一輪の花最終章〜千日紅
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■シリーズシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:4
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月17日〜08月20日
リプレイ公開日:2006年08月18日
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●オープニング
冒険者ギルドに一通の手紙がヴェルグ本人から手渡された。
其れは、冒険者達に宛てた手紙。
【招待状】と書かれた手紙である。
「遂に結婚式の日取り、決まったんですね」
「はい、沢山お世話になりました‥‥そのお礼を兼ねて、結婚式に来て頂きたいと思いまして」
「其れは其れは‥‥皆さんもきっとお喜びになりますよ」
ギルド員がそう言えば、ヴェルグは嬉しそうに恥ずかしそうに笑って誤魔化した。
二人で駆け落ちしてから数日後。
ヴェルグは両親を説得し、子供を引き取る事を承諾させた。
そして、晴れての結婚式となったのである。
「ユーリさんは、お元気ですか?」
「はい。今頃式場でテキパキ働いてる頃だと思います。僕もこうやって手紙を手渡しする作業を手伝っていますが」
「式場はどちらでおやりに?」
「結婚式自体は教会で。終わればすぐに僕の屋敷で披露宴を、と思ってます」
ヴェルグが答えると、ギルド員は嬉しそうにうんうんと頷いた。
誰もが望んだ二人の結婚。遂に其れが実現されるのである。
街中既にその話題で持ちきりである。
「勿論冒険者の他にも、貴族の方もお呼びします。ですが其れだけではなんですから、街の人も呼ぼうと思ってます。ユーリがそうしてくれって言いますし」
「盛大な結婚式になるとよろしいですね。何はともあれ、おめでとうございます」
「ありがとうございます。披露宴で冒険者の方達にも挨拶が出来ればと思ってます。あ‥‥よろしければ披露宴で何かして頂いても構いませんから」
「おや、其れは其れは。ちゃんとお伝えしておきましょう」
「その招待状は一つで皆さんの分となります。執事に見せて頂ければすんなり入れると思いますから。ペットとか連れて来る場合は庭で大人しくして貰うしかないんですけどね」
苦笑を浮かべるヴェルグ。
ペットは同伴はOKらしいのだが、同伴する場合屋敷の中には入れず、庭で楽しんで貰うという事になるようだ。
木に縛り付けれるペットはそうしてもいいようだが、ちゃんと面倒は見て欲しいとの事。
「お父さん! 次行かないとお母さんに怒られるよ!?」
「わぁっ!? そんなに時間とっちゃったか!? 悪い、すぐ行く!」
「もうすっかりお父さんですねぇ」
「あはは‥‥どうやらすっかり懐いてくれたみたいです。それじゃ、俺はこれからまた配りに戻りますからこれにて」
「はい、楽しみにしています。結婚式」
ギルド員はそう言うと、封筒に視線を落とした。
其処には可愛らしい花。千日紅が押し花として同封されていた。
「確か‥‥この花言葉は‥‥。私達にも誓ってくださるとは、嬉しい限りです」
微笑むギルド員はその花言葉を呟いて、封筒を冒険者達に届ける準備をするのであった。
手紙の中身。其れは‥‥
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
冒険者の皆様、お元気でしょうか? あの時は何度も何度もお世話になりました。
この度、私達は式を挙げる事になりました。
これも皆、冒険者の皆様のおかげです。
ささやかな気持ちですが、千日紅の花と共にこの招待状を送ります。
私達二人の門出を見届けて欲しいと思います。
ユーリ
ヴェルグ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日はとても晴れていた。
二人の門出にはとてもぴったりな日であろう。
彼等の永遠の誓いを
どうぞ、その目で‥‥。
●リプレイ本文
●門出の準備
「やっと結婚なんだね♪ 長かったね、おめでとう!」
「ありがとうございます、レフェツィアさん。此れも皆さんのおかげです」
「ん? ヴェルグ一人でここの支度をしてるのか?」
「あ、はい。ユーリは屋敷の方に行っていますし、何より花嫁に当日の準備までやらせては‥‥」
ヴェルグがそう言うと、リース・マナトゥース(ea1390)が小さく笑みを浮かべた。
「其れはヴェルグさんらしいですね。私達で良ければお手伝いします」
「そう言えば、子供達は何処だ?」
「え? 子供達、ですか? 今ならすぐ其処の部屋で何やら相談していますが‥‥」
「だったら、僕とリュイスさんは子供達の所へ行って来るよ」
