔することになることも良くありました」
 懐かしそうに思い出を語る香織。
「解説ありがとう。まあ流石にこれじゃ、ほかの国までは無理だろうけどね」
 春日は気を取り直し、機材に掛かっていた覆いを取った。
「これが送信機だ」
 アンティークな蓄音機を思わせる大きなラッパ。それが机一つある箱から突き出している。
「あたしは、アシスタントとか、レポーターとかをやりたいですね〜」
 瑞穂の要望であったが、
「なにぶん、今はこれ以上小さくできないそうだ」
 アシスタントは可能だが、レポートは無理と見た方が良いだろう。
「へー。この箱の中から声が聞こえてくるなんて不思議だよね♪」
 ティアイエルは目を輝かせ装置に見入り
「どういう理屈で声が飛ぶんですか?」
「ああ、風信器そのものについては俺も良く分からないよ。中身はまだ国家機密だって言うしね。特殊な魔法アイテムと思ってくれ。今回は放送試験だ。反響についてはシフール便で逐次入って来る」

「声を離れた複数の場所に同時に伝えられるとは‥‥凄い物だな‥‥風精霊魔法のヴェントリラキュイの超拡大型‥‥って所何だろうか?」
 アルクトゥルス・ハルベルト(ea7579)の感想に
「そうですね、そんな感じです。本当はもっと複雑らしいんですけど」
 大きな機械を運び入れる現地スタッフが応えた。

●ミーティング
「ところで、今回声を入れる機械から音を出す箱はどこまで離すことが可能だ?」
 ミーティングが始まるや、ルエラがいろいろと矢継ぎ早に尋ねる。一通り聞いてから春日は答える。
「調べてるところだ。この後仮放送を行い、届かない所を調べて行く。まあ、王都の中は届くなんじゃないかな? 現在、500m四方まで届くのを確認している。どこまで音が届けられるか、どのような状態で届かなくなるのかもクライアントの目的だろう。酒場や街頭や好事家や貴族の家においてもらっている。リスナーターゲットだけど、今のメンバーだと若者向けになりそうだけどね」
 ルエラは鎧騎士らしく慎重に伺う。
「風信ラジオ放送を許可した人に予め番組内容を見せ、許可を得ていた方が後で放送を聞いた人達から抗議や揉め事が起こっても最小限の対処で解決できる筈だが、謁見は出来ないか?」
「会うのは無理だろう。開発命令はひどく偉い人だと聞いている。俺もここまでやってくれる人だと思わなかったからね。勿論、会った事もないよ」
 春日には、ルエラが如何なる地位の人物かの知識がない。無論説明していない所為だ。
「あの、気懸りが1つ。ラジオは便利ですけど使い方次第で怖い武器になるんですよね。例えば、都合のいい情報を一方的に流すことも可能ですから」
 さなえの言葉に
「今のところはそういう人はいなさそうだね。一安心だ」
 春日は口元を緩める。
「リスナーが明るく笑顔になれる、楽しくよい放送にしたいですね」
 さなえはほっとしながら口にした。
「あの、じゃあこのラジオ放送って、軍事や政治目的には使用しない‥‥んですよね?」
「俺らはこの風信器のテストの為にやってるだけさ。そんな目的があるなら最初から俺をメインに据えないと思うけど。受け取り方が間違っているなら、人が持ちうるどんな技術も軍事に使えないものは無いと言うべきかな? 船の航行を妨害しないために橋に塗る塗料がステルス機に使われているし、水を掛ければ直ぐに食べられるα米は軍用レーションとして価値がある」
 些か天然過ぎる瑞穂の質問だったようだ。

 こうしてミーティンングは進み、いろいろな意見やアイディアが出された。
「よくテレビやラジオであった誰かが面白いことを言った時に、笑い声をいれることでよりそれが面白かったと印象付ける笑い声役もやってみたいと思います。自然な笑い声でつられて聞く人も笑わせるというふうにしたいですね」
「ああ、少しやってみたんだけど、どうやら受信機に向かわないと声は拾いにくいみたいだね。ちょっと難しいかな」
 香織の希望に春日は済まなそうに答える。まだまだ創成期の技術だ。いろいろと不具合もある。否、その不具合すら確認し尽くされている訳ではないと言うことだ。その様に香織は話題を変える。
「ラジオで宣伝する人を探すことも提案してみようかと思います。こういう番組の維持費を宣伝でまかなうのも良いでしょうし、こういう宣伝で経済が活性化すれば、人々の生活が豊かになりやすいのではないか? という思いもあるからです」
「あ、それはいいかもね。資金に関してはあまり問題ないけど、街の人たちが『自分たちの身近にあるものだ』と感じやすくなるだろうし」

●しふ学校
「今回はまだオーディションとプレゼンの段階だ。それぞれの案を試して貰いたい」
 春日は隣室へ。それぞれのプレゼンが始まった。

♪しぃふしふ しぃふしふ
 とちのき通りの しふ学校
 ぼくら・わたしの しふ学校ぉ♪

 一番手はファムと瑞穂。マイクテストがてらに校歌斉唱?
「しふしふさん達は今、悪いことをしていたしふしふさん達を更正させようと学校を作っているらしいですし。とちのき通りでしたっけね。
 その苦労話や、面白話などを言えたらなと思います。それで、街の人々の反応も見たいですね〜」
「らじお持っていったら、とちの木通りの人たちも出れる? しふしふ団の活動報告もOK?」
 どう聞こえて居るんだろう? と思っていると。
「OK。聞こえるか?」
「はい。聞こえます」
 ラッパから声が聞こえてきた。
「実際に置くのは受信専用機だが、こいつは本来の送受信機だ。さて‥‥」
 春日は感想を述べる
「校歌はOKだ。ラジオは持って行けるが実況放送は無理だ。送信装置の持ち出しは、色々と問題があるんでな。活動報告は、ドイトレ殿に通しておく。あと、地球のアイテムで録音した声は、再生すると自動翻訳されない。こないだ蓄音機の実験もして見たが、結果は散々だった。音楽以外は使えない。他に何かあるか?」
「取り敢えず、私はこちらにいるシフール‥‥しふしふさん達の行動をウォッチングしたいですね。街中に飛び回る妖精さん達‥‥なかなか興味深いと思うんですよね〜」
「‥‥気持ち悪ゥ‥‥なに、あんた達にとって俺達って存在自体が見せ物な訳?」
「気にするな。世の中にはいろんな人が居る。天界人にとって珍しい存在なんだよ」
「でもちよっとな‥‥」
 ラッパから聞こえる声。シフール便の一人のようだ。
 暫しの沈黙の後。
「よ〜し。次言ってみよう」

●家令職
 春日に促されて二番手はアルクトゥルス。
「主の家令職。へブル語で言う『アシェル・アル・ハッバイト』の持つ意味こそ、主の教えに精通した者でも誤解が多い言葉も無いでしょう。これを主の奴隷と訳す者もありますが、これは主に仕える者の操(みさお)を強調した方便で、本来の意味は単なる番人や給仕等では無く、番頭・家老・支配人・家令と言った身分の高い名誉ある仕事です」
 いきなりジーザス教の教義を語り始める。
「イザヤ書49章5節を読めば、へブル語では『しもべ』と言う言葉は実の息子にさえ使う言葉であることがお分かりになれます。『アシェル・アル・ハッバイト』とは即ち主の管財人のことです。自由裁量で主から託された財産を扱う者なのです。
 ペテロによる第一の手紙、2章16節にはこうあります。『あなた方は自由人として行動しなさい。その自由を悪の口実に用いないで、神の僕として用いなさい』と。この事と関連して、マタイによる福音書24章の45〜51節を説明します。忠実な思慮深い管理人の譬えです‥‥」
 風信機を前に説教を始める。凛としたまっすぐな声で、しかもなかなかに流暢な語り。
 何とか区切りがついた所で春日は言った。
「いかにも聖職者って感じだね。隠れファンはつきそうだ」
「今のは上級者向けの奴だが、こんなものでいいのか?」
「ああ。1コーナー任せられそうだ。あんたの奴は黒の教えだっけ? 自助努力や自己救済の考え方は、基本的にウィルの民情と適っている。今、ウィルには白の教会しか無いそうだが、共感を呼びそうだな。次は‥‥」
「はーい。わたくしですわ」

●声の化粧
 三番手はアミィ。
「本日は、この世で最も美しいアミィ・エルが務めさせていただきますわ。皆さん、わたくしの声を聞けるなんて幸せですわよ。おっほっほ!」
「ストップ!」
 いきなり春日の声。
「見た目ってのは意外と重要でね。声の癖は外見で『個性』として中和される」
 そう言って聞こえてくる自分の声。話術は巧みだが、声の印象はまた違う。
「映像があるなら、見た目や口調はごまかせてるけど、声までは無理みたいだね。君の声は化粧出来てない。言っちゃ悪いが、おばさん、婆さんの声だよ。キャラ的には面白いけどね。それと、毒舌の話芸は顔が見えないと‥‥話し手の個性がまず歪んで伝わるなぁ。自分ではOKと思っていても、他人の気持ちは分からない。キャラクターが出来る前からアレはないな。君は随分と、その若々しく人並みはずれた美しい顔で得してるよ。素の声のイメージは、野際陽子や松任谷由美辺りか‥‥」
 誉められているのか貶されているのか判らないが、声と言う物が難しいことだけは判った。

●オカリナの響き
4番手ティアイエルは元気なノリで、ご近所面白ペット自慢。明るく聞き取りやすい声で、楽しい内容だ。玄人はだしでは無いものの、オカリナの演奏もそこそこに聴ける。
 ダミーのリクエストを交えて、オカリナの音は響く。
「‥‥やあ、いい曲だね。声も、まるで矢口真理を幼くした感じで可愛いよ。毎日ここに来て演ってくれるのかな? それにしても、塗り坊の自慢かい。冒険者達のペットは変わってるの多いしね」
「そう言えば、どんな時間に放送するんですか?」
 問いに春日は説明する。風信ラジオの特性上、トークは生放送オンリー。そうしないと自動翻訳が働かないのだ。また、テスト期間なので一日1〜2時間の放送が限度と言う。

●救急相談
♪夕べの 鐘が鳴る
 楽しく家事をするために 楽しく仕事するために
 覚えておけば便利です〜
 火傷も 打ち身も なんでもOK!
 救急そ・う・だん♪

 ひざがわりはさなえ。テーマソングに続いて、軽い火傷や怪我などの応急手当法を平易に説明する。
「‥‥これらはあくまでも緊急措置です。手当の後は専門家の診察を」
 終わりまで黙って聞いていた春日は
「冒険者や奥様向けかな。こちらで出来るものならありがたいかもね。『地球』とはちと違うから、今でも戸惑う事がある。水の事とかね」

●人生相談
 いよいよトリの香織。人生相談のコーナーだ。ちょっと生真面目にダミーの相談を担当して行く。
「頼まれたら断れなくてお金を貸して仕舞う‥‥あなたはすごくいい人なんですね。でも、簡単に貸してばかり居たらその人のためにもなりません。咄嗟に、角を立てず借金の申し込みを断る良い方法があります。それは、相手が言ってきた借金の理由と似たような口実で断るのです。例えば、パンを買うお金もない。と言ってきたなら、私も同じだよ。と断るのです。そして、でも私はパンを手に入れる仕事がある。一緒に働かないか? と誘うのです。飢えた人に魚をあげても食べて仕舞えば終わりです。でも、魚の取り方を教えてあげれば、ずっと食べて行けます」
 ふわりとやわらかい優しい声。ラジオでの斉藤由貴みたいな暖かさがある。春日は一言。
「それで行こう」
 とだけ評した。

●スケジュール
 一通りの寸評が終わり、ルエラはスクロールに記録していた志望を提示する。志望をふまえたスケジュール表だ。
「一日1〜2時間、日替わりパーソナリティか。妥当な話ではある。一定の日に休みを入れた方が良い。身も心もリフレッシュする必要があるし、ラジオの点検や意見確認の打ち合わせの為の日が不可欠だ」
「あの、それで、リクエストの担当なんだが」
「しばらくは暇だろうけど。手伝い増やさなきゃいけないくらいにメッセージが来るようになればいいな」
 こうして、ウィルコミュニティ放送は、その第一歩を踏み出した。

 その夜。ルエラはペンを取り手紙を認めた。
『ラジオ放送は内容によっては民衆に多大な影響を及ぼしかねず、然るべき者の管理が必要と思われます』
 ドイトレを通じてカーロン王子宛てに。