真田獣勇士4〜囚われのフェレット
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■シリーズシナリオ
担当:マレーア4
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月04日〜09月09日
リプレイ公開日:2006年09月04日
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●オープニング
「で、此れはどういうつもりなの、アルファ?」
地下室。ラシェルがムスッとした表情のまま、傭兵風の男に尋ねる。
アルファと呼ばれた彼は、苦笑いを浮かべながら首を横に振った。
「いや、どういうつもりとかそういうのはないんだが‥‥話すにしても、此処が丁度よかったのでな」
「女を地下室に呼び出すなんて、ロマンも何もないのね」
「俺にロマンを求めるな、と。とにかく、報告書だ。後で悠にも回すぞ」
そう言うと、アルファは一枚の報告書をテーブルへと置いた。
其処に書かれていたのは、以前より騒がれていたゲリラ集団の一角についてだった。
怪しい言葉を口走りながら、怪しい行動を起こしているらしい。
更にはその集団の頭は、別の世界より渡って来たというのだ。
「‥‥この情報、確かなの?」
「例の五人組もそう言ってたし、大丈夫だとは思うがね‥‥?」
「あいつ等、まともな事喋れたのねぇ‥‥?」
「ショック療法だ」
さらりとアルファが物騒な事を言い放つ。ラシェルは其れに少し苦笑いを浮かべた。
「今回、悠にやってもらう事は決まっている。此方の準備が整うまで、表立って動けという事だ」
「其れで? こいつ等にも当たらせるわけ?」
「面妖には面妖を。弄られには弄られをと言うだろう。怪しい集団というからにはまた弄られだと予想される」
「‥‥弄られって何よ?」
ラシェルの鋭いツッコミを華麗にスルーすると、アルファは言葉を紡いだ。
「もし、これが失敗して真田が表に出てしまえば‥‥問題は多い。だが、悠なら問題はない。ただのフェレット耳つけた弄られだからな」
「なんか雇い主を散々な目に合わせてない?」
「問題ないだろう、これぐらいなら。悠には報告書を送る‥‥というか、そろそろ接触してる頃かと‥‥」
「ちょ‥‥! なにすんだー!? はーなーせー!?」
「オー! この人ヤバンッ! 大人しくワタシに連れ去られてクダサーイ!」
「いや、普通は大人しくしないから!!」
「ダーイジョーウブ。怖くない、怖くないネー!」
「普通に怖いわー!」
「ようこそ! ファビーの庭においでませー!」
そして次の日。冒険者達に真顔でアルファがこう告げるのだった。
「怪しいエセ外人らしき男に悠が捕まった。何とかするか、自警団に突き出してくれ」
最後まで悠の事はほったらかしだったとか‥‥。
●リプレイ本文
●勇士終結
「わざわざ集まってくれてすまない。しかし、あいつを取り戻さないと問題が‥‥多分起きるんだ」
集まった冒険者達を出迎えたのはアルファだ。
現状と場所について説明しに来た様子だったのだが‥‥。
「んー、あのノリは、カマさんにつうじるところがあるけど、ほんもののカマさんじゃないから、まっさつできないの。ざんねんなの」
「抹殺? あぁ、あいつ等に其れは無理だな。手痛いダメージを与えてもすぐに立ち上がる」
所謂ギャグキャラ属性というもののお陰だろう。
実際はごっつい痛い。しかし其れを堪えてこそだと人は言う。
プリンセスであるレン・ウィンドフェザー(ea4509)も此れには困ったと首を傾げる。
「入手している範囲の相手集団の情報と、誘拐された当時の悠さんの動向について‥‥教えていただけますか?」
「いいだろう。現在入手している相手の情報は『ただのバカの集まり』だ。誘拐された時の悠は‥‥普通に町中で待たせていた」
「は?」
「それだけ‥‥ですか?」
「それだけだ」
どきっぱりと断言するアルファにルイス・マリスカル(ea3063)も頭を抱えた。
本当にただのバカなのはこの人なんじゃないかと思える程に。
「まぁ、とりあえずだ。救出して欲しいわけだ」
「真田獣勇士心得の条、我が命我が物と思わず、任務の時、闇に潜み、己の素性を獣耳で隠し、ご下命いかにても果すべし。なお、死して屍拾う者なし! 死して屍拾う者なし!! 」
風烈(ea1587)がどきっぱりとそんな事を言い始める。
まさしくその通り。其れが真田隊である。
「しかし‥‥アイツは隊長であるが故、拾わなくてもいいだなんてそんな事は‥‥」
「とにもかくにも囮が必要なのぢゃ! こうなったら主がフェレット耳をつけて悠の代わりに‥‥!」
「だが断るッ!」
そんな押し問答が小一時間続いた事だろう。流石のアルファも息が切れている。
其れもそのはず。この女史、ヴェガ・キュアノス(ea7463)の押しが強いも強いのだ!
「仕方ないわ! ここはあたしがやるしかないわね!」
ドーンと勢いよく前に出る女史。
その者、完全無欠。陽精霊の申し子とも言うべき輝ける光を放つ天下無双の女傑、エリザ・ブランケンハイム(eb4428)だ。
彼女がフェレット耳をつけて囮になろうというのだ!
「‥‥よし、ではその心意気を持って任務をまっとうしてくれ!」
「アルファ殿はどちらに?」
「‥‥関わりたくねぇよ、あんな奴等に」
ポロリと本音が零れた気がしたのでした。
●囮? 此れは死の一本道です
「あんた達、喜び勇んで集まりなさい!ベストミミリアン賞・フェレット部門・自称ぶっちぎり総合1位の私が来てあげたわよ!」
街の中で勇ましく声をあげるエリザ。その耳には輝くフェレット耳。そして輝く額。‥‥本物の女傑とは彼女の事を指す。
「さて! この私を差し置いて、この地のフェレット耳が攫われたそうね! 納得出来ないわ! どう考えても攫ってしまいたくなる魅力は私の方が上よ! あんた達もそう思うわよね!? そんな訳でヘンテコ集団がこのフェレット耳No1の私を攫いに来るまで此処で待つ事に決定したわ! 差し入れ歓迎! 以上、解散!」
素晴らしい演説が響き渡り、住民達も言われるがままに解散。
しかし、差し入れとは何を差し入れればいいのだろうか。
街の人々は悩みに悩むのだった。
「さて、エリザ様は十分に目立っていますわ。後は私達も行動するのみです」
「事前に申請しておいたペットが役に立ちますかね?」
「多分。でもやるしかありませんわ」
ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)が事前にアルファから借りた悠の私物である『ムー』と書かれた表紙の本。
アルファ曰く彼の愛読書らしい。しかも中身はてんで分からない、天界人向けのものであるとか。
「とにかく、此れを使って匂いを辿らせましょう」
「そうですね。其れが一番です。他の方々はエリザさんと一緒に来てくださると思いますし」
こうしてかのドタバタ戦闘が始まるのだった。
●来たぞ! 見たぞ! 捕らえたぞ!
「遅いわね! あたしを待たせるなんてどういうつもりなのかしら!?」
何時の間にか住民に美味しいミルクを頂きご満悦状態なエリザ。
しかし、彼女を背後から何者のかが捕らえるのだった!
その行動が、彼等にとっての死亡フラグへと繋がるという事も知らずに。
「来たわね! 待ってたわよ! というか、待たせすぎだわ!」
「うわっ! まぶしーい!?」
「ひっ、光があぁぁぁぁ! こ、此れが神の光というやつなのですねーーーー!」
輝く額。平伏す教徒達。此れでは捕まえるというか、簡単に事情聴取も出来そうである。
「よし、捕まえたわよ! みんな、出てらっしゃい!」
「よくやったのぢゃ、最終兵器オデコ! さぁ、ファビーな集団! しっかりとアジトに連れていくのぢゃ!」
「わ、私何もしりませーん!」
「いうこときかないとーおでこがおこるなのー」
レンの言葉に恐れをなした教徒達。素直に慎ましやかに彼等を丁重にアジトへと案内するのであった。
そして、一人の男。烈はこうぼやく。
「俺達、堕ちるとこまで堕ちたか? いや‥‥どちらにしても、悠、俺達が必ず敵を取ってみせる‥‥」
既にお星様扱いとされている悠なのでした。
その頃、アジトの前では二人の冒険者が仁王立ちしていた。
ルイスとジャクリーンだ。優秀なペットが見事に基地を発見した様子。
だが、其れは薄気味悪い教会だった。
「‥‥金ぴか。ですわね‥‥」
「なんでしょう‥‥? 洋風なのに、和風の扉が‥‥」
「違和感、ありすぎですわ‥‥」
思わず引きつり笑いを浮かべるジャクリーン。
そして、二人が一歩中に入ると其処には謎の集団が数千人と。ドドーンと槍を持って出迎えてくれたのである!
此れには二人も唖然とする。ジャクリーンは素早く体勢を整えるものの、ルイスは平然とででんっ! と対峙しているのである。
「ようこそ! ファビーの庭へおいでませ!」
「貴方達! ハリガミ見てきたヒトねー?」
「ハリガミ‥‥? そんなのありましたっけ?」
不要なものは皆片付ける。ましてやそんな怪しげな張り紙は住民達が撤去するだろう。
「ミーはルイス。ベリーベリーストロングマンネ。ユー達はベリーベリーストロングメンか?」
「オー! アナタ判るヒトネー? わかりやすいですぞー!?」
「‥‥もういい加減にやってしまってよろしいかしら?」
「それではあまりにも可哀想な気もしますが」
「‥‥きっと楽しい反応見せてくれると信じてますわ」
そう言い終えると、ジャクリーンは数本の矢を弓へと。
そして、力強く弓を引くとシュバンッと矢を放つ。
矢は雨となりエセ外人達へと振り注ぐだろう。
「おー! サンズリバーがみえまース!」
「痛い! ああっ! 右手ッ! 左手ッ!」
ワケのわからない言葉を振りまきながら、エセ外人達は踊らされるのであった。
●女傑の一撃は無双の一撃!
「ここがそうなのね! 何よ、もう始まってるじゃない!」
「ファビーの庭? ヴェガとしばわんこの庭、に改名してくれるわ!」
後続部隊であるエリザ達が来た時には既に信者達はちりぢりになっていた。
残るはファビーのみである。悠の存在は‥‥というと‥‥。
「とにかく! あいつ等を自警団に突き出せばいいのね!」
「あぁ、エリザさんならやれると思う」
「任せなさい! あたしがいればどんな奴だってイチコロだわっ!」
その光り輝くデコがあれば、確かにイチコロである。『視界』は。
四人がツカツカと教会に入り込むと、ルイス達と合流し、ファビーと向き会う。
勿論、先頭はエリザである。
「ちょ‥‥! みんな来るの遅いッ! 早く助け‥‥!」
「大人しく自警団についてもらうわよ、あんたッ!」
「オー! アナタ愛しらなーい! 其れはカワイソーウね!」
「って、俺無視ー!?」
ファビーの後ろでうな垂れる悠。此れはもはや完全に放置プレイの方向性である。
「愛よりも先に自警団よ! 話はそれからだわ!」
「オゥ! てかるデコ! コワーイ! ヤバーン!」
「それに、なにをたくらんでるかもはなしてもらうのー!」
「企む? ノーン。何もたくらんでまセーン!」
ファビーの言葉に、ヴェガが目で烈に合図を送る。
フランベルジュを握ったまま、不敵な笑みを浮かべて彼に近寄る。
そして、斬ると見せかけて右頬に一発。軽やかに吹っ飛ぶファビー。
「‥‥あれ? 斬れてない?」
「殴った方が早いからな」
「‥‥でも、まだ立ち上がってるケド?」
「こいつで斬ると治療に神聖魔法を使わんといけなくなって金がかかるからな」
数分間の沈黙。悠と烈の問答はこうして終わる。
ただ単に悠が唖然としているだけの事かも知れないのだが。
「其れよりもアナタ! 其処のアナタ! 御神体にドウネ?」
「何、御神体!? なんでよ!?」
「その輝くデコはまさしく‥‥!」
「誰が最終兵器オデコよ!」
唸る豪腕。見事なまでのアッパーがファビーに直撃! でかい巨体が宙を舞う!
‥‥一撃KO? このどたばた戦争を収めたのはエリザ。女傑としてこれからフォルセの伝説と謳われるだろう。
「で、こいつ等が其れか?」
「えぇ、そうですわ」
「‥‥そうか。自警団に連行しろ!」
所変わって城前にて、アルファが兵にそう言いつけて彼等を連行していく。
こうして、依頼は終わったかのように見えた。だがしかし。
「あー終わったわね! これでフォルセの平和も守られたわねっ!」
「しかし、何か足りないような気がします」
「なんだろー?」
「なんぢゃろな? しばわんこの庭と看板も立てて来たはずなのぢゃが‥‥」
「肝心の悠がいないんだが、どうかしたのか?」
‥‥‥‥。
『忘れてたーーーーーーーーーーーーーーーー!』
「早く連れてこいっ! 何で一番の目的忘れるんだーーーー!?」
こうして冒険者にすら忘れ去られた彼は城に戻った後。
数週間、人間不信に陥ったとか、そうでなかったとか‥‥。