「ヴェルグは絶対に来るなよ?」
そう言うと、ケンイチ・ヤマモト(ea0760)とリュイス・クラウディオス(ea8765)は子供達がいる部屋へと向かった。
残されたヴェルグは首を傾げるのだった。
●子供達の歌
「あ、お兄ちゃん達!」
「お父さん達の結婚式に来てくれたのねっ」
「あぁ、元気そうで何よりだ」
「あのね、僕達君達に歌を教えにきたんだ」
ケンイチがそう告げると、子供達はそれぞれ顔を見合わせて首を傾げた。
そんな子供達にリュイスが笑ってこう告げる。
「歌った事あるだろ? 二人を祝うんだからよ? お前達からの贈り物と言う事で、歌うのは、できるか?」
「僕達からの、贈り物‥‥?」
「そうだよ。君達のお父さんとお母さんが結婚するんだから、お祝いとか考えなきゃだろ?」
「そっか、それなら歌う!」
「そうよ、私達からお母さん達へのプレゼントよ!」
子供達は元気にそう言い始めると、リュイスとケンイチにお願いしますと頭を下げた。
この辺はユーリが教えたのだろう。礼儀正しい子供達へと育っているようだ。
そうして響く、子供達の歌声。その歌声には技術はない。
けれど、心が篭っている。子供達のなりの『お礼』の心が。
演奏はリュイスが受け持ち、歌はケンイチが優しく教えるのだった。
「良し、そんな感じだ。音は、外しても間違えても途中で、止まるなよ?お前達が、失敗しても俺達でごまかせるから、気にしなくて、いいぞ?」
「えへへ‥‥お歌って歌うの楽しいねー?」
「練習したら、お兄さんみたいに上手くなる?」
「うん、キミ達ならきっと上手くなると思うんだ」
ケンイチがそう言うと、子供達は無邪気に微笑むのだった。
●式の始まり。
「あら、皆さん! 来てくれたんですね!」
「ユーリさん、お久しぶりです」
「今回は無理言って僕が司会をやらせて貰うよ♪ 立派な式にするからね?」
レフェツィア・セヴェナ(ea0356)が微笑むと、ユーリは驚いてヴェルグの方を見た。
ヴェルグも賛同して司会を頼んだと言うのだ。
「ユーリさん、これお祝いの品です」
アハメス・パミ(ea3641)は綺麗なマリア・ヴェールをユーリへと手渡した。
「花嫁衣裳として使ってください。ご結婚、おめでとうございます」
「ありがとうございます! アハメスさん、本当に嬉しいです‥‥ありがとう‥‥ありがとう‥‥!」
「おいおい、こんな所で泣いてちゃダメだろ? ほら、速く準備してきなって。そろそろなんだろ?」
オラース・カノーヴァ(ea3486)がそう二人の背を押すと、二人はそれぞれ準備へと向かうのだった。
カラーンコローン――‥‥。
綺麗な鐘の音が響き渡り、教会には参列者がズラリと並ぶ。
そして、入り口ではリースが子供達の胸に綺麗な花を一本ずつ飾ってやるのだった。
冒険者達はそれぞれの子供と共にユーリの友として、ヴェルグの友として式に参列するのだった。
そして、綺麗な音色と共に式は始まりを告げた。
まずは先に新郎であるヴェルグが入場する。その姿は、何時ものヴェルグではないと思わされる程。
とても高貴に見えるのだった。
「わぁ‥‥ヴェルグさん、凄くカッコよくなってますね」
「そうだな。ヴェルグがあれなら、きっとユーリは‥‥」
「あ、来たよ!」
ケンイチの声が聞こえると、リュイス達は入り口へと視線を向ける。
其処には、純潔を思わせる真っ白なドレスと、アハメスから貰ったマリア・ヴェールを身につけたユーリが立っていた。
その隣には、父であるあの商人の姿があった。
「綺麗‥‥ですね‥‥」
「はい。応援してきた甲斐がありました」
「これからあの二人は‥‥どんな人生を歩むんだろうな?」
「其れは僕達には分からないよ。けど、不幸な道にはならないと思う」
この二人とは初対面であるケンイチも、そう告げる。
彼等には不幸など似合わないのだから。
そして、ユーリの手は父から新郎であるヴェルグへと手渡された。
ヴェルグはユーリの父に一礼すると、神父役を務めるレフェツィアの前に立った。
そして、その場の全員でまずは祈祷するのだった‥‥。
式はゆっくりと進んでいく。
その間、子供達は綺麗な二人の姿を見て少しぼんやりしているのだった。
「どうしたんだ、みんな?」
「お母さん達は、僕達を引き取って幸せなのかな?」
「本当の家族じゃないのに、ね‥‥」
「絶対に幸せに決まってます! でなければ、貴方達の事なんて考えていなかったのですよ?」
「そうです。貴方達の事もあって、二人に愛もあって。だからこうやって夫婦になろうとしているんですよ」
不安に駆られる子供達をリースとアハメスが諭すようにそう告げる。
此れは二人だけの幸せではない。子供達も含めての幸せなのだと。
そして、再度振り向けばもう式は誓いの言葉まで迫っていた。
「私達は、赤いバラを交換する。結婚という物質的な仕組みの中で、生身の人間として、どう暮らしていくかを知って同意するしるしに。私達は、白いバラを交換する。二人の上にいつまでも輝く神の愛の純粋さのしるしに。私達は、指輪を交換する。はじまりも終わりもない、太陽のシンボルである丸い輪を、支配でなく合体、制約ではなく協力、束縛ではなく、手をつなぎあうシンボルとして。この結婚の秘蹟を執り行えるのは、当人達だけであり、それを神聖なものとできるのも、当人達だけである。私達は、すでに心に刻まれた真実をここに表明し、集まった友人と精霊の前で証言する」
レフェツィアより誓いの言葉を授けられ、其れを誓うかのように、二人も指輪の交換を行う。
その指輪は、花が象られていた‥‥。
そして、式が終わりに近づくとリュイスとケンイチが顔を見合わせ頷いた。
レフェツィアに合図を送ると、彼女もコクリと頷いた。
「それでは、此れより賛美歌を‥‥二人の子供達に歌って頂こうと思います」
「ほら、本番だ。行くぞ?」
「う、うんっ!」
「緊張しないで、リラックス、リラックス」
ケンイチが微笑んでそう言うと、子供達も力を抜いてゆっくりと前と歩み出る。
整列すると、リュイスの演奏が始まった。子供達はケンイチと一緒にリズムをとって、いっせーのでで歌い出す。
その事に驚いたユーリとヴェルグは顔を見合わせる。ユーリの目には既に涙が浮かんでいた。
「みんな‥‥」
「ユーリ‥‥幸せになろう。みんなで、幸せに‥‥」
「はい‥‥」
子供達の懸命な歌が響く。
その歌に心を打たれた貴族もいるだろう。
この子供達の歌には心が篭っている、と。
式が終われば後は披露宴である。
屋敷の前ではアハメスとリースがライスシャワー、フラワーシャワーを施すのだった。
此れは、花を降らせ、花の香りでまわりを清め、新郎新婦の幸せをねたむ悪魔から守る儀式である。
「皆さん、本当にありがとうございました。後はゆっくりと食事をとってください」
「お二人共、おめでとう! 俺はついでだし、美味いワインでも飲むとするか!」
「あ、じゃあ俺も付き合いますよ、オラースさん!」
「お〜? 主役が潰れるんじゃねーぞー?」
笑い合いながらワインを片手に談笑するヴェルグとオラース。
きっとこれからの事も語り合うのだろう。騎士としてのあり方や戦地での事。
不謹慎かも知れないが、其れは彼等にとって今後必要な事なのだから‥‥。
「まぁ‥‥! 飲めないのに、無茶するんだから。あの人ったら‥‥」
「ふふ、すっかりユーリさんも奥様が板についてますね」
「そ、そうかしら? お恥ずかしいわ‥‥」
「恥ずかしがる事なんてないと思いますよ? だって、本当にお綺麗なんですから‥‥」
リースがそう言うと、ユーリは頬を赤く染めながら隠し持っていたブーケを彼女に手渡した。
リースは目をパチクリさせてそのブーケとユーリを交互に見るのである。
「私からのお礼です。子供達もあんなに喜んで‥‥私達も嬉しかったです。この日は、私達にとって永久に忘れられない思い出になります」
「そんな‥‥私達こそ‥‥ね?」
「うん! 僕も二人の式の司会出来て、すっごく嬉しかったよ!」
「おめでとうございます、ユーリさん。何時までも幸せでいてくださいね?」
アハメスの言葉に、ユーリはにっこり微笑んで頷くのだった。
その近くでは、子供達が懸命に食べていた。それにお供するかの如く、リュイスとケンイチが付き添っていた。
「よ、よく食べるね‥‥?」
「育ち盛りっていうやつか?」
「そ、そうかも知れないね‥‥」
「しかし‥‥幸せそうだ。まあ、あの二人なら、これから何が起きても乗り越えられるだろう」
「そうだね。もし、何かあったとしても‥‥」
「その時は、俺達が全力で‥‥だな」
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今日は二人の結婚式でした。
今まで応援してきた二人の結婚式、とても素晴らしいものでした。
この結婚式は、私の思い出ともなり永遠に忘れる事はないでしょう。
彼女の笑みはとても幸せそうで、ヴェルグさんもオラースさんと
楽しそうでした‥‥。
もし、二人を阻む壁がまた現れたなら
その時はまた私達冒険者が背を押してあげようと思います。
彼等の友人として‥‥彼等の支えになれるように‥‥
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「リース? 其処でなにしてるのー!? こっちで一緒に食べようよー!」
「あ、はい! すぐいきますっ!」
「ユーリさんの手作りだよー? 速く来ないと食べちゃうからっ!」
「あっ、ダメですよー!」
其処に置かれた一冊の本。
其処に彼女の思いはしたためられた。
この華やかな日が良き思い出となるように。
この世界で過ごした大切な記憶となるように。
花嫁から頂いたブーケが、優しい風に吹かれていた‥‥